鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

また底が見えたソフトバンク商法

2006-11-02 | Weblog
 携帯電話のナンバーポータビリティ制度が施行となって一大攻勢をかける賭けに出たソフトバンクが一転、窮地に立たされている。利用料0円と大々的に打った宣伝が公正取引委員会から不当表示ではないか、との嫌疑を受け、引っ込めざるを得なくなったからだ。これで、ユーザーの信用はガタ落ちになるのは明白で、ボーダーフォンを1兆7千億円で買収し、DOCOMO、auに真正面から戦いを挑んだ孫正義の作戦もここへきて裏目に出たようだ。もともと孫正義はホリエモンと同じ株式の時価評価を重視する銭ゲバ経営者で、常に頭にあるのは株価であり、ユーザーのためと言うのは単なるおためごかしで、コーポレート・ガバナンス上極めて危険な経営者なのである。
 ソフトバンクはいまでこそ野球の福岡ダイエーホークスのオーナー会社であるが、そもそもは1981年にパソコンソフトの卸し会社としてスタートした会社である。ホリエモンと同じく福岡県の出身である孫正義は電卓が普及する前にそれらしきものを開発し、当時のお金で1億円を稼ぎ、それをもとに米国に留学し、これからはコンピュータの時代であると考え、帰国してパソコンソフトウェアの卸し会社を始めた。昔からいずれ財閥を作るのだ、との野心を抱いていたが、なかなか会社も大きくならず、一時は会社崩壊寸前までいったこともあった。
 米国留学の時にたまたまヤフー株を買ったことが、株式保有のうま味を知るところとなり、手にした値上がり益をもとに事業の多角化に乗り出すことになった。最初に手がけたのがコンベンション、展示会事業で、米国のインターフェースを買収して、展示会事業に進出した。しかし、思ったほどのうま味もないことがわかり、すぐにやめて、次にインターネットのプロバイダー事業に乗り出す。ここで、多くのお客を獲得したものの、インターネットに接続できない、今回と同じような事件を起こしたことがある。この間に株式上場し、株式時価評価が20兆円と新日本製鉄のそれを越えるようなこともあった。
 それで、通信事業に乗り出し、遂には業界3位だったボーダーフォンを買収し、携帯電話事業で王者のDOCOMO。auに戦いを挑むまでになったわけだ。通信料金を安くして業界のシェアを奪い、一見ユーザーに貢献しているような印象を与えているが、孫正義の頭には株価を上げることしかない。まるで、証券会社のお先棒をかついでいるかのようだ。株式の時価評価を上げることが企業価値を高めることだ、と思いこんでいる。まさにホリエモンと同じなのである。
 今回のソフトバンクのていたらくを見ていて、感じたのはソフトバンクにはいわゆる通信技術者の層が薄いのではないか、ということだ。日本の通信業界を長く牛耳ってきたのは言わずとしれたNTT(日本電信電話公社)であった。そのNTTにいた技術者はDOCOMO、auには流れていってもなかなかソフトバンクにまで行こう、と思わないのではないだろうか。確かにトップクラスの技術者は孫正義一流のスカウトで引っ張ってこられても末端の技術者までそろえるには至らなかったのではなかろうか。ソフトバンクは人の出入りの激しい会社だ、と聞いている。そんなところではじっくりと技術に取り組む風土は生まれないだろう。今回間際に出てきた孫正義の思いつきの戦略を裏付けるだけの時間的ゆとりもなかったうえ、技術的な検討もできなかった裏にはそうした事情があったのだろう、と思われる。
 それに孫正義には何か胡散臭さがついてまわる。かつて展示会事業を手がけた時に、孫正義がある展示会で提携した企業の親会社の社長に会いに行って、子会社、つまり提携したばかりの企業を買収したい、と申し入れたことがある。それを聞いた提携企業のトップは「握手しておいて買収しようとは許せない」と烈火のごとく怒った、という。そんなことを平気でするトップに有能な技術者はまずついていかないだろう。会社のなかで、ガバナンスが保たれる、とは到底思えない。
 そんな経営者がいる限り、いずれ、ソフトバンクは消え去る企業であるのは間違いない。
 
コメント
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