6年前にこのブログで 北海道出身のマンガ家だけの雑誌を創刊するのは面白いかも、みたいなことを書いた。ようやく今年の5月下旬に、北海道ゆかりのマンガ家12人による饗宴マンガ作品『コミックふるさと北海道』という単行本が出版された(同時バージョンで福岡もある)。北海道庁が全面協力しているようで、巻末には高橋はるみ知事のメッセージが収録されている。パセオの弘栄堂書店では『コミックふるさと北海道』がワゴンで平積みをしていた。こういう地元の作品をキチンとプッシュ&応援するセンスがすばらしい。購入するのがだいぶ遅れてしまったが、感想めいたレビューを記しておこう。
過去に発表された作品の再録もあれば、本書のための描き下ろし作品もある。エッセイマンガやフィクション、モンキーパンチのように完全に文章エッセイになっている作品もあり、幅が広い。マンガ雑誌や連載を集めた単行本を通読するのとは全く違うマンガ体験ができる。というのも、児童マンガ風の動物マンガから20代の女性漫画誌風の恋愛作品まで、絵柄もキャラクターもストーリーも文体も一つとして似通った作品がないからだ。
そんな作品集の中で、共通して描かれているのが、12人の作者による北海道に対する、あふれんばかりの熱い想いだ。どれも北海道抜きには生まれなかった作品ばかりだ。青空大地の「朝まで生き物会議」のようなテーマは心が躍る。大和和紀の「大通公園で子どもしてた頃」は、今の大通公園と比べると隔世の感もある。いくえみ稜が自分の通っていた中学校の先輩であることを知って驚愕。また、香山梨緒「ローソク出せと織姫さま」で初めて知ったのが、七夕(北海道で8月7日)に子供たちが「ローソク出せー」と家を回ってお菓子をもらう風習だ。少なくとも私の育った札幌中央区界隈では初耳である。お母さんが旭川のコールセンターに勤めているところも、地方における産業構造と雇用の関係が読み取ることができる。
道民でもまだまだ知らない北海道がたくさんあるぞ。
3月頃に行われた「ホッカイドウ学的マンガ夜話」で、北海道はマンガ家を多数輩出していることが話題に挙がったが、その理由については結論らしい結論は出なかった。おそらく、北海道の空気、大地、気候、風景が人間にもたらすインスピレーションは、なにか神秘的なアート感覚を呼び覚ます不思議な力があるのだと思う。それがDNAの奥底に眠っている原始の感覚や本能を刺激してアートの創作意欲と結びついて結晶するのではないか。今回収録されている作品を読んで、厳しい冬の自然が猛威をふるっている描写の多さから、そんなことを考えた、モンキーパンチがエッセーで書いているように、『ルパン三世』は北海道だから創作できた。北海道を離れても、在住しても、故郷がマンガ家の作品にもたらす「場所の力」は計り知れない。
今回登場しなかった北海道出身マンガ家たちが独自の視点とスタイルで描く北海道を、もっと読んでみたいと思う。第2弾の刊行に心から期待したい。