ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその268-ヘッドライト

2017年11月18日 | ヨーロッパ映画
薄幸の女性....よく映画では扱われる設定である。
男の勝手に翻弄され、やがて堕ちてゆく女性。見るたびに哀愁を感じてしまう。
本日紹介する映画は「ヘッドライト」幸薄い男女二人の悲恋映画である。
ストーリーを紹介しておこう。

ジャンはトラック運転手を生業としている。ある日ジャンは行きつけの酒場兼宿のウエイトレス、クロチルドを仕事のついでにトラックに乗せ、彼女の希望した行き先まで送り届けた。
それ以来、ジャンとクロチルドはお互い愛し合うようになった。
しかし、ジャンには女房と娘を筆頭に3人の子供がいた。二人の恋愛は許されるものではなかった。
ある日ジャンは、会社で騒ぎを起こし、会社を解雇される。
クロチルドはその頃、ジャンの子供をみごもっていた。
ジャンはあることから、クロチルドとの関係、妊娠を家族に知られる。
彼は「自分がでてゆくべきだ」と言い残し、家庭をあとにする。
ジャンはクロチルドと同棲を始める決心をし、クロチルドに会いに行くのだが......

なんとも全体的に暗い映画である。でも、それが独特で良い。
映画後半、瀕死のクロチルドが、乗せられたジャンのトラックの運転席を見回すシーンがある。車の揺れる鍵から、えたいの分からないような先住民の顔のようなアクセサリー。何度も何度も彼女はそれを規則的に身まわす。
ここに彼女の言いようの無い「不安感」「鬱屈さ」がとても上手く表現されている。
そしてラスト。クロチルドは不幸にも死んでしまう。
一方ジャンは捨て去った家庭に戻り、何事もなかったように毎日トラックの運転手として働いている。
クロチルドに死を運び、家庭には裏切りを運んだジャンは、これからクロチルドの思いを背負いながら生きて行くのだろうか。
前述のとおり、暗い映画ではあるが、観賞する価値は十分にある1本である。
是非観ることをお勧めする。

1956年、フランス製作、1956年日本公開、モノクロ、101分、監督:アンリ・ヴェルヌイユ