ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその8-野良犬

2012年01月26日 | 邦画
初期の傑作の一本。

皆様は黒澤明の作品と言うと何を思い浮かべるだろう。
七人の侍。
大半の方はそう思われるのではないだろうか。
確かに七人の侍は傑作である。
各登場人物のキャラクターの設定の妙、ダイナミックな合戦のシークエンス、どれをとっても文句のないできである。
事実日本映画のオールタイムベストを選ぶとき必ずと言って良いほどこの作品は第一位に挙げられる。
しかし黒澤映画で忘れてはいけないものがある。
それが「野良犬」である。
黒澤の初期の作品としては「酔いどれ天使」がベストに挙げられることが多い。
だがあえて私は「野良犬」をベストに挙げたい。
物語は戦争直後の東京を舞台にして展開される。
内容は若手の刑事村上(三船敏郎)が射撃練習の帰りのバスの中でピストルを盗まれる。
彼はねばりと努力でピストルを貸し借りする組織を突き止めることに成功する。
しかしその組織の所有するピストルの中に村上のピストルは無かった。
その後村上は佐藤(志村喬)と言う刑事と共同でピストルの行方を探す。
その矢先ついに村上のピストルを使った強盗事件が発生してしまう。
この映画の創りも隙のないものである、文句のつけようがない。
特に物語前半約20分程におよぶ台詞がほとんどなく、音楽と映像で村上の捜査過程を表現するシークエンスはとても感心させられる。
物語後半の犯人の居場所を突き止めるがほんの些細なことから犯人を逃してしまうシークエンスも見事な創り方である。
作品全体を通じて無駄の無い実にソリッドな創りは傑作として挙げられるには十分であろう。
一説には「ジュールシュダッシン」の「裸の街」をモチーフにされたと言われているが「裸の街」とは明らかにテイストが異なる。
七人の侍などで黒澤映画に興味を持っている方は是非観ることをお勧めする。
1949年公開