くろうさぎ

ソーイングにパン作り、日常のことや 大人になって始めたピアノのこと♪ そして、小説もちょこっと書いてます・・・。

5月の話・・・「今日は完敗・・・。」

2009-05-14 19:50:57 | 小説
「あ~・・・よく寝た・・・。」
あくびをしながら、大きく伸びをして、あたしは勢いよく飛び起きた。

5月になって、あいつも新しい職場にも慣れただろうし、となると、仕事に追われて部屋も散らかってきてんじゃないかな?今日はちょうど何の予定もないし、昨夜は早寝したから、すっきり目覚めたし、どれ、掃除にでも行ってやるか・・・。そう思ったら、じっとしてらんなくなって、早々と家事をすませて、あたしは部屋を後にした。

だけど・・・。
あいつの部屋の前まで来たら、何だか急に、インターホンを押すのをためらってしまう。
大体、相手の都合も聞かずに、いきなり来るなんて、まったく押しかけ女房だよねぇ・・・。
こんなことなら、電話でもかけてから来れば良かった・・・。
せっかくの休みだもん・・・。ゆっくりしたいかもしれないし、第一、誰かと先約あるかもしれないし・・・。
やだ、あたしってば、今更、何を意識してんだろ・・・?

あれこれ、考えてると、いきなり目の前のドアが開いた。
「きゃっ・・・!!」
びっくりして不覚にも、らしからぬ悲鳴を上げてしまう。
「さっきから、人の部屋の前で、何してんだよ。」
人の気も知らず、あいつは能天気な顔して、そう言った。
「さっさと入れよ。ブツブツ独り言なんて、まわりの人に変に思われるだろ?」
しまった・・・!!全部、聞かれてたか・・・。
思わず、赤面・・・。あたし、何やってんだろ?

「うん・・・。」
部屋に入ったものの、微妙に気まずい雰囲気だ。
「どうせ、俺の部屋が汚いだろうからって、いそいそと掃除しに来たんだろ?」
悪戯っぽい眼をして、あいつが言う。
やばい・・・。完全、見抜かれてる。あたしの思考回路丸見えじゃんか・・・。
「そんなんじゃ、ないけど・・・。」
取り繕ってはみたものの、繕いきれない。
「俺だって、いつまでもガキじゃないんだから、部屋くらい掃除できんだよ!」
「そっかぁ・・・。」
何だか、肩透かしくらったみたい。

「いい天気だし、どっか行くか?」
「そうだね・・・。」
あ~、もう今日は完全あいつのペース!あたし、どうしちゃったんだよ~!!
「行きたいとこあんなら、言えよな。」
悔しいけど、優しく微笑んでるあいつ見てると、何か急に頼もしく思えてきて、眩しいな・・・。