Kポアイドルで妄想BL小説書いてみる@すうぇん

自称ダメ人間の最高峰が妄想を絞り出して書く微BL(*´◒`*)

iKON小説 [LOVE ME] 後編

2020年06月29日 | 1話完結小説
雨は休みの間中降り続き、月曜になってやっと青空がソウルの街に広がった。
ジナンはほぼ一日中、営業先を回り、最後の訪問先を出たのは、終業時間を過ぎた頃だった。
蒸し暑い重い空気が身体にまとわりついて来る。
カフェでアイスコーヒーをテイクアウトし、飲みながら部長に電話を掛ける。

「今、全件回り終わりました。今日はこのまま直帰しますね。ええ、お疲れ様でした。失礼します。」

ホッとしたと同時に、疲れが一気に押し寄せて来る。まだ月曜日だというのに・・・先が思いやられる、とジナンはため息をつく。
薬局の前を通りかかった時、店内から出て来た若い男とぶつかりそうになった。

「ああ、すみません。」

若者は何気にジナンの顔を見て、パッと表情を変えた。

「ああ、ジナン先輩でしたか。お疲れ様です。」
「おお・・・ドンヒョクか。」

薬局から出て来たのは、マーケティング部のキム・ドンヒョクだった。ジナンの属する営業部とは仕事上深く関わりがあるため、同期でなくても名前と顔はちゃんと一致しているのだ。

「今日は直帰ですか?」
「ああ。報告書は明日でいいや、と思って。この蒸し暑さで体力もたない。」
「ホントですよね。」
「お前は・・・?もう帰るの?薬買って、どっか具合でも悪いのか?」
「いやあ、僕じゃなくて同期のヤツが。風邪ひいて寝込んでるらしくって、今日も会社休んだらしいっす。心配になって電話したら、薬買って来いだのプリン食べたいだの甘えたこと言うから・・・。ホント、ク・ジュネのヤツ人使いが荒い。」
「ク・ジュネ?」

予想に反してジナンが大きな声で反応したので、ドンヒョクはびっくりして目を丸くした。

「え・・・・ええ・・・・何か?ジナン先輩知ってるんですか?システム開発部の俺の同期なんですけど。」
「ああ、知ってるよ。寝込んでる、って?」
「らしいです。熱高くて動けない、って。一応、熱冷ましと栄養ドリンクは用意したんですけど。」
「・・・俺が持って行こうか、家教えてもらえるかな。」
「えっ?ジナン先輩が?」
「俺の同期の・・・ユニョンとハンビンが休みの分フォローしてるだろうから、様子を伺ってみようかと思ってさ。」
「ああ、そうっすよね。じゃ、お言葉に甘えて・・・お願いしてもいいですか?」
「ああ。大丈夫だよ。あと何か頼まれた物ある?」
「プリンとか食う物はアイツの家の近所で買おうと思ってたんですけど。」
「OK。適当に買って行くよ。」
「じゃ・・・お願いします、助かります。」

人の良い笑顔を見せて、ドンヒョクが何度も頭を下げる。ジナンは、軽く手を上げて彼から受け取った薬局の袋を提げて歩きだした。

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ジュネの住まいは堂山という駅から歩いて5分程の場所にあるマンションだった。
地下鉄に乗り、やっとたどり着いた頃には日はとうに暮れていた。
どこからともなく聴こえるカラスの鳴き声が、日暮れの物哀しさを色濃くさせた。
5階でエレベーターを降り、少し緊張した面持ちでジナンは、呼び出しチャイムを押した。
2、3度押すと、しばらくして鍵が解除される音がして、ゆっくりとドアが開いた。

「ドンヒョクお前遅い・・・・。」

そこまで言いかけて、ジュネは玄関先に立っているのがジナンだと気付き、戸惑ったように黙り込んだ。

「熱あるんだって?ドンヒョクから薬受け取って持って来たんだけど。」
「何で・・・。」
「上がっていいか?寝てなきゃいけないだろ。」
「ああ、まあ・・・・・どうぞ・・・・。」

想定外の出来事に、ジュネは動揺している。それ以上に、夜になり熱が高くなっているのだろう、立っているのが辛い。
ジナンの話を聞くのも億劫だと言わんばかりにジュネは奥の寝室に入ってベッドに潜り込んだ。
ジナンは、とりあえず手際よくキッチンでタオルを氷水に浸して、寝室に入っていった。
黙々とジュネの額に冷たいタオルを押し当てるジナンを薄っすらと目を開けて見ていたジュネは、何か言いたかったがそれすら辛くてすぐ目を閉じた。

「熱・・・高そうだな・・・。薬、持って来るね。」

微かにジナンの声を聴いて、ジュネはその後安心したのか深い眠りに落ちて行った。

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キッチンで何か音がしているのに気付いてジュネが目を覚ましたのは、深夜の3時頃だった。少しだけ熱が引いたのか、身体が楽に感じる。
ゆっくりと身体を起こして、寝室を出ると、キッチンでジナンが料理をしているのが見えた。

「何やってんの・・・。」
「ああ、具合どうだ?お粥作ったから朝食べて薬ちゃんと飲めよ?」
「3時っすよ?今。」
「わかってるよ。俺も帰んなきゃ…明日も仕事だし。冷蔵庫に、スポーツ飲料と水と、プリンが何個か・・・あと少しだけスイカ冷やしてるから適当に食べな。」
「・・・・・・いや、待って、俺ドンヒョクに頼んだんだけど何でジナン先輩が来たのかまだ説明してもらってないけど・・・?」
「薬局の前でたまたま会ったんだ、ドンヒョクに。お前の話聞いて・・・・風邪だって言うから、ああ・・・・金曜日の夜雨に濡れたからかな、ってちょっと責任感じてさ。」
「何で・・・?」
「俺の方に傘傾けてたし、地下鉄の駅から家まで濡れたんだろうなとか思ったし・・・。」
「あれぐらいの雨で風邪引くなんて、俺病弱過ぎじゃん・・・。」
「風邪だから、って油断するなよ。病院行った方がいいかもね・・・。」
「あと1日休んだら多分・・・・復活すると思う。」
「だといいけど。」
「まさか看病してもらえるなんて思ってもみなかった・・・・。出来れば関わり持ちたくないと思われてるって・・・・。」
「具合悪いって知って、知らん顔出来ないよ。大した意味は無いけど・・・助けてやらなきゃって思った・・・それだけ。」
「先輩に意味なくても、俺にはある・・・・ような気がする。ハハ・・・。」
「帰るよ、そろそろ。」
「ああ・・・・うん・・・・。」
「・・・何か困ったことあったら、電話してくれ。」

ジナンはそう言って、小さなメモをテーブルの上に置いた。走り書きで携帯電話の番号が書いてある。
玄関で靴を履いたジナンの背中に、ジュネは声を掛けた。

「電話しますね。」
「・・・・ん、ああ。じゃあね。」

ジナンは振り返らずにそう答えて、玄関ドアを出て行った。ジュネは、椅子に腰掛け小さな紙きれを手にした。
さっきから高鳴っている胸の鼓動が、熱のせいじゃないことぐらいとっくに気付いていた。
こんな気持ちになるものなのか?相手は俺と同じ男なのに・・・?
ジュネはテーブルに突っ伏してしばらく動けなかった。

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2日欠勤して、ジュネは仕事に復帰した。2日の間に同僚がフォローし切れず溜まっていた仕事が山積みになっているのを、淡々と片付けて行きながらジュネはハンビンの姿をたまに目で追っている。
ジナンのことを考える時間が多くなっていると同時に、常に引っ掛かっているのがハンビンの存在だ。彼の本心が知りたい、と思っている。

「ハンビン先輩・・・ちょっといいすか。」

頭上から声を掛けられ、ハンビンは驚いたようにジュネを見上げた。

「・・・何?何かわからないとこでも?」
「仕事の話じゃないんで・・・・ここじゃちょっと。」
「え・・・何だよ・・・。」

訝し気にそう言ってハンビンは席を立った。いつも思うが、後輩とは思えない威圧感がジュネから出ているような気がして、後ろから付いて歩きながらハンビンは苦笑いしてしまう。
資料室に促された時には、殴られるんじゃないかとすら思えてしまう。
自分の方が先輩なのに、だ。
色々な想像を巡らせていたが、向かい合ったジュネは本当に真剣だった。

「何だ、こんなとこに来てまでする話、って。」
「先輩の本当の気持ちを知りたくて。」
「は?」
「ジナン先輩の事・・・散々振り続けてるんでしょ?これからもそうするつもりですか?」
「何でお前が気にするの?」
「断るんですか?」
「・・・・そりゃあ、アイツが諦めない限りは・・・。」
「付き合うつもりは無いんですよね?」
「そんな真顔で言うことか・・・・?ないよ、キム・ジナンは男だから。」
「わかりました。じゃ、俺が諦めさせますね、先輩の事。」
「はい?」
「俺の方を向かせればいい話でしょ。俺が、ジナン先輩の気持ちを奪います。俺のものにしてもいいですよね?」
「・・・・どうしたんだ、ジュネ。熱のせいか・・・?」
「完全復活してますよ、俺は。話は終わりました、先輩の気持ちを確認したかっただけなんで。後からやっぱり好きかも、とか言われたら殺意湧きますもんね。」
「お、おお・・・・頑張れ・・・・。」

何が何だかわからないまま、資料室に取り残されたハンビンは、5分程考えを巡らせていたが最終的に『何なの?』という台詞で締めくくって出て来た。

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『何か困ったことがあったら電話くれ。』

と彼に告げたことは覚えている。一度も電話が無いのは、『困ったこと』が無いからで、それなら喜ばしいことだ、と思ってやるのが普通だ。
しかしジナンは心のどこかで、何で電話して来ないんだ?という思いも捨てられなかった。熱が下がったとかお粥が美味かったとか何とでも内容は考えられる。
出勤していることは、ユニョンから聞いている。
溜まった仕事に追われて残業しまくっていることも聞いている。
ハンビンに、ジュネの様子を伺うのも違うし、そもそも何で俺がこんなにアイツのことを気に掛けないといけないんだ、という苛立ちすら生まれて来る。

同じようにジュネも、電話を掛けるタイミングを逃し、気に病んでいた。
お礼の一言でも伝えないと、ジナンが看病に来てくれなかったらこんなに早く仕事に復帰出来なかったかもしれない、と思う。
嫌がらせのように部長から課される無理難題を一つずつ片付けながら、気付けばジュネは2日も家に帰っていなかった。
ハンビンにあんな強気な宣言をしたものの、何一つ前に進めない自分が情けない。
ジナンが味わっている苦い想いを、自分も味わうのかと思うと急に怖気づいてしまう。

「ああ~、バカだ~やっぱ俺~・・・・・・。」

ジュネは独り言を唸るように口走ると、社内の自販機の横の長椅子に横たわった。
社内に残っている社員は恐らく数人だろう。
時計の針は、午後11時を回っていた。
真っ白い天井を眺めていると、やがて吸い込まれるように睡魔と闘う間もなく眠ってしまった。

頬に冷たいものを感じて、ジュネは飛び起きた。
だらしなく零れていた涎を慌てて袖口で拭うと、ジナンが缶ジュースを差し出して来た。

「んん、ああ・・・ジナン先輩・・・何でこんな時間に。」
「報告書と企画書にミスが見つかってね・・・。営業先から帰ったのが8時過ぎ。そこから報告書作り直してさっき企画書に移ったとこ・・・。やんなっちゃった。」

力なく笑ってジナンは長椅子の端の方に腰掛けた。くたびれた感じと、ぴょこんと一部撥ねた髪の毛が幼く見えてアンバランスだ。

「お前の方も大変なんだろ・・・。病み上がりなのにね・・・。」
「ああ、お礼の電話もしないで・・・ごめん・・・。」
「とりあえず元気になったみたいで良かったよ・・・。」
「おかげさまで。お粥めちゃめちゃ美味かったっす。」
「そう・・・?良かった。・・・じゃ、俺戻るよ・・・。」
「ちょ、ジナン先輩。」
「んん?」

ジュネに呼び止められてジナンは振り向いた。何故か、時間が止まった気がした。

「こんな時間に仕事してるのも俺達、何かの縁でしょ・・・?」
「・・・そう?」
「サウナ行きません?今から。」
「ああ、いいよ。」

何故か素直にそう返事出来た。ジナンは、不思議とジュネから距離を詰められることに嫌悪感を抱かなくなっていた。
2人連れ立って社外に出ると、少しだけ冷えた空気が心地よかった。

「今だから改めて聞かせろよ。」
「・・・・・え、何を?」
「あの夜・・・・ホテルで何したか、って。」
「記憶から消したいって言ったり聞かせろって言ったり、面倒くさい人っすね、アナタ。」
「裸だったのは・・・。」
「だから。言ったじゃん、ジナン先輩が風呂に入るって聞かなくて。泥酔してるから止めた方がいいって言ったら、お前も一緒に・・・って俺の服を脱がしたの。泡で滑って転びそうだったから、気を付けてちゃんと身体を洗ってあげましたよ。」
「はっ?」
「洗え、ってうるさかったから。とにかくうるさかったんです、マジ。ヤバい薬盛られてるな、と思ったんですけどまあ、風呂で赤ちゃんみたいに寝ちゃったんで、必死で身体拭いてベッドに運びました。それからは爆睡したんでしょ?俺も酒回って寝ちゃったんで知りませんけど・・・。」
「それで全部?」
「ですよ。」
「そうか・・・・。ある意味お前にはもう俺のダメな部分全部見せちゃってるんだなあ・・・。」
「ダメ人間の最高峰でしょ、あの夜のジナン先輩は。」
「お前の前でカッコつけても何の意味も無いってことか。」
「カッコつける気だったんですか?え?まさかずっとカッコつけてた?」
「・・・なわけないだろ。」

ジナンはそう言って軽く笑った。

「ハンビン先輩に、そういう姿見せたことあるんすか?」
「・・・・・・・ないよ。」
「裸、って意味じゃないですよ?」
「わかってるよ。ダメなとこだろ?」
「そうそう。・・・好きだから見せられないんですか?」
「よくわかんないけど・・・。アイツには荷が重そうだ、そういうのは。」
「俺にはいいんだ?」
「お前は元々完璧を求めてなさそうな気もするし。お前自身がどっか欠陥があるって言うか。」
「はあ?俺のどこが欠陥だってんすか。」
「さっき長椅子で涎垂らして寝てた姿は、完全に人間を捨ててた。面白くて俺しばらく笑ってたもん」
「人の事笑えないでしょ、アナタ。」
「お前に負けないぐらい俺も酷い。ハンビンは多分、あんな俺見たら引くんだよ。ま・・・もう既に引いているけどね。」
「そろそろ諦めません?」
「簡単じゃないんだよな・・・。」

ジナンは夜空を見上げる。ふと視線を下ろすとサウナの看板が煌びやかに映った。

「妥協して、って自分で言いたかないけど俺にしときません?」
「・・・・そうしようかな・・・。」
「え?」
「なんてね。簡単じゃない、ってのだから。」
「楽になればいいのに。俺結構打たれ強いから罵られても耐えますよ?口答えはしますけど、懐けば可愛くなります。」
「それって本気で口説いて来てんの?」
「逆にそれってハンビン先輩にいつも言われてる台詞なんですか?」

2人は顔を見合わせて思わず笑った。

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変わり映えのしない日常が、ものすごい速さで流されて行く。
気付けば梅雨らしい季節が過ぎて、真夏の強い日差しが外回りの営業職であるジナンを容赦なく照らす。
アイスコーヒーをカフェのテラスで飲んでいると、ジュネからメッセージが届いた。

『夜、飯行きません?』

サウナに行くような関係になり、ジュネとの距離は縮まったかのように思えたが、ジナンは一歩を踏み出せずにいる。気を使わない、親友のような関係が心地良くもあった。
ふと思えば、ハンビンのことを考える時間はほとんど無くなったし、社内で会っても一言二言言葉を交わすだけだ。以前のように胸が高鳴ることは無い。
叶うはずのない想いをただ意地で彼にぶつけていただけに過ぎないのかも、と今になれば思えた。

『いいよ。』

一言だけ、ジナンはメッセージを返した。ジュネが食事に誘って来る時は、大抵仕事の愚痴が溜まっている時だ。
彼のくだらない冗談で笑ったり、下ネタで盛り上がったり、職場の愚痴を黙って聞いてやるのは普通に楽しかった。生意気でカチンと来る時もあるけど、年下らしい甘え方をしてくるのは心地良かった。
ジナンは心のどこかで『好きだ。』という台詞を待っているのかもしれない。勢いで冗談のように口説いて来たあの時以来、ジュネはそのことに触れて来ない。
もちろんジナンからそんな話を持ち掛けるつもりも無かった。

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思ったより仕事が長引いてしまい、ジナンはシステム開発部のある階までジュネを迎えに行くことにした。最近は、残業することも少なくなっている、と聞いていた。
入口の擦りガラスのドアの影で、ジュネとハンビンが話しているのが見えて、ジナンは思わず立ち止まった。
他に人はいないのだろう、会話が廊下にまで筒抜けになっている。

「前にも聞きましたけどハンビン先輩。」
「何。」
「本当にいいですよね?ジナン先輩俺のものにしても。」
「まだ言ってるのかよ・・・。とっくにそうなってるのかと思ってた。ジナン最近あまり近づいて来ないし。」
「全然進展無しっすよ。いざとなったらダメなんですよね・・・・怖気づく、って言うか。」
「そうか・・・。」
「男同士だからなのか、異性に想いを打ち明けるより勇気がいるし、断られた時のダメージってデカいんですよね。断られて当然だ、って思えない俺もどうかしてんですけど。」

ジュネの声が苦悩しているのがわかる。

「俺は・・・アイツの気持ちに答えてやることの出来なかった男だから偉そうに言えないけど・・・ただ願うことは、ジナンが幸せであってくれたらいいな、ってことだけだ・・・。俺はそうしてやれないから、お前に託したいって思う・・・。ジナンを悲しませないでくれよ・・・?」

ハンビンの言葉が、ジナンの胸に重く響いた。言葉数が少ないハンビンから、直接聞くことの出来なかった本心。
彼が幸せを祈ってくれている、それだけで報われた気がした。

「すげえプレッシャーですけど・・・頑張ります、俺なりに。ああ、中2かよ、ってぐらいドキドキするんすけど・・・・。」
「お前の精神年齢は中2だろ。ちょうどいい具合に気持ち伝えられるよ。」
「・・・・!」

思わずジナンは廊下の隅で吹き出してしまい、慌てて口を手で塞いだ。
その気配に、ジュネとハンビンが不審に思い、ドアを開けて廊下に出て来た。目が合って、ジナンは気まずそうに笑った。

「仕事ちょっと長引いたから・・・ジュネどうしてるかと思って・・・。」

ハンビンは、ジュネに目配せをしてから、ジナンに『俺帰るから。』と肩をポンと叩いて告げて、エレベーターに乗り込んだ。
ジュネは、さっきの話を聞かれてたかどうか気になりながらも、明るく言った。

「俺も今さっき終わったとこなんで。」
「ごめん・・・さっきの話・・・・ちょっと聴こえて・・・。」
「あ・・・。聞いてたんだ・・・やっぱ。」
「聞き耳立ててたわけじゃないんだけど・・・。」
「単刀直入に言うよ。俺とちゃんと付き合って欲しいです。幸せに・・・出来るかどうか俺の度量でどうにかなるもんかわかんないですけど、アナタのこと真剣に、大事にしたいと思ってるから・・・。もうそろそろ・・・俺の方を向いてください。結構俺・・・限界なんで。」
「そろそろ・・・って言うけど・・・・結構前からお前の方向いてたつもりだったんだけど・・・。」
「え・・・。」
「幸せにして欲しいなんてお前任せにしない・・・。俺だってお前を幸せにする責任あるじゃん・・・。」
「・・・・え、じゃあ・・・。」
「今この瞬間から・・・俺達、恋人同士ってことだね。」
「本気でいいの・・・?」
「キスしたら満足か?」

ジナンは微笑んで、ジュネの首に手を回した。少し背伸びをするようにして、軽く唇を合わせる。意外にひんやりとしたキスだった。
唇を離したジュネは、エレベーターの横の非常口のドアを開け、非常階段へとジナンを押し込んだ。そして、少し強引なぐらいに身体を抱き寄せ、唇を寄せた。薄暗い空間は、2人の気持ちを昂らせるに十分過ぎる場所だった。

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カーテンを閉め忘れている大きな窓から、朝の光が差し込んできた。
青白い光がベッドの上の2人を浮かび上がらせた。
ジナンの自宅のダブルベッドに、2人は身体を寄せて眠っている。ジュネの逞しい腕が、ジナンの小柄だが厚みのある身体を抱き締めていた。
薄っすらと目を開けて、ジナンは窮屈そうに身を捩った。心地の良い疲労感で、動きたくない気分だ。

「ジュネ・・・。起きなきゃ・・・。」
「ううん・・・。もう今日は休みましょうよ。」
「何言ってんだよ、一応俺ら社会人だよ。」
「こんな幸せな時間・・・。」

ジュネはくぐもった声でそう呟きながら、ジナンの項に顔を埋めた。すっかり馴染んだ香水の匂い。きっと自分の身体にも染み付いただろうと思うと、ますます愛おしくなる。
項にキスを落としながら、ジュネはもうすっかり目覚めてしまっていた。
ただ出勤する気には到底なれない。

「シャワー浴びて出勤するにしても・・・まだ時間あるしなあ。」

ジュネはそう言いながら、ジナンの柔らかい身体を撫で始めた。昨夜、夢中になった行為が脳裏に蘇る。見たこともなかったジナンの表情を、何度も堪能出来た。
ジナンは何も言わずに身体の向きを変え、ジュネにふんわりとしがみ付いて来る。
同意した瞬間だとジュネは察した。
男の割には色白のジナンの肌に、ジュネは何カ所もキスを落とす。そうして彼の反応を見るのが楽しかった。

「朝っぱらからこんなこと・・・。」
「目の前にあるんだもん、俺の御馳走。」
「仕事になんないよ・・・俺。」
「加減はしますよ。」

ジュネはそう言って微笑んだ。加減など出来るはずないと、お互いわかっていた。
どちらからともなく唇を重ね合って、身体もぴったりと密着させる。朝の光の中で、昨夜のような濃厚な時間がまた訪れるのかと思うと、ジナンの全身は熱くなる一方だった。

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「何だよ、正の字もう増えないのかよお。」

心底残念そうに、ジウォンが嘆く。1人で訪れたハンビンから、ジナンの話を聞いたのだ。

「お前がいつまで経っても口説かれてくれないから、他所の男に行ったか。」
「俺の職場の後輩なんだけどね・・・。」
「身近なとこで済ますんだな。」
「そういうわけじゃないと思うけど。」
「安心したのか?もうしつこく口説かれなくて済むから。」
「ホッとしたのもあるし、若干寂しいのもあるし。正直今は、両方から惚気話聞くのにうんざり、って感じかな。」
「惚気話か。興味深いな。ジナンさんに今度恋人連れて来いって伝えてよ。」
「ああ、伝えるよ。」

ハンビンは、少し微笑むとグラスの中のビールを一気に飲み干した。いつもより苦い味がした。
メニュー板の『正』の字を、改めて眺める。
俺とジナンの歴史・・・って感じかな。
ハンビンはふっと笑って俯いた。
ジナン・・・お前が幸せになってくれて良かったよ・・・。
ハンビンは黒板のその文字を、携帯電話で撮影した。そして、ジナンにメッセージと共に送信した。

『お前がバーで俺を口説いた回数、マスターが数えてた。これも俺にとっては大事な思い出だから残しておいてもらうよ。この数を超えるぐらい毎日ジュネに好きだって伝えてやれよ。』

しばらくして、ジナンから返信があった。

『キム・ジウォンの悪趣味。でも俺にとっても思い出だからね。後悔は1つも無いよ。俺は幸せ見つけたから、お前のいい知らせも待ってるよ。』

メッセージに添えられた写真には、ジュネと2人で笑っている姿があった。
ハンビンは、店を出ると夜空を見上げた。丸い月が静かに街を見下ろしていて、夜風が心地良く吹いている。
大きく伸びをして空気を吸い込んでから、ハンビンはゆっくりと路地を歩きだした。

                       THE END

★後編最後まで読んで下さり感謝してます。拍手ボタン押して頂けると嬉しいです。拍手、メッセージで応援よろしくお願いします(^^)/

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《作者後記》

ONF以来の(笑)前後編モノ。
本日丸1日潰しました。家事もろくすっぽせず、ずっとPCに齧りついておりました。
こんな日もある。(休みの日は外に出ない、は通常運転です。)
ずっと書きたいと思っていたiKON小説。やっと書きました。
以前に1話完結で書いて、気付いたらハンビンさん脱退して。
それでもやっぱりハンビンさんのいるiKONの形をどうにか残したくて、お話にしました。
個人的にジュネ×ジナンのジナンフェと呼ばれるCPが好物です。
iKONは、ヤンチャな男子感の強いグループなのでスキンシップはそんなにあからさまではないのですが、127のテイルさんにも見受けられる小柄な故の女子っぽさが漏れるジナンさん(最年長)と長身で年下のジュネという組み合わせの妙。



ご存じない方のために。笑
動画お借りしました。作成者様素敵な動画ありがとうございます。
こんな感じの2人です。94年生まれのジナンさんと97年生まれ老け顔のジュネ。
あんまイチャこかない感じもしますが、ジナンさんが他のメンバと仲良くしてる時に、明らかに顔に出てるジュネの動画とかあって結構面白い2人ですよ。

最近洋楽貼ってないですよね。
今回は、珍しく邦楽を紹介します。
SIRUP(シラップ)というアーティストさんなんですが。
今、一番よく聴いています。



けだるい感じが日本人離れしてるっていうか、洋楽っぽいですよね。





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5 コメント

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Unknown (doa)
2020-07-02 21:08:30
すうぇん様、iKON小説書いてくださり、ありがとうございます!!
ジュネジナ好きですが、私的にユニョビンやユニョジナがだいすきです。
ですけど、すうぇん様のジュネジナは良かったです。ハンビン君とジユネが意外に大人で、最初はハンビンがジナンを奪うとおもってまさした。少し残念…。
サラリーマンってことに、萌えます。
ありがとうございます。
Unknown (ミカリン)
2020-07-02 22:06:32
なんかいいですねー🎶たまに短編!!
凄い美味しいコース料理食べた気分です!
iKONはもち名前も知ってるし歌とかも聞いた事ありますがそんなに詳しくないけど、すうぇんさんが貼ってくれた動画見てホッコリしたであります(^_^)/~~

えっと。。。ジソプさん話していい?
なんかセクシーに見えてきましたあのひと!!
売れる理由分かりました!

最近私気づいたんですが。。。目の細い人好きかも。。。

ユチョン←そんなに大きくない
ヨンファ←そんなに大きくない
イ・ジュン←細い
レオ様←そんなに大きくない
今までご報告の俳優人←まとめるな(笑)だいたい細い

って事で、現在マンションの水道が貯水槽の故障らしく断水中でコインランドリーでのんびりコメントスマホで入力しました!ハイボール飲みながらなんか素敵な時間過ごさせて頂きました!←断水なのに前向き(^_^)/~~
長編の恐怖。笑 (すうぇん@作者)
2020-07-04 19:03:44

doaさん

初めまして、でしょうか。←違ってたらゴメンナサイ。汗
コメントありがとうございます。
iKON小説楽しんで頂けたようで良かったです。

好きなCPを見るに、ユニョンさんがお好きなのでしょうか。
組み合わせがなかなかマニアックな感じで(笑)、まだ見ぬ世界が色々あるんだなあ、と実感です。
私、結構な勢いで身長差フェチなもんで(笑)どうしてもそのグループの身長差があるメンバ同士のイチャつきに目が行っちゃうんですよねえ~。
でも13センチ妖精だと思ってたジナンさんが、最新の(?)済州での上裸写真をSNSで上げてたのを見て驚愕!ガチムチに鍛えてるではないかっ!
いや・・・彼は元々筋肉があったのか…無かったのか…とにかく衝撃的でした。

ハンビンさんがおとなしくジナンくんをジュネに渡したのが意外でしたか?いやあ、奪わせても良かったんですけど、あくまで1話完結で行こうと思ってましたので、長くなっちゃうことへの恐怖心が尋常じゃないんです。
もう内心どうしようか、って思ってる作品がわんさかじゃないですか、うちの小説部屋・・・。もうこれ以上やらかしたくありませんでした(笑)。
iKONとリーマン姿って一番結びつかないですよね。彼らヤンチャな水商売系ですからね。
でもみんなバランスのいいスタイルなのでスーツ姿意外とイケるんじゃないかなあと思ってます

時間が戻せるなら・・・ (すうぇん@作者)
2020-07-04 19:19:20

ミカリンさん

コメントありがとうございます。
短編・・・というか1話完結ってすっきりしますね。
書く方もだし、読まれる方も何か結末が早くわかるからモヤモヤしないだろうし。
作者はどんだけモヤモヤさせたら気が済むんだ、ってぐらい長編(?)を書く傾向があるので。
・・・ま、更新が遅いだけ、っていう声も。
てか、モネク小説『短編』って付いてるんですけど(笑)、短編の意味完全に私はき違えた感がありますね。
書きだした当初は多分5話ぐらいで終わる気だったんでしょう・・・・。←遠い目

iKONはビジュアル的に結構好き嫌い分かれるグループだとは思うんですけど、お綺麗なグループよりはワイルドで男男してますね。
その中でジナン君が小さいのでどうしても可愛さが目立ってしまうんですけど・・・
美味しいコース料理だなんて恐縮ですが、デザートとしてどんどんiKON動画見てみてください(笑)。結構おバカで可愛いですよ。女装とか結構やってるし。←?

ジソプさん、どうぞどうぞいくらでも語ってくださいw
セクシーに見えて来た、って今までどんな風に見えてたんですかw めっちゃ色気ありますよ、あの万年困り顔で憂いを含みまくってるもんで。
手も注目ですよ、結構私手フェチかも~。←聞いてない

基本、Kポアイドルや韓国人俳優が好きな人って塩顔、しょうゆ顔好きじゃないですか?
私もうっすい顔好きなんです。一重瞼の・・・・・・
色白であんまりガリガリに細くない人。
なのに、ミカリンさんと好みが全然かぶっておりません(爆)。何でしょう、この七不思議。
あ、ヤンセジョン君ぐらいでしょうかw
・・・・てか、もうすぐ私の大好きなウドファンくん、ソガンジュンさんも入隊が近いと聞いて最近少々へこんでおります・・・。みんな行っちゃうんだなあ・・・
ハンソッキュおっぱで我慢我慢・・・・。あ、ウィジンさんも兵役済だった~

断水大変でしたね。もう直りましたよね?さすがに。
マンションは停電しても水道止まるみたいだし、いざという時に不便なことがありますね。うちもマンションなんですけど・・・
最近お天気もどんよりだし、うちもそろそろコインランドリーのお世話になるかもです。
太陽が恋しい
Unknown (ミカリン)
2020-07-04 22:23:59
休日でゆったりしながらお返事読ませて頂きました(^_^)/~~
水は無事に出るようになり、本当にお水の有り難さ感じてます。本当に災害などでライフライン止まる事ありますが、水だけでもこんなに大変なんて。。。もっと何か災害など起きた時は心を寄せたいと思いました!

ところで、ウィジンさんも何気に被ってると言っていいのでは(笑)
元気ですかねー
最近見てませんよねー
たまーにInstagramであの愛くるしいお顔をあげてきてくれるんですが。。。ちょい加工してるであろうと思われ年寄り感全く感じません!(笑)
まるで20代前半に見えます!
機会がありましたら、是非ご覧になってください(^-^)

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