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広州地鉄4号線~地上区間を走るリニア地下鉄

2012-08-19 | 鉄道[中華人民共和国]

先日「MAKIKYUのページ」では、中国・広州を走る新交通システム「珠光新城旅客自動輸送系統(APM)」に関して取り上げましたが、広州では中国の他都市と同様に、ここ数年で市内を運行する軌道交通の新路線開業や路線延伸が続出しています。

MAKIKYUは6年前にも広州を訪問した事があり、その当時に運行していた地鉄各路線・区間は一通り乗車していたのですが、その後開業した新路線・区間が余りに多過ぎ、限られた日程で全ては…という状況でしたので、広州を初めて訪問して地鉄各路線への乗車を堪能したいともなれば、各方面に伸びる路線の何処から乗るのが…と迷われるかと思います。

その様な方に、MAKIKYUが個人的におススメと感じるのは、広州市の南西方面を走る地鉄4号線で、この路線は中国初のリニア地下鉄としても知られています。

現在中国のリニア地下鉄は、この4号線と後に開業した広州地鉄5号線の2路線のみで、中国の他都市では乗車できないリニア地下鉄と言う点でも注目の存在で、4・5号線の車両は路線毎に装いが大きく異なります。


とはいえ車両自体はほぼ同型と見受けられ、日本の地下鉄ではありえない非貫通車になっている事に加え、第3軌条集電用の集電靴を台車に装備している車両にも関わらず、パンタグラフも装備しているのは非常に特徴的です。

リニア地下鉄というと、小柄な車両が活躍する印象が強く、23m級の5扉車が活躍する路線もある広州では、4・5号線の車両は小柄な部類に入りますが、それでも3扉18m級の車体は、車内に足を踏み入れると窮屈な印象が否めない日本のリニア地下鉄に比べると大柄で、ゆったりとした印象を受けます。


車内の座席が中国では多数派のプラスチック製ではなく、ステンレス製となっており、他路線と共に香港の影響を受けている様にも感じられ、そこそこ大柄な車体でも荷棚を装備していないのも、中国ではごく当り前の仕様です。


またMAKIKYUが広州地鉄の中でも、4号線がおススメと感じる理由として、地鉄は地下を走る路線・区間が多く、中には全線地下でホームドア完備、車窓も楽しめず写真撮影も…という路線もしばしば存在する中で、郊外の地上区間が長く、南方に来た事を実感させられる車窓を存分に堪能できる事が挙げられます。
(もう1つのリニア地下鉄となっている5号線も、一応地上区間が存在する様ですが、大半が地下区間となっている様で、MAKIKYUが一度一部区間を乗車した際は地下区間のみの乗車でした)

日本のリニア地下鉄は、横浜市営グリーンラインで一部に地上区間が存在する以外は、営業線では専ら地下区間のみを走る路線で、構造上郊外を走る鉄道との相互直通運転も当然不可能ですので、東京都内でラケット状の路線を展開する都営大江戸線を除くと、路線長も比較的短い路線ばかりです。


そのためリニア地下鉄が郊外で地上を30分以上も走るのは、なかなか興味深いもの(4号線の路線長は40kmを越えており、その半分以上は地上区間です)で、中国の地下鉄車両は前面展望が望めない車両も数多く走る中で、一応前面展望が楽しめるという点も注目です。

この4号線の終点・金州(Jinzhou)近くは、まだこれから開発が進むと見込まれる郊外の光景が広がっており、また再び4号線に乗車する機会があれば、その際にどれだけの変貌を遂げているのか…とも感じます。

広州に足を伸ばす外国人、それも特に観光となると、この様な所に足を伸ばす機会は少ないかと思いますので、土地の日常を垣間見るという点でも4号線乗車はおススメで、広州を訪問する機会がありましたら、是非乗車してみては如何でしょうか?


珠光新城旅客自動輸送系統(APM)~全線地下区間の新交通システム

2012-08-11 | 鉄道[中華人民共和国]

先日「MAKIKYUのページ」では、韓国・議政府(Uijeongbu)市で開業したばかりの「議政府軽電鉄」に関して取り上げましたが、先月MAKIKYUが韓国~中国へ足を運んだ際には、他に珠光新城旅客自動輸送系統(APM)と呼ばれる新交通システムにも初めて乗車する機会がありました。
(先月の旅行での新交通システム乗車は、この他に神戸新交通の「ポートライナー」にも乗車しているのですが…)

珠光新城旅客自動輸送系統は、英文名がZhujiang New Town Automated People Mover Systemとなっており、この頭文字を取ってAPMとも呼ばれていますが、中国の大陸本土では現在他に類を見ない新交通システムの営業路線となっているのも大きな特徴です。

APMの運行している区間は、大陸本土南部にある広東省の省都・広州(Guangzhou)市の中心部、林和西(Linhexi)駅~赤崗塔(Chigang Pagoda)駅までの約4km、全線が地下区間になっています。

林和西站は広州東站(香港行列車や、深セン行城際列車が多数発着する駅です)から地鉄1駅、その気になれば広州東站から徒歩でも移動出来る所に位置しており、赤崗塔站は広州塔の目の前に位置しており、両端の駅で地鉄3号線に接続しています。

路線は地鉄3号線に並行しているといっても過言ではなく、専ら港湾地区や郊外のフィーダー路線として運行する交通機関と言う印象が強い新交通システムにしては、意外な路線設定と言う気がしますが、林和西~赤崗塔間で地鉄3号線は途中に2駅しかない所に、途中駅が7駅も設けられているために、駅間はかなり短くなっています。

運営事業者は市内で地鉄を運営する広州地鉄で、市内・近郊の交通機関で通用するICカード「羊城通」も通用しますが、林和西・赤崗塔両站で地鉄3号線から乗り換える場合でも、一旦改札口を出場しての乗換となる上に、通し運賃ではなく別途運賃(APM1乗車2元均一)となっている点は、運賃制度上は地下鉄と同様の取り扱いで運行している日本の大阪(ニュートラム)や、韓国の釜山(4号線)などとは異なりますので要注意です。


このAPMは全線地下区間である上に、各駅もガラス貼りのホームドア完備となっていますので、まともな写真を撮影する事は厳しく、せいぜい赤崗塔站停車中の車中から、奥の留置線に停車している車両をズームで撮影するのがせいぜいといった状況です。


車両は前面非貫通1枚窓で、1両のみでの運行も出来そうな雰囲気の車両を2両連結で運行しており、車両間の通り抜けは不可能な構造となっていますが、設備的にはもう1両連結して3両で運行する事も出来そうに見受けられ、旅客数の増加と共に増結される機会があるのか気になる所です。


車内に足を踏み入れると、比較的小型の車両で運行する新交通システムだけあって、両開き2ドアの客ドアがやたらと大きく感じられ、その割に座席は少なく、つり革ばかりで立席主体となった客室内は、短距離を運行する路線ならではの感があり、ロープウェイの搬機を連想させられます。

無人運転の新交通システムだけあって、当然ながら最前部の展望は抜群で、特に中国ではまだ物珍しい乗り物と言う事もあってか、この区画は常に乗客の姿が…という状況で、MAKIKYUも勿論この区画を選んで乗車したものでした。


またAPMは全線2元均一運賃を採用しており、乗車時に自動改札機から入場するだけで運賃収受が完了する事もあってか、下車時は感応式ゲートを通るだけになっているのも大きな特徴で、なかなかユニークなものと感じたものでした。

APMは全線地下区間で写真撮影や車窓を楽しむのには難がある事に加え、広州東站から中途半端に離れた所を起点としているのは、少々残念な気もしますが、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方も広州市を訪問する機会がありましたら、是非一度乗車してみては如何でしょうか?


中国高速鉄道(CRH)の概要

2012-07-28 | 鉄道[中華人民共和国]

今月MAKIKYUが中国へ足を運ぶ最大の動機となった中国高鉄(CRH)乗車ですが、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方の中には、中国へ足を運んだ事がない方や、中国へ足を運んだ事はあってもCRHの状況は…という方も居られるかと思いますので、如何に現段階におけるCRHの概要や、MAKIKYUが乗車した際の印象などを記したいと思います。
(中国在住の方や、CRHを幾度も利用している方には当り前過ぎる事かもしれませんが、ご了承下さい)

また中国鉄路関係のリンクサイトには、更に詳細な案内などが出ていますので、興味のある方は合わせてご覧頂くと共に、比較的最近刊行された「中国鉄道大全」という書籍(「MAKIKYUのページ」リンク先サイト管理人のborgen氏&はいらーある氏の共著です)にも記されていますので、こちらをご覧頂くのも良いかと思います。


・車両面

日本の新幹線タイプ(東北新幹線E2系タイプ=CRH2)をはじめ、ドイツICE3タイプ(CRH3/CRH380B)など大きく分けて5タイプが存在し、北京南や上海虹橋などの大ターミナルでは、様々な車両が肩を並べるのは魅力的です。

新幹線とICEが同じホームで並ぶ事などは、各車両の本家・日本やドイツでは考えられない事で、日本の新幹線の様な完全に独立した高速鉄道ではないだけに、既存客車列車とCRH2が肩を並べるシーンも一見の価値があります。

CRH各種は概ね白に青帯の装いとなっており、某島国の高速鉄道を意識している様にも感じられるものの、どの種類の車両にも似合う装いで、CRH2の装いは本家E2系よりも見栄えがするのでは…と感じる程で、CRHのロゴも個人的には好印象を受けます。

車両の出来栄えとしては、CRH2とCRH3/CRH380Bが双璧をなす感があり、一度ICE3に乗車してみたかったMAKIKYUとしては、SIEMENSの車両を大量導入し、念願を叶えてくれた中国鉄路に「謝謝!」

独自開発を大いに謳っているCRH380Aも、新幹線とICEの美味しい所を寄せ集めた雰囲気があってか、如何にも中国的な印象を受ける前面スタイルとは裏腹に、乗車した印象はまあまあという感があります。

アルストームのペンドリーノタイプ(CRH5・同種車両はイタリアなどで使用)は余り期待していなかったものの、思ったより良い車両と言う印象があり、酷寒地や低床ホームに対応している点でも有用な車両です。

ボンバルディア(CRH1)は様々な面で他の車両に比べて…という印象があり、高速鉄道車両の実績と言う点でもまだまだの車両ですので、今後の改良に期待したい所で、各車種共に8両編成か16両編成、或いは同種車両の8両2編成を併結した16両で運行しています。

独自開発を大いに謳っている中国オリジナル車両・CRH380A以外の各国で活躍している各車種も、本国で製造された車両はごく僅かで、大半は部品輸入や技術移転による中国の国内製造となっています。


・設備面

開業から日が浅い路線ばかりで、外国の技術に依存する部分も大きいとはいえ、設備面は全体的に新しい事もあってか、高速列車専用線を走る列車に乗車すれば、新幹線と遜色ないレベルという印象があります。

高速列車専用線だけでなく、従来の客車列車や貨物列車が走る線路を運行する列車や、両者に跨って運行する列車も存在します。

また北京や上海、広州などの大都市では、既存ターミナル駅ではなく、CRH専用に新設・改装されたターミナル駅(北京南・上海虹橋・広州南など)を発着する列車が大半を占めており、これらの駅の規模の大きさも圧巻です。

路線長も既に1国の高速鉄道においては世界最長となっており、列車本数も1400本を越えるなど、短期間でここまでの高速鉄道網を造り上げたのは大したもので、北京~天津・上海~南京・広州~深セン間では、複線の高速列車専用線を2路線建設しているのも驚異的です。

ただ今後の更なる発展を見越した先行投資的意味合いも推測されるとはいえども、駅の規模が大き過ぎる上に、基本的に駅構内は従来通り一方通行で改札や出口の場所が限られていますので、乗車車両や利用駅によっては、乗下車の際に駅構内を歩く距離や移動時間だけでも馬鹿にならない有様で、移動だけでもかなり疲れます。

この点日本の新幹線は限られた設備をフルに活用し、多数の列車を捌いている事は大したものという感があり、駅構造も利用客本位に作られていると感じます。


・乗車券

全席指定席制となっており、一部列車では列車指定の無座(立席)券発売も行っているものの、自由席の設定はなく、列車番号が「G~次」「D~次」(「G~次」の方が格上ですが、運賃も割高に設定されています)、或いは「C~次」(「G~次」とほぼ同等:現在は北京南~天津方面のみ運行)となる列車がCRHです。
(その他の「T~次」(特快)、「K~次」(快速)、「~次」(列車番号の前にアルファベットなし:普快など)は、殆どが客車列車での運行となる一般列車です)

「G~次」と「D~次」の運賃格差は、東海道・山陽新幹線の「のぞみ」と「こだま」の実勢価格(=「のぞみ」の回数券バラ売り価格と、「こだま」の「ぷらっとこだま」利用)以上に開く事もあり、その代わり「G~次」列車が多数走る区間における「D~次」列車では、長時間運行となる列車での大幅遅延リスクなどもあります。
(上海虹橋~南京南間を利用した場合、「G~次」の2等座では140元程度となりますが、「D~次」では100元で若干のお釣りが出ます)

また中国では日本や韓国とは異なり、改札近くで乗車券を購入できず、基本的には駅舎に隣接、或いは駅舎入口付近に設けられた乗車券売場で乗車券を購入してから駅構内に足を運ぶ事になります。
(街中にある乗車券発売所で購入する事も可能ですが、その場合は若干の手数料を要し、旅行会社に購入を依頼する場合、結構な金額の手数料がかかります)

そして乗車券を持って駅構内へ足を踏み入れると、金属探知機等による所持品チェックなどが行われ、列車毎に指定された改札から入場して乗車する事が殆ど、それも発車3分前位に検票(改札)締切となる仕組みは、一般列車と相変わらずで、JRやKORAIL(韓国鉄道)に乗り慣れた身としては、列車に乗るまでが随分面倒に感じます。

改札はCRH発着駅を中心に自動改札化が進み、薄緑色の乗車券は自動改札に対応していますが、ピンク色の乗車券は自動改札に対応しておらず、係員対応となりますので要注意です。

おまけに最近、ダフ屋による転売などを防ぐために乗車券が実名制(要身分証明書・外国人の場合はパスポートを提示し、氏名は印字されずにパスポート番号が乗車券に印字)となり、乗車券購入時に提示が必須となっている上に、検票の際にも本人確認で再度身分証拝見となる事もあります。

乗車券売り場の窓口も大勢の旅客が列を作り、購入まで結構な時間を要する事もしばしばで、基本的に中国語以外はまず通じません。
(北京駅や上海駅などの主要駅では、英語対応窓口が設けられているものの、日本語対応を期待する事は絶望的で、中国語会話が出来ない場合、乗車日や乗車区間・列車番号や乗車車両を記したメモを、係員に手渡すのが最も妥当な方法かと思います)

一部駅に設置された自動券売機も、ICカードになっている人民身分証が必須で、観光で訪れた非居住外国人が利用できないのは痛手です。
(この機械は乗車券購入だけでなく、空席照会にも活用でき、この機会で空席のある列車を見つけてから窓口へ足を運べば、長い行列に並んでようやく自分の番が訪れ、乗車列車を伝えたら「没有」と言われて追い返されるリスクが軽減できるメリットはあるのですが…)

CRHは一般列車に比べて運賃が割高(それでも2等座(普通車相当)であれば、日本のJR普通運賃より割安です)な上に、CRH運行区間では列車本数がそこそこ確保されている事が多く、乗車前日や当日でも空席のある列車が多数存在しますので、CRH運行開始前の中国鉄路の状況を知る身としては、中国の列車にしては随分乗車券が買い易い印象があります。
(長距離寝台列車などは、乗車券売場にある乗車券発売状況を示す電光表示で、発売開始当日でも寝台車は「無」のオンパレードになっている事が当り前の状況で、当日の列車などは硬座の無座すら「無」になっている事もあります)

CRHがなければ、今回の旅行自体が成立しなかったと感じる程で、中国鉄路も随分便利で快適になったと感じますが、それでも日本の新幹線の様に思い立ったら「すぐ買ってすぐ乗れる」状況ではありません。

最高速度こそCRHの方が上ですが、乗り易さ・正確さの面では、日本の新幹線には遠く及ばない印象があり、ハード面で幾ら最先端の技術や設備を導入しても、それだけでは便利な高速鉄道とは言えず、ソフト面での改善が今後の課題と感じます。


・座席

新幹線タイプ(CRH2)は、座席はおろかモケットまでE2系そのものを採用しており、2等座では座面スライド機能も装備しています。

他の車両では座面スライド機能こそないものの、CRH2の座席は評判が良好で、中国鉄路も気に入ったのか、1等座・2等座共に他車種でも一部を除き、ほぼ同レベルの回転式リクライニングシートを装備しています。

そのため日本の新幹線やJR在来線特急と遜色ないレベルと感じる車両が大半で、ほぼフランスTGVそのものの車両を走らせ、一般席(普通車相当)では狭い上に、方向転換不能な座席で不評を買っているKORAILのKTXと比べると、居住性の面ではCRHに軍配が上がります。

ただCRH2がE2系ベースである事や、輸送力確保が至上命題と言う事もあってか、CRH2やほぼ同等の座席を装備する他車種2等座のシートピッチは、東海道・山陽新幹線普通車よりはやや狭く感じます。

またMAKIKYUが広東省の広州~深センで乗車したボンバルディアタイプ(CRH1)は、硬座車より若干マシといった雰囲気の方向転換・リクライニング機能なし座席となっており、この車両の座席は他車両に比べて見劣りが否めません。
(見た限りでは、1等座でも他車種の2等座より見劣りする雰囲気でした)

各車両共に1等座(グリーン車相当)もあり、こちらは2+2列配置で2等座よりゆったりとしているものの、MAKIKYUが乗車した限りでは物凄く豪華な印象とは言い難く、新幹線N700系の山陽~九州新幹線直通用車両や、山陽新幹線の700系「レールスター」指定席車によりやや上等と感じる程度です。

とはいえ在来線区間を走る区間が長い列車も多く、「D~次」の列車番号が付与されているCRHの中では格下の列車(列車によっては、途中駅で「G~次」の列車に追い抜かれる事もあります)では、1等座と2等座の価格差が少ない列車・区間もあり、この場合は結構値頃感があります。


一部の列車には1等座の更に上を行く「商務座」も連結されており、MAKIKYUは乗車していないものの、こちらは東北新幹線E5系の「グランクラス」並みのシェルタイプ1+2人席が並んでいます。

物価の割にはかなり高額な事(日本の新幹線普通車利用に匹敵するレベルです)もあって、見た限りではガラガラ、乗りたい列車の2等座や1等座が満席の時や、資金に余裕があって極上の旅をしたい方などは、こちらに乗車されるのも悪くないかと思います。


・車内設備と食事情

車内設備は概ね日本の新幹線レベルといった印象があり、MAKIKYUが乗車した限りでは、各列車でワゴンによる車内販売も行っていましたが、日本と同様に飲料水などは市価より割高な価格設定です。

在来客車と同様に、CRHでも各車種共に給湯設備を備えている辺りは中国的で、お茶を飲んだり、方便面(カップラーメン)を食べる為に利用する乗客の姿をよく見かけます。

またブッフェや食堂などの設備を備えている辺りは、日本の新幹線と比べると羨ましい限りで、8両編成のCRH2でも、半室・テーブル4机と
カウンターを設けた空間が設けられています。

車内では弁当の販売も行っているものの、長距離客車列車の様に車内で調理した弁当を販売するのではなく、予め調製した弁当を積み込むか、レンジで加熱するタイプの弁当となっています。

販売価格も概ね25~40元程度(写真の弁当は35元)と、客層を見越してか長距離客車列車より割高に設定されており、列車の乗り心地だけでなく、車内の物販価格まで日本に近い印象があるものの、それでも結構弁当を買い求めている旅客の姿を見かけました。

またMAKIKYUは乗車機会がなかったものの、CRH1とCRH2の一部は、両先頭車を除いて寝台車(軟臥・2段ベッド)となっている編成も存在しており、以前温州南駅付近で発生した追突事故の際に損傷し、事故廃車となったCRH2はこのタイプです。

MAKIKYUが乗車した各列車の乗車記や、車両毎の詳細に関しては、追って別記事で取り上げたいと思います。


中国鉄路乗車記・D7095次(乗車日:2012年7月16日/CRH1・ボンバルディアタイプ)

2012-07-16 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は記事投稿日を列車乗車日に合わせた過去ログ投稿です)

7月にMAKIKYUが中国へ足を運んだ際には、様々な種類の高速列車(CRH)に乗車していますが、CRH5・CRH3・CRH380A・CRH2Aと主なタイプに一通り乗車し、最後まで残ったのがCRH1でした。

ボンバルディアはシーメンス・アルストームと並ぶ欧州系鉄道車両製造メーカーの御三家で、欧州などで多数の車両が活躍しています。

中国国内でも地鉄車両などは、シーメンスやアルストームと並び、様々な都市で活躍している姿を見る事ができ、MAKIKYUも幾つかの都市でボンバルディアと中国メーカーの合弁製造した車両に乗車した事があります。

しかしながら高速鉄道に関しては、シーメンス(ICE→CRH3)やアルストーム(TGV・ペンドリーノ→CRH5)と日本勢(新幹線・E2系→CRH2)が世界の主流を占めており、ボンバルディアはイマイチといった状況です。


その劣勢を取り戻すかの如く、既に他国で実績のある高速列車と共に、高速鉄道の急速な発展が見込まれる中華人民共和国の高速列車用に投入された車両がCRH1です。

CRH1は欧州の近郊型車両(それでも最高200km/h程度の設計ですので、標準軌とはいえども在来線規格の車両にしては上等です)をベースにしており、車体材質もステンレス製であるなど、他のCRHシリーズ各種と比べ、異色の存在と言えます。

近郊型の2ドア車をベースにしており、扉数を各車両1箇所に減らして、その分座席を増やした設計にしていますので、奇妙な雰囲気を受ける扉位置となっています。

ドア位置は元々近郊型気動車として導入されたものの、後にムグンファ号用に格上げ改造(座席交換など)と共に扉数削減(2扉→1扉)を行った韓国鉄道(KORAIL)の9501型都市通勤型ディーゼル動車・CDC→RDC化改造車を連想させられます。

MAKIKYUがこのCRH1に乗車したのは、CRH運行開始前から中国鉄路では屈指の高頻度運転区間となっている広州(広州東)→深圳間で、MAKIKYUが広東省を訪問し、同省の2大都市間を列車で移動するのは2回目です。

以前同区間を乗車した際には動力集中方式ながらも、プッシュプル式の電気機関車と客車の固定編成ながらも、CRH以外の中国鉄路では珍しい「電車(EMU)」扱いとなっている車両に乗車し、この車両は次々とトラブル続きで使い物にならない国産EMU(中華之星・中原之星など)を登場させては停運を繰り返してきた中国鉄路にしては珍しい、EMUの成功作と言われる車両でしたが、この車両はCRH台頭後、貴陽省方面のローカル列車に転用されています。

広深間では、この車両の後継として広州・広州東~深圳間を線増し、CRH1の頻発運転を行う他に、北京~天津間・上海~南京間と共に、もう一本高速鉄道線が敷設されています。

大都市間で高速鉄道を複数併設して建設・運行に供するのは、日本では考えられない事ですが、もう一方は広州南~深圳北間を運行しており、こちらの方が所要時間は短く、広州南では武漢方面などの高速鉄道にも接続・乗り入れも行っています。

とはいえ両都市のターミナル立地が郊外で不便、本数が限られる事もあり、こちらは主に深圳から遠方への旅客向け、広州東~深圳間は主に近距離旅客向けという感があります。

MAKIKYUが広州に滞在した際には、中心部に宿泊していた事もあり、深圳へ向かう列車に乗車する際には、本数も多い広州東駅へ向かい、同駅で乗車券を買い求めて乗車したものでした。

広州東駅では需要が旺盛な広深間列車専用窓口もあり、同区間列車でも相変わらず身分証(外国人はパスポート)の提示が必要であるなど、日韓程気軽に乗車券を買えるとは言い難いものの、広深間列車の本数は頻発している事もあり近郊列車感覚、当日の乗車直前に乗車券を買い求めた場合でも、2~3本後の列車への乗車は容易な状況です。

また乗車券も現在中国鉄路では一般的な青緑色・新幹線→CRH2の絵柄が描かれた磁気券ではなく、非磁気化券に良く似たピンク色ながらも、ICタグが埋め込まれた広深鉄路専用の乗車券が用いられているのも大きな特徴ですが、この区間だけわざわざ他に類を見ない乗車券を採用するメリットは一体どれだけあるのか気になる所です。

列車別改札や、発車時間が近づかないと駅台(ホーム)に入場できないシステムなども相変わらずで、ダイヤを見ると近郊列車感覚で乗れそうな区間にも関わらず…という気がします。

そして発車時間が近づき改札を開始、ホームへ向かうと既に列車は停車しており、近郊列車感覚で列車を頻発させている区間と言う事もあるのか、輸送需要の旺盛な区間にも関わらず列車は8両、設備的な余力なども踏まえると、列車両数を増やし、そろそろ広州・深圳両都市の交通カードに対応し、列車指定なしで乗れる都市鉄道化しても…と感じる程です。

列車に乗り込むと、MAKIKYUが乗車する2等軟座は3+2列、片持ち式のクロスシートが並んでおり、背もたれには若干の傾斜が付けられています。

座席下の空間は広く確保され、背面テーブルも付いているなど、一応優等列車の体裁は整えているものの、座席の方向転換は出来ず、リクライニング機能も装備していません。

CRH2などでお馴染みの回転式リクライニングシートとは比べ物にならない劣悪品、それどころか客車列車の軟座と比べても見劣りが否めない代物で、MAKIKYUが今までに乗車した高速鉄道車両の座席では最も劣悪と感じた韓国・KTXの一般室(普通車・2等座相当)で用いている座席の方がまだマシと感じた程です。
(KTX一般室の座席はフランスが太鼓判を押したTGVタイプで方向転換不可、半数は逆向きとなりシートピッチも狭い上に、リクライニング
も座面と共に背もたれが1段階前にせり出すタイプで、現地でも非常に不評です)

元が近郊列車用車両ベース、そして使用路線も所要1時間程度の近郊列車感覚とはいえ、広深鉄路は中国大陸本土では最も物価の高いエリアを走る事もあって、ただでさえ割高な高速列車(CRH)運賃よりも更に割高な運賃を設定していますので、割に合わない設備と言っても過言ではありません。
(それでも香港のKTTや東鉄頭等などに比べれば、支払った金額に見合う対価としてはまだマシかもしれませんが…)

また座席の出来栄えだけでなく、車両全体の出来栄えもイマイチという感があり、所詮近郊型車両ベースである事に加え、大窓の両脇に
ピンを設け、下ろす際にはこのピン(2箇所)に引っ掛ける事で半閉・全閉の2段階しか調節できない粗雑な構造のブラインドなども、ボンバルディアの高速鉄道車両製造実績が乏しい事も影響しているのかもしれませんが、非常に頂けない気がします。

外観デザインも決して格好良いとは言い難く、車両導入費用や運行コストなどの面で営業的メリットが存在するのかもしれませんが、MAKIKYUが乗車したCRHシリーズ動車組車両では、最悪のワースト車両と言わざるを得ない駄作車両と感じたものです。

MAKIKYUが乗車した際には、3人がけ逆向き座席の通路側と言う、非常に有り難くないポジションに加え、車内は常に混雑して立席客の姿を散見する状況だった事も災いしているかもしれませんが、一部では「服務員からお客様ではなく華蓄扱いされる」とも言われる客車硬座のボックス席よりは幾分マシとはいえ、広深間程度ならまだ許容範囲ながら、長時間乗車は避けたい車両と感じたものです。

新幹線→CRH2と乗り比べる事で、新幹線車両の良さを再認識するのには絶好の存在かと思いますし、日本人を含めた外国人の利用も比較的多い路線と見込まれますので、この車両に乗車した事で「中国の高速鉄道は所詮…」と言った印象を持たない様に願いたいものです。

出来る事ならこの車両はD~次(動車組列車)ではなく、短距離の空調普快など格下列車での運用に鞍替えさせるか、さもなければ動車組列車にも硬座運賃の設定を行い、他車両に比べて大幅に設備が劣る分、2等軟座→硬座への等級格下げを行うなど、設備格差に見合った運賃設定を行うなど、営業面での工夫を望みたいた感じてしまったものでした。


中国鉄路乗車記:D3027次(乗車日:2012年7月13日/CRH2A・新幹線E2系タイプ)

2012-07-13 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は記事投稿日を列車乗車日に合わせた過去ログ投稿です)

北京~武漢間で、硬座以外の直通列車乗車券が手配できなかった事もあり、南京南站乗り継ぎで高速列車を駆使して移動する事になった今回の旅行、列車遅延を見越し、乗継駅の南京南站で約2時間程度の余裕を確保していました。

しかし北京南~南京南間で乗車したG117次はほぼ定時運行、この心配は杞憂に終わりましたが、同区間でも運賃がやや安いD~次(
動車組列車)の場合は、優先順位が低く結構遅れる事もあり、日本の様に接続列車遅れの接続待ちはありませんので、ギリギリの乗り継ぎは避けるに越した事はありません。

空いた時間にはじっくりと南京南站の様子を観察すると共に、開業当初は南京南站にも達していなかった南京地鉄1号線が、更に南郊の中国薬科大学(CPU)まで延伸されており、列車待ちの空き時間を活用し、末端で地上区間もあるこの延伸区間乗車に出向きます。


地鉄でCPUまで往復し、南京南站へ戻るとD3027次の発車時間が近づいており、既に改札中と言う状況でした。


南京南站は途中駅ながらもホームが20番線を越える程あり、日韓の高速鉄道駅でこれだけの大きさを誇る駅はないだけに、CRHの凄まじさを実感させられます。

そしてホームに降りると、列車は既にホームに待機しており、CRH2Aには走り始めたばかりの2007年以来久々の乗車、そして列車に乗り込むと程なく発車となります。

列車は南京南站を出発すると、暫くは北京南から乗車してきたG117次で通った経路を折り返す格好となりますが、北京~上海間高速鉄道の線路と合肥・武漢方面の線路が並行する形で、南京南站からずっと複々線となっています。

長大な長江を跨ぐ区間は複線、その後分岐と言う形でない辺りは、随分設備的に贅沢で、将来の発展を見越して大々的な設備を造り上げていると感じます。

ちなみにD3027次は8両編成、車両は武漢鉄路局所属車両で、CRH2の中でも最も初期に導入され、日本の新幹線に最も近い仕様のCRH2Aで、D~次(動車組列車)はG~次(高速動車)とは異なり、1等座(グリーン車相当)と2等座(普通車相当)の価格差が小さい事もあり、瀋陽~北京間で乗車したD12次(CRH5)と同様に、少々奮発して1等座を利用したものでした。

南京南~漢口間は高速列車専用線ではなく、在来線区を高速運転するために、最高速度は200km/hに押さえられており、一般の客車列車や貨物列車と同じ線路を、フル規格新幹線車両で駆け抜けるのは、日本の新幹線に乗り慣れている身としては、新鮮に感じます。

在来線でも標準軌(軌道幅1435mm)で200km運転できるのは、改軌してもミニ新幹線用の小柄な在来線規格車両で、最高速度も在来線区間では130km/h程度の島国と比べると、羨ましい限りです。

在来線区間を走る事もあって、500km程度の南京南~漢口間を、途中駅の停車時間を含めて約4時間と、高速動車に比べると、随分遅い道程になりますが、その分車両の乗り心地を堪能するには絶好のチャンスです。

1等座と2等座の価格差は40元程度、日本の指定席料金(普通車)程度の金額にしかなりませんので、現地物価を考えると決して安い出費ではないものの、この程度の追加でE2系グリーン席を試せるのは絶好の機会とも言えます。


特にCRH2Aではせいぜいシートカバーに「和諧号」ロゴが印刷されている程度で、座席自体はおろか、1・2等座共にモケットまで全く同じ柄を使っており、2等座(写真)では座面スライド機能も装備しています。

ほぼ同グレードの座席を用いており、車内の構造などが大きく異なるCRHシリーズ他車両と比べ、一層「グリーン車」に乗車しているという雰囲気が堪能できます。

MAKIKYUは日本では運賃・料金が高い事もあって、E2系は普通車しか乗車した事がなく、E2系グリーン車の座席には大陸で初乗車という事になりましたが、乗車券購入時に6号車で指定されていたのは、乗車券を手にした時から少々気になっていたものでした。

というのも、E2系8両編成では7号車1両がグリーン車となっており、CRH2も確か同様の編成だったはず…と思っていたからで、実際にCRH2Aも過半数の編成は半室の食堂車が設置されている事を除くと、本家E2系と同様の編成になっています。

しかしCRH2は後に寝台車など様々な派生形が登場しているだけでなく、初期型のCRH2Aでも編成構成が異なる編成が混在しており、MAKIKYUがD3027次で乗車したCRH2Aは、6・7号車の2両が1等座になっていました。

しかしながら外見上は、7号車1両が1等座となっている編成と大差なく、6号車の窓割は大窓の真ん中に、ブラインド用レールが挟まる普通車タイプとなっており、この窓割に合わせて座席を設置しているために、前後の座席間隔は2等座(普通車)と同じ、定員も7号車より20名近く多いハズレ車両になっています。

そのため1等座で6号車の乗車券が発券されると、7号車に比べて見劣りが否めず、少々損した気分になりますが、それでも任意の車両・座席を選べるシステムはなく、料金的にも同一と言うのは如何にも中国的な話で、それどころか6号車は内装の壁面まで2等座と同じと言う有様でした。

 
それでも中国にしては短い8両と言う編成で、合肥辺りまでは列車自体が混雑しており、無座(立席)客も多数と言う有様では、1等座で座れるのはかなり上等な話で、新幹線グリーン車に乗車しているというよりは、山陽・九州新幹線直通N700系などの普通車指定席車両(横4列席)に乗車している様な気分でも、料金差やE2系の座席を堪能できるというメリットなどを考えれば、一度試乗する位なら…といった所です。

南京南から1時間程走ると、安徽省の省都・合肥に到着し、ここで結構な数の乗客が降りますので、合肥から乗り込む乗客も居るものの、車内は幾分空いてきます。


その後は列車はその後更に六安・金寨・麻城北に停車し、漢口へ向かいますが、赤土やレンガ造りの建物が散見される平野や、なだらかな丘陵地帯が延々と続く大陸の車窓は、日本とは異なる遠い異国に来た事を感じさせられます。


途中停車駅の麻城北は、複線の通過線+両側線に相対式ホームの新幹線途中駅スタイルとも言える駅で、ここではCRH2充当のD~次(動車組)列車同士の退避が行われ、D3027次列車は後続列車の通過待ちとなるために、暫くの間停車します。

列車内は一応全て禁煙となっており、喫煙人口の多い中国だけあって、この停車時間に車内からホームへ出て、喫煙する乗客の姿も多数見られる状況です。

MAKIKYUも乗車記念を兼ね、写真の撮影に出向きますが、相対式ホームの反対側ホームへ行こうとしたら、係員の制止指示が出てアウト!というのは如何にも中国的で、日韓であればこの程度の事は…と感じます。

麻城北を出発すると、現地時間でも既に19時頃(日本時間20時)だけあって、そろそろ外は暗くなり、車窓を楽しむのは…という状況に
なります。


丁度腹が減った事もあり、日本の新幹線では姿を消してしまった餐車(食堂車)へ出向き、カウンターで発売している車内販売の弁当を購入して夕食とします。

本格的な調理設備を備えていない事もあり、客車列車の食堂車の様に、車内で調製した弁当ではなく、長期保存可能(パッケージによると、常温遮光保存 保質期 90天)な弁当をレンジ加熱して提供するスタイルで、購入した弁当は35元、他にインスタントのカップスープ(5元)と合わせて40元でした。

この弁当を販売している係員は、日本語こそ全く使えないものの、簡単な英語(中国ではそれすら通じない事もザラです)が使える事もあり、弁当の注文などで漢字の筆談と共に簡単な英単語を並べ、意志の疎通をしていました。

MAKIKYUはまともに中国語を勉強した事もない有様で、単に漢字を並べているだけですので、一応それでもある程度意味は理解しながらも「Your Chinese is poor.」と言われてしまう始末で、この列車に日本人が乗車する事は?と尋ねると、「殆どない」との事でした。

中国の大陸本土を走る高速鉄道はおろか、わざわざ離島の高鉄に乗りに行く日本人もしばしば…という状況ですので、上海発着の比較的乗り易い列車にしては少々意外な気もしますが、乗っていても見た目では現地人と識別がつきにくく、食堂車を利用する頻度が余り高くない事も影響しているのかも…と感じたものです。
(一応この列車の始発となっている上海は、日本との間を直結するフェリーも発着する街で、東海道新幹線で活躍する新幹線車両をベースとした高鉄車両を走らせている離島などに比べれば、日本人にとっては遥かに足を運び易く、メジャーな都市と言う印象があり、高鉄に関しても同様と言う気がするのですが…)


肝心の弁当は、パッケージに「方便 美味 安全」などと書かれており、上海市内で調製したものですが、内容は白米や牛肉の煮込みなどのおかずとなっています。


衛生面での安全性は、街中で売っている弁当などよりずっと上と言う印象を受けたもので、ネット上でもこの弁当の評価に関しての情報が流れていますが、肝心の味は個人的にはまあまあといった印象を受けたものでした。

ただ中国の街中では、1回の食事で35~40元を支出するとなれば、結構良いモノが食べれる気がしますし、物凄く高級な弁当と言う印象ではない気がします。

そのため弁当の価格は「列車の乗り心地と同様に日本並み」と言っても過言ではなく、CRHに乗車する客層を見込んで強気の商売をしている印象がありますが、それでも結構この弁当を買い求める乗客の姿が見受けられたものでした。


この弁当を食べ終えて少しすると、暗闇の中に街明かりがボチボチと見え始め、まもなく終点の漢口站到着となりますが、一般の客車列車
も発着するドーム上屋根のホームに、新幹線型車両が発着する様は、システムを含めて日本スタイルそのままの在来路線とは独立した高速鉄道ではなく、新幹線型車両を独自の方法で活用する中国鉄路流運行スタイルを象徴している光景の様に思えたものです。

D3027次をはじめ、上海虹橋~南京南~合肥~漢口間などを運行するD~次(動車組)列車は多数運行しており、大半がCRH2Aでの運行となっていますので、初めての中国旅行で是非「新幹線車両」に乗りたいと考える方にもおススメです。

また数日後には上海から日帰りで南京へ出向き、その帰りにも武漢~上海虹橋間を運行するD~次列車を利用したものでした。

列車本数が頻発している上海~南京間(両都市共に発着駅が複数あります)でも、G~次列車(高速動車)に比べると停車駅が多く、最高速度が低い事もあってか、運賃はG~次列車に比べてかなり割安に設定されています。

安い事もあってか無座(立席)客が多く見られ、車内環境は若干…といった状況でしたが、設備的にはG~次列車と遜色なく、運賃格差も新幹線「のぞみ」と「こだま」の実勢価格(前者がバラ売り回数券やEX-IC割引・後者がぷらっとこだま利用など)を上回る程です。

そのためこの列車は上海~武漢間を移動するだけでなく、上海~南京間を少し安く高速鉄道で移動したい場合や、北京~武漢間を南京南乗り継ぎで移動する際などにも活用でき、色々な使い方が出来る有用な列車と感じたものです。

(その後12月末には北京~武漢間で高速鉄道が開業し、早くもこんな乗り方をする必要性が薄れているのは、著しい発展と共に次々と新線が開業する中国らしい話です)


中国鉄路乗車記:G117次(乗車日:2012年7月13日/CRH380A)

2012-07-13 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は列車乗車日を記事投稿日扱いとして、後日公開したものです)

MAKIKYUは7月に久々に中国を訪問した際には、出来れば北京到着後に列車で武漢へ抜け、その後武漢~広州間高速鉄道に乗車して華南へ向かい、その後華南から列車で上海周辺へ…という大まかな計画を立てており、ダメなら北京から上海まで、本数が多く、乗車券も買い易い高速列車で直接…と考えていました。

この計画だと北京~武漢と、華南~上海間の火車票(列車乗車券)手配が問題となるのですが、北京到着日に華南~上海間は乗車券手配に成功し、後は武漢への火車票をどうするのか…という状況でした。

北京~武漢間は北京西站から漢口站や武昌站へ向かう夜行列車(寝台+座席や全車寝台)が何本か運行しており、他に武漢以遠へ向かう列車も多数存在するのですが、各列車の寝台は数日先まで「没有」の嵐が吹き荒れる状況でした。

発売当日で全列車完売と言う程ではないにしても、乗りたいと思った時に乗れない程、この区間では需要に対して供給が追いついていないのが現状で、それどころか在来線を走る昼行CRH(D~次の動車組)ですら、数日先の列車で空席がようやくという有様でした。

こんな状況であれば、一般の中国人民なら諦めて硬座で10~12時間程度我慢して…という所で、多数の火車票購入希望者がひしめく乗車券売り場では少しでも安く目的地へ行きたいがために、1000km以上の距離を移動する際にも、最初から硬座の火車票を求める人民も多数見受けられる程で、当日の無座票などを買い求める人民の姿を見ると、MAKIKYUはとても…と感じてしまいます。

日本人でも硬座乗車こそが中国鉄道旅行の醍醐味と感じていたり、運賃の安さに魅力を感じて、他列車・車両に空席があっても、長距離の列車移動で敢えて硬座・無座を選んで乗車する人物も存在しますが、長時間の硬座乗車は車両の居住性や車内環境など、特快空調車でも日本の青春18きっぷによる普通列車乗り継ぎなどとは比べ物にならない程劣り、非常に疲れます。
(MAKIKYUが帰国の際に乗船したフェリー内では、昆明~上海間を硬座で移動したという方や、成都~ウルムチ間を硬座で移動したという方(共に日本人女性の一人旅)も居られ、どちらも全然平気と言ってましたので、相当な猛者と感じたものですが、中国鉄路に関する書籍を出版される様な事情通の方を除き、日本人一般には硬座での長時間乗車はおススメできません)

日韓の快適な鉄道旅行に慣れきったMAKIKYUにとって、空を飛ぶ(=航空機に搭乗する)位ならまだ無座でも…とは感じるものの、出来れば北京~武漢間を硬座で移動するのは避けたいと感じ、他に妥当な方法はないのだろうか…と感じたものでした。

そこで鉄道旅行のバイブルとも言える時刻表とご相談になるのですが、上海(上海虹橋)~武漢(主に漢口站発着)の動車組列車(D~次)はそこそこの本数が運転されており、乗車券も比較的買い易そうな気がしましたので、北京南駅の乗車券売り場でこの列車の空席状況を尋ねると、2日前の段階で空席ありとの事でしたので、北京南~上海虹橋間の高速動車(G~次)と、上海虹橋~漢口間の動車組列車(D~次)を、途中の南京(南京南站)で乗り継ぎ、武漢へ移動する事にしたものでした。
(北京南~南京南間の高速動車組乗車券購入は、列車が頻発している事もあって楽勝、特に運賃が割高な上級席ともなれば、余程の事がない限り当日購入でも大丈夫かと思います)

南京を経由して武漢へ向かうとなると、直接京広線を南下して武漢へ向かうよりは、距離にして300km程遠回りとなり、まして運賃面でも割高な高速動車などを利用するとなると、かなり割高(新空調硬臥の直通列車利用と比較し、高速動車+動車組2等座乗車でも2.5倍程)になりますので、普通の人民が移動手段として鉄道を利用するのであれば、まず考えられない経路になります。

とはいえCRH視察を最大の目的として訪中したMAKIKYUにとっては絶好の方法で、現地物価を考えると高過ぎるものの、日本の物価に比べれば激安な運賃設定(1500km強を移動しても、日本円に換算した金額は4桁で収まります)もあり、北京~武漢間で硬座や航空機利用は避けたいけれども、寝台が満席で買えない…という時には、鉄路迷(レールファン)以外の日本人旅行者一般にもおススメの方法かと思います。

そして乗車当日、上海虹橋行き高速動車の発着する北京南駅へ向かうと、駅構内に入場する際に金属探知機による荷物のセキュリティチェックがあり、その後列車別に指定された改札から入場する際には、係員から実名制(外国人の場合は旅券番号)が記された乗車券と身分証(外国人の場合は旅券)を提示する様に求められ、本人確認を行ってから自動改札機に乗車券を投入(改札)と、日韓の高速列車に比べて随分面倒で不便な印象が否めません。


改札を経てホームに向かうと、既に乗車するG117次は入場しており、北京~上海間の高速列車は主に2形式(CRH380A/CRH380B)が用いられているのですが、MAKIKYUが乗車するG117次はCRH380Aの方でした。
(高速動車(G~次)ではなく、運賃は安いものの所要時間が長い動車組列車(D~次)を利用した場合などは、別形式に当たります)

CRH380Aは新幹線タイプのCRH(CRH2)の改良増備版とも言える車両で、CRH380B(ドイツICE3タイプ・CRH3の改良増備版)と混用されています(一応運用は決まっている様ですが、同一路線・区間を走る列車でも、乗車列車によって車型が異なります)ので、1本前の上海虹橋行きはCRH380Bが充当されており、天津へ足を運ぶ際にCRH3に乗車した事もありますので、CRH380Aの方に当たれば…と思っていたMAKIKYUとしては念願通りの巡り合わせです。

このCRH380Aは新幹線タイプの改良版だけあって、見た目は何となく日本の新幹線を連想するものの、CRH3と大差ない外観のCRH380Bとは異なり、塗装や前面デザインなどがCRH2とは大きく異なっているのが大きな特徴です。

前面デザインや塗装は、抜群の高性能とデザインを誇りながらも、座席数や乗降口位置などが他車両と異なる事で運用し難く、近年東海道~山陽新幹線直通のぞみ号という花形からは退役を余儀なくされ、現在は編成を短縮して山陽新幹線内で細々と活躍している車両を連想させるものがあります。


ただ車体断面は丸っこいこの車両特有のものではなく、CRH2(=E2系)に近い形状となっている事もあって、複数種の新幹線を継ぎ接ぎした様な奇妙な雰囲気となっており、個人的にはデザイン面で余り格好良い車両とは感じないのですが、これに中国ならではとも言える釣り目形のヘッドライトが配されています。

他国の技術や実績をふんだんに用いながらも、数本はベース車の開発国から直接輸入したCRH2やCRH3・CRH5などの動車組列車用車両や、ほぼドイツ風の雰囲気が漂うCRH380Bとは異なり、一応中国ならではの車両という事になっており、中国側も独自開発車両である事を盛んに謳っています。
(実際にホームに入線しているこの車両を目にすれば、何処かの島国で活躍している高速列車の2番煎じ的な印象が否めないのですが…)


車内に足を踏み入れると、客ドアやデッキ周辺などはCRH3やCRH5、韓国KTXなどの欧州系高速車両の雰囲気ではなく、これまた何処かの新幹線と錯覚してしまいそうな雰囲気が漂っています。


客室もMAKIKYUが乗車する2等座(普通車相当)は2人がけと3人がけの、背面テーブル付き回転式リクライニングシートがズラリと並び、CRH2の進化系車両ならではといった感がありますが、座席モケットはベース車そのもののCRH2とは異なり、座面スライド機能は廃され、モケットも新幹線N700系普通車の色彩を濃くした様な印象を受けます。

ただ天井や半透明ガラスを用いた荷棚の造作、ミラー仕上げで装置本体が目立たない様になっている車内LED文字案内装置などは、CRH3(ドイツICE3タイプ)に類似しており、様々な高速車両の美味しい所を寄せ集めた雰囲気があります。

しかし側面窓は2席で1つの大窓、そしてブラインドは各窓毎に上げるか下げるかしかできない構造は頂けないもので、後発だけに様々な車両の利点を寄せ集めるチャンスがあるにも関わらず、大窓の中央にブラインドレールがあり、各席毎にブランドを任意の位置で下ろせる構造とする事で、様々な旅客のニーズに細やかに対応できる構造を採用しなかった点は、少々に残念に感じます。

この2等座席は結構盛況で、見た限りでは8割以上の座席が埋まり、3人がけの中間席でも埋まっている箇所が多く見られるなど、北京~上海間の高速鉄道は結構な本数・両数で運行している事も考えると、高速鉄道開業前は需要に対して供給が大幅に不足していた事が露呈されているとも言えます。


その一方で上級席に関しては運賃の高さもあってか、比較的空席が目立つ状況で、日韓の物価よりは安いとは言っても、MAKIKYUが乗車券を購入する場合でも決して安くは…と感じてしまう程、まして高速動車(G~次)では1等座と2等座の価格差(日本の普通車とグリーン車の様な感覚です)が結構大きく、2等座でもJRの新幹線・特急普通車レベルの設備を有する事(客車列車の軟座でも、日本の普通列車レベルかそれ以下と感じる事が多いです)を踏まえると、2等座をもう少し増やした方が…と感じてしまいます。

この1等座は、座席が新幹線グリーン車レベルのモケット違いと言った印象があるのですが、CRH380Aではただでさえ乗車率の振るわない1等座に加え、更に上級の「商務座」と呼ばれる車両も連結されており、しかも中間の1両全室がこの商務座となっているのは、資本主義国の民営鉄道ならまず考えられないと言っても過言ではない気がします。


商務座は革張り・バックシェル付きの2+1列座席が並び、東北新幹線E5系「グランクラス」の中国版とも言うべき存在ですが、設備・運賃共に破格で、日韓に比べて大幅に物価が安い中国といえども、北京南~上海虹橋間をこの座席で乗り通せば、日本の新幹線普通車で首都圏~九州間を移動出来てしまう程、物価が高い日本に住む人間の感覚でも決して安い金額ではありません。

まして中国の物価を考えると、北京南~上海虹橋間で商務座の乗車券を片道分購入するだけでも、一般労働者の月給かそれ以上という有様で、日本のグランクラスの様に少し奮発して一度(それでも結構高いですが…)と言うレベルの金額ではないだけに、利用出来る客層は極めて限られています。
(当然ながらこの車両の乗車券購入は、余程の事がない限りは当日でも楽勝かと思います)

1等座でも空席が目立つ状況でしたので、こんな車両はほぼ空気輸送状態と言っても過言ではなく、今後の経済発展で上級席需要が高まる事を見越した先行投資的要素があるのかもしれませんが、需要に対して供給が追いついていない中国鉄路の現状を踏まえると、こんな座席はJR九州787系電車のDXグリーン車の如く、せいぜい先頭車両の一部区画程度で…と感じてしまいます。


そして列車が北京南站を出発すると、MAKIKYUが降車する南京南站までは約4時間の道程、そして終点の上海虹橋站までは所要約5時間となりますが、車両・軌道共に真新しいだけあって、最高速度は温州の事故以来若干引き下げられ、所要時間が増大しているとは言っても300km/hを少々超える程度を出しており、車内に設置されたLED表示でもその運行速度が表示されます。

日本の新幹線は、大動脈の東海道新幹線は設備が古く、今日の超高速運転を見越していない設備が災いし、最高速度270km/hに押さえられ、それも車体傾斜などを駆使して最高速度で走れる区間を…という状況を踏まえると、何とも羨ましい話です。

北京~南京間は1000kmを越えており、高速鉄道開業前は列車の手配、移動共に結構な労力を要していたものの、CRHで移動する両都市間は、日本の新幹線で東京~広島間を往復する程度の手軽さで、中国鉄路の旅も随分変わったものと実感させられます。


ただ中国ならではの発車時間直前のホーム別改札のお陰で、途中各駅も列車入線時刻が迫っていないと人影が見当たらず、駅のつくりがやたらと大きいのは、日本の新幹線とは大きな違いで、軌道設備も柵等はやや簡素な印象を受けたものでした。


また日本の新幹線と同レベルの最新鋭高速列車でありながらも、給湯設備は客車列車と同様にしっかりと設置されている辺りは中国らしく、MAKIKYUも車内で方便面(カップラーメン)を食すために利用したものでした。

列車内では車内販売は勿論、食堂車の連結もありますので、食事情は新幹線やKTXといった日韓の高速列車より優れており、ブッフェなどを連結するとまではいかないにしても、日本の新幹線も車内に給湯設備のサービス位はあっても…と感じます。

そしてCRH380Aの約4時間の列車旅は、異国の車窓が広がる非日常の世界と言う事もあってあっという間、多少の遅延は見込んでいたものの、ほぼ定刻で南京南站に到着、今度は約2時間後の漢口行き列車へ乗り継ぎ、目的地の武漢を目指します。

南京南~漢口間で乗車したD3027次に関しては、別記事で取り上げたいと思います。


中国鉄路乗車記:C2213・2282次(乗車日:2012年7月11日/CRH3・ICE3タイプ)

2012-07-11 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は記事投稿日を列車乗車日に合わせた過去ログ投稿です)

7月にMAKIKYUが中国へ出向いた際には、大連から入国し、上海から出国する行程だけは手配済みだったものの、急な旅行だった事もあり、それ以外の列車や宿泊は成り行き任せという状況でした。

東北から北京へ抜け、その後上海へ…という大まかな計画を立てており、7月10日の北京到着時点では、北京市内での滞在日数すら未確定と言う状況でした。

そのため北京からは直接上海へ向かう(高速鉄道開業のお陰で、この乗車券の確保は容易です)か、それとも華南(広東省・香港)方面へも足を伸ばせるかは、列車の空席状況次第と言う状況でしたが、華南方面の火車票(鉄道乗車券)手配も北京で無事に済ませる事ができ、これで華南方面へも足を運ぶ事が確定し、大まかな旅程が完成したものでした。
(中国の火車票は、基本的には出発都市で購入する事が原則となっており、他都市発着の乗車券発券もシステム的には可能なものの、係員次第では断られる事もあり、発券可能な場合でも異地票発券の手数料を請求される事があります)

華南方面への乗車券手配が済んだ事で、北京での宿泊は3泊、11・12の2日間が北京滞在となり、この間は以前MAKIKYUが北京を訪問した際に利用した事がある北京站近くの賓館(ホテル)にも空室がありましたので、この賓館を拠点に北京市内や周辺部へ足を運んだものでした。

その内11日は、北京站近くから日本では珍しいものの、北京ではありふれた存在とも言える2両連結の市内公交汽車(路線バス)に乗車し、高速鉄道が発着する大ターミナルに改装された北京南駅へ向かい、同站を視察する事にしたものでした。


日本の新幹線駅とは比べ物にならない、北京南站の大規模な設備は圧巻というほかなく、今後更に輸送需要が増える事を見越しているとはいえ、よくこれだけのものを短期間で…と感心させられ、ここまで大きく造らなくても、効率的な運行をすれば……と感じてしまい、大き過ぎて却って使い勝手が悪いと感じる面もあるものの、社会体制や国力の違い、そして中国が急速な勢いで発展している事を強く実感させられたものでした。

この巨大な北京南站を見ていると、MAKIKYUは駅舎を視察するだけでなく、高速列車に乗車も…と思い、急遽日帰りで距離も近く、列車本数も多く手配が容易な天津まで足を運ぶ事にしたもので、その際に乗車した列車がC2213次(往路)とC2282次(復路)です。

北京~天津間の高速鉄道は、両都市間のみを結ぶ目的で建設された路線と、天津から更に済南・除州・南京などを経て上海方面へ至る高速鉄道の2路線が、それぞれ複線で建設されており、高速鉄道発祥の国・日本の新幹線でも、2都市間を結ぶ路線が複数存在する事例はまだありませんので、駅設備だけでなく路線網と言う観点でも圧巻です。
(中国では他に上海~南京間と広州~深セン間でも、2都市間で2路線の高速鉄道が運行しています)

その内今回乗車したC2213次とC2282次は、北京~天津間のみを運行する高速鉄道を走る列車で、列車番号がG~次(高速動車組列車)やD~次(動車組列車)ではなく、現在北京~天津市内間を結ぶ高速列車のみが用いているC~次(城際動車組列車)となっているのが特徴です。

このC~次は、列車自体の最高速度や使用車両はG~次と大差なく、高速動車の中でも短距離のシャトル列車的存在である事が、G~次との僅かな相違と言っても過言ではない状況で、高速列車が頻発している上海~南京間(途中駅発着を含む)などでも、C~次を名乗る列車が存在しても不思議でない気がします。

ちなみに北京~天津間の高速列車に用いられる車両は、以前は新幹線E2系タイプ(CRH2)も一部列車に用いられていた様ですが、日本側が想定している設計上の最高速度を越えての運用が問題となり、同区間の運用から外されて他区間での運用に転用されていますので、現在は専らCRH3(ドイツDBのICE3タイプ)が担っており、現在は同車が最高速度300km/h強で運行しています。
(以前は350km/h程度での運行も行っていた様ですが、温州南站付近での追突事故以降に最高速度が若干引き下げられています)

そのため乗車する列車は必然的にCRH3が充当され、東アジアから外へ出た事がないMAKIKYUにとっては、初のICE3タイプ車両乗車になります。


ICE3は個人的にはデザイン的に好印象があり、書籍やネット上の画像などで取り上げられている内装なども結構良さそうな雰囲気ですので、是非一度は乗車してみたい高速列車の筆頭格で、今回の旅行でもこの車両にだけは何とかして乗車したいと思っていましたので、北京~天津間CRH日帰り旅行決行で、晴れて念願を達成する事が出来ました。

北京南站での天津行火車票購入も、日本の新幹線乗車に比べると少々面倒なものの、列車本数が頻発している区間だけあってあっさりと確保でき、期待を膨らませてホームに下りると、今まで書籍やネット上の画像などでしか姿を見た事がなかったICE3タイプの車両と初対面、実際にその姿を目にしても期待を裏切らない車両と感じたものです。

白に細い青帯を纏ったCRHシリーズ共通の装いも、新幹線E2系と共に、この車両の本家(ドイツDBのICE3)よりも見栄えするのでは…と感じる程で、壮大な駅構内ではCRH3だけでなく、CRH2など様々なタイプの高速車両が行き交う様は、はるばる北京まで足を運んだ甲斐は充分にあると感じさせるものです。


車内に足を踏み入れると、木材を多用した温もり感溢れるデッキ部分が目を引き、特徴的な形状の客ドアなどと共に、新幹線とは異なる高速列車という事を強く実感させられます。


客室に足を踏み入れると、中国の車両限界は日本の新幹線並みに大きく、ヨーロッパ規格の車両よりも幅広な事もあってか、本家ドイツDBのICE3よりも車幅が広くなっており、その関係でMAKIKYUが乗車する2等座の座席は新幹線と同様に2+3列配列、一等座も2+2列配列となっています。
(本家DBのICE3は、日本の在来線特急列車の如く2等席が2+2列配列・1等席が2+1列配列です)


そのため本家ICE3に比べると、詰め込みが利く車両(交通機関の整備が発展途上で、輸送力増強が必須の中国では重要な事です)と言えますが、中国鉄路では新幹線E2系=CRH2の回転式リクライニングシートを高く評価し、他の車型も一部を除いてこの座席を若干カスタマイズした背面テーブル付き回転式リクライニングシートを採用していますので、座席定員が多い車両ながらも、韓国KTX(フランスSNCFのTGVベース)の様な窮屈さを感じる事はありません。

CRH2のモケットまで新幹線E2系そのまま、当然ながらリクライニング機能に加え、座面スライド機能まで装備した座席(ボタン位置や色までそのまま)に比べると、座席モケットやリクライニングレバーの違いなどで、座席は少々異なる印象を受けますが、着席した時の印象は日本の新幹線や在来線特急の普通車と大差なく、2等座でも充分快適に過ごせると感じ、逆向き座席が嫌いなMAKIKYUとしては、居住性も本家DBで活躍中の車両よりも良いのでは…と推測しています。
(ごく僅かに本家ドイツDBのICE3レベルの座席を装備した車両も存在しており、こちらは座席が一方向固定座席になっている様です)

またICE3=CRH3は、客室内の内装も天井のFRPが、どことなくCRH2の本家事業者が多数導入している「某社レンズ付きフィルムに良く似た名称で呼ばれる事が多い電車」などの安物通勤型車両を連想させる雰囲気がありますが、半透明ガラスの荷棚などは、シンプルながらもデザイン・機能性の両面で優れた逸品と感じます。


車端部に設置された次駅案内などに用いるLED表示器も、表示される文字色や大きさなどの点では、日本の新幹線に比べて見劣りが否めないものの、文字表示装置部分をミラー仕上げにして、目立たない様に工夫しているのも感心させられ、日本の新幹線でこの様な工夫を施した車両が存在しても…と感じさせられます。

ただCRHシリーズ各種は、概ね客窓が広幅となっており、2席で1つの窓が割り当てられる格好となっていますので、どの席が割り当てられるかによって、外の展望をどれだけ楽しめるか格差があり、中国鉄路では現在、乗客が乗車券購入時に任意の座席を選ぶ事も出来ません。

おまけにブラインド式となっている日除けは、CRH2以外は各席毎に任意の位置で止める事が出来ない構造なのは、CRH3が内外共に完成度が高いと感じる車両だけに、少々残念なものです。
(CRH2の場合は、大窓の真ん中にブラインド用のレールがあり、大窓の片方はブラインドを全開・もう一方はブラインドを全閉といった事も可能で、多様な乗客のニーズに応えられるきめ細やかな配慮は高評価できると感じます)

この様な車内を視察していると、北京(北京南站)から120km程度離れている天津站まで、途中武清站に停車するC2213次でも30分台の所要時間はあっという間に過ぎて行きます。

天津到着後は、市内交通の視察などに出向いた後、今度は天津市内でも中心部とは40km程度離れた塘沽(Tanggu)区の塘沽站から北京への帰路に就きますが、北京~天津間のCRHは北京南~天津駅間の運行が圧倒的に多いものの、一部列車は天津を越えて塘沽まで運行しており、帰りはこの塘沽始発の列車を利用したものでした。

塘沽発着の列車は、一部が北京南~塘沽間ノンストップ運行となっているものの、MAKIKYUが乗車したC2282次など過半数の列車は武清こそ通過するとはいえ、基幹駅の天津にも停車しています。

現在天津~塘沽間は在来線を走るために、北京南~塘沽間約160kmの所要時間は概ね1時間前後、それでも北京から塘沽が随分近くなったと感じるものですが、高速列車にしてはさほど早くない部類と言えます。

おまけに塘沽站は比較的小規模な駅ながらも、夕方MAKIKYUが同駅に到着した際には、乗車券売り場の城際列車専用窓口は営業終了、自動券売機も非居住外国人旅行者で人民の身分証を所持していないMAKIKYUは利用できず、一般列車も含めた窓口はかなりの混雑という状況でした。

その上多数の乗客が並んでいるにも関わらず、空いている窓口は限られており、乗車券購入希望者が大勢並んでいる列でも、平然とカーテンを閉めて窓口閉鎖を行う係員も見受けられるなど、快適で斬新な車両が走っていても、その運行やサービスに従事する服務員は依然…と感じさせられたもので、特に塘沽站発着列車は運行本数も限られていますので、同站発着列車の利用予定が予め分かっているならば、北京南站や天津站などで事前に火車票を入手しておいた方が…と感じたものでした。

ただ検票を済ませて站台(ホーム)に入り、列車に乗り込んでしまえば快適で、闇夜を駆け抜けて北京南站までの道程もあっという間、塘沽からの乗客はさほど多くない状況でしたが、天津からは結構な数の乗客が乗り込み、車内は結構賑わっている様に感じたものでした。


塘沽站では列車に乗り込んでから発車まで時間に余裕があり、空いている事もあってか、車内の様子を存分に撮影する事も出来ましたが、8両編成で所要1時間程度のシャトル列車に用いられる車両でも、一応売店スペースは確保されており、この空間のデザインも特徴的です。


2等座の中には、中央に木製のテーブルを挟み、向かい合わせのボックス配置とした区画も設けられており、リクライニングシートが並ぶ客席ばかりの新幹線に比べると、客室設備にバリエーションがあると感じるのは、D12次乗車記で取り上げたCRH5(アルストームタイプ)と同様ですが、これに加えてCRH3は先頭車運転席背後が展望空間となっているのも特徴です。


この区画は、デザインが良く似ているJR九州の振り子式特急車とは異なり、両側共に1等座の座席が設置されており、ガラス製の仕切りで閉鎖している時もあるなど、どの乗客でも自由に入って前面展望を…とは行かないのは難点と感じます。


またCRH3にはC2213次・C2282次以外にも、その後武漢~広州南間でも乗車(G1153次・2等座)する機会があり、こちらは1000km以上の距離を4時間以上かけて走る列車でしたが、再び訪中する機会があり、CRH3に乗車する機会に恵まれるのであれば、今度は1等座にも乗車してみたいと感じたものでした。

CRH3は外観・内装共にCRHシリーズ各種の中では、かなり出来栄えが良い車両と感じ、その後最高速度380km/hでの営業運転を想定した発展型車両として、CRH380Bが登場しているのも頷けるものがあります。

この車両が登場するまでは、ICE3タイプの車両に乗車するにははるばる遠くはなれた本家ドイツや、その周辺諸国へ出向かなくては…
という状況だった事を考えると、空を飛ぶのがダメでも、SIEMENSから大量に車両や部品を購入・技術移転させて、その気になれば日本からも列車や船を乗り継いで比較的容易に訪問できる土地で、ICE3タイプの車両を多数走らせてくれた中国鉄路には「謝謝」と何度もお礼を述べたい程で、塘沽から北京への帰路に乗車した車中で売りに来たCRH3型LEDライト(10元)にも思わず手が出てしまったものでした。

ただ韓国のKORAILがKTX(フランスSNCFのTGVタイプ)を走らせたのに続き、中国鉄路がCRH3(ドイツDBのICE3タイプ)・CRH5(イタリアFSのペンドリーノタイプ)を走らせ、新幹線と異なる種類の高速列車の代表格が、どれも東アジア内で乗車できる時代がやってくるとは、20世紀の頃には考えられなかった事です。

これらの車両に皆乗車してしまい、他に都市鉄道や機関車などで欧州勢の目ぼしい車両が韓中に続々と…なると、空を飛ぶのがダメなMAKIKYUは、辛く苦しい思いをして、我慢して空を飛んでまで欧州へ…という気にはなかなかなれず、まして欧州の物価高も踏まえると、MAKIKYUは東アジアと言う近場から離れられない日々がまだまだ続きそうと感じたものです。
(シベリア鉄道やシルクロード横断など、陸路と海路の乗継移動で欧州まで足を運べるだけの時間が確保できれば話は別ですが、さすがにそこまでの余裕はそう簡単には確保できそうになく、欧州に限らず不要不急の遊びで空を飛んで各地へ出かける気にはなれませんので…)


中国鉄路乗車記:D12次(乗車日:2012年7月10日/CRH5:ペンドリーノタイプ)

2012-07-10 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は記事投稿日を列車乗車日に合わせた過去ログ投稿です)

MAKIKYUが7月に訪中した際に乗車した列車の中で、数年前まで主流を占めていた客車列車(今でも運行本数や比率はかなりのものですが…)への乗車は2回だけ、それも客車列車の座席車への乗車はT5325次だけと言う有様でした。

その代わり2007年に運行を開始し、その後急速に勢力を拡大している高速動車・動車組列車(CRH)は幾度も利用し、これらの列車に乗車する事が、7月の訪中における最大の旅行目的になったと言っても過言ではないのですが、その第1弾として乗車したのが、瀋陽→北京間を運行するD12次・動車組列車です。

D12次はCRHの中でも、高速専用線のみを走る高速動車(G~次)よりは一つ格下の種別で、在来線を200km/h程度で走行、また高速専用線を250km/h程度で運行する動車組列車(D~次)の一派です。

動車組列車の運賃は、客車列車に比べると大幅に高く設定されていますが、高速動車に比べると割安に設定されており、主に在来線区間を走る動車組列車の中には、1等座(グリーン車相当)と2等座(普通車相当:設備的には客車列車の軟座並みかそれ以上を誇ります)の価格差がさほど大きくない列車も多数存在します。

D12次をはじめとする北京~瀋陽・瀋陽北間を走る動車組列車も、1等座と2等座の価格差が比較的小さい列車の一つで、同区間での2等座は207元・日本円に相当すると約3000円程度になります。

現地の物価を考案すると、決して安い運賃設定とは言い難く、空調車が充当される同区間の快速列車寝台(客車列車・硬臥)よりも高い運賃設定ですが、それでも運行距離約700kmで200元強の運賃設定は、日本の馬鹿高い物価に慣れたMAKIKYUにとっては、激安運賃に感じます。
(瀋陽では市内公交汽車(路線バス)の運賃は、大半が非空調車ながらも1元均一、このバスの車中から目撃した食堂の招聘(求人)告知では、月給が概ね1500~1700元程度となっていました)

またこの列車の1等座は、2等座よりも41元高い248元に設定されており、この価格差も中国の物価としては決して無視できないレベルですが、日本円に換算すると、新幹線や特急列車の普通車自由席と指定席の価格差(指定席料金)程度となります。

そのためMAKIKYUは1等座が確保できるのであれば、この程度の価格差なら…と思い、第1希望をD12次の1等座にして、乗車前日に瀋陽站の乗車券売場に出向いて購入に挑むと、あっさりと第1希望の乗車券が入手でき、そこそこの本数が確保されている北京~瀋陽間であれば、乗車券の確保も比較的容易な印象を受けたものでした。
(ただ乗車当日の直前ともなれば、さすがに満席となっている確率も高いかと思いますし、北京~東北方面も瀋陽以北の長春やハルピンと
なると、現段階では列車本数も限られて確保も厄介、D12次乗車後に北京站の乗車券売場で見た残席案内でも、数日先まで満席御礼の表示が出ている状況でした)

瀋陽では一応動車組列車が発着しているとはいえ、まだ自動改札機を稼動させていない事もあってか、動車組列車の乗車券にも関わらず、自動改札機には対応していないピンク色の乗車券で発券されたものでした。

MAKIKYUが7月に訪中した際、このタイプの乗車券が発券されたのは、大連站と瀋陽站の瀋陽局管内のみ、現在徐々に自動改札機対応の新タイプ(青緑色)に切り替わっていますので、パスポート番号が入力(外国人の場合)される実名制乗車券で、動車組列車のピンク色地紋乗車券を手にする機会は、今後もあるのだろうか…と感じたものでした。

D12次乗車券を入手した後は、瀋陽市内の地鉄や市内公交汽車などを視察し、夜には瀋陽站近くのホテルに投宿して翌日の乗車に備えますが、北京・天津~瀋陽間を結ぶ動車組列車は、列車によって瀋陽站を発着する列車と、瀋陽北站を発着する列車に分かれ、両站間の移動は地鉄乗り継ぎや公交汽車(直通便あり)で30分程度を要します。

動車組列車の発着は、現段階では大半の列車が瀋陽北站となっており、特に瀋陽以北の長春方面へ直通する動車組列車は全て瀋陽北站発着ですが、運行本数が上下で異なっています。

特に瀋陽~北京経由~太原間を運行する列車は、太原行は瀋陽北站発なのに対し、太原発の列車は瀋陽站行となっていますので、乗車站間違いに要注意です。


ちなみにMAKIKYUが乗車するD12次は、瀋陽~北京間を運行する動車組列車の中では、少数派の瀋陽站発着で、瀋陽站舎は満鉄時代に建造され、東京駅によく似た風貌でも知られていますので、瀋陽を訪問する機会があれば、同站発着の列車を利用する機会がないとしても、是非一度はその姿を見ておきたいものです。

そして乗車当日、駅近くのホテルをチェックアウトして瀋陽站に向かうと、瀋陽站は候車室も仮設の様な雰囲気、そして検票(改札)を済ませて站構内に入ると、構内の至る所が工事現場の如く…と言う有様です。


站構内では無駄に遠回りを強いられ、階段を上がって降りての繰り返し、列車に乗るだけでも少々疲れる状況で、これでは幾ら早くて快適な列車を走らせても…という感があり、乗車券購入の厄介さとあわせ、中国鉄路の旅客への配慮はまだまだと感じざるを得ない気がします。

そしてようやくD12次列車が待機する一番端のホームに到着すると、8両編成の車両を2編成併結した16両編成の車両が待機し、乗車扱い中でしたので、一旦列車の最後尾へ出向いて記念撮影した後、指定された号車へと向かいますが、指定された車両は中ほどの9号車、8~9号車の間は通り抜けが出来ない状況です。


充当車両はCRH5、イタリアの高速列車「ペンドリーノ」ベースのアルストーム製高速車両を、中国内で技術移転によって製造した車両で、CRHシリーズでは唯一酷寒地対応となっている車両という事もあってか、現在東北3省(遼寧省・吉林省・黒龍江省)方面で運行している動車組列車は、基本的にこのタイプのみとなっています。

ペンドリーノは元々車体傾斜を装備し、曲線の多い線区などの運行に対応させた車両という事もあってか、車体断面はやや傾斜していますが、車体傾斜機能を省いた中国仕様では、車内空間を狭めるだけでメリットはなく、設計共通化の弊害と感じます。

車幅を拡張したCRH5ではさほど狭さを感じませんが、本家イタリアのペンドリーノは、多少圧迫感を感じるという評もある様です。

また車高が高い割には、窓の上下サイズが小さくなっており、窓下に細い青帯が入る以外は真っ白な装いですので、見た目は少々不恰好な印象があります。

車内に足を踏み入れると、JR九州で活躍するこだわりのデザイナーが手がけた一般型ワンマン電車の如く、注意喚起を兼ねて黄色1色に塗られた客扉が目を引きます。

客室に足を踏み入れると、乗車した車両は回転式リクライニングシートを装備しており、CRH全体ではこのタイプが主流派になっていますが、CRH5の中にはヨーロッパ式の一方向固定座席(座席回転不可)を装備した車両も結構な比率で存在している様で、逆向き座席が嫌いなMAKIKYUとしては、回転式リクライニングシートの方に当って良かった…と感じたものです。

指定座席に辿りつくと、列車は程なく瀋陽站を出発して北京へ向かいますが、瀋陽站を出発した直後はノロノロ運転で、瀋陽站~瀋陽北站間の路線と、瀋陽北~山海関方面高速線(客車列車などの在来列車と動車組列車が混用:最高速度200km/h)の間を短略する線路と思われる単線区間も走るなど、高速列車らしからぬ雰囲気です。

瀋陽北站方面からの複線と合流すると、列車は速度を上げ始め、瀋陽の市街地を抜けると、荒涼とした中国北部の典型と言った車窓が延々と続きます。


自席を離れ、車内の様子を視察に出向くと、9~16号車の8両中で1等座は、MAKIKYUが乗車した9号車と、最後尾の16号車の車端2両、他は2等座になっています。


座席は日本の新幹線と同様に、1等座が2+2列、2等座が2+3列となっており、個人的には2等座で瀋陽~北京間を乗り通しても、設備的には客車の軟座以上の水準に達しており、充分許容範囲という印象を受けたものです。


一部の車両には、通路が片隅に寄っており、ガラスの様な仕切りで仕切られた向かい合わせのセミコンパートメントと言った印象を受ける区画や、8両と言うさほど長くない編成ながらも、車両半室程度のブッフェが設けられているのも特徴です。

車内を視察した後は自席に戻り、東北地方の車窓とCRH5の乗り心地を堪能しますが、CRH5の1等座席は横幅こそそれなりに確保されており、座席の座り心地も決して悪くないものの、前後間隔やリクライニング角度は日本の新幹線や在来線特急の普通車レベルという印象です。


設備的にはグリーン車と言うよりは、山陽・九州新幹線直通用N700系や、山陽新幹線700系「ひかりレールスター」の普通車指定席区画(2+2列)に近い印象があり、2等座との運賃格差もさほど大きくありませんので、日本のグリーン車レベルを期待すると、少々ガッカリかもしれませんが、過大な期待を抱かず、2等座よりやや高級な空間と捉えて乗車すれば、決して悪い車両ではない気がします。

そして昼食時に差し掛かると、MAKIKYUは一応軽食類を持参して乗車した事もあってか、特に車内で販売している飲食物は購入しなかったものの、服務員が車内を巡回し、弁当の注文受付に回りますので、食料を持参せずに乗車しても空腹に耐えて…という心配はなく、また車内に給湯器の設備もありますので、方便面(カップラーメン)を持参して食べる事も出来ます。

MAKIKYUの隣に腰掛けていたビジネスマン風の乗客も、車内販売の弁当を注文していましたが、この弁当は食堂車で調製した弁当をワゴンなどで販売する客車列車とは異なり、レトルト食品を電子レンジで加熱したものとなっており、MAKIKYUが目撃した限りでは、この列車では25元と40元の2種類が存在している様でした。

街中の安食堂や露天の弁当販売を利用すれば、昼食は10元程度で済ませる事も可能な状況では、かなり強気で割高な価格設定と言う印象があり、ある程度所得水準の高い乗客が集まっている事を見越した雰囲気ですが、MAKIKYUの隣に腰掛けていた乗客以外にも、この弁当を買い求めている乗客の姿を散見し、そこそこ繁盛している様な印象を受けたものです。

ちなみにMAKIKYUが乗車したD12次は、瀋陽~北京間で途中、葫芦島北(Huludao-bei)と唐山北(Tangshan-bei)の2站に停車し、他列車も同区間で1~6站程度を千鳥停車する事で、北京や瀋陽と途中站間の利便を図っているものの、途中各駅に停車する新幹線「こだま」号の様な列車設定はなく、途中駅間での利用は余り想定していない様な印象があります。

多数の乗客が昼食を済ませた頃には、2つ目の停車駅・唐山北站に到着しますが、同駅はCRH停車駅にしては珍しく、ホームが低床となっているのが大きな特徴です。
(CRHシリーズの動車組各種は主に高床ホームに発着、特に高速専用線の各駅は、日本の新幹線の如く全て高床ホームとなっており、それ以外の停車駅もCRH停車駅の大半は高床ホームになっています)


車両も新幹線E2系ベースのCRH2などは、ベース車と同様に高床ホームでの乗降しか想定していない構造になっていますが、CRH5だけは客車と同様に乗降扉付近にステップを装備し、ステップを塞ぐ昇降式のフタ(?)が設けられ、低床ホームでの乗降に対応しているのも大きな特徴です。

そして低床ホームの唐山北站を発車すると、1時間程で北京の市街地に差し掛かり、程なく終点の北京站に到着、7月の訪中では初の動車組列車乗車となったCRH5・D12次の5時間弱の旅も終わりを迎え、MAKIKYUが乗車したCRH5は折り返し吉林行として、1時間も経たずに東北へ折り返し運行となります。

延々と乗り続ける事が当り前、そして終着地に着いてからの折り返し整備にも結構な時間を要する事が多い客車列車とは大きく異なる運行形態は、著しい発展を遂げる激動の中国を象徴している様にも感じられ、北京~瀋陽間約700kmを5時間弱で結ぶ動車組列車が頻繁に運行される現状も、数年前に特快(客車列車)の硬座で両都市間を移動した事もある身としては、画期的に感じたものでした。
(現在北京南~上海虹橋間約1400kmを、約5時間で結ぶ高速動車が頻発している事を考えると、瀋陽へのアクセスはまだ不便と言わざるを得ないのかもしれませんが…)

また主に東北方面で運用されるCRH5も、運行開始当初に初期故障が頻発するなど、余り良い評判を聞いておらず、デザイン的にも新幹線(CRH2)やICE(CRH3)などに比べると…という印象がありましたので、余り期待していなかったのですが、同じアルストームが絡み、狭い車内空間や、方向転換・回転不能の座席などで不評を買っている韓国の高速列車・KTX(TGVベースの動力集中方式車両)などに比べると、はるかに良好な居住性を誇る車両と感じたものでした。

酷寒地対応だけでなく、CRHシリーズの動車組で唯一低床ホームにも対応するなど、CRH5は意外と有用な車両と感じ、東アジアの島国・日本に住むMAKIKYUとしては、遥か遠くのイタリア(列車と船を乗り継いで行くと、一体何日かかるのやら…)まではるばる足を運ばなくても、その気になれば鉄路や海路の乗り継ぎでもさほど苦労せず、足を運べる中国でペンドリーノに乗車できるという点でも、注目の車両と感じたものです。

CRH5は高速動車としての活躍こそありませんが、その気になればベース車のイタリア・ペンドリーノの如く車体傾斜装置を装備させ、山岳線区におけるスピードアップなどにも活用できる車両かと思いますし、CRH2→CRH380AやCRH3→CRH380Bの如く、今後CRH5にも進化系車両が登場するのか否かも気になる所です。


中国鉄路乗車記:T5325次(乗車日:2012年7月8日/RZ25Z型客車他)

2012-07-08 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は記事投稿日を列車乗車日に合わせた過去ログ投稿です)

7月にMAKIKYUは5年ぶりに中華人民共和国(中国)へ足を運ぶ機会がありましたが、その際には高速鉄道(CRH)をはじめ、機関車牽引による客車列車や、都市内を走る地鉄など、様々な鉄道を利用したものでした。

その中でも中国鉄路(国鉄)の列車で、7月にMAKIKYUが中国を訪問した際に最初に乗車した列車がT5235次でした。


T5325次は遼寧省の2大都市、大連(Dalian)と瀋陽(Shenyang)を結ぶ特快列車3往復の1本で、大連站を夕方18時台に出発し、およそ4時間程で瀋陽站に到着、そして同市内にある瀋陽北站が終着となる列車で、大連~瀋陽間はノンストップ運転となりますので、現在の瀋大間では最速列車の部類に入ります。

同区間ではこの列車の他にも、快速列車や瀋陽以遠の都市まで運行する長距離列車の設定もあり、長距離列車の中には運賃の安い非空調車が充当される列車もあり、また大連站前からは瀋陽行長途汽車(高速バス)も発着していますので、所要時間や設備・運賃の面では様々な選択肢が存在します。

その中でもMAKIKYUがT5325次を選んだ理由としては、韓国・仁川(Incheon)からのフェリー(大仁フェリー)で大連に入国したMAKIKYUが、大連での滞在時間を確保しつつ、当日中に大連を離れて瀋陽か、或いは瀋陽以遠の都市へ足を運べれば…と考えていたものの、瀋陽以遠へ向かう列車は硬座(無座を含む)以外は殆ど「無」の状態だったにも関わらず、比較的乗車券の買い易いこの列車は残席が多数あったからです。


大連では港に到着後、大仁フェリーが仕立てた無料シャトルバス(他に路線バスもあります)で直接大連駅に向かい、乗車券売り場で乗車券を購入していますが、乗車券売り場は結構な行列が出来ておりかなり騒がしいものです。

幾ら東北とはいえ暑い真夏の最中、空調も入らない蒸し暑い売り場(ガラスで仕切られた服務員のいる空間は、空調が入り快適そうなのですが…)に平然と乗車券購入で旅客を並ばせ、おまけに並んでいる客がいるにも関わらず、時折勝手に窓口を平然と閉じてしまう服務員もいるなど、乗車券購入だけでもウンザリして鉄道利用はもう2度と…と感じる人間も出そうな有様は、中国へ来た事を強く実感させられ、日韓の快適さとは程遠い世界です。

この乗車券売り場では電光表示による乗車券残数の案内も行われ、これは中国語(=漢字)ですので、簡字体といえども中国語が全くダメなMAKIKYUでも容易に判読できるのですが、夕方の特快どころか昼頃の瀋陽北行特快でもまだ残席があり、他に快速(空調車・軟座なし)にも空席がある状況でした。

とはいえ乗車券売り場は結構込み合う上に、発車直前になると売り切れで希望の乗車券が購入できない、場合によっては無座すら売り切れで列車自体に乗れないという事もあり得ますので、予定が決まっている様なら早めに動くに越した事はありません。

そして行列が少しずつ前に進み、MAKIKYUが乗車券を購入する番になると、中国語会話が全く出来ないMAKIKYUは、予め用意しておいた漢字で記したメモを服務員に手渡して乗車券購入となりますが、中国では近年火車票(列車乗車券)が実名制になった事もあり、身分証の提示を要求されます。

そこで100元札と共にパスポートを渡し、ようやく乗車券が発券されるのですが、大連はまだCRHも通っておらず、自動改札機も運用していない事から、出てきたのは以前からお馴染みのピンク色地紋の非磁気化券、そして入力ミスで数字を一つ間違えたパスポート番号(中国人民の場合は、身分証番号だけでなく旅客氏名まで印字されます)が印字されている有様でした。
(大連站では没問題でしたが、CRHなどでは検票(改札)時に火車票と身分証の照合を行っている場合もありますので要注意です)

無事T5235次の火車票を入手した後は、夕方まで市内交通の視察に出向き、18時頃再び大連站に戻ってきて列車に乗車するのですが、站に足を踏み入れるとまず金属探知機等によるセキュリティチェック、そして検票口は列車毎に分かれ、発車時間が近づいてようやくホームへ…といった状況は相変わらずで、検票開始と共に待ち構えていた乗客が次々と站台(ホーム)に駆け下りていきます。


ホームに足を踏み入れると、東北地方は中国の中で比較的冷涼な気候である事や、所得水準も決して…という状況もあってか、緑色に黄帯の非空調車(通称:緑皮車)の姿が幾つも見受けられます。

中国鉄路通の方からは、「緑皮車が走っているなら、是非選んで…」という声も出そうですが、MAKIKYUが乗車する特快は白と青に赤帯の装い、そして隣に停車している快速は空調車と言う事もあって、グレーとオレンジの装いとなっており、どちらが快適な鉄道旅行を堪能できるかは、言うまでもない事です。

ホームに下りると、MAKIKYUが持っている乗車券で指定された座席は13号車とかなり後ろの方ですが、発車まで時間がありますので、一旦最前部まで足を伸ばし、牽引する機関車の撮影に出向きます。


牽引機は東北地方ではよく見かけるSS9型で、MAKIKYUが7年前に初めて中国鉄路を利用し、同区間の特快に乗車した時はSS9G型でしたので、牽引機という点では以前よりやや格落ちです。
(SS9型とSS9G型は装いこそ大きく異なるものの、スペック的には大差なく、またSS9型は東北方面以外では余り見かけない機関車ですので、決して悪くはないのですが…)

機関車の撮影を済ませた後は、連結されている客車を視察しながら13号車へと向かいますが、以前同区間の特快に乗車した時に連結されていた双層車(2階建て車両)の姿こそなく、客車の装いは特快色に統一されていますので、見た目は比較的整った印象を受けます。

しかしながら機関車の後ろに連結された客車は硬臥(3段寝台)、その後ろには硬座が連結され、8号車~13号車が軟座、そして14号車には軟臥が連結されているなど、中国にしては短距離列車だけあって食堂車の連結こそないものの、構成車種は非常に豊富なのが大きな特徴です。


特にMAKIKYUが乗車した13号車を含む6両の軟座車は、8~11号車がRZ25K、12・13号車がRZ25Zと形式が異なり、RZ25Zはやや車高が低いため、RZ25Kと隣り合う部分を見ると違いがはっきりと分かる程です。


RZ25Kの中には「RZ25K 111111」という凄い番号の客車も連結されており、これは狙っても簡単に捕獲できる車両ではないと思いますので、注目の存在と言えます。


13号車の指定座席へ向かうと既に先客が居り、座席を変わって欲しいという仕草と共に、後ろの座席が指定された乗車券を見せられ、MAKIKYUは一つ後ろの座席に移ったのですが、どちらの座席も進行方向向きとはいえ、指定座席は窓柱に邪魔されて車窓が楽しめない上に通路側、それに対し後ろの座席は車端部になるものの、車窓を存分に堪能できる窓側でしたので、こちらも当たり席に変えてもらってラッキーという心境です。


座席に腰掛けると程なく列車は発車、客車列車で機関車から随分離れた後部車両だけあって静かに発車する様は、動力分散方式の車両ばかりが活躍する日本の鉄道とは大きく異なり、広い線路幅(標準軌1435mm)に大柄の客車、そして駅によっては高さの低いホームなども、大陸の鉄道ならではの雰囲気が漂います。

列車は暫く大連の市街地を走り、20分程すると減速し、随分派手に工事を行っている箇所に差し掛かりますが、ここは現在建設中の大連北站で、瀋陽方面への高速線が開業した暁には、この站が起点となります。


街外れの立地は随分不便な印象が否めず、地鉄(建設中)などでのアクセスが整備されない限り、中心部の好立地にある大連站に比べて…と感じます。

日本的に考えればホームを若干増設し、折り返し時間の短縮や引き上げ線整備などで対応する事になるかと思いますが、中国ではその様な考えは通用せず、広大な用地を要する高速鉄道站を各都市の郊外に次々と開業させており、まとまった用地の確保を考えると、空港の如く中心部から離れた立地に高速鉄道駅が存在するのは、当たり前の状況になっています。

建設中の大連北站を過ぎると、所々で高架線となっている高速新線の姿を目撃する事ができ、日本のJR在来線車中から、新幹線の高架線を眺めている様な雰囲気ですが、架線も張られている状況は、開業もそう遠くないと感じます。

大連北站を出て暫く走ると金州に差し掛かり、金州站では大連站を少し前に出発した緑皮車の普快を通過追い抜きしますが、この時点で既に19時を過ぎており、金州站を過ぎて暫くすると日が暮れて、車窓を楽しむ事も厳しくなります。

あとは瀋陽まで延々と闇夜を掛け抜け、時折通過する途中站やその周辺の市街地が見える程度となります。

日が暮れた辺りで夕食を摂りますが、この列車には食堂車の類は連結されておらず、車内販売も菓子類や方便面(カップラーメン)、飲料水程度で弁当類の販売すら見られない状況ですので、持参の方便面などで夕食とします。

幾ら食堂車の連結されない短距離列車(400kmは日本の感覚だと、結構長い部類に入りますが…)とは言えども、余程のローカル列車(普慢など)でない限り、中国鉄路では給湯設備が装備されており、高速列車CRHでも給湯設備が存在する程ですので、MAKIKYU以外にも車内で方便面を食す乗客の姿は至る所で見受けられ、また茶葉を入れた茶筒にお湯を注ぎ、お茶を飲む乗客の姿もしばしばです。

夕食が済んだ後は、他車両の様子を覗きに行きますが、後ろの軟臥車は服務員用の控車になっているのか、鍵がかかっていて立ち入る事はできず、前の方に連結されている軟座車を視察します。


MAKIKYUが乗車したT5325次では、各車両車端部にLEDによる文字表示装置が装備されており、これを有効に活用すれば、中国語の会話や聞き取りが出来ないMAKIKYUの様な外国人には非常に有用で、「下一站 沈陽 Next Shenyang」などと表示して欲しいものですが、プログラムを設定していないのか、まともに活用しているのは号車表示部分だけで、あとはずっと「祝大家旅途愉快!」という表示が出たままです。

こんな表示を見ても全然愉快ではありませんので、LED表示器を使う気がないのであれば、無表示状態にでもしておいた方がまだマシと感じます。

 
軟座車は外観や形式だけでなく、車内の座席も2+2列のボックス席となっている車両と、一方向きリクライニングシート車の2種類が存在しています。

YZ25Zでも隣の12号車はボックス席、8~11号車のYZ25Kも11号車だけがリクライニングシート車となっており、リクライニングシートも集団見合い式(真ん中より前の方が逆向き)で一方向きに固定されています。
(リクライニングシートは固定座席と言うよりも、回転式座席の回転ペダルを撤去し、一方向きに固定した様な雰囲気です)

各車両で定員も異なるなど、軟座車で同じ運賃を支払っても、当り外れがかなり激しいのがT5325次軟座車の大きな特徴で、天井周りなどの内装も客車によって異なるなど、軟座車の見本市化しています。

中国鉄路では希望座席はおろか、2人で利用する際に隣り合った席を指定する事や、窓側・通路側の座席を選ぶ事、進行方向座席を選択する事すら出来ませんし、早めに乗車券を購入したら当り席が割り当てられる訳でもありませんので、どの号車・座席に当るかは完全に運次第です。

7年前にMAKIKYUが大連~瀋陽北間の特快軟座に乗車した際には、定員96名のボックス席、硬座の横幅が広くなって肘掛が付いた程度と言う大ハズレ席に当り、「一等硬座」とでも呼びたい状況でした。

こんな軟座に乗る位ならば、運賃の安い硬座でも…と感じた程で、設備的には日本の普通列車並みかそれ以下という印象を受けたものでしたが、今回乗車した13号車のRZ25Z 110653はリクライニングシートで、ボックス席車よりも定員は少なく、その分シートピッチが広くなっていますので、当たり車両に乗車できて良かったと感じたものです。

乗車区画も進行方向・窓側と、個人的に当りと感じる場所でしたので、そこそこ快適に過ごせ、日本の新幹線車両そのものの座席を装備したCRH2や、CRH2とほぼ同レベルの座席を装備した他のCRH各車種には及ばないものの、中国鉄路が運行する客車列車軟座の中では、何度か乗車した中で最高レベルだったと感じたものです。

大連~瀋陽(瀋陽北)間では、両都市間を結ぶ特快や快速だけでも複数列車が設定され、城際列車がCRH主体となっている今日では、客車列車による城際列車が手頃に楽しめるという点でも注目です。

とはいえ近い将来大連北站が開業し、瀋陽・ハルピン方面への高速線経由CRHが走り始める事が予想されますので、この列車の活躍もそう長くないと思われ、その暁には「大連から瀋陽まで、特快で4時間かけていった」と思い出話を語る事になりそうです。

空を飛ぶ(=航空機に搭乗する)のがダメなMAKIKYUにとっては、遼寧省もかなり遠い土地で、再び訪問する機会に恵まれるのかどうか…という所ですが、発展著しい中国の事ですので、もし再び瀋大間を走る列車に乗車する機会があれば、今度はどの様な列車に乗るのだろうか…と感じたものでした。


新幹線車両初の乗客死亡事故発生~当該車両はE2系ベースの中国鉄路CRH2

2011-07-24 | 鉄道[中華人民共和国]

先日中国鉄路(国鉄)で列車同士の追突事故が発生し、情報が様々な所で流れていますので、ご存知の方も多いかと思います。

情報はまだ部分的に報じられているだけですが、事故は中国南部の温州付近で発生し、多数の死傷者が発生するなどの大惨事となっており、不幸にも亡くなられた乗客の方の冥福を祈ると共に、負傷された乗客の方の回復を願うばかりです。

ところで今回の事故ですが、歴史は浅いものの近年急速な発展を遂げ、瞬く間に世界屈指の高速鉄道網を持つに至った中国鉄路の高速鉄道にとって、史上最大の事故にもなっています。

中国鉄路が高速鉄道を運行開始するに当たっては、日本の新幹線をはじめ、世界で活躍する幾つかの高速鉄道車両を導入し、数編成を輸入した後、大半を技術移転や部品購入によって中国国内で製造しており、この事はご存知の方も多いかと思います。

中国で現在活躍する新幹線車両は、JR東日本の東北新幹線「はやて」などで活躍するE2系電車を、中国向けに仕様変更したもので、彼の地ではCRH2という形式が与えられ、車両の仕様によって更に形式が細分化(中には日本の新幹線では未だに営業用車両が実現していない寝台車も存在しています)されていますが、今回の追突事故で大破した2列車の一方はこのCRH2の一派です。

最近は仕事が多忙な事もあって長期休みが確保できず、中国とはご無沙汰になっているMAKIKYUも、CRH2が走り始めたばかりの頃に乗車した事があり、空を飛ぶ事(航空機への搭乗)が駄目な事もあって行動範囲が限られるMAKIKYUにとって、乗車した事がある数少ない海外の高速列車の一つでもあります。

大いなる可能性を秘めた広大な大陸で、活躍し始めたばかりのCRH2に乗車した際には、新旧様々な客車列車などと肩を並べて活躍する姿に感激したものでしたが、運行開始から僅か数年で今回の事故という大惨事になったのは、非常に残念な限りです。

また日本でも鉄道事故は過去に多数あり、近年でもJR在来線で100名以上の乗客が亡くなった脱線事故という大惨事も記憶に新しい所ですが、新幹線に限って言えば世界の高速鉄道で最長の歴史を誇りながらも、乗客の死亡事故は…という状況ですので、新幹線車両初の死亡事故と言っても過言ではありません。
(厳密に言えば新幹線も飛び込み自殺等以外に、駆け込み乗客がドアに挟まれたまま列車が走行した事で、この乗客が亡くなった事故などはあるのですが…)

今回の事故は複線区間において、前後列車が衝突するという日本の新幹線では非常に考えにくい事故で、新幹線というシステム全体ではなく、車両だけを導入して他のシステムと組み合わせている事も一因と考えられ、原因は現在報じられている情報から推測する限りでは、CRH2の設計や技術面などの車両側ではなく、信号などの保安システムや係員のミスである可能性が濃厚な様ですが、早急な原因究明と共に、同種事故の再発防止を強く願いたいものです。

写真はCRH2が走り始めたばかりの2007年4月に、MAKIKYUがCRH2充当列車に乗車した際に撮影したものです。
(過去に掲載したCRH2関連の記事で使用した画像です)


四川省・沙湾を走る軽便鉄道(2)~軽便鉄道ながらも壮観な貨物列車も…

2007-11-28 | 鉄道[中華人民共和国]

   

先月に一度、中国四川省・沙湾を走る軽便鉄道に関して取り上げましたが、今日は随分間が空いてしまったものの、その続編として今まで未公開の貨物列車などを少々取り上げたいと思います。

この軽便鉄道は、炭鉱の存在があってこそ存在意義があるといっても過言ではない路線ですので、ナローゲージで路線長も数キロと小規模であるにも関わらず、沿線の道路事情や国柄の違いなどもあるとはいえ、日本の大多数の地方私鉄などとは異なり、旅客列車以外に多数の貨物列車が運行されているのが特徴です。
(まあ旅客列車の利用状況も、日本の一部地方私鉄などより遥かに芳しいと感じますが…)

貧弱なレールや架線、それも列車のパンタグラフと架線の間から青白い火花を散らして走るといった、如何にも軽便鉄道といった簡素な感が強い路線とはいえ、凸形の電気機関車(EL)が20両程度の貨車を従えて走る姿はなかなか壮観で、そのインパクトは全車無座の旅客列車に劣らないものがあります。

あと稼動している姿は見かけませんでしたが、一般の旅客列車で使用されている無座の客車に比べると随分程度が良いと感じられる客車の姿も目撃しており、こちらもお世辞にも決して高級な車両とまでは言えないものの、一応座席も設けられており、この路線の中では多少程度の良さそうな車両です。
(昨年訪問した際に稼動した姿は目撃していませんが、SLで有名な芭石鉄路などとは異なり、この鉄道には外国人運賃こそ存在するものの、外国人専用車両はありませんでしたので、割高な外国人運賃を考えると、この車両を抜擢するのも一考?-余り外国人観光客の行く所ではないと思いますので、実現の可能性は低そうですが…)

またこの鉄道の路線の駅には、如何にも炭鉱の鉄道といった感があるトロッコが多数活躍している姿を見られる所も存在しているのですが、このトロッコは軌道・車両共に軽便鉄道より更に貧弱な感があり、トロッコ自体も手押しという有様ですので、こんな光景が21世紀の現代でも存在している事に驚かされます。

写真はEL牽引の貨物列車とその貨車、多少程度の良さそうな客車と、軽便鉄道乗車中に目撃したトロッコが活躍している駅でのワンシーンです。


自動改札機の色々・中国編~都市鉄道の歴史が割合浅いだけに…

2007-11-14 | 鉄道[中華人民共和国]

    

以前「MAKIKYUのページ」では日本国内や韓国で使用されている自動改札機に関して取り上げた事がありますが、今日はその続編として中国(中華人民共和国)の鉄道で使用されている自動改札機に関して少々取り上げたいと思います。

中国は広大な国で人口も12億人を超える程の大国で、国鉄(中国鉄路)の路線は日本のJRとは比べ物にならない程の路線長を誇っていますが、国鉄はほぼ長距離輸送に特化しており、人海戦術を得意とする国柄だけあって自動改札機の導入・運用もこれから(自動改札機の機械だけ設置してあり、まだ使われていない姿は時折目にします)といった所です。

また都市鉄道の発達もまだこれからという感があり、一部の例外(東北地方で満州国時代から走っている路面電車など)を除くと現在運行している地鉄(地下鉄)や軽軌(日本の路面電車の様なモノもありますが、この言葉は都市鉄道全般を指す意味で使われ、郊外へ向かう電車やモノレールなども軽軌と呼ばれます)は比較的近年になって運行開始した路線ばかりという状況ですが、こちらは比較的新しい路線が大半を占める事もあって、運行開始当初から自動改札機を導入した路線が大半を占めています。

そのため今回取り上げる自動改札機は皆都市鉄道で用いられているものばかりで、写真は1枚目から順に重慶軽軌(モノレール)、上海地鉄、南京地鉄、天津地鉄、そして香港のKCR(九廣鐵路・参考)で用いられている自動改札機です。

中国の都市鉄道は日本の都市鉄道の様に様々な線区が繋がっている訳ではなく、1~数路線程度のネットワークとなっている事や、比較的近年になって営業開始した路線が多い事(今回取り上げている大陸本土の4都市は、天津を除き90年代以降に営業開始しており、天津地鉄も近年長期の運休を伴う設備更新で新線同様の状況です)もあって、大陸本土の自動改札機を導入している線区では再利用可能なカードタイプの乗車券(接触式と非接触式の双方が存在)や、韓国などでも流行していて同様に乗車券に再利用可能なICチップ入りトークンなどを用いている事例が殆ど(どちらも券面に乗車駅や運賃などの情報記載はなし)という事もあって、乗車券も非接触式(IC)で統一されている路線が多い事から、乗車券投入口は出場時の回収用のみとなっている機械が多い事も特徴です。

また自動改札機自体も中には日本製(北京13号線で使われていた日本信号製新型機:現在は使用中止の模様)もあるものの、殆どは日本では見かけないタイプの機種で、これも写真の重慶や上海などで用いられているターンバー付きと、南京や天津などで用いられているターンバーなしに分けられ、良く見るとどれも形状が異なっていますので、色々なタイプがしている事が分かるかと思います。

また今後も都市鉄道の延伸や新規開業が相次ぐことは確実で、それに伴って自動改札機も多数導入される事になり、利用者の立場からすればターンバーなしの方が有難いですが、今後中国の都市鉄道においてどの様なタイプが主流を占めていくのかも気になる所です。


四川省・沙湾を走る軽便鉄道(1)~客車の座席は…

2007-10-10 | 鉄道[中華人民共和国]

  

「MAKIKYUのページ」では先月に一度、中国の「四川省・沙湾を走る市内公共汽車」という記事を公開したものの、記事中で取り上げたバスの終点・草*具を起点に走る鉄道に関しては、近日中に別途取り上げたいと…と記事中で記しながら、なかなか取り上げる事が出来ませんでしたので、今日取り上げたいと思います。

この鉄道は沙湾という四川省の省都・成都から200km程離れた田舎町の外れ、街の中心部から川を隔てた草*具という所を基点に、老鉱線と向陽線の2路線が運行されている通称ナローゲージと呼ばれる軌道幅762mmの軽便鉄道で、MAKIKYUは昨年夏に四川省を訪問した際に乗車したのですが、沿線に炭鉱が存在し、この貨物輸送が主体の鉄道ながら、旅客列車も運行されています。

小規模な鉄道ながら路線は両路線共に電化されており、旅客列車も凸形の電気機関車が客車を牽引して運行されますが、客車は窓も座席も全くない非常に質素な2軸車が使われているのが大きな特徴で、車両によっては出入口が全く設けられていないなどかなり特徴的ですが、2軸車だけあって居住性はお世辞にも褒められるものではなく、某国のとある路線で走っている平日朝10時までの一部車両(異様に扉数の多い車両)どころか、一日中全車両が無座というのも、極めて異例と言えます。

その上軌道状態も見るからに貧弱な感がありますし、おまけに走行中は電気機関車のパンタグラフから青白い火花と異音を放ちながらという有様でしたので、こんな鉄道は現代の日本では絶対に考えられませんし、広大な中国といえどもこの様な鉄道はあまり事例がないかと思いますので、印象はなかなか強烈で快適とは程遠く、自転車並みの鈍足ながらもダイナミック過ぎる乗り心地は、とても21世紀の現代を走る鉄道とは思えませんが、乗車時間も短いだけあって、なかなか面白いものでした。

また沙湾からさほど遠くない石渓という所(沙湾からはバスを乗り継いで、3~4時間程で行けます)を走り、軽便SLが牽引する旅客列車が走る事で有名な芭石鉄路(「MAKIKYUのページ」でも以前、この鉄道に関する記事を何度か取り上げています)などと異なり、余り観光客が入り込まない事もあってか、路線や沿線の雰囲気も余り観光化されていない点も魅力ですが、運賃は1乗車5角(0.5元:昨年乗車時の値段です)と割安ながら、外国人だと分かると6倍の3元(といっても、専用の乗車券が用意されている訳ではなく、単に乗車券を6枚渡されるだけです)を徴収される点は要注意です。

写真は始発駅である草*具駅の様子と乗車中のワンシーン(この写真のみ昨年夏の旅行記記事にて既公開)、停車中の客車外観と車内の様子です。

あと沙湾の軽便鉄道に関しては、近日中に続編も公開したいと思います。

*具=「土」へんに「具」です。


ディズニーリゾートへ向かうシャトル列車~歓迎できる点もあるのですが…

2007-08-29 | 鉄道[中華人民共和国]

   

数日前には、香港ディズニーリゾート(香港迪士尼樂園)周辺を走るバスに関して取り上げましたが、今日はそのアクセスとして運行している地下鉄のシャトル列車に関して取り上げたいと思います。

この列車は香港の中心部とランタオ島の東湧を結ぶ東湧線の欣澳站を起点に、迪士尼(ディズニー)站までの間を結ぶ3.5kmの単線の盲腸線(迪士尼綫)で運行していますが、この路線に途中站の存在はなく、地下鉄とは言っても郊外を走っている事もあって、地下区間がないのも特徴(トンネルはありますが…)です。

また終点の迪士尼站周辺は、香港迪士尼樂園やその関連施設を除くと何もない様な所ですので、このシャトル列車は実質的にディズニーリゾート訪問の為だけに運行しているのですが、それでも一応地鐵(MTR)の1路線として運行されていますので、乗車に際しては非常に高い香港迪士尼樂園の入場券などは必要なく、地鐵一天乗車証(一日乗車券)や八達通(オクトパス・ICカード)をはじめ、一般の乗車券で乗車する事も可能ですので、MAKIKYUが昨年香港を訪問した際にも一日乗車券を持っていた事もあって、香港迪士尼樂園に用はないものの、この列車に乗車してみました。
(香港迪士尼樂園に用がなくても、この列車に乗る為に敢えて盲腸線に乗車する人物も結構いる様ですが…)

このシャトル列車で使用されている車両は、地鐵の従来車両を改装した専用車両(物理的には他路線の走行も可能です)を使用しているのですが、これでもか・・・という程に迪士尼を意識したモノとなっており、窓の形やつり革は鼠の形をしていますし、車内にも鼠や家鴨のオブジェなどが幾つも置かれている有様で、これは「東京」と名乗っていながらも隣県にある某テーマパーク周囲を走るモノレールに匹敵する状況ですので、もはや地下鉄というよりテーマパークの1アトラクション化していると言っても過言ではなく、迪士尼に興味がなければウンザリしてしまう程です。

ただこの改装車両は他の香港地鐵車両とは異なり、座席にはきちんとモケットが張られています(他路線車両の座席はステンレス製)し、先頭車両の前面展望が可能な事などは歓迎できると思いますので、他の香港地鐵車両もこの点だけは見習って頂きたいと感じるものです。
(当然鼠のオブジェやつり革は不要ですが…)

ちなみに写真はこのシャトル列車で使用される専用車両(走行中に最前部から留置車両を撮影・少々分かりにくいですが側面窓枠形状に注目)とその車内、車内のつり革と鼠のオブジェです。


中国鉄路・CRH2形電車~新幹線E2系ベースの動車組

2007-05-06 | 鉄道[中華人民共和国]

   

中国鉄路(国鉄)では4月18日に大ダイヤ改正が行われ、その目玉としてCRH(和諧号)と呼ばれる新型の動車組(中国では客車列車ではなく、電車や気動車の様に自走する旅客車両の事をこの様に呼称しています)を用いた高速列車(列車番号の頭にDという記号が付きます)が本格運行を開始しています。
(それ以前にも今年に入ってから上海近郊の一部列車などで充当され、中国で新幹線…と話題になりましたので、ご存知の方も多いかと思います)

この高速列車・和諧号で使用される車両は現在3種類が存在(他2種はボンバルディアとアルストームの車両で、今後更にバリエーションが増える見込みです)し、現在その大半を占めているのが日本のJR東日本で用いられている新幹線E2系をベースにしたCRH2と呼ばれる車両で、この車両は今までの中国鉄路で運行されている列車と異なり、出入口扉部分にステップが設けられていないのも特徴です。
(一般の中国客車は大抵の車両が低床・高床双方のホームに対応しており、高床ホームに発着する場合はステップを鉄板(跳ね上げ可能)で塞げる構造になっていますが、CRH(和諧号)の場合は発着ホームを高床ホームに限定する事で対応しています)

この車両は最初の数本が日本で製造されていますが、大半の編成は中国内の車両工場で製造されているのが特徴で、塗装は日本の東海道・山陽新幹線を意識しているかの如く白に紺色のラインが入っていますが、E2系ベースのこの車両にこの塗装もなかなか似合っており、同じく今年に入ってから中国で営業運行を開始し、離島某省で走り始めた新幹線車両よりもスマートな印象を受ける気がします。

また前面のライト数などがベース車両と異なっている他、CRHの表記とロゴの他に本格運行に先立って「和諧号」というネーミングが付けられ、この漢字表記が車両前面や側面窓上に大きく書かれている辺りは如何にも中国の列車という印象を受け、この車両のオリジナリティとも言え、細かい所では開閉時で異なるドアチャイム(MAKIKYUはE2系に乗車した事がないのですが、同系とは別物の様です)や、側面のLED式行先表示をスクロールさせている事(2枚目の写真は上段が列車番号・下段は「北京站-四方站 beijing station ‐ sifang station」をスクロール表示)なども挙げられます。
(前面や側面窓上に大きく書かれた「和諧号」の漢字表記は賛否両論がある様ですが…)

編成は4M4T(モーター付き・なし車両が各4両)の8両1編成で構成されており、現在は一般列車も走る在来路線を走る事もあって最高速度は200km/hに抑えられていますが、将来的には電動車(モーター付き車両)を増やす事で速度向上を図る事も可能な設計となっている模様で、CRH2は8両編成単独での運行をはじめ、一部の列車では2編成を併結した16両編成で運行される事もあります。

客室は8両編成中の1両(7号車)のみ1等座と呼ばれる2+2配置で横4列のゆったりとした座席が並ぶ車両で、その他の7両は2等座と呼ばれる2+3配置の座席が並ぶ車両となっていますが、2等座は座席モケットが紫・青系と緑・茶色系2種類存在(1等座の座席モケットはグレー系です)し、これは1両ずつ交互になっています。

この車両の座席は2等座でも座席の向きを回転できますし、その上リクライニング機能に加えてJR東日本の特急車両では御馴染みの座面が前にせり出す機能(これはリクライニング機能とはボタンの色で識別しており、背面テーブルにも説明書きがありますが、中国の列車では前例がない事もあり、戸惑っている乗客が多数見受けられました)まで付いています。

これは従来の中国鉄路座席車(軟座でも日本の普通列車レベルのボックス席や、一方向きに固定されて僅かにリクライニングする程度の座席です)とは比べ物にならない位のグレード(高い運賃を設定していながら、広州~香港間列車で使用されている2階建てステンレス製車両のお粗末な座席などは比較になりません)ですし、車内の設計もベースが日本製という事もあって、なかなか気が利いている部分(窓上のエアコン吹出口など)が幾つも見受けられますので、余程長時間の乗車(北京~上海9時間59分など)でなければ2等座でも充分快適に過ごせる車両かと思いますし、設備的には他の中国鉄路車両とは別格に感じますので、速さだけでなく設備的にも割高な運賃を設定するだけの価値がある車両であると感じます。

また日本の新幹線E2系にはない車内設備の特徴として、5号車に半室程度の併食スペースが設けられており、ここには飲食物などを販売するカウンターとテーブル4脚(1つのテーブルに座席4脚)が設置されているのも特徴ですが、CRHは専ら運行時間が短い列車に充当される事や、併食スペースが限られる事もあってか、本格的な調理設備などは設けられていない様で、他にも車内に給湯器が設置されている事(中国の列車では一般的で、お茶や方便面(=カップラーメン)などに使用します)なども特徴となっています。

なおこのCRH2は現在北京~天津間や上海~南京間(列車によっては途中の蘇州・無錫・常州・鎮江などにも停車し、区間列車の設定もあり)で多数が運行されており、その他にも北京発着(北京西站を含む)では石家庄・鄭州・武漢(漢口)・済南・青島(四方)などへ、上海発着(上海南站を含む)では杭州・南昌・長沙などへ向かう列車が設定されており、これらは他の列車に比べて運賃が割高な事もあってか乗車券購入も中国鉄路の他列車に比べると割合容易ですが、列車によっては乗車間際に購入しようと思っても売り切れ(それに直前になると機械的にロックがかかり、乗車券購入そのものが不可能になります)になっていたり、座席が満席で無座になる事もありますので、乗車列車が確定したら早めに乗車券を購入した方が無難です。

この他にも地方都市間を結ぶ列車や、一日1往復だけですが北京~上海間をロングランする列車も設定(所要9時間59分・市販の時刻表やネット上のダイヤ検索ではノンストップ扱いですが、南京などにも停車する様です)されており、一気にこれだけの高速列車を設定できる標準軌(軌道幅1435mm)で平坦な地形が続く線路や大柄な車体限界といったインフラは島国の人間として羨ましく感じますが、4月18日に運行開始した列車以外にも7月と10月に段階的増発が行われ、広州~深セン間と東北方面(北京~瀋陽・長春・ハルピン)以外の動力組充当列車(列車番号の頭にDが付く)は殆どがこのCRH2が運用される様ですので、広大な大陸を駆ける新幹線の今後の活躍に期待したいもので、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様も中国へ行かれる機会がありましたら、是非乗車されてみては如何でしょうか?

またこのCRH2を用いた青島(四方)→北京間のD56次列車(4月19日乗車・こちらをクリック)と、青島近郊を走る四方→青島西間のローカル列車・7060次列車(4月18日乗車・こちらをクリック)の乗車記も公開致しましたので、興味のある方はこちらもご覧頂けると幸いです。

あとこの記事を見て和諧号の運行時刻等が気になった方は、こちらへアクセスすると調べる事が出来ますので、興味のある方は是非どうぞ。(中国語ですが漢字ですので、大半の方には恐らく没問題かと思います。ただ時々リンク切れなどが発生しますので、その際は少々時間を置いてから再度アクセスしてみて下さい)

写真は四方站(青島)に停車中のCRH2とLEDによる行先表示、側面のCRHと和諧号のロゴです。

先月の中国訪問ではデジカメ故障に見舞われた事もあり、急遽手配した1回用カメラで撮影していますので画像の質が低下し、また車内の画像はありませんが、この点は悪しからずご了承下さい。