田中眞紀子(シンガー・ソング・ライター)

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学芸大学の朝日、再び  その3

2010-05-21 02:41:47 | Weblog
やっと、眠い病が治まってきました。
だいぶ普通の人な感じがする。。

第3部、ホンダリョウのドラムとのデュオ。
同業者の皆様は、ライブ本番のステージが始まった時、‘帰ってきた’とか‘戻ってきた’とかいう感覚になること、ありません?
リョウ君のドラムに乗せて歌い出した時、まさに‘この場所に戻ってきた’という安堵感に、この日初めて包まれたのだった。
1月のチバ氏レコ発の際のステージ経験が、安堵感の要因だ。

実はこの日、自分リハでもアピアでのリハでも‘米兵たちのイラク’がどうしてもまともに歌えなくて、こんなライブ上最大クライマックスでコケたらどーするんじゃ!という恐怖に苛まれていたのであるが、本番はまるで不安なく、最後まで半分神がかった感じでしたね、大袈裟だけど。
リョウ君の爆音ドラムもゆりかご状態。(笑)
感覚や感情の交信はスムーズで、何の心配もなく全身の毛穴から歌を放ってるような…
完全に物語の登場人物のところに私は存在していて、それは内容のキツさや歌唱の激しさとは相反する、穏やかでスイートな感覚であった。

しかしながら、そんなスイートな感覚は、アンコールの「朱になれ」で粉砕される。(笑)
もちろん、こちらからお願いしているのであるけれど、本番中、私がしていることといえば、怠雅とリョウ君という、この界隈の名うての美青年二人が放つ爆音から、我が歌を全力で守るってな感じでありました。
1部でも3部でも、それぞれのパートナーに気持ちが寄り添っていくというか、相手を活かし、自分も活かされたいという、それこそ和合の感覚が強かったが、アンコールは‘何よっ、うっさいわねっ!’てな戦う感じというのが本音で、後で聞くと、お客様の感想が賛否真っ二つ。
私が2人を制御できてない感じ、3つの個性が同時進行している感じを、良しと思うか駄目とするか。
まぁ、こればかりは、聞き手の好みもあるだろうし、正直、3人でどうあるべきか、まだわかんないや。

前にも書いたことがあるが、2人でやるのは何でも恋愛だけど3人は社会になるから、恋愛より難しいんだよ、というトシさんの言葉を深く痛感する。
ただ我々としては、練習したことはちゃんとやれていた。
この日の経験を土台として、この形も何か発展があれば面白い。
案外、わかんないでやる方が面白いのかもしれないな。私は何でも理性で制圧しちゃうからな。(笑)
自分で自分に強いている‘発表’の域を、意に反して脱してしまうのは‘有り’だ。
この日の「朱になれ」は、そんなところにいたのかな、と思う。



終わって、初めてのお客様や久しぶりに来てくれた人達のお相手をしていたら、何だか向こうの方で超盛り上がっている一団。誰のライブの打ち上げかしら~、っていうぼんやりした意識で眺めていたが、近寄ってみるとどうやら私のライブの打ち上げらしく(笑)、私がその一団に参加した時には、‘今日のライブは良かったって話はひとしきり終わって駄目出しタイムに移って’いたそうで、座った途端ああだこうだと四方八方からご意見を浴びまくる。
結局話は尽きないうえ、私ももう帰れない時間になっており、学芸大学駅前の居酒屋で朝まで。
こういうのは大抵、午前3時位で皆トーンダウンするもんだが、完全に寝ちゃった人以外は最後までしゃべりまくっていた。
あぁ、なんてばかで愛しい人たちかしら!(笑)

とにかく全力で頑張ったし、ある水準のところまでやり切ったというライブだったから、言ってくれることが全て、とっても素直に入ってくる。
というより、それらのご意見こそが、頑張った私への何よりのご褒美だ。
賛否の‘否’は全部‘次’への指南となる。
もうこれ以上は出来ることがないってくらい全身全霊でぶつかって行って、えいやっ!と山を飛び越えてみたら、放り出された所は残念なくらい平坦な道の途中で、どうやら私はこの道をまたまたテクテクと歩いて行かなければならないようだ。
けれどその道のある景色は、この5月の陽光のように、すがすがしく光り輝いている。
そんな感じだな、今は。

店員さんの‘まだ帰んないのかよっ!’て視線を受けながら店を出ると、もう日が昇っていた。
今年初めの年越しライブを思い出す。
あの時は、朝日と月が一緒に出ていて、きれいでしたよねぇ。
と、リョウ君がアーティスティックなことをつぶやく。
あぁ、函館くんもいて、今年は何か起こそうなんて話をしたね。
どうやら何かが起ころうとしている感がある。
私が今年関った面々は、今年の秋にかけてそれぞれデカいライブに挑むようだ。
そうやって、何かに向かって、ふっかっけていけばいい。
私もやるさ!
再びの朝日に、そう思った。

帰りの電車。リョウ君から人生の節目のようです言われた。
そんな大袈裟な、と笑ったが、本当ですよ~!と。
この日、リョウ君のお父様も来て下さっていて、後でリョウ君のボイスを読んだら、とても喜んで下さったとのこと。
若いリョウ君からのそれらの言葉は、駄目駄目な一社会人、一人の大人として、心底救われる思いである。

私は、人に恵まれている。
ありがとう!