僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

Give me more sweet…⑧ give me rapport(ラポール)

2018年07月16日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

警告:最終回ですが、成人向けの表現が含まれています、個人の責任で閲覧して下さい。

 

 

 

 

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 

 

 

 

留美子がシャワールームから出ると辰雄は
こっちに来てごらん、と窓際に誘った。
カーテンを開け放すと、まだ所々照明の残ったオフィスビルを見下ろす。

「きれいね、でも恥ずかしい。向こうから見られちゃう」
「いいさ見せちゃおう。ここに愛し合ってる2人がいるよって」

辰雄は後ろから抱きしめる。留美子の濡れた髪をかき上げ耳元で囁く。
「留美子、好きだ」
「嬉しい、私も大好きよ」

ウエストをローブの上からなぞる。向き合って何度もキスを重ねる。
眼を閉じて、柔らかい唇とねっとりと絡みつく舌を感じながら、
辰雄の指がいつの間にかローブをはぎ取っていることに気づかないふり。

 

唇と舌は首筋から肩へ、さらに乳房と乳首を入念に這う。
指先はウエストから尻のふくらみへ、太ももから茂みの潤いへ
ソフトに、時にハードに、じれるほどゆっくりと繰り返しながら進む。

目を開けてなんかいられない。敏感な部分に執拗に加えられる愛撫。
体が勝手に反応し、こらえていたあえぎ声が漏れてしまう。
羞恥心いっぱいの自分にあふれる愛液。早く来て、と願いくねる体。

 

何度も抱き合っているのに、こんなに丁寧に優しく愛してくれる男がいるなんて。

 

いつだって、留美子さんは何が欲しい?って聞かれるけど、
私が本当に欲しいのはこの優しさなんだといつも思う。


辰雄さんは私が本当に欲しいものを知ってる。

 

誰かに見られたっていい。今が好き。今この時が一番好き。
明日になればまたひとりぼっちだから。でも、この人なら…。
2人のこの時間が毎日ずっと続くのなら、何を犠牲にしてもいい、
そう望む気持ちがどこかにあるけど、それはかなわぬ夢の中だけの話。

今は精一杯全身で楽しむのよ。自分にそう言い聞かせる。


私の全身の力が抜けきった頃、
満を持したように、辰雄の堅いものがゆっくりと入ってくる。

その瞬間だけ覚醒したように目を開け、見つめながら受け入れる。
この人に今愛されている。胸いっぱいの思いが涙になってこぼれる。

 

そっと眼を閉じて夢の中へ落ちていく。
辰雄の背中に回した手に力を入れる。絡めた足を何度も何度も引きつける。

感じるのこの幸せ。会えなかった昨日の分も明日の分もいっぱい感じるの。

お願い、give me more sweet  give me rapport(ラポール)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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Give me more sweet…⑦

2018年07月15日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

 

ママの古い常連客のひとりに連れられて辰雄は初めて店に来た。

 

「よう、ママ。彼はね最近ぐっと力をつけてるんだ、よろしく頼むよ」
「まぁ素敵な方ね、スーツがお似合いよ。もしかしてダンヒルかしら?
ちょっと拝見してもいい?」

そう言ってスーツのタグを見る。ママの良くやるスキンシップのテクニックだ。

「ほら当たった。最近はアルマーニばっかり流行って
子どもの制服にもアルマーニって騒いでるけど、
渋い紳士は昔からダンヒルなのよ」
「おいおい、悪かったな、俺はアルマーニだぞ」


すぐに私が呼ばれた。

 

「この子、留美子。私の妹なのよ~、いい子だからいじめちゃダメよ」
「おいおい、俺がいじめたことなんかないだろ。妹?顔似てないしな」

 

何度か連れだって来たが、そのうち辰雄はひとりでも来るようになった。


辰雄はいつでも紳士だった。店の客の多くがそうであるように、
下卑た下ネタで無理矢理盛り上げようとすることも無かったし、
ITミュージック業界で大成功した業績を自慢することも無かった。


そんな辰雄に初対面の時から留美子は惹かれていった。

ひとりの辰雄は週に2度来店する時もあったし、1ヶ月来ない時もあった。

来店した時は必ず留美子を指名したし、他の客に付いている時は
ママがそれとなく気を遣って2人にしてくれたりもした。

レストルームから戻る辰雄におしぼりを渡す時、
さりげなくプライベートに誘われた時もさして驚かなかった。

いつかそうしてくれるだろうと期待していたし、
そうなるのが自然な気がしていた。

 

つづく

※画像はwebからお借りしたものです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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Give me more sweet…⑥

2018年07月14日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

 

 

私はもうあと2ヶ月で35になる。
同級生はほとんどみんな結婚して子どもも2人3人育てている母親だ。
それがどうした?自分は自分だろ、とも思う。

普通のOLでは考えられないほどの収入を得て、
高級マンションでひとり暮らし、生活はかなり贅沢だと自覚している。


 

恋愛?
そう聞かれるとどうなのだろう、男とはずいぶんつきあってきた。
だから私も成長したし、今の地位があるのかも知れない。

枕営業?
ライバル達はお店で指名を稼ぐ私を影でそうディスってる。
だけど私は一度だって指名を取るためだけに抱かれたことは無い。

いつだって本当の恋愛なんだと思っていた。


ちょっとしたきっかけでこの仕事をするようになって10年、
自分から好きになった男とは自然にそうゆう関係になった。

中には俺と結婚しよう、と言ってくれる人もいた。
だけどそんなことベッドの中だけの嘘だと初めから分かってる。

 

自分だけの恋愛でいいんだと自分に言い聞かせてきた。

 

だからか、大抵の男とは1年と続かなかった。
でもそれだからと言ってお店での人気は衰えることがなかったし、
お店のママも私を妹のように大事にしてくれた。

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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Give me more sweet…⑤

2018年07月14日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

 

「留美子さんは何にする?」
「さっき美味しいワインをいただいたから、なにか違うもの」

「それじゃぁこちらにマンハッタンを、僕はドライマティーニで」と
カクテルをリクエストした。


かしこまりました、とボーイが礼をして去ると
辰雄は留美子をじっと見つめた。

さっき辰雄さんはラウンジに移動して、私の欲しいものを聞く、と言っていた。


 

いつだって彼は私に「何が欲しい?」と聞く。

それは、洋服だったりアクセサリーだったり、香水だったりバッグだったり
するのだが、みんなデザイナーズブランドの高級ブティックでのことだ。

これが素敵、と答えるとすぐにそれは私へのプレゼントになる。

そんな生活を続けて5年が過ぎた。


カクテルを飲み干した頃、私はそっと彼の手を取る。
彼は私と他愛の無い会話をした後「留美子」と敬称無しで呼ぶ。
私は彼の手をぎゅっと握る。店を出る合図だ。

 


こんなことをもう5年も続けてきたのだ。

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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Give me more sweet…④

2018年07月13日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

 

「これって耳がボワンとしないだろ?」
「あっ、そう言えばしなかったわ。スカイツリーの時は耳が変になった気がする」

「箱の中の気圧を調節してそうならなくしてあるんだってさ、
飛行機と同じ装置をつけた最新式のエレベーターで、まぁ実験用らしいけど」
「すごいのねぇ、もう着いちゃったのね、ほんとに速~い」


さっきと同じように3畳ほどの空間を抜けドアを開けると
2基のエレベーターホールがあり、その奥が店だった。
全体の照明が落としてあり、黒を基調にしたデザインの
シックで落ち着いた入り口になっている。

辰雄がドアボーイに小声でささやくと
ヘッドセットで連絡したのか、すぐに中から正装したボーイが現れ
お待ちしておりました、こちらへどうぞと丁重に礼をして
2人を窓際のカウンターへと案内する。


 

黒に点々と星座をあしらった装飾と控えめな照明が
窓から見える夜の都会に重なって映っている。

大理石の床は見事に磨き上げられ、これもウユニ湖の夕暮れ時のように
照明を反射し、店内のきらめきに一役買っているようだ。

ダークなワインレッドのカウンターは緩やかなカーブを描き
カーブの中心付近に小振りだがグランドピアノが置かれている。
ビロードのスツールはカウンターと同系色だ。


 

客がいようがいまいが関係ないというように
初老のピアニストがどこかで聞いたことのある曲を
ジャズアレンジで奏でている。

合わせているウッドベースはまだ学生なのではと思わせるほどの
若者で、まるで2人が親子のような印象だ。
ジャズトリオにありがちなドラムは無く、
2人だけなのも新鮮で、ベースの刻むリズムが引き立っている。


まだ店の中はまばらで、8つほどあるボックスシートに客は
一組だけだった。

辰雄はグラスを運ぶボーイに声をかけた。

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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Give me more sweet…③

2018年07月13日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

 

辰雄は右手を挙げ店員を呼ぶと退席を告げた。

マネージャーらしき制服のスタッフに丁寧に見送られて
2人はエレベーターホールに向かった。


6台あるエレベーターのひとつは扉を開けて
客が乗り込むのを待っていたが、
辰雄は前を通り抜け STUFF ONLY と表示されている
一番奥のドアに進んだ。


ドアを開ける3畳ほどの空間があり、
右側にSTUFFと書いてある部屋のドア、
左側には何の表示もの無いエレベーターがあった。


辰雄が△マークを押すと5秒と待たないうちに
ポンッという柔らかい音がエレベーターの到着を告げた。
乗り込んだ辰雄は慣れた手つきで52階のボタンを押すと
留美子に向き直りすぐに言った。


「ここは初めてだったよね」
「ええ、初めてよ。」

「このビルは高層だけど4階から25階がオフィス、
その上がホテルなんだ。それぞれ別のエレベーターになってるけど
これだけは全階どこでも行けるし、それに速い」
「早い?」

「そう、お客を待たなくていいし、スピードは多分スカイツリーより速い」
「スカイツリーのエレベーターは乗ったことあるけど
表示される階数がすごかったわ」

 

エレベーターはドアを閉めた直後になめらかに動き始める。
最初にわずかに重力の変化を感じたが、その後は全く揺れることも無く
めまぐるしく変わり続けた階数表示は、最後の数秒で急にゆっくりとなり
目的階に静かに到着したことを告げた。

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

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Give me more sweet…②

2018年07月13日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

 

「そうゆうものだって思っちゃっていいんじゃない。
 わざわざ不味いもの食べる事ないさ」
「そうね、そうする」

「素直だね、留美子さん。だから一緒に食べるの好きなんだ」


 

辰雄はワインを2人のグラスに注ぎ足し、
4分の1ほど残したボトルにコルクをきつく閉めた。


「今日はもういいの?ワイン」
「残りはお店のソムリエに分けてあげよう」

「ソムリエさんもお友だちなの?」
「いや、そうじゃないけど、ペトリュスはなかなか飲む機会が無いだろうから
勉強になるだろうと思ってさ。この店好きだし」


「そんなに高級なもの、私なんかが飲んじゃっていいのかしら」
「値段なんか知らなくて美味しいと思って飲んでくれる人が一番だって
ワインも思ってるよきっと」

 


 

「今日は私、いつもより沢山いただいちゃったみたい。ほんとに美味しくて」
「うん、留美子さんもワイン好きだものね」

 

 


「辰雄さんと初めて食事をご一緒した時のこと覚えてる?」
「もちろんさ。でもあの時よりずっと呑兵衛になっちゃったかな」

「やだっ、そう言われると恥ずかしいんだけど、
あの時はワインの飲み方も知らなかったし、緊張して味も分からなかったし」
「初々しい留美子さんも大好きですよ」


「まぁ、今は熟しちゃったってこと?」
「そんなこと無いけど、熟した留美子さんも多分大好きだと思う」


「ワインで乾杯した時、グラスの持ち方を教えていただいたわ」
「ボウルを持つのが正式だってこと?」

「そうなの。この持ち方にしてからワインが本当に美味しくなっちゃった」
「そう言えば最近は飲みっぷりがいいよね」


 

「気取らないでいいって言われても。このワイン何だかどきどきしちゃう」
「また美味しいもの食べに行こうね、今度何が食べたい?」

「そんなぁ、今美味しいもの食べたばっかりなのに。
考えられないわよ」
「それもそうか、確かに、料理に失礼かも知れなかったね。
じゃぁラウンジに行って留美子さんの欲しいものは何なのか
じっくり考えようか」

 

つづく

※画像はwebからお借りしたものです、問題がある場合は削除します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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Give me more sweet

2018年07月11日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

 

「どう?ここの店」
「辰雄さんと来るお店はどこもみんな素敵」

 

「料理は?」
「お肉も、このちょっと酸味のあるソースと、あとワサビかしらこの味」

「うまいだろ?ステーキは肉もだけどソースが決め手だよな」
「お肉もブランドのA5ランクとかのなんでしょう?」

 

「それはどうだか知らないけど、ランクなんかどうでもいいと思うよ。

 僕はここのシェフを信頼してるから、どんな肉でも美味しく出してくれるし」

「ワインも何だかとっても美味しく感じる」

 

「そう言ってもらえるとご馳走したかいがあるよ」
「フランス語かしら、読めないけど。この前のはたしかお城のラベルだったけど

 これはとっても格式がある感じがするわ」

 

 

「これはペトリュス。最近はなかなか手に入らないんでフランスの友人に頼んで少し回して貰ったんだ。

 この店に預けてあるから、気に入ったらまた来よう」

「お高いんでしょう?」

「うんまあね。でもワインも肉と同じで値段じゃ無いと思うよ。高くても美味しければいいし、安くても不味かったら嫌じゃないか」
「それはそう、でも…」

 

「留美子さんはそんなこと考えないで、美味ければ美味い、不味ければ不味いって言ってくれればいい。

 ラーメンだってビストロのフレンチだって同じさ」

「辰雄さんがそう言うとそうなんだって気がする。

 でもいつだって美味しいから、たまには美味しくないものも食べないと、こうゆうものだって思っちゃうのが怖いわ」

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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YOKOHAMA黄昏…②

2018年04月02日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

 

ねぇ辰雄、今何考えてる?
うん

うんじゃなくて、何考えてるの?
去年もこうやって夜景見てたなぁって

 

 

 

 

 

 

そうだね、多分隣の部屋だった
え~っホント?良く覚えてるね

こうゆうとこ来るの初めてだったから、すごくどきどきしたんだ
部屋は寒くないのに、留美子震えてたよね

顔だけ熱くなっちゃった感じで恥ずかしかったかな
もう一年経ったんだ

 

 

 

 

また来ようねって言って、また来られたね
そっか、じゃぁまた来よう

もう震えてないでしょ
うん、あったかい

 

辰雄はそう言って留美子の柔らかい小さな手を5回握った
留美子が寝返りをうってしがみついてきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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YOKOHAMA…黄昏

2018年03月26日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

 

素敵なコンサートだったね

留美子は何が一番良かった?

 

う~ん、曲とかテクニックとか分かんないけどあれかな

みんなすごく上手だから俺だって分かんないけど

 

一番若い人、ほら高校生だって言ってた人

あぁ、すごく緊張しちゃってたけど、そこがまた良かったって感じ

 

辰雄も高校の時からギター始めたんでしょ?

ま、一応な

 

もう一度飛鳥見て帰ろうよ、ほらあんなにきれい

風が冷たくなってきたけど大丈夫?

うん、辰雄にくっついてれば平気

昼間あんなにあったかかったのにね、やっぱ海だからかな

 

あんな船で世界中行けたらいいね

いつか連れてってやるよ

 

えっホント?

ウソに決まってるだろ

 

なぁんだ、こら

でもさ、うんと年取ってから留美子と行けたらいいな

 

私がオバサンになっても?

わしがジジイになっても!

 

ねぇ辰雄、キスしよ

人が見てるじゃん

 

いいの、今したくなっちゃったの

寒いからどこか風の来ないところで休憩してこうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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プールサイドストーリー…最後のジェダイ

2017年11月16日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

ほっとしたユキオは自分のクロールで泳いだ

いつもの2ビートキックだ

ゆっくりと泳いでも気持ちがいい

 

「みなさーん、バタバタ急いで泳がないこと-、記録を狙ってるんじゃないですからねー

ゆっくり長く泳ぐのが目標ですよ-、はい、もう1本いきまーす。」

 

ユキオがゆっくり泳ぎ出すと、早速ダースベーダーが

バタ足をもっと強くするように声をかけてくる

 

2-3度バシャバシャとアピールしてすぐ自分のペースに戻る

いくら言われてもそのバタ足では泳げない

しかし、静かな2ビートでも、ゆっくり手を回しても十分にスピードはあるはずだ

 

最後の1本を泳ぎみんなが集まる

「は~い、クロールの練習はこれで終わりにします

次回からはそれぞれの泳ぎを練習しますからね~」

 

やったー、これでやっと平のスタートだな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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プールサイドストーリー…バタ足

2017年11月11日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

 

けのびは問題なかったが

「バタ足」でダースベイダーの攻撃を受ける

 

「頭はもっと下げて、足はもっと上で大きく蹴らないと!」

バシャバシャと派手に水しぶきを上げて進むバタ足が理想型のようだ

 

そんなのやったことないし、だいいちユキオのマスターしたクロールは

全体に水しぶきが上がらない様に泳ぐのがお手本だった

 

案の定5メートルも行かないうちに腿が疲れて進まなくなってしまう

 

「ほら、もっとしっかり蹴って!」

ダースベイダーの容赦ない叱咤が繰り返される

 

ユキオの後からスタートしたバシャバシャタイプの人があっという間に追いつくと

「遅い人は左によって右側を開けて下さいね~」と指示される

 

ビート板を使って25メートルの対岸までのバタ足では2人に追い抜かされる

息も絶え絶えに、ぱんぱんになった腿をコースロープにもたれて休ませる

すかさず

「コースロープにはもたれないでくささ~い」と注意される

はいはい、そうでしたそうでした

 

ギブアップを真剣に考え始めた時、声が聞こえた

「次は25メートルクロール行きまーす」

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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プールサイドストーリー…ケノビ

2017年11月09日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

講師の先生は8人、結構沢山のスタッフがいることに安心する

中には真っ黒に日焼けして、いかにも水泳部デスって感じの大柄なお兄さんもいる

全く日焼けしていない色白のおねえさんは、普段事務仕事なのだろうか

大柄なお兄さん一人だけ黒で、後全員は白いキャップを被っているのは、

ストームトゥルーパーとダースベイダーのヨーダようだ。

 

泳法別のグループに分かれる前に先生の自己紹介があった

驚くことに、全体を指揮する先生は一番先生らしくない太ったおばさんだ

 

この人本当に泳げるの?

 

男なら絶対ビールっ腹と冷やかされるだろう、妊娠臨月みたいな体型だし…

さすがに失礼だと思ったので金子さんにも感想は伝えなかったが、

多分ほとんどの人が同じ気持ちだったと思う。

 

そしてその人が言う今後の指導予定を聞いてもっと驚く。

「平泳ぎも背泳ぎも基本はクロールなので、全員クロールの練習から始めます!」

 

え~っクロールはクロールコースの人がすればいいじゃん、

だって平も受講条件が「息継ぎ付きのクロールで25メートル泳げる人」だったはずだし

それいらないから平のキックを教えてよってカンジなり。

 

まずは蹴伸びとバタ足。

「けのび」と聞くといつも「オビワンケノビ」と言いたくなってしまうのは自分だけかもと思い

ついついニヤついてしまうユキオだ。

オビワンケノビとは初期スターウォーズのジェダイだ。心の中でつぶやく…

ア フォース ウィルビー ウィズミー。。

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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プールサイドストーリー…初日の血圧

2017年11月08日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

 

集合場所に着くと金子さんがソファーに深々と座り込んでいた

 

「こんにちは、早いですね」

「早めに来たんだけどね、やっぱり引っかかっちゃった」

 

「何ですか、血圧?」

「そう血圧、家出る時は大丈夫だったんだけどね」

 

「薬は飲んでるんでしょう?」

「飲んでてもダメなのよ、185だって」

 

「え~っそんな高いんですか」

「まぁ時々高い時は高いんだけど、今の時間なら160は大丈夫だと思ってたんだけどねぇ」

 

「高めの人は少し休んでから測るといいって…」

「そう思って早めに来てじっとしてたんだけどねぇ」

 

「まぁだ20分あるから大丈夫ですよ、あとその機械狂ってるかも」

「そっか、こんどはあっちの機械で測ってみようかな」

 

 

 

しばらくして、先に着替えてプールサイドで待機していたユキオの隣に

笑顔の金子さんが座った

 

「オッケー出たんですね」

「159の88でぎりぎりセーフよ、あぁ~あ」

 

「良かったじゃないですか、やっぱり休めば大丈夫なんだ」

「あっちの機械がよかったのかもね」

 

 

 

そして、準備体操が始まる。

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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プールサイドストーリー…泳法別①

2017年11月05日 | ケータイ小説「パトスと…」

 

 

 

 

ユキオは早速応募することにして、説明会に参加した

 

毎回体温と血圧を測定し、看護師の問診を受けること

シャワーは浴びずに開始時間までプールサイドで待つこと

キャップには名前を書いた布を貼り付けること

など、注意点を確認する

 

「あなたも受けるの?なに、平泳ぎ?」

 

声をかけてきたのは、いつもプールで顔なじみの金子さんだ

噂に聞いたところでは、中国残留孤児なのだそうだ

金子さんという名前も、中国で金という名字を

日本では金子とか金沢に直す人が多いのだそうだ

 

「はいっ一緒なんですね、いやぁ心強いな」

「何言ってんの、こんなお婆さんじゃ何の役にもたたないわよ」

 

「でも、知ってる顔って1人だけですよ」

「そう言えばそうねぇ」

 

「ちゃんと泳げるようになりますかね」

「アタシはそれより血圧が心配よ」

 

「高いんですか?」

「ほら、基準が160/90以下ってことじゃない、アタシはぎりぎりかも」

 

「適当に書いちゃえばいいじゃないですか」

「ほら、あそこに座ってる看護師、あの人が厳重にチェックしますって言ってたよ」

 

「まぁまぁ大丈夫ですよ、いつも泳いでるんだし」

「ならいいけど…」

 

 

 

と言うわけで泳法別水泳教室が始まるのだ

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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