ビールを飲みながら考えてみた…

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ネット広告の在り方は変わるのか

2009年02月04日 | コンテンツビジネス
ここにきてネットにおける広告代理店の再編が急速に進んできている。ネットの一般化という流れの中で、ポータルサイトなどへの広告の再販/代理店機能を果たしてきたNEPが歴史的な役割を終えたというのはそれはそれで正しいことなのだけれど、今、広告業界が直面している事態はもっと激しいものだ。果たしてこの先、広告業界はどのように進むのだろうか。

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100年に1度の不況、あるいは広告不況が叫ばれる中で、この広告業界を巡りいったい何が起きているのであろうか。

まず何よりもこの日本で大きな地殻変動として起きているのが「既存メディア」を巡る若い世代の断絶だ。これまでラジオや雑誌、新聞については若者離れが叫ばれていたけれど、ここにきて、ここ数年2兆円の広告費を確実に納めていたテレビまでもが若者が見ないという事態が顕著となった。

これまでテレビというのは若者が担ってきた文化だと言っていだろう。新しいタレントやギャグ、流行語を産み出して来たのは若い世代だった。しかし今、テレビではなくPCやケータイの方が大事な世代、テレビはないけれどケータイとPCは必需品と考える世代が台頭しつつある。そのため視聴率至上主義のテレビ業界としては、広告収入の低下と相まって、より数字が取れる中高年層をターゲットに、低予算で作れるドキュメンタリーや温泉・旅番組などに力を入れることとなり、更に若者離れに拍車をかけることとなる。

では若者はいったい何を見ているのだろう。答えはテレビではなくネットだ。しかしネットというのは基本的に「オン・デマンド」型のメディアだ。TVや新聞、ラジオというこれまでのメディアはユーザーが特定の選択肢の中から好みのものを選ぶということで成り立ってきた。地上波放送はNHK×2CH+民放4ないしは5CHの中から見たい番組を選択することになっているし、新聞なども全国紙と地方紙をあわせても選択できる数は知れているだろう。

しかしネットは違う。確かにいったんは検索サイト/ポータルサイトなどにアクセスするかもしれないが、最終的には目的のサイトにたどり着くことになる。既存のメディアであればせいぜい6~7つからの選択肢から選ぶわけだけれど、ネットでは無数の選択肢の中から自分の好みのサイトを選ぶことになる。つまり広告を表示するメディアとしてはあまりにも分散しすぎることになる。

また消費社会の進展によって、消費者自身も賢くなっており、TVCMなどで大量にOAすることで関心や購買意欲を喚起するというやり方が通じなくなっている。

そうした状況を踏まえたとき、これまで同様に「量」をベースとしたマスプロ的手法というのは通じにくくなってきている。第一義的にはマスプロ的手法の最たるテレビのメディア力が弱くなったということであり、その代替であるネットの世界ではあまりにも分散しすぎており、マスプロ的な手法が通じにくいためである。

そこで必要とされるのが、潜在的な興味や関心を持ちそうな層に対して、彼らが接触するであろうあらゆるコンタクトポイントに対して「接触機会」を確保しつつ、興味や関心を引き出すための仕掛けやシナリオを提供していくことだ。

つまりコンタクトポイントとなりそうなメディアを横断的(クロスメディア的)に抑えることと、あくまで広告に対してフィルターをかけているような消費者に対して「関心」を引き出すことが求められるのだ。

今回の電通と博報堂の動きというのは、このうちの前者に対する動きといえるだろう。これまでのようにサイトに対する「バナー枠」を販売するというだけではメディアレップとしても先は見えているし、さまざまな仕掛けを必要とする広告代理店からすれば、コンタクトポイントの1つであるポータルサイトを安定的に確保できることは大きな意味がある。

しかし実際にはこれだけではなく、後者のような消費者を動かすための「仕掛け」「シナリオ」をどう作り出すのかが、媒体を抑えるというのは全ての起点となる消費者との接点を確保する以上の意味はないのだから。

その一方で、全く別のアプローチとして、分散化する関心=利用されるサイトに対して、ネットワーク化して媒体価値を高めようという試みがある。こちらはクロスメディアというアプローチではなく、時間競合性の弱いWEBの世界での試みだ。通常、テレビにしろラジオにしろ、特定のCHを利用していれば他のCHは利用できない。つまり「時間」における競合性が高いといえる。

しかしネットの世界はアーカイブ化された世界であり、オン・デマンドにて利用されるメディアだ。それは拡散の世界であるものの、同時に他のサイトとの競合性が薄いということでもある。そのため複数のサイト間をまたいで1つの特定の広告を露出する(より多くのユーザーにリーチする)といったアプローチも可能となる。

これまでのように「量」で凌駕することが難しくなった「マスメディア」と分散化しすぎて「媒体価値」を活かしきれない現状を「量」でカバーしようとする「ネット」の世界。いずれにしろ今のままの広告ではありえないのだろう。



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