ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

ジプシーキャラバン:ジプシーたちの音楽と苦難の歴史

2010年09月23日 | 映画♪
インド北部を発祥地とするジプシーたちを「ロマ」と呼び、ロマでないものを「ガジョ」と呼ぶ。この作品は4ヶ国のロマのミュージシャンたちが一緒にツアーをするドキュメンタリーだ。言語も音楽も違う彼らだが、ともに数世紀にわたっての迫害を受けており、それぞれの音楽を聴けばどこかでそのルーツがどこかでつながっているのでは…と思わせる。ジプシーたちの感動的な音楽と彼らの生活を追った作品。

【予告編】

映画『ジプシー・キャラバン』公式予告編


【あらすじ】

ロマ(ジプシー)はインドにルーツを持つ移動型民族。世界中に散らばって生活をしているが、とくに東欧や南欧に多い。そのロマの人々が住むスペイン、ルーマニア、マケドニア、インドの4つの国から来た5つのバンドが、6週間かけて北米諸都市を回るという「ジプシーキャラバン・ツアー」が行われた。カメラはそのステージの模様やツアー間のバンドの表情だけではなく、メンバーそれぞれの故郷にも向かい、その音楽的ルーツを探る。(「goo 映画」より)


【レビュー】

真っ暗な観客席の通路をステージに向かって歩き出す。コンサート冒頭、“ジプシー・クイーン”エスマの歌声は、その出だしから僕らの感情を揺さぶるだろう。その歌声には人生の様々な機微や祈り、ジプシーという民族の苦難の歴史を一身に引き受けたような「深さ」がある。

音楽というものは、結局は人々の情動・人間の根源的な部分に触れるものであり、喜びや悲しみや感情によって生まれたものなのだろう。

しかし人間が「感情的な存在」だとしても、都市や高度化された社会ではそうした感情を表現することは限られる。「憎い」からといって人を殺すことは許されないし、人間関係を円滑にしようとすれば自らの感情を押し殺すことも必要だ。一緒にいたいとしても終電の時間になれば帰らなければならないし、昼間から酒を飲んでるわけにもいかない。

都市で生きるということは、その社会のルールの下に、人間のもつ根源的な感情やエネルギーを押し殺すことでもある。そしてその押し殺された感情やエネルギーが暴発しないように、ガス抜きとして「祝祭」というものが用意される。1年に1度の祭りで民衆が羽目を外し(ガスを抜き)、次の祭りまでの労働を供給する。ハレとケ。「祭り」とは社会を安定させるために権力の側がもたらした制度だということもできる。

音楽というものも、権力の側から見ると日常の中で手軽な「ガス抜き」という側面もあるのだろうが、実際にはそれ以上に危険なものだ。音楽が人間の情動・根源的な部分に直接結びつくものだということは、「ガス抜き」以上に人々の感情を煽り、僕らを「理性」という檻から解放し、社会のルールから逸脱させる可能性があるということだ。

そしてそういった音楽を生活の糧としている人、そうした音楽の演じる人、そうした音楽と供に生きている人々というのは、社会のルールをいつ逸脱するかわからない存在とみなされる。彼らはルールよりも自由を、感情に従って生きていくだろうから。

象徴的な場面がある。

彼らがアメリカの公園内の池で遊び半分に糸と餌で釣りを始める。魚を釣っておおはしゃぎするジプシーたち。そこに警官たちが現われ、その行為を注意する。

当たり前の話だ。都市では都市のルールがある。公園で魚釣りは禁止なのだ。でも彼らの住んでいる場所ではどうなのだろう。あるいは山や海で魚釣りをすることは問題ないだろう。何故、公園で釣りをすることが禁止なのか。それはルールだからだ。それによって社会が安定するからだ。僕らはそれに従い、疑問も持たない。それどころか、公園で「釣り」をする(ルールを逸脱する)者を非難がましく見るだろう。

そう考えると、ジプシーたちの迫害の歴史というのは(体制側にとっては)必然だったのかもしれない。

この映画の中で演じられるロマたちの音楽は、聴く者の心を揺さぶるものばかりだ。それは毎日、あらゆる場面で小さな「祭り」が用意され、商品化された「音楽」に馴染まされ、体制内化されている僕らの心さえも震わせるだろう。やはり僕らもまだまだ「感情的な存在」なのだ。


【評価】
総合:★★★★☆
メッセージ性:★★★☆☆
ライブが見たい!:★★★★★

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ジプシー・キャラバン [DVD]


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【出演者】

Esma Redzepova


アントニオ・エル・ピパ「デ・タブラオ」


Latcho Drom - Taraf de Haidouks



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