たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

いろは坂で滝めぐり。アクダラ滝、方等滝、般若滝。付け足しで旭滝。

2020年12月01日 | 日光周辺の山
◎2020年11月29日(日)

 そもそものきっかけは瀑泉さんのブログの写真だった。半月山からの帰途でいろは坂の剣ヶ峰展望台からスマホで撮られた方等滝と般若滝。へーぇ、こんな滝があったのか。なら、展望台からではなく間近に見に行こうじゃないの。方等滝はともかくとして、般若滝という名前が気に入った。一筋縄ではいかない感じがするが、どんな顔をした滝だろう。
 調べるときりがなくなった。『日光四十八滝』を見ると、いろは坂周辺にはかなりの滝があった。目次の見出しには「旭滝、般若滝、方等滝、アクダラ滝、阿含滝、白雲滝、涅槃滝、華厳滝、十二滝、雨降滝ほか」となっている。同じ大谷川に流れていても、それぞれの沢筋は違う。般若滝は深沢、方等滝とアクダラ滝は中ノ沢。阿含、白雲、涅槃、雨降滝になると華厳渓谷になる。華厳渓谷はそれぞれの滝のある沢が合流している。華厳渓谷系の滝はネットにルート情報もないし、明智平やら華厳の滝からの眺めの記事ばかりで、間近に見ようには参考にならない。『四十八滝』の図に、馬道発電所から破線路の遊歩道らしいのが涅槃滝まで通っているが、ネット記事に歩いた記録が見あたらない以上、今はおそらく歩けまい。だったら、第一いろは坂(下り専用)北側の滝で我慢するしかない。実は、当初、馬道発電所まで行き、その先の様子を見に行くつもりになったりしたが、いくら何でも発電施設に入り込むのはまずいんじゃないかと、これはやめた。
 それぞれの滝への行き方は難しくもなく、すぐにわかった。いろは坂側の入口から途中までは工事用道路を使える。問題は駐車地だ。幅広の路肩に車を置いて滝見に行った記事もあったが、下りのいろは坂は剣ヶ峰の展望台駐車場を除いて駐停車禁止だ。交通違反は犯したくはないし、下る車の目障りになりたくもない。乗用車だけなら平気でも、バスならカーブで大回りするから邪魔にならないわけがない。Google Mapのストリートビューを追いながら、ここなら入り込めば路肩でもないし、駐停違反にもなるまいだろうところを見つけた。方等滝と般若滝は展望台駐車場を使えるが、そこからアクダラ滝となると、山道ならともかく、いろは坂を往復歩きするのではちょっと気分的に厳しい。
 以下、滝までの経路の詳細は省く。「邪魔になるまいだろう」スペースも、わざわざ軽自動車で行ったから、車の一部をいろは坂にはみ出すこともなかった。大型の乗用車ならちょっと厳しいかもしれない。駐車地をどこにするにせよ、いろは坂を歩くことに変わりはなく、入口には「工事関係者以外立入禁止」の看板が置かれている(ただ、もう一か所には何も注意書きはなかったが)。「関係車両」ではなく「関係者」だ。この日は日曜日だったから、該当の関係者に会わずに済んだが、平日、土曜日ならどうなっていたかはわからない。そんな事情から、これらの滝に行っての見物のお薦めはしないが、いずれも素晴らしい滝だったから、直近での姿を敢えて紹介する次第だ。もっともヘタ写真だから、紹介になるかどうかは疑わしいが。
 今回はあくまでも第一いろは坂側の滝めぐり。第二から入って、中禅寺湖にも寄らずにそのまま第一へと向かって下ったのは初めてだ。ちらりと見えた男体山の頭は再び白くなっていたし、日光白根は真っ白になっていた。そういえば、大間々に入ってから見た赤城も、黒檜だけは頭が白くなっていた。

【アクダラ滝】
 今日の足はスパ長にした。特別に理由はない。深い沢を歩くことはあるまいと思ったからだが、念のため、沢靴をザックに入れ、ヘルメットも持った。結局、沢靴を最後まで出すことはなかった。ただ、スパ長は失敗だった。これはあくまでも自分のスパ長の場合ということだが、少し大きめなので(サイズはS、M、Lの三種しかないのでは仕方もない)、厚手の靴下にインソールを二枚も入れたものの、それでも甲の上の隙間はカバーできず、岩の間の歩きはモタモタし、最後の般若滝では、骨折した足首を捻って激痛でうずくまってしまった。水は凍えるほどに冷たくもなかった。よほど沢靴の方がよかったかもしれない。
 前置きはともかく、工事用道路を行く。すでに樹々の葉は落ち、一月前の紅葉の賑わいの片鱗も窺えない。工事用道路はそのまま段重ねで造成されている谷間奥の砂防ダムに向かっている。そちらに沢はない。ふと思う。この工事用道路。まさか、砂利を積んだトラックが第二いろは坂を通って、第一に下ってここに入る込むわけはない。分岐する馬返しあたりに工事専用道の入口があるのだろうし、すべてがつながっているはずだ。それを詮索したところで、ただの滝見物には意味のないことだが。
 道路から離れて沢沿いに行くと、堰堤が見えた。落ちる水流は強い。右の土手斜面を巻いて、堰堤の上に出ると、すぐにアクダラ滝の一角が見えた。ザックを置き、ヘルメットをかぶり、カメラとスマホを持って向かう。スマホ持参の理由は明白。万一の救助要請用だ。
 写真で見て知ってはいたが、不思議な光景が広がっていた。いたるところから水が流れて中ノ沢に集結して行く。斜面全体が滝。いったいどれがアクダラの滝なのか、それとも、このエリアの滝群をすべてひっくるめての名称なのか。だとすれば、視界180度はあろうか。その滝の一つ一つがまた見ごたえがある。静かで清らかな流れもあれば、凶暴そうに噴き出している滝もある。これでは、全体を写真に収めるには広角レンズでないと無理。
 あっちに行ったり、こっちに行ったりと、ぐるぐると回った。コケの生えた、敷き詰められたような大きな石はかなり不安定だ。歩くのに気を遣う。左端奥の幅広の滝が段差があって、勢いが強い。これが中ノ沢の本流を形成しているようだ。二段瀑だとすれば10mはあるだろうし、上段だけでも7mはありそうだ。他に比べて、この滝だけは異色だ。
 アクダラ滝は潜流滝という種類の滝だそうだが、過去にこの手の滝はいくつか見たことはあるものの、崩壊した山の斜面のほぼ全域にわたっての潜流滝というのは初めてだ。本当に不思議な滝だ。
 上の方まで登って、細い滝群を間近で確認したかったが、足場が脆く、ここでケガをしていたのでは他の滝が見られなくなる。我慢した。
 しばらく回って、ザックのデポ地に戻る。このアクダラ滝は年間を通じて、細くなることもなく、これだけの水量があふれ出しているのだろうか。この後に見る滝もそうだったが、いずれも水量が多かった。それだけ男体山の保水量がすごいということなのだろうか。
 ところで、この「アクダラ」とはどういう意味なのだろう。『四十八滝』には、木の名前が由来らしく記されているが、周囲の滝名からして仏教的な意味合いでもあるのだろうか。
























































【方等滝】
 車を剣ヶ峰展望台駐車地に移動する。ここに車を入れるのは初めてだ。他に車はない。まだ10時15分。下り線を通る車は少なく、そのほとんどは泊まり客の戻りだろう。
 展望台から方等滝と般若滝を確認する。滝は遠い感じがする。方等滝の上の堰堤が目に入ってどうも気に入らない。ネットの記事で、この堰堤滝を方等滝としてアップで載せているのがあった。ここからの景色もまた晩秋の枯れた色になっていて、瀑泉さん写真の紅葉の色深さからは程遠くなってしまっている。
 工事作業道は先で左右に分かれる。だが、左の道はすぐに右にカーブして、右の分岐道の上に向かっている。後でここに戻り、般若滝に行く際に間違えてしまう。ここでは、左道のカーブを無視してそのまま直進した。直進方向に沢状の窪みがあったし、踏み跡もあったからだ。
 この沢は伏流水なのか、涸れ沢の砂地に大石がゴロゴロしている。半信半疑のまま行くと、先に小滝が見え、左上に何かの施設。奥に滝が見えた。二段になっているから、上が堰堤滝で下が方等滝と思える。余裕ができたので、何やらの施設に寄ってみる。古河電工の水力発電の観測所らしい。看板には「社外者の立入を禁ず 古河日光発電株式会社 日光発電事業所」とある。別に事務所らしき建物はない。さっさと沢に戻る。
 石積みを登ると小滝の前に出た。3mほどか。沢は別方向に流れていたらしい。この沢は中ノ沢で、さっきまでいたアクダラ滝の延長になる。奥の堰堤滝を見てもしょうがないので、手前のアクダラ滝に近づく。堰堤滝が視界から消えるところまで行く。ここだけは長靴で正解だったと思う。ヘツリもなく水際を行けるし、巻く必要もない、まして、足場も悪くはない。水際はせいぜい20cm。ただ、流れは強い。岩に手をかけないと安心できない。
 ここまでは順調だが、堰堤滝が隠れるところまで行くと飛沫がすごい。滝底に虹が出ている。豪快過ぎる。どう表現すればいいのか、滝そのものが分厚い。滝つぼを見たいが、前の岩が邪魔、右上に登った。それでも飛沫が飛んでくる。レンズを拭いてはかろうじて滝つぼの一角だけは撮れた。すごい直瀑だ。落差は『四十八滝』では、昔の文献から「高五丈」と引用しているところから、15mということになる。
 方等滝の写真撮りには失敗した。滝がもろに陽を受けていた。露出をそれなりに調整すべきだろうが、そんなことができるカメラではないし、できたとしても、そんなスキルはない。白っぽい滝になっていた。それでも、ここでは見栄え良く写った写真を選んだつもりでいる。
 勢いがあって、じっとしているのが恐くなる。伏流のところまで戻って一服した。上の堰堤滝から落ち込む滝だから豪快なのだろうが、その豪快さは良しとしても、堰堤のことを思うと、自然の中にある滝という風情が薄れてしまうのが残念だ。堰堤ともっと離れていたら、印象も違ったろうが。
 ところで、この方等滝だが、後で展望台に戻り、改めて写真をアップで撮り、それを家に帰ってから見ると、堰堤の下は三段瀑になっていた。つまり、下の三段目を眺めて満足していたということになるが、岩盤むき出しの左岸はともかく、右岸から上がれたかもしれない。豪快なのを観たから、もうこれで十分だろう。
































【般若滝】
 分岐道に戻る。右に行くと、そちらは工事で掘られ、沢はあっても滝がありそうにもない。また戻って、カーブして右上に向かう道に入る。見下ろす右下の光景は大規模な掘削工事をしているようで、屹立した巨大な岩盤は、見ているだけで何とも恐ろしくなる。道は火山灰土か砂地のようになっていて、この一帯が徐々に崩壊に向かっていることは見てとれる。
 遠くに滝が見えた。あれが般若滝か。今にも崩れ落ちそうな岩の庇の間から水が落ちている。その庇を形成していた大岩が滝の下を覆いつくしている。滝そのものは、般若というイメージからくる怨念、憤怒、鬼女とはほど遠く、方等滝に比べれば穏やかに落ちている。
 滝下に行くまでが難儀だった。これまでの二つの滝は前進するのに歩きづらいこともあったが、ここは尖った大きな岩がゴロゴロの密になっていて、かなり手こずる。大石が滝つぼの前に立ちはだかっているのでは直前に行くしかない。
 般若滝の目前に出た。ここもまた飛沫が飛んでくる。この滝は裏側の岩肌が透けて見える。これが方等滝では水の壁が厚くて見えなかった。それでも飛沫と虹が出ている。水量は少なくとも勢いがあるからだろう。滝つぼはないに等しかった。落差は『四十八滝』には五丈余とあるから、方等滝よりはやや高い。この滝の落ち口左右の庇状の岩からして、一年後に来れば、また姿が変わっているかもしれない。
 方等滝よりは一見おとなしく地味に見えながら、その周囲の崩壊からすれば、厳峻なるものを秘めた滝に見えなくもない。
 ふと、ヘルメットはザックに括りつけたままかぶっていないことに気づいた。何が崩れてくるかと想像すれば恐ろしくなる。引き返す。この際、大岩から下る際、着地で足首を捻ってしまった。




































 いろは坂に出て、車とは反対方向に上る。路線バスが下って来た。やはりカーブでは大回りをして、目いっぱいのスペースを使っていた。広いからと、路肩に車を置いて滝見物にでも行っていたら、かなりの迷惑な話になる。
 駐車場に着いたのは11時50分。ゆっくりと三滝の見物をした。わざわざいろは坂から歩いて行くとは物好きとしか言えない。しかし、間近に観るのと遠くから眺めての感慨は当たり前に違う。一人よがりながらも、三滝を目前に、いろんな感慨を持てただけで十分だ。
 捻った足の痛みが気になった。スパ長を脱ぐ際に確認すると、骨折のキズ口とは違うところが黒く腫れていた。痛みも出血もないが、歩くのがもどかしい。予定では、裏見の滝に行き、その上流方面の偵察のつもりでいたが、これは中止にした。


 下りの交通量が増えている。旭滝を観る用事があった。真後ろに車がいるとまずい。後続車がしばらくいないのを確認して出発。
 カーブが終わって直線になる。そして栄橋。ここから先が一時的に狭くなる。橋を渡ってすぐに右の路肩に車を寄せて少しバック。軽だったから大丈夫だった。車線外に置けた。ここから旭滝を観るわけだが、ストリートビューで見ている限りは、ここからカードレールをまたいで河原に下りられると思っていた。とんでもなかった。下は擁壁になっていて、かなり先まで行かないと河原には出られない。少なくとも視界の範囲に下りられそうなところはなかった。仕方がない。橋から眺めるか。
 どの角度から見ても横を走る電線が邪魔になる。落差20mとされているらしいから、般若滝よりもあることにはなるが、三滝を見た後では、何とも細くて貧弱だ。この滝も、名前まであるのに、そして、多くの行楽客が車で目の前を通るのに、せいぜい存在を気づいてもらえるのは渋滞時だけだろう。何とも不遇な滝ともいえる。












 後半の予定が少し狂ったが、まずは四種の趣がそれぞれ異なった大きな滝を観られて満足だった。

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2 コメント

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Unknown (瀑泉)
2020-12-17 23:27:57
遅コメ&こちらの記事に今更ながらですが,失礼いたします。
それにしても,記事のUPがお早くて,滝巡り中心だというのに,正直,追い縋ることさえできていませんヨ(汗)。
それはさておき,まずは華厳渓谷の滝群。此処のレポが無いのは,仰るとおり馬道発電所(古河日光発電株式会社)の敷地になっていて,立入禁止になっているからなんですヨ。ただ,此処には,かつて星野五郎平翁が開いた華厳瀧壺道という明治の歩道があったそうで,「山さ行がねが」のヨッキれんさんが,12年前に白雲滝にかかる鵲橋を見るために,悪戦苦闘の末,上から華厳渓谷へ降り立った記事が,ネット上ではおそらく唯一ですが,掲載されています(https://yamaiga.com/bridge/kasasagi/main1.html)。
かくいう自分も,鵲橋より白雲滝見たさに,この記事を読んだときは,興奮したのですケドね。ただ,どうにも崖下に向かうには,終末処理場からの汚水を被らねばならず,加えて,雪田爺様から華厳渓谷自体,立入禁止であることを教えていただいて,残念ながら諦めましたヨ(笑)。まぁ,何にしても楽しめる記事ではありますからご覧になってください。
それはさておき,今回の三滝,実はまだ滝壺に立ったことがないんですヨ。
このうち,アクダラ滝だけは,いずれ行かなくちゃなぁ~とは思っているのですが,やはり第二を登って,すぐ第一を下るというのに抵抗があって・・・。
それと,方等,般若はどうしても,観光滝だし良いかぁ~という感覚が抜けないんですよネェ。まぁ,滝下に行けば感動するとは思うのですが,子供の頃から,此処を通るたびに眺めていたモノですから。
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瀑泉さん (たそがれオヤジ)
2020-12-19 20:49:07
瀑泉さん、こんにちは。
ご紹介の記事、拝見しましたよ。今昔マップを見たりしながら、読み終わるまで、一時間かかりました。しかし、すごい方がいるもんですね。ましてガスの中、よくもまぁと呆れてしまいます。まして戻っていますからね。私なら、10分歩いて目途がつかずに即、撤退でしょうし、ヨッキれんさんに比べたら、自分の滝見なんかママゴトのようなものです。
実は、禁じ手で立入禁止から入ろうと思っていたのですが、有刺鉄線のゲートではどうにもなりませんね。さりとて、展望台を乗り越えて下るわけにもいかない。華厳渓谷の滝は明智平から眺めて終わりにしておきますよ。
話は変わりますが、今回のアクダラ滝は、いろは坂から見えない分、間近に見るに値する滝だと思います。中ノ茶屋跡のスペースに車をぎりぎり入れて、いろは坂を下って最初のカーブにあるフェンスを脇からくぐればいいだけですから。ただ、タイミングが問題ですね。混雑した時間帯では目立ちます。私も、第二を上ってすぐに第一に向かうには抵抗がありましたけど、そうでもしないと、渋滞時間帯に入り込みますから。
アクダラ滝はもっとじっくりかなり上まで登ったり左右くまなく回りたかったのですが、長靴がどうもしっくりこないし、本命が般若、方等でしたから、急ぎ足でした。今思えば、本流ではない、流れ出てくる滝群の源がどうなっているの確認しておきたかったです。
記事のUPは別に早いわけでもなく、あっさりした歩きしかしていないからです。それから、瀑泉さんのように尻ぬぐいをする立場ではなく、今は尻拭いをされる立場ですから、仕事中にブログ原稿をやったりして気楽なものですよ。
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