ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

欧州の携帯ナビ事情

2006年11月09日 | ITS
欧州では携帯ナビの人気がまさに爆発している。
tomtomとかnavmanといったナショナルブランドではない電気製品がこれだけ市場を席巻するという状況も珍しいことだ。

量販店のチラシにはトップに掲載されているし、空港の免税店でも目玉商品扱いだ。安いもので180ユーロ、高くても400ユーロ程度。

欧州では一般に管理職になるとフリンジベネフィット(給与外収入)として車がもらえる。いわゆるカンパニーカーといわれるものだ。それらは普通2年契約のリースカーなので、外して次の車に簡単に移植できる携帯ナビのほうが現実的なのだ。

それに加え、車上荒らしが多いので日本で一般的なダッシュボート上にモニターを乗っけるタイプのナビはまったく受け入れられない。

最近になっていわゆる2DIN・AVNが市場に出回り始めたが、上記の状況に加え価格の問題もあり、いまいち一般的になっていない。

欧州におけるカーナビゲーションの潜在需要は大きい。
最終的には標準化が進み、携帯ナビは「場つなぎ商品」でしかないと思っているのだが、当面この人気は続きそうだ。

イタリア・スペインの道路会社合併にまつわるごたごた

2006年11月08日 | ITS
せっかくヨーロッパに来ているので、欧州の高速道路事情について書いてみよう。

イタリアの高速道路運営会社Autostradeはスペインの同運営会社Abertisと合併の方向で調整をしているが、イタリア政府はこれを認可しない(新会社には道路の使用権を与えない)という声明をだしている。

これに対してEUは、EU域内の資本提携を政府が規制することはEU法規制に抵触するとしてイタリア政府に対して強く警告しており、EUが法的処置に出る可能性が高い。

Autostradeはベネトン一族が大株主で、南部を除くイタリアの大多数の高速道路を運営している。最近はIC非接触カードによるキャッシュレス支払い「Telepass」を導入している。
去年の11月にミラノに滞在した時、TelepassはTVコマーシャルをしていた。

そもそもイタリア政府とAutostradeはあまりうまくいっておらず、この問題以前にも政府は同社に対して「必要なインフラ投資を行っていない」とクレームをつけていた。

イタリア政府が合併に反対する理由は、公には
・高速道路は社会インフラであり、公共利益を損なう。
・Abertisの大株主にスペインの建設会社が入っており、建設会社は高速道路会社の株主になれないというイタリアの法律に抵触する。
ということになっている。

実際合併自体は1対1なのだが、イタリア政府にしてみれば高速道路というインフラをスペインにもって行かれる、という思いがあるのだろう。どこの国でもインフラには利権が付き物だ。

この合併が実現すると、総延長6713km、従業員20000人の世界最大の高速道路運営会社となる。

仮にわが国の高速道路会社が外国資本と合併するということになったら、道路族はどんな反応をするのだろうか。

またETC料金所で事故だって

2006年11月08日 | ITS
長崎で観光バスがETCゲートが開かず急停車したため追突し、小学生が11人怪我をしたらしい。

ゲートを作った以上、こうした事故は予見しているはずだ。
実際、追突事故はしょっちゅう発生しているらしい。

前にも何回か書いているが、ゲートを閉めるなら、完全ノンストップは無理だったのだ。
たとえば、前の車が通過可能であることが確認できなければ進入できないような仕組みにするべきだったのだ。
というか、今からでも遅くない。重大事故が発生する前にすぐに改善するべきだ。

EUの機内持ち込み手荷物規制

2006年11月08日 | 雑記
このブログで旅行記を書いてもしょうがないんだけど。

KL862でアムスに到着。強い追い風で1時間の早着となった。
シートは02番という、B747ロアーデッキの鼻先。エンジン音がうるさくなく、快適。ビジネスシートは10年前よりもリクライニングが深くなり、熟睡できた。
久しぶりにビジネスクラスを味わってしまうと、帰りがつらそうだ。

EU域内では11月6日から持ち込み荷物のルールが変った。
手荷物に入れる液状の物(シャンプー、化粧品など)は透明のジップ付き袋(商品名ジプロックなど)にいれて、検査の時に提示しなければならない。一個100ml以内、また、袋は一人1つ、その体積は1000ml以内ということだ。
袋は当面ただでもらえるが、そのうち持参しなければならなくなるらしい。

また、手荷物の大きさ制限も強化される。また、多くの空港では6ヶ月猶予を取るようだが、基本的に手荷物制限の決まり(56x45x25cmとかいうやつ)を厳格に運用するようになるようだ。
多少オーバーしてても問題のなかった「ガラガラ」も、今後は預け入れしなければならなくなるかもしれない。

ユーロ高で出張旅費がかさむので、今回はBastionというビジネスホテルに滞在。91ユーロ/泊だが、部屋もきれいでそこそこ広く、無線LANも無料で開放されていて、正解だった。

前回とまったホテルは、インテリアはおしゃれだったけど160ユーロ、無線LANは2時間11ユーロ、朝食16ユーロだもんね。150円で計算したらありえない価格です。それでも分類的にはビジネスホテル。朝飯2400円は日本じゃ高級ホテル並。それもコンチネンタルブッフェに毛が生えた程度。

ということで、部屋からエントリーしてみました。

成田にて

2006年11月07日 | 雑記
これからオランダへ出張。
ラッキーなことに、ビジネスクラスシートへのアップグレードをもらった。
KLM682便は通常は777で運行しているのだが、今日は747で、一部のビジネスシートがあまるのでフリクエントクライヤーに開放しているとのこと。
ワールドパークスのゴールド資格を持っているため、割り当ててもらえた。
(機内食はエコノミーのものだそうだが、どっちにしても大してうまくはないのでかまわない)

ビジネスに乗るのは、会社が認めていた10年前以来、久しぶりのことになる。

といっているうちに搭乗時間がきた。


VICSビーコン また続き

2006年11月07日 | ITS
随分前置きが長くなってしまいましたが。

そもそも、なぜビーコンVICSはあまり普及していないのか。
それは、少なくとも始まって数年間はまったく魅力の無いものだったからだ。
設置数も少なく、提供される情報も路側情報板と大差ない。そんなものが簡易図形でナビ画面に表示される程度の機能で、価格が3-4万円では、あまり売れなくでも不思議ではない。

結果として、自動車販売関係者に「ビーコンは要らない」という認識が出来てしまったのだ。

ところが、VICSの3つのメディアの中で光ビーコンだけが渋滞通過時間に関するデータを提供している。渋滞回避機能のあるナビの場合、光ビーコンをつけなけれ十分に機能しない。しかし、なかなかそうした事実は消費者に伝わらない。
ビーコンは不要、という通念はなかなか打ち破ることが出来ないのだ。

光ビーコンの設置を進めている警察庁としては誤算だろう。実際、警察庁は3メディアVICSを普及させようとしているが、消費者にそのメッセージはまるで届いていない。

仮に、高速道路料金支払いシステムと道路管制システムが同じ通信方式を採用していれば、この苦悩は無かったはずだ。
しかし、それを責めるのは酷かもしれない。
交通管制システムの開発時には、赤外線が最適なソリューションだったと思うし、ETCは(あれほどのセキュリティを求めたのは失策だとは思うが)セキュリティを確保する必要があった。

したがって、単純にビーコンとETCの互換性のなさを批判するつもりは無い。ここにいたって交通管制は光、料金収受はDSRCでやっていくしかないのだ。

さて、それでは何が問題なのか。
警察庁としては3万基も設置してしまった光ビーコンを活用しなければならない。
その為に、ビーコンVICS受信機がマーケットからなくなってもらっては困る。

カーメーカーやナビメーカーがビーコンVICSをオプション設定したり、高級車に標準装備したりするのは、これは互恵協力に他ならない。

しかし、消費者にとって魅力あるものでなければ、装着車両は増加しない。

そして、ここからが本当に重要なことなのだが、どうやら走行支援機能の強化でビーコンVICSを拡大しようとしているように思われるが、参宮橋実験のような走行支援ではまったく消費者にとって魅力は無い、ということに早く気が付くべきだ。
だって、ドライバーが受けるメリットは路側情報板となんら変らないからだ。

ビーコンVICSを拡大したければ、ナビとの渋滞予測連携をさらに拡大することと、それを宣伝すること。そしてその精度を上げることだ。
渋滞予測精度に関して言えば、よほど頑張らないかぎりカーメーカーの進めるプローブに対して勝ち目は無いだろう。もし、ここで負けてしまえば本当にビーコンVICSなんて市場から消えてしまう。

ビーコンの今後はなかなか厳しい。
しかし、3万基のセンサーは大きな資産だ。というか、税金で作っちゃったんだから、きっちり有効に活用して欲しいと思う。

明日からまたヨーロッパ。とはいっても3泊ですが。
宿泊先にネット環境があれば、そこからアップしましょう。

VICSビーコン続き

2006年11月06日 | ITS
昨日のエントリーから続いています。

交通管制システムの一環として、いろいろなセンサーが道路には設置されている。
単純に通過車両をカウントするセンサー(超音波式)、通過車両の速度も感知するセンサー(マイクロ波式)、画像処理により通行量、速度、車種まで感知するセンサー(画像式)
これらに加え、旅行時間を感知できるセンサーとして光ビーコンがある。

光ビーコンはビーコン受信器を装着した車両と双方向に通信をし、複数のセンサー間での同一車両の通過時間を計測することで、通過予想時間を割り出すことが出来る。
アップロードされる情報はプライバシーの観点からVICS車載器に電源を投入した際に発生するランダムなIDによって管理される。

これらのセンサーの中で渋滞情報として最も正確なデータを提供するのが光ビーコンであることは間違いないだろう。
光ビーコンは平成17年4月時点で2万8千機が設置されており、さらに拡大中である。

しかし、渋滞通過時間を計測するためにはビーコンVICSが付いた車が存在しなければならない。ところが、ビーコンVICSはこれまで消費者にあまり人気が無く、市販・純正共にあまり標準装備はされていない。3万円程度のオプション扱いになっている。
結果として現在走行している車両のうちビーコンが付いている車の割合は、比較的高級車が多い首都高速の実績で10%。すべての車両でいえば5%程度だろう。

一方、車載の通信メディアとしてETC(DSRC)がスタンダードになりつつある。現時点で大雑把に言えば4台に1台のクルマに装着されている。

もちろん、DSRCは光ビーコンにアップロードはしない。

つまり、道には赤外線の光ビーコン、クルマにはDSRCのETCが付いており、この互いに通信できないデバイスが、それぞれ増加中なのだ。

この項、もう少し続きます。

ビーコンVICSについて

2006年11月05日 | ITS
一般に、今売られているナビはほとんどの機種で渋滞表示が出る。
これはFM多重でデータを受信しているからだ。それについて消費者は少なくとも目に見える形では使用料を支払う必要は無い。

何故無料なのか?
そもそもVICSは以下の仕組みで成立している。
・センサーのインフラ整備は警察庁の負担(=税金)
・VICS関連機器(VICSつきナビなど)への台あたりの課金(300円が価格に上乗せ)
・カーナビ製造業者、カーメーカーからの年間協賛金

こうした渋滞情報で一番コストがかかるのはセンサー設置のインフラ整備だ。
その部分を税金でまかなっているからビジネスが成立している、といっても良い。

さて、一方で現在のVICSの精度に関する不満は多い。
おそらく民間事業者が本気で乗り出せば、精度はあがり顧客満足は向上するだろう。カーメーカーが取り組みを始めた通信をつかったプローブがその例だ。

しかし、不満はあるとはいえ消費者的には無料のVICSがあるので、お金を払ってまで渋滞情報を知る必要も無い、というのが大多数の消費者の考えだろう。
これに対して、その中途半端なVICSが民間の事業拡大を阻害しているのだ、という意見もある。

しかし、果たして渋滞予測は本当にビジネスになるのか?
民間事業者が自らインフラを整備してビジネスが成立するとは到底思えない。
プローブですら、通信料をはらってまで参加するユーザーは少数派で、未だに実験的な取り組みであることは否めない。

私は渋滞予想は、(というか、ITSはといったほうがいいかもしれないが)ビジネスチャンスではなく、社会インフラなのだとおもう。
一種天気予報のようなもので、有料の天気予報会社がビジネスをしているが、それはあくまでBtoBであり、一般の消費者がお金を払ってまで正確な天気予報を買うわけが無い。気象庁が税金でインフラを整備し、中途半端な天気予報をしているから民間を圧迫している、とは誰も思わないだろう。

要はVICSの精度を上げることが現実的な最善の解なのだ。
しかし、そこまで了解したとしても、次の厄介な問題が待っている。

それは、センサーと車載器のアンマッチだ。


参宮橋実験 補足

2006年11月03日 | ITS
昨日のエントリーで参宮橋実験の批判をしたが、少し補足しておきたい。

安全走行支援について決して否定するものではない。インフラ協調であれ、通信であれ、自律であれ、路側表示であれ、どんどん推進するべきだが、それはあくまで費用対効果を考えなければならない。

参宮橋実験が気に入らないのは、次の2点。

第一に、官がこうした実証実験とかアンケート調査をする理由は政策を実現するためのエビデンス作りだろう。
こうした調査において、自らの企画を通すために恣意的な結論を提示する、ということは、民間企業では実際よくある話だ。ただしそれで失敗しても単に自業自得である。

しかし、官の場合、使おうとしているのは国民のお金なのだ。恣意的な調査結果を元に政策を実行するのは、言葉は悪いが詐欺のようなものだという自覚を持って欲しい。

第二に、路側表示というコンベンショナルな方法の改善でまだまだ事故低減の余地があるにもかかわらず、それを無視して「やりたい政策」である「インフラ協調」にこだわっている点。この事実に目をつぶり、「交通事故死半減を目標」などと、よく言えたものだと思う。

もうひとつ、ビーコンVICSを前提に進めようとしているが、今後ビーコンVICS付きのナビを本気で拡大させるつもりなのだろうか。
これについては、いろいろと複雑な背景があるので、改めて書いてみたい。

参宮橋実験の嘘

2006年11月02日 | ITS
国交省は、「スマートウェイ(知能道路)」の取り組みとしてスマートウェイ推進会議を進めている。来る11月7日、その第7回作業部会が開かれる。

今回の作業部会はいわゆる「参宮橋実験」の「成功」を踏まえ、通信を使った安全運転支援サービス等の公道実験について議論をすることになる。

参宮橋実験とは、首都高速の事故多発カーブである首都高4号線「参宮橋カーブ」に、カーブ先の渋滞を関知するセンサーを設置し、その情報を手前を通過したビーコンVICS装着車のナビ画面に流す、というものだ。

タイトルに過激な「嘘」という言葉を使ったのは、以下の通りの理由だ。

上記の作業部会に関するリンク先に
「首都高速道路4号新宿線の参宮橋カーブにおいて安全運転支援サービスの社会実験を実施し、事故件数が大幅に減少する効果が表れています。」

と明記されている。そして、アップした画像でわかるとおり、たしかに平成17年1月から当該カーブにおける事故は明らかに減少している。

しかし、ここを見て欲しい。

こう書いてある。
「平成17年3月~5月の3ヶ月間で一旦サービスを休止しておりましたが、このシステムの効果が確認されたことを踏まえ、9月21日より約1年間の予定でサービスを再開いたしました。」

つまり、平成17年5月から9月の間はサービスをしていないのだ。
しかしグラフで明らかな通り、その期間も事故は明らかに減少している。

つまり、これはこういうことなのだとしか考えられない。
VICSでの告知を行うと同時に、電光掲示板を改善した。さらに、カーブ手前に赤いストライプ状の警告ペイントを施している。明らかに「事故多発カーブ」とドライバーが認識するような路側表示の改善が行われているのだ。そして、グラフが示しているとおり事故が減ったのは主にそれが理由なのではないか。

国交省はこの実験で「通信による安全運転支援サービスで事故が減った」と言い張り、さらに拡大しようとしている。
しかし、ビーコンVICSを装着しているクルマは10%以下なのだ。

通常の路側表示の改善で事故の危険は減少する。
それなのにITSの名の下に「特定のクルマにしか表示されない安全運転支援」を「税金を投入」して拡大しようとしているとしたら、大きな問題だと思う。

電子マネー普及のために必要なこと

2006年11月01日 | 雑記
前回、電子マネーに普及に関して懐疑的な記事をかいたところ、大崎のオフィスビルのカフェテリアではほとんどの人がEdy決済をしている、というコメントをいただいた。

大崎はビットワレットの本拠地で、実際生活のすべてをEdyで決済できるらしい。そういった環境であれば、毎日の昼食はEdyということになるだろう。上限までチャージしても二週間程度で確実に使われるわけだから、多めにチャージすることに何の躊躇も無く、したがって日常的に使われるようになる。

私の場合は、いつ使うかがわからないので多めにチャージするということがない。結果、使えるシチュエーションでも、残高が無く使えない。まあ、現金で払えばいいか、という感じになる。現金払いがそんなに大騒ぎするような手間のかかる仕事だとも思わない。

さて、ここからが重要なのだが、大崎のカフェテリアのケースにはもうひとつの心理が働いているはずだ。
そこでは、Edy払いがデフォルトなのだ。そして、現金払いはレジ係の負担を増し、またレジ通過が遅いので並んでいる人に迷惑になる、という暗黙の了解があるのだと思う。

この心理というか、明文化されない社会ルールが、キオスクやスーパーなどで一般の消費者に広がってくるなら、電子マネーは急激な普及をすることになると思う。

そうして利用が一般的になれば、たとえば、クルマの鍵をドアに差し込むという、もともとは何の苦にもならなかった行為が、いまやキーレスエントリーでまったく想像も出来ないことになってしまったように、もう現金払いには戻れなくなるのかもしれない。