ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

柵のない屋上

2005年05月05日 | ITS
ちょっと想像して見て欲しい。

ここに奇妙な形をした超高層ビルがある。横幅は300メートルもあるが、奥行きは15メートルしかない。
その屋上は一般に開放されているのだが、手すりも柵もなく、ただ崖っぷちから1メートルの所に線が引いてあって「危ないからこの線を越えないように」と注意書きがあるだけだ。

そんな危険な場所にもかかわらず、その屋上には数千人もの人間がひしめき合っていて、線の上でぼんやり新聞を読む人もいれば線の外側を走る人もいる。
もし将棋倒しでもおきたら大変な事になると思うのだが、そんな心配をする人は誰もいない。

実際、かなり頻繁に落ちて亡くなる人がでる。自殺もいれば、突き飛ばされる人もいるし、酔っぱらって落ちる人もいる。しかし、不思議なことに誰も柵を作ろうとは言わない。

何を言いたいかおわかりだと思う。
電車のプラットホームは、電車が入ってくる時には「落ちたら必ず死ぬ」。そういう意味では超高層ビルの屋上と変わらない。なのに、誰もそんな恐怖感を抱くことなくぼんやりと佇んでいる。あまりにありふれた日常だからだ。

利用者が恐怖感を抱かないから、鉄道会社も知らん顔をしている。
地下鉄や最近の私鉄では一部で開閉柵の設置が進んでいるが、JRはまったく対応がされていない。

JR西の利益は過去最高の300億という。しかし、全部の駅に自動開閉柵を設置するとなれば、とてもそんな金では足りないのだろう。
また、一部でも設置するということは、危険の存在を認めることになり、未設置駅での事故の補償問題が複雑化するというような事情もあるのだろう。また、乗降効率が悪化してダイヤの維持が難しいのも事実だと思う。

しかし、私は現在のプラットホーム、特に混雑の激しい通勤線のそれは極めて前時代的だと思うのだ。というか、最初からその交通機関が「ホーム上に利用客がひしめき合い、電車は50キロの速度で進入してくる」という前提であったなら、柵のないプラットフォームなどあり得ない筈なのだ。
これはどんな事情があっても、今すぐ改善するべきだ。

今回の尼崎の事故で、ATS-Pの設置が加速されるらしい。
プラットフォームの自動開閉柵も、将棋倒しで多くの方が亡くなるような事故が起きないかぎり設置されることはないのだろう。