これ以上は無いというほど満腹になって、外へ出てよくよく見れば「泰式餐廳(タイレストラン)」と書いてあるがな・・。
香港の漁村まで来て、わざわざタイ料理屋に入らんでも良さそうなもんやねぇ・・。
しかし、あれはタイ料理か?どう考えても限りなく中華に近いとおもうがなぁ・・。
シャコの料理は美味しかったし、メロンもご馳走になったからエエとするか。
さっきの魚屋の兄ちゃんが暇そうに道を眺めてたので手を振ると、
「美味しかったか?」
「天上第一號(最高)!多謝(トォチェ=ありがとう)」
「好、好(ホゥ、ホゥ=良かった良かった)!」
「バイ、バイ」
バス乗り場に行くと、丁度バスが来た所。
学校帰りの学生が何人か降りてきたけど、こんな人数では儲からんやろなぁ。
さっきまでの良いお天気がちょっと怪しい雲行きになってきましたねぇ。
バスの時間を見ると出発は30分後。
腹ごなしに海岸を散歩して帰ってきたら適当な時間やったので乗り込んだけれど、お客は我々2人だけかいな?
これから沙田までは最初は黄竹湾(ウォンチュックワン)までは西貢海沿い、そこから半島を縦断するミニ峠越え、浪徑、水浪窩を通って、企嶺下老圍からは企嶺下海沿い、その後は吐露灣を見ながら烏龜沙咀の根元を横切って、馬鞍山から沙田海の傍を走ります。
九龍半島でも、ここの海の景色は格別ですねん。
吐露灣の景色を楽しむのも西貢までやって来た目的の一つなんですわ。
そこで2階建バスの2階の最前列に陣取りました。
見晴らしが良すぎて空中に浮かんでるみたいやねぇ。
出発した頃にはいよいよ雲行きが悪くなってポツポツ雨が落ちだしました。
各駅停車のバスやのに、乗ってるのが2人だけ間のバス停にも人影は無しとなると飛ばす飛ばす。
峠道なんかは完全にジェットコースター気分。
のぼりの天辺近くなんか、空しか見えへんのです。
2階席やから、風に煽られての横揺れも豪快、目線が高いからスリル満点。
時々道端の木の枝が風で揺れて屋根に擦れるんですわ。
妙なもんで、屋根が有るのに枝が当たりそうになると、思わず首を引っ込めますなぁ。
小雨の中の景色も中々粋なモンなんですが、惜しむらくは2階の前正面の窓にはワイパーが無いんです。
雨粒があたって、ほとんど抽象画みたい。
それでも横の窓からは、吐露灣を結構楽しめました。
お天気が良いと島が点在して明るくて、アッケラカンと綺麗なんですが、ドヨドヨの天気だと、水墨画みたいな雰囲気で幻想的ですなぁ。
この辺りの海は古くは海賊の根拠地やったそうです。
宋の時代には既に海賊が勢力を張っていたというから、海賊にも歴史と伝統がおますなぁ。
中国の海賊というのは、盗人だけや無しに、全王朝の遺臣が反政府運動をしたのや、貿易商(海商)の一部も海賊扱いされてるんやそうです。
どうも漢民族というのは海に縁が薄く、南越と呼ばれて蛮地扱いされていた浙江、福建、廣東は海と仲がいいようねぇ。
魏志倭人伝に記された倭人の風習と、南越の風習が良く似ているんです。
こっちへ迷い込むと又香港がお留守になるから今は止めときますわ。
政府の海上管理が行き届いてないから、ホンマもんの海賊と対抗する為に交易船は武装せざるを得ず、その内、だんだんその境界が曖昧になったしもたらしいですね。
海上交易は海難や海賊による被害の危険が大きく、相互扶助組織の幇(パン)のネットワークが重要なので、私的な組織が力を蓄えるのは仕方がない面もあったでしょうなぁ。
第二次大戦中広東省を占領した日本軍が香港を攻めるときに海賊の組織を利用したとか、香港が占領されてからは、英国、国府、共産がそれぞれ海賊を使って秘密工作をしたとか言われてますね。
いまだに、当時の工作資金や貴金属を積んだジャンクが何処其処の灣に沈んでるやの、何処かの島に金塊が埋めて有ると言うような話が出てきます。
そういう話をされると信じてしまいそうな雰囲気が有る海ですねぇ。
こういうネズミ色の吐露灣を眺めていると、舳先に目玉を描いてマストに五星紅旗を掲げた大目鶏が、柿色の帆に風を孕ませて走って来そうな感じがします。
共産中国が竹のカーテンを張っていた時代、この海は密輸船が横行する名所やったんです。
大埔や沙田の港は密輸船を締め出すために灣の入り口に鎖を張っていたというぐらい、仰山徘徊してたんですなぁ。
海賊船や密輸船などという、秘密を積み込んだ帆船というのは、曰く云い難い魅力が有りますねぇ。
かというて、そんな仕事をしたり、係わり合いにはなりとうないけどね。
馬鞍山はさすがに大団地、停留所でお客が乗ってきて2/3ほど席が詰まりました。
雨はいよいよ本降り。
「この山の向うに前に見に行った客家の住宅があるんやで」というても雨で煙って何がなにやらよう判らん。
沙田からは九広鉄路(KCR)、九龍塘で地下鉄(MTR)に乗り継ぐから濡れはしませんが、晩飯を食べに出るのが鬱陶しいなぁ。
幸い沙田に付いた時には少し小降りになってました。
九広鉄路(KCR)はあまり混んでいなかったけれど、九龍塘の地下鉄(MTR)の駅は大混雑。
「何やねん?今日は何かの祭りか?」
良く考えたら平日の通勤ラッシュの真っ只中の時間帯やったんですわ。
大阪やったら、乗る客の多い駅、降りる人が多い駅と大体別れてますがな。
どの駅でも相当の乗り降りがあるのが香港の地下鉄。
そこへ持ってきて、イラチが多いから揉みくちゃにされますねん。
あれだけお腹一杯やったのに、佐敦と油麻地の中間のホテルまで帰って来たら、ちゃんとお腹が減ってましたわ。
2004/03/23
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