微妙な話題
歩いている子供たちは、お尻のところが水着で濡れていますが、全く気にしていません。
途中で女の子たちと別れました。
「面白かった！また行こうね」って、素直に同意できませんね。
手を出せというので手の平を出すと、リズムをつけて叩きながら、
「♪See you later Alligator, After a while Crocodile!♪」
これは日本でいえば「お土産三つ、タコ三つ」とか「さよなら三角、又来て四角」でしょうね。
バイバイと手を振り合って別れました。
家に帰ると、エフィが「お昼ご飯よ」と出してきたのは、長方形の真っ黒な大きなケーキ。
ホームメードのチョコレート・ケーキをご近所から頂いたそうです。
道理で何の飾りも無い無愛想な面構えをしていますね。
ケーキのお昼ご飯？
さっきクッキーとレモネードも飲んだし、出来れば甘い物はねぇ。
それに、大きな切り方ですね。
葉書よりも二周りは大きいですよ。
しかし、居候の身で贅沢は言えません。
コラリアは平気な顔で美味しそうに食べています。
大体夕食の時間が遅いので、いまは大して欲しくなくても食べておかないと、夕方にお腹が減って、つらい目に遭います。
一口食べたら、甘～い！尋常な甘さではありません。
ノドを掻き毟りたくなるような、チョコレートを砂糖で煮詰めて、蜂蜜を掛けたのではないか、と思うほど凶暴な甘さ。
惜しげも無く入っているレーズンが輪を掛けて甘～い。
こういうのを食べていて、よくまぁ無茶苦茶に太らずに済むもんですね。
ミルクで口の中の甘さを洗いながら食べましたが、お腹一杯。
エフィが「プールどうだった？」と訊くから、「Tired out！(疲れた)」というと、コラリアが何故疲れたのかを、面白そうに話し出しました。
「すてきね、ガールフレンドが出来たじゃない」とエフィ。
お願いしますよ、それでなくても、私、神経がやられそう。
何故困ったかを説明するにも、はなはだ微妙な事柄だし、単語は思い当たらないし、知っている単語でどう言えばよいのか。
説明の仕方が悪いんでしょうね、全く理解してもらえないんです。
「いいじゃない、シッドは貴方を好きなんだから」
「いや、好いてくれるのは嬉しいけれど、そういう事じゃあなくて・・・。彼女は子供でしょ」
「子供だって好きな人や、嫌いな人ってあるわよ、シッド嫌い？可愛いじゃない」
確かに可愛い事は可愛いんですけどね、だから良いって事はないでしょう？
可愛いくて、発育が良すぎるからかえって困るんです。
「嫌いって事は無いけれど。」
「嫌いじゃない子に抱きつかれて、何んで困るのよ？」
「けど９才ですよ」
「じゃあ、何才なら困らないの？私がシッドみたいに抱きついたら困る？」
困るといえば怒りそうですし、嬉しいといえば何やら色情狂みたいだし・・・。
それに年齢がどうであれ、そこそこ大人っぽい身体つきになった女の子に抱き付かれるとねぇ。
実は私って、少々危ないのかな？
「あなた、今までに当然、女の子に抱きつかれた事あるでしょ？」
あのねぇ、コラリア、話がそういう展開になると、エフィの手前もあるし、言葉も不自由なんで頭が爆発しそうになるんですけどね。
そりゃ私も、１９で船員してたから全く何にも知らないわけでも無い。
かれこれ４年付き合ってる娘も居るんですけどね。
だから、それなりにはねぇ・・・。
「うん何度か」
「それに、つきあってる娘も居るでしょ？」
「うん、１人いる」
「１人ってその娘が初めてじゃァ無いんでしょ」
「いや、その娘が初めてで、付き合いだしてもう４年になる」
「じゃあ１６まで女友達って居なかったの？それで４年もその１人の娘とだけ？」
「うん、気に入ってるから」
「色んな娘と付き合わないで、どうしてその娘が１番良いって判るの？」
「同時に沢山の娘と付き合うのは相手に対して失礼だと思うけどなぁ」
「勿論同時はダメよ、けどもっと自分に合った娘が居るかも知れないじゃない？」
そりゃまぁ、そうですけど・・・。
「女たらし」「にやけ」「軟派」なんて単語は知らないし、一体どうゆう風に話せばよいのやら。
確かに充分に比較対照せずに決めるというのは無謀と言えば無謀ですね。
ただし、逆に比較対照された場合、競争相手を蹴散らして当選する自信は無いなぁ。
それよりも、そんなに次々と沢山の娘が付き合ってくれる筈が無い。
けど、それとこれとは全く話が違う。
いくら子供といっても、アンなのに抱きつかれたら興奮してしまうのも無理はないと思うけどなぁ。
「親しき仲にも礼儀あり、男女七才にして席を同じゅうするなかれ。
子供と云えども、若い男の劣情を濫(ミダリ)に刺激するような事は控えていただかないと、当方としては、対応と後の処理に大変困惑する。」
と言おうにも、日本語でも上手く表現しにくいのに、まして英語ではどう言えば良いのか。
エフィがパートに出かけ際に「とっても楽しい会話だったわ！あなた本当の息子みたい」
何処が楽しかったんでしょうね？
なんで？こういう話をすると息子見たいに思えるんですか？
日本ではこういう話題は、友達としても、親とはしませんよ。
「もっと気楽に考えればいいのよ、その方が楽しいし、自然よ」
Take it easy! ねぇ、natural ねぇ。
肩につかまる位は natural でしょうけど、真正面からガバッと抱きつかれたら気楽にはして居れませんよ。
女性を抱くなんてのは、それなりの覚悟と一大決心が必要で、滅多矢鱈、ヤミクモに抱きついてたら警察につかまってしまいます。
どうしても、好き、恋、抱く、結婚、子供、家庭と考えてしまうなぁ。
そりゃ、友達として好きというのもあるけれど、そんな関係では無闇に抱きついたり、キッスしたりはしません。
ん？待てよ、ここの連中はさすがに唇にはしないけれど、初対面でも抱き合って頬っぺたにキッス位はするぞ。
お隣のジャックなんか従兄弟と男同士で抱き合って頬っぺたにキッスしてたよなぁ。
あれは異様で、あんまり良い景色ではなかったねぇ。
どちらかと言えば見たくない光景ですよ。
そう言えば、コラリアに抱きつかれて、うろたえた事があったなぁ。
あの時は、うろたえるのに精一杯で、興奮するまでには至らなかったから、まだ良かった。
もう少し長く抱きつかれてたら、恥かしい事になってたでしょうね。
慣れていないと言われても、２０才やそこらで慣れている方がオカシイと思うんですがね。
自然といわれても、ハイそうですか！と急にはできませんよ。
考えすぎかなぁ、意識しすぎかなぁ。
ひょっとして、何でもかんでもソッチに関連して考えるのは異常なのかなぁ。
けど、抱きつかれたら、とても平気では居れません。
私、引火点が低いのかなぁ？
何だか自分が変態みたいに思えてきたなぁ。
乏しい単語でシドロモドロに話をしていると、
「居る？お母さんがお茶に招待したいって！」
キャッ！問題のシッドが来ました。
コラリア、ニッと笑って「喜んで行くってよ！」
おいおい・・・。
「ほら、早く行きなさいよ、そうそう、これをシッドにあげて」と花瓶から花を１本抜いて渡されました。
「For you!」と渡すと「ありがとう」と本当に嬉しそうです
こんな事していていいのかなぁ？
「ほら、ちゃんとガールフレンドをエスコートしなくっちゃ」コラリアは親指を立ててウインク。
実際、からかってるのか、真面目なのか。
手を引かれてついて行くと、１ブロック先の意外に近いところです。
表題のプールが変ですねぇ、内容も変やから、まぁエエか、
2003/04/23：初出
2022/05/01：再録
28-Polish？-U.S.A.1964-No.28(7/22) 今度はポーランド？へ
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