maidoの”やたけた”(ブログ版)

ジジイの身辺雑記。今日も生きてまっせ!

正直者探し又は嘘つき探し 其の二

2015-02-03 16:09:02 | 支離滅裂-迷想迷夢-正直者探し

うかっと始めた与太話、どう納まりがつくのやら、

頭から出来そこないのウドンを掛けられた出来そこないの男、瘤にウドンの汁がしみるやら、熱いやら、側のお宮さんの北の鳥居の傍らの手水の水で頭を冷やして顔洗うて、一息ついた。
むさんこな奴に出食わしてエライ目に遭わされてワヤ苦茶、それにしても腹が減っては戦が出来ん。
何ぞ無いのんかいな?と見回して、ひょっと目についたのは「名物ドジョウ寿司」。
ドジョウと寿司の組合せは想像がつかんけれど、これなら頭から掛けられても熱うは無いやろう。
注文して出てきたのは、寿司飯を四角に押した上に、何やら焦げ茶色のソボロ風の物が薄っすらと載った代物。
恐る恐る茶色の物体の正体を問えば、其れこそがドジョウやそうで、いわれてみれば開いてつけ焼きにしたドジョウ。
名物に美味い物無しという言葉に間違いないのを改めて思い知らされたが、美味い不味いは二の次で、ともかく腹ごしらえは出来たものの、さてこれからどっちへ向こうか?
左へ行ったら伊丹、右は熊野田上新田、真っ直ぐ行ったら能勢街道。
町方のモンはすれててイカン、何かと言うたら人をだまくらかそうと油断がならん。
どっちへ行ったら、すれてない純朴な正直者が多いのやろか?
こうなりゃ神頼みや、ひとつ神さんに訊いてみよう、と社殿の前で「なにとぞ正直者の居る場所をお教えください、たのんます」とぶつぶつやっておりますと、 「あんさん何をさっきからお願いしてはりますねん?よっぽど難しい事でっか?」としがんだようなバアサンが声を掛けてくれたのにすがりついた。
他力本願、人頼り、お前の頭は何処にある。
地獄で仏、原田神社でババァ、溺れる者は藁をも掴む、オゴル平家は久しからず、聞くは一時の恥じ、聞かぬは一生の恥じ、もっと効かぬは豆腐に釘、このバアサンに教えて貰お。
実はコレコレしかじかで、と話した所がバアサン横手を打って「それなら此処やがな」
「此処?って此処の此処でっか?」
「此処が此処やのうて何処が此処やねん、此処は此処に決まってますがな」 とココ、ココと名古屋コーチンの寄り合いのような按配ですなぁ。
半信半疑で「ホンならおばあさんは正直者でっか」
「当たり前の突き当たり、正直バアサンポチ連れて、敵は幾万ありとても、桃からカラスがハトポッポ」

さすがのアホも考えた、チョッと待てよ、あのむさんこなウドン屋が居るようなところが正直者の集まりとは、これは俄かに信用出来ん。
このバアサンがホンマに正直者ならそれで良し、嘘つきやったら「私は正直者」と嘘をつく筈。
嘘つきが正直に「私は嘘つきです」と言うたら其の途端に正直な嘘つきになって、嘘つきな嘘つきやなくなる。
すると正直に「私は嘘つきです」と言うた言葉が嘘になる。
「私は嘘つきで」までは嘘つきやけど「す」と言うた途端に正直者になって、その途端に嘘つきになるやないか。
待て待て、ココは肝心なところやぞ、逆に嘘つきが「私は正直ものです」嘘を言うたら、これは立派な正真正銘の見上げた嘘つきやけど、その言うた言葉が嘘やとどうして判る?
あ~いたまがあたい・・・、ちゃう!頭が痛い。

「そらアンサン痛かろう、瘤に血が滲んでまっせ」
「そうや無いねん、バアサンあんたが嘘つきやったら『私は嘘つきや』というはずがない。ホンマに正直やったら、これもまた『私は嘘つきや』という筈がな い。してみると『あんさんは正直者でっか?』と世間の誰に聞いても、答えは一つ『私は正直者でっせ』そうなると何を信じてエエか判らんがな」
「ヌワニィ!この正直者の年寄りを捕まえて嘘つき呼ばわりするんかいな!この世に生を受けてより、人様に嘘つき呼ばわりされた事がないのに、こんな若僧青二才に嘘つき呼ばわりされたる口惜しさ、おのれ、タダでは置かぬ、其処へなおれ!」
「ちょっと待ちなはれ、あんたが嘘つきやと言うたんやないがな、例え相手が正直者でも嘘つきでも、『正直者でっか?』と尋ねたら、返る答えは一つ『私は正直者』これではどっちか判らんなぁと言う一般論を言うただけ」

「イッパンもヤッパンもあるかい、ヤッパンマルスは軍楽隊、嘘と一番札はついたことが無いこの清く正しい手弱女に何ちゅう事を言いさらす、ワタイは正直者と思うのか嘘つきと思うのかキッチリ、ハッキリ返答せぇ。事と次第によってはただ置かん」
「そないに青筋立てていわれても、どっちがどうとも決めかねる」
「大人しいに聞いてたら、このアチャラモクネンのドガシンタレが、人を嘘つき呼ばわりして、年よりやと思うて茶の子にするか。麻田の殿さんにご奉公した折 りに、習い覚えた薙刀の腕は年は取っても鈍りはせんわい、今家に帰って伝来の薙刀持って来て、千六本に切り刻んでやるほどに、覚悟定めて其処に待ちゃれ い!」
「まぁまぁバアサン一寸待ちなはれ、そないにイキリ立たれてはどうにもならん、わたいの言いようが悪かった」
「い~や、この年になるまで嘘つき呼ばわりされた覚えはない、この恥そそがで置いてはご先祖様に顔向け出来ん、見ん事恥をそそぐ程に原田大明神もご照覧あれ」
「いや、もうそないに大層に」
「何を抜かすかこの下郎が、こうなったらお前と刺し違えてワタイも死ぬ、覚悟!」
いきなり胸倉を掴むと見るや、なけなしの毛を束ねた髷から、剥げちょろけて真鍮色が出た銀かんざしモドキ、抜く手も見せずに逆手に持って、悪鬼羅刹か般若の面か、目を吊り上げた形相の凄い事。

「待った、待った、どうぞ了見しておくれ、どんな事でもして謝る。若い娘となら辛抱もできるが、おまはんと刺し違えは許してくれい」
「其処まで言うなら、考えんでも無いが、口先だけで謝られてもこのババァの壱分が立たん。何ぼ出す?」
「ヘッ?」
「魚心有れば水心、地獄の沙汰も金次第、出すもん出したら許さんでもないぞえ」
「ヘッ?」
「屁の病で死んだ亡者やあるまいし、ヘッばっかり言うてるんやないわいな、何なら息子を呼んで落とし前つけさせようか?」
「ヘッ?」
「お前ウドン屋から飛び出して来たやろ、あそこに居てたんがワタイの息子」
これはいけません、前門のウドン屋、後門のババァ、空でカラスはアホ~、アホ~、進退此処に極まれリ。
またウドンでリンスはしとうないでありんす、ババアと心中はもっとしとうない、虎に跨る和藤内。
懐から巾着を取り出して、一枚、二枚、三、四、五枚、手元を見てるバアサンが振りかざす簪がだんだん下がってきた。
一枚財布に戻したら、腕がピョンと元の位置に上がったから、泣く泣く五枚差し出したら、礼も言わずに引ったくって、スキップ踏んでウドン屋へ駆け込んだ。
行きがけに「アホを嬲って小遣いもろて、これで寿命が三年延びた♪」憎らしいやら悔しいやら。
「もうこんな世間に一時も居りとう無い、そうや出家しょう。何処ぞにお寺は無いかいな?」

あても無く池を巡れば瑞輪寺に行き当たった。
嘘か本当か、あの一休禅師も居たという地元だけで有名なお寺。
竜宮城の紛い物みたいな山門を入ると、折り良く一人のお坊さんが。
「えらいすんまへん、実は出家しようかなぁ、と思うて居るんですが、出家はどんな段取りでしたらエエもんか、ヒトツお教え願いとうございます」
「ホゥ、ホゥ、それはお若いのに感心なこっちゃ、先ずは頭を丸めて下働きから修行しなはれ、ちょっとお待ち」
庫裏へ引っ込んだかと思うと、手桶、剃刀、数珠一連もって出てきた。
「ハイハイ、この数珠を手に掛けて、中では掃除が面倒なから、此処で得度剃髪して進ぜまひょ」
気軽と言うか、イラチと言うか、数珠を手に掛けさせると委細構わずゴリゴリ剃りだした。
「あの~」
「ハイハイ、宗旨は違うても御仏は只一人、「ア~ノクサンマンダラ」でも「オンコロコロオンコロコロ」でも「ナンマンダブツ」何でもエエから御仏を念じなされ」
「いや、ちゃいますねん、まだ決めた訳や、ア痛ッ!」
「痛かったか?修行修行、瘤があって剃りにくいから、間を剃刀の峰で叩いて平らにした」
「そんな無茶したらあきまへんがな、なにやら額にタラ~ッと流れてきたような」
「見たらイカン、見るから痛い、知らぬは極楽、知るは地獄。ちょっと瘤を削っただけ、骨までは行ってないから安心おし」
「安心出来るかいな!」
「このくらいの傷でヤイヤイ言うもんや無い、切腹したらもっと血が出る」
「土佐の侍やあるまいし、なんでワタイがお寺で切腹せんならん!」
「ほれ、じぃっとしてへんよって今度は耳切ったがな、此処に経文を書き忘れたんが不覚やったなぁ」
「それは耳無し芳一・・」
「黙ってんと切り落としまっせ」
「切り落とされて堪るもんか、眼鏡を掛けられへんようになるやんかい!」
「ハイできた、しかし見れば見るほど格好の悪い不細工なシャレコウベじゃのう」
「そないに悪し様に言わんでも、ところで修行は何しましょ、檀家の法事に呼ばれて、ご馳走ずくめのお布施をグッスリ、まぁこの坊んさんのお姿のエエこと、どうぞ還俗してうちの婿に、てな辛い修行も覚悟してます。何しまひょ?」
「先ずは井戸から水汲んで、掃除、洗濯、炊事から始めなはれ」
「ホンで修行は?」
「それが修行や」
「いや、もっと色々教えて貰えるのとちゃいますのん」
「人に習うて修行になるかいな、沈思黙考、森羅万象、生、老、病、死、愛別離苦、怨情会苦、求不得苦、五陰盛苦に思いを致し自力で悟りを開くのが修行じゃな。禅は自力本願、自助努力してこそ道は開けるのや」
「へへぇ、さすがはお住職」
「いや、ワシャ住職ちゃうで」
「ほんなら役僧さん」
「ブー、役僧はずれ!」
「エ~ッ、ほんならアンタ何ですねん」
「出入りの植木屋、今は休憩タイム」
「其の頭は?」
「のぼせ性やから剃ってんねん」
「ようも人を騙して」
「オヤ?それは聞き捨てならんぞ、何時私が住職やと言うた?着てるもんが見えんかぇ?ハンテン着た坊主が居るもんか!あんたがどう思い込もうが、言わん限 りこっちには判らん、自分の早合点が間違うてたからとて、騙されたとは何ちゅう言い草、事と次第によってはタダでは置かん」 「そやかて」
「そやかても、赤勝て、白勝ても有るかい」
「先の難しいお話は?」
「門前の小僧と言うやろが、長年出入りしてたら厭でも耳に入って覚えるがな」
「こないに丸坊主にしてしもて」
「夏は熱がこもらんでエエぞ、雨が降り出したら直ぐ判るし、床屋に行く手間もない」
「うそぉ~!」
「ほんと!」

て~事で続く。(やろか?これはますます収拾がつかんぞ・・)
フィクションですので其のお積りで(言われんでも判ってる?そうやねぇ・・・)


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