maidoの”やたけた”(ブログ版)

ジジイの身辺雑記。今日も生きてまっせ!

正直者探し又は嘘つき探し 其の三

2015-02-03 16:11:07 | 支離滅裂-迷想迷夢-正直者探し

さて、どないしょう?
結末を考えたんでは前に進まん。書いてるうちにどうなと始末は付くやろう。
山よりデッカイ猪(シシ)は出ん、海より大きな魚は釣れん。

そこへ帰ってきた住職、「あら?お弟子さんですかいな、確り修行してエエ植木屋さんになりなはれや」
「いえ、ワタイはこのお寺に弟子入りしょうかいな、と考えてただけやのに、この慌てもんがこんな事にしてしもたんです。こうなったら何が何でもこのお寺に弟子入りを」
「そう簡単に考えて貰ろても難儀やなぁ。物の弾みで頭を丸めたからとて、俗世に未練が有っては修行が成り難い。未練は無いのか?」
「厭になっただけで、未練はおます」
「そないハッキリと未練があると言われると却って気持がよろしい。何が厭になったんかいな?」
「皆んながワタイに嘘をついて騙しますねん、これは大阪の町中やから人情が世知辛うなって、我が俺がでないと生きられん、騙した者が責められず、騙された方が馬鹿にされる。
ワタイ嘘をつかれるのも厭、つくのも厭。町を離れて純朴素朴な正直者の居るところで暮らしたいと遥々旅してまいりました」
「遥々言うて、ものの四里そこそこやがな。するとあんさんは今までに嘘をつかれても、ついた事は無いのかいな」
「おません!」

「ホゥ、それは立派な事じゃ、それなら今更修行せずともよかろう。拙僧なんぞ、未だにその時は正しいと信じておったのが、別の時、別の見方をしたらそうや 無い、どちらが正しいとも言えず、どちらが間違っているとも言えず、心ならずも嘘をついたようなことになる事が有る、まだまだ修行が足りんなぁ、と反省す ることがしばしばじゃ。
それを何んのためらいも無く、『無い!』と言い切れるとは大した物、とても拙僧ごとき未熟者がお教え出来るような事は無い。
まして俗世に未練が有るとあっては、尚更此処に居てもらうワケには行かず、どうぞ、何処へなとお引取りを」

「アッ、イヤ、それは、待って、」もう手遅れ。
態(テイ)よう断られてしもた。
さすがは住職、一目でこの男の腰の据わらん、甘ったれた根性を見抜いた。
ヤドリギの寄生虫、エエ所取りの責任取らず。
人に頼って己の力以上の事をして、我の手柄顔でおお威張り。
人が誉めんと機嫌が悪い。
抱っこしてくれ、おんぶしてくれ、やれ抱きかた悪いの、おぶり方が悪い。
当て事とフンドシは向うから外れる、というのを聞いたことが無い。
自分が思うようにならんと、そらもう大騒ぎ。
あいつが悪い、こいつが悪い、ワタイはちっとも悪う無い、何で皆んなして苛めるねん。
得意の「のに」「くれへん」の大安売り。
「住職やと思うたのに」
「出家しようと思うたのに」
「お寺に置いてくれへん」
「誰も助けてくれへん」
さすがの住職もアホらしなって逃げてしもた。
こうなったら植木屋に、と思えば、触らぬ神に祟りなし、纏(マト)わり付かれては身の破滅、雲を霞と失せにけり。

行く先々で悪い奴にばっかり出会うのは、何ちゅう悪い星の巡り合わせやと、不平不満ではち切れそうになって歩いているけれど、その悪い奴等が寄り集まって、毎日殺し合いもせんと、仲良う楽しく暮らしてるのは何でか?とまでは考えん。

別にこれと言う当ても無く、岡上の町を通り過ぎ、千里川のたもとで一休み。
「何じゃい、千里川?江戸と大阪でも百五十里も無いぞ。折れて曲がって渦巻いてるようにも見えん、ようもこないな見え透いた嘘の名前を付けたもんじゃ、世の中に真実いうのは無いもんか」と川にまで八つ当たり。
刀根山の坂を休み休み登り切り、万葉集にも詠われた、月の名所は待兼山。
山と山との谷間へと差し掛かった頃は日もとっぷり暮れて、間(マン)の悪い事に月も無く、風に葉音がザワ、ザワ、ザワ、どこやでキツネかケェ~ン。

「気色悪!こんなとこに追い剥ぎでも出たらワヤやがな。何処ゾに家でも無いもんか?」
出たら厭や、出んといて、と思うたら、キッチリ出るのが世の常。
ガサガサッと音がしたかと思うと「オイ、待たんかい」
大体こういう所で「またんかい」などと言われて素直に待ったら、ご馳走になって、小遣いくれて「又お越し」てな訳が無い。
判ってはいるものの、足がすくんで待ってしもた。

顔を明かりで照らした追剥の手下が「アカン、カス引いた」
「何がカスじゃい?」
「坊主やがな、坊主殺せば七生祟るいうで、後生が悪いから仕事にならん」
「どれ、ホンに頭は坊主やが、身なりは違うぞ、町方の扮(ナリ)やがな?見たところ座頭でもなし医者でもなし。お前何もんや」
「問われて語るもおこがましいいが、」
「判った、皆まで言うな。タダのアホやな」
「ウヌ、そう簡単に見破られては、無念残念、口惜しや」

「おい、手下共、笑ろてんと仕事せんかい!」
ワッと集った(タカッタ)手下に身ぐるみ剥がれてフンドシだけのスッポンポン。
「何とにやけたフンドシをしてるや無いか?チリメンのフンドシとは奢ったもんやなぁ!」
「自慢や無いが新町の虎菊が若旦那にと、首尾よく貰うまでの艱難辛苦はいかばかり、そもそも事の始まりは・・」
「そこで気の済むまで一人で言うとり!どや、金は持っとったか?」
「へい頭(カシラ)!」
と差し出す巾着を見てみれば、其処ら辺の貧乏人が持つような物と物が違う。
京あたりの偽物の和桟やなしに本物の唐桟留、サントメ縞に伊賀組紐の緒がついて、結構毛だらけ、ネコ灰だらけ、ケツの周りはXXX。

これはひょっとしたら親からも、一稼ぎできるぞと、隠れ家さして引っ立てて行かれたんですな。
軒が落ちかけのあばら家の、土間の黒木柱に縛り付けられてしもた。
「お前、何処の誰じゃい、正直に言え、いわんと段平(ダンビラ)で切りちゃちゃくりにしてまうど」
「一日に二回も縛られるとは、ワタイがどんな悪い事をした言うねんな?」
「ゴチャゴチャ言うてんと早よ吐きさらせ」
「生憎腹が減ってて、吐くもんが無い」
「何を抜かすか、親は何処の何者じゃい」頭を一つどやされた。
「ワ~ン、何にも叩かんでも・・ワ~ン」
「難儀な奴やなぁ、エエ年こいた大人が泣くな!」
「親は大阪は道修町、神農さんの一本南筋で薬種問屋。ワタイは二十二で一人息子、鱧(ハモ)皮のキュウリ揉みが好きで、納豆が嫌い」

「イラン事言わんでもエエのや、薬種問屋と言うからにはおアシは仰山あるのやろな?」
「何ぼ問屋でもムカデやあるまいし、テテ親と母親に二本ずつ、番頭、手代、丁稚、飯炊きのオハルはんを入れても全部で十二本、犬を手伝いに呼んでもやっと十六本」
「アホ、ワシは下駄屋や無いねんぞ!足の数聞いてどないするねん!」
「そやけどお足と・・」
「ゼゼの事やがな」
「ゼゼといえば、あらわれわたる、ぜぜのあじろぎ?ウチは大津やのうて大阪」
「おちょくってたら、承知せんど」
「ワタイもこんな目に遭わされて不承知」

「もうエエ、ほれ此処に矢立と紙があるよって、親に一筆書け」
「縛られてては書けん」
「おお、そらそうや。おい、手だけ解いたれ。こんな腰抜け何もようせんやろうが、油断はするな」
「早よ、一筆書け」
「ちょっと手が痺れて」
「一々文句の多い奴やなぁ、素直にハイと言えんか」
「ハイ、ハイ」
「馬子やあるまいし、ハイは一回でエエ、オイオイ、そら又何を書いてるねん?」
「仰せの通り、『一筆』と草書で、我ながら惚れ惚れするほどの出来、何やったら行書でも書きまひょか?」
「これは、これは、思わず拝んでしいまそうな程、果てしの無いアホやなぁ!出来の悪い子ほど可愛いと言うから、親はすんなり金だすじゃろ」

て~事で続く。(ホホー、どんどん違う方向に行きますなぁ!最初に筋も何も考えんからこういう事になるねんなぁ・・。)


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