ゆすらうめが熟れている。最近は余り見られなくなったがそれでも緑の中に実っている真っ赤な実を時折見つけることがある。赤くて小さな実は愛らしくもある。大きさは大豆と同程度かやや大きい位で食べるとほのかな甘酸っぱさがある。
田舎の井戸の近くにあり子供の頃は良く食べた。食べたといっても腹の足しにもならないが、ほのかな甘みは美味しい物のうちの一つに入っていた。
井戸の周辺には、石榴、スモモ、桃、ユスラウメ、無花果、梅などがあったが、井戸が水道になり、家の増改築が行なわれるなどの時代変遷により、枯れたり切られたりしてすべてが消えてしまった。
思い出の果樹は消えて行ったが思い出は消えないから、「ゆすらうめ」などを見つけると望郷モードに入り込み、何もかもが不足していた幼年時代が走馬灯のように脳裏を駆け巡ることが多くなってきた。加齢というものはそんなものなのかもしれない。