水元公園の東端の一角に有る防火用貯水池では冬が近付くと鴨の群れが見られる。
夏場は水草や藻や菱が隙間もないほどに生い茂っていて、水も澄んでいたが、
今は写真のように濁っていて、植物もすべて枯れてしまっている。
濁っている理由は判らないが、これほどのことはこの数年間なかったことである。
消火用に使用する場合、「藻など」は水の吸入時の障害になることは明らかで、
それを理由にすべて取除かれたのかもしれない。
この池の周りには枝垂柳が植えられており、
柳の下にはベンチが備え付けられてある。
天気のよい日にはその上で寝ている人を見かけることもあるが、
余り人がいないので、私はそこで昼食を取る事がある。
で、この日も遅めの昼食を取りながら、カモたちの群れを見ていた。
20羽以上の群れだったが、争いもなく平和そのものである。
同じような種類ばかりだったので、北の大地から一緒に渡ってきた集団なのかもしれない。
池の防護柵まで近寄っていったが逃げる気配はなく、
むしろこちらを見ている雰囲気である。
試しに物を投げるようなジェスチャーをすると寄ってきた。
でパンの切れ端を投げると、
静かだった集団が荒れ始め、あちこちで諍いを始めた。
と言っても威嚇のみでカラスのような取っ組み合いの喧嘩はなかった。
色々観察していると、もっとも強かったのが下の鴨。
頭頂が白く目の後方に有る緑色が一番綺麗で良く目立っていた。
集団の中の年長者で且つリーダー的存在なのであろう。
サブリーダーが下の鴨。やはり頭頂が白く目の後方がやや緑がかっている。
下の鴨は、メスで頭頂が赤茶色(頭部が赤みを帯びているので緋鳥鴨と名前が付けられた)である。
メスの順位はオスの順位に準じているようである。
リーダーに威嚇されて立ち向かうものはなく、
サブリーダーに立ち向かうものはリーダーだけ、
と言った構図で、上下関係はしっかりとしているようだった。
そのため、千切ったパンを一個一個投げている間は騒がしさは収まらなかった。
ただ、巻頭の写真のように番が多く、
リーダーは自分の相手の雌鴨に対しては寛容で、
投げたパンを譲っていたのである。
よくよく見ると丸々と太った「美味しそうな鴨」では有る。
私の年越し蕎麦はここ数年「鴨南蛮」となっているが、
鴨と言っても、食べているのはタイ産の合鴨である。