高学年以上向け
時代は1941年から1944年。舞台はハワイ諸島のヒロ。
マレスケは、祖父が子供を連れてハワイに移住した日系2世。祖父が1世であることはもちろんですが、その子供である父もまた1世なのだと、初めて知りました。ハワイで生まれた子供が2世になるんですね。
1世は、ここでは外国人です。では2世はどうなのかというと、アメリカの国籍はもち、1世とは違う権利がいろいろとあるものの、ハワイの公立学校に通うかたわら、日本人学校にも通う。剣道を習ったりもしています。
そんな中、日本が真珠湾を奇襲攻撃。太平洋戦争がはじまります。日本人は、資産凍結され、祖父がやっている店には落書きがされます。祖父はFBIに連行され、兄はとうとうアメリカ軍の日本人部隊に志願し、出征。
アメリカ本土では、収容所に入れられるというドラマを見たことがありました。でも日本人の移民の多いハワイではそれはありません。というか、ハワイに住んでいた日本人がどんな状況だったのかを伝える本などは、これまでなかったんだなあと改めて思いました。(私が知らないだけかもしれませんが)
敵か味方か――。
戦争はどちらかにつかなきゃならない。
もちろんぼくは、アメリカの側に立っているつもりだ。
だけどふしぎなことに、あっちがつかせてくれない。
日本はぼくらを裏切り、
アメリカはぼくらを疑っている。 (カバーより)
森川さんは、戦前日本にもどってはこられましたが、おじいさんがハワイに移住していらしたのだそうです。何度もハワイへ行き、取材され、以前は日本人の男の子がハワイへ行き、日系の方たちの存在を知るという『フラフラデイズ』(文研出版)も書かれています。そしてこのたびの本は、当事者としての少年の揺れる立場と思いを真っ向から描かれました。
あと半年で平成も終わり、時代が変わります。戦争があった昭和は遠い時代になってしまうけれど、戦争の記憶はしっかりと語り継がなくてはなりません。そのやり方として、日本にいる日本人がどうだったのかというだけではなく、外の世界にいる日本人、そして他の国の人たちの立場も同時に伝えなくてはならないとも思います。
そういう意味でも、大変に意味のある本だと思います。
この本がすぐれているのは、一人の少年の目から描いた家族の物語であるということです。父はすでになくなっていて、祖父が兄、姉、そしてマレスケを育てています。そして父が死んだあと、母は子供たちを置いて日本に帰っていた。その母とのやりとりもあり、せつなくなります。
たくさんの人に読んでいただきたい物語です。
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