石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇5 生産量(1)

2013-08-25 | その他

 

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0277BpOilGas2013.pdf

 

 

2.世界の石油と天然ガスの生産量
(石油と天然ガスの比率:中東は5:1、欧州・ユーラシアは1:1!)
(1)2012年の石油と天然ガスの地域別合計生産量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/3-2-G01.pdf参照)
 2012年の世界の石油生産量は日量8,615万バレル(以下B/D)であり、これに対して天然ガスの生産量は年間3兆3,639億立方メートル(以下㎥)であった。天然ガスの生産量を石油に換算すると5,797万B/Dとなり、従って石油と天然ガスを合わせた1日当りの生産量は1億4,412万B/Dとなる。両者の比率は石油60%、天然ガス40%である。

 生産量を地域別に見ると、中東が3,772万B/Dと最も多く、欧州・ユーラシアがこれに次ぐ3,505万B/Dで、両者で世界の生産量の半分を占めている。但し両地域を比較すると、中東は石油2,827万B/D、天然ガス5,484億㎥(石油換算:945万B/D)と、石油の生産量が圧倒的に多く、一方、欧州・ユーラシアは石油生産量が1,721万B/Dであり天然ガスの生産量1兆354億㎥(石油換算:1,784万B/D)とほぼ同量である。

 中東、欧州・ユーラシアに続いて生産量が多いのは北米である。北米は欧州・ユーラシアと同様石油と天然ガスの比率がほぼ同じであり(石油生産量1,556万B/D、天然ガス生産量8.964億㎥、石油換算1,545万B/D)合計3,101万B/Dに達している。

 残るアジア・大洋州、アフリカ及び中南米の3地域の生産量は上記3地域の半分もしくはそれ以下である。このうちアジア・大洋州(石油換算合計生産量:1,676万B/D)は石油と天然ガスの比率がほぼおなじであるが、アフリカ(1,317万B/D)と中南米(同1,042万B/D)は中東と同じく石油生産が大半を占めており天然ガスの比率が小さい。

 前回の埋蔵量で触れたとおり世界の石油と天然ガスの埋蔵量の比率は60%対40%(石油埋蔵量1兆6,689億バレル、天然ガス埋蔵量1兆1,780億バレル)である。このことから欧州・ユーラシア、北米及びアジア・大洋州では埋蔵量に見合った石油と天然ガスが生産されているのに対し、その他の3地域(中東、アフリカ及び中南米)では今後さらに天然ガスの開発生産に拍車がかかるものと考えられる。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇4 埋蔵量(4)

2013-08-23 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0277BpOilGas2013.pdf

 

(石油と天然ガスを合わせた可採年数は54年!)
(4)可採年数の推移(1980~2012年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/3-1-G04.pdf 参照)
 可採年数(以下R/P)とは埋蔵量を同じ年の生産量で割った数値で、現在の生産水準があと何年続けられるかを示したものであるが、2012年末の石油と天然ガスの合計埋蔵量を同年の合計生産量(次章参照)で割ると、石油・天然ガス全体の可採年数は54年となる。

 1980年から2012年末までの推移をみると、1980年の可採年数は35年であった。この年の石油の可採年数は30年、天然ガスは50年であり、石油と天然ガスの間には20年の差があった。当時、石油の埋蔵量は天然ガスの1.5倍であったが、生産量については石油が天然ガスの2.5倍であったため石油の可採年数が低く、石油と天然ガスを合わせた可採年数も石油に近い数値となったのである。

 その後、1980年代は石油、天然ガスの埋蔵量は共に増加したが、生産に関しては天然ガスが伸びる一方(天然ガス篇2-(3)参照)石油は停滞したため(石油篇2-(3)参照)、石油の可採年数が伸び、天然ガスのそれは停滞した。1990年代は石油、天然ガス共に可採年数は横這いとなり、両者を平均した可採年数も50年弱で推移した。2000年代に入り可採年数は2002年に53年のピークを記録した後、2006年には49年に下がった。しかしそれ以降は再び可採年数は増加傾向を示し、2012年末の可採年数は石油53年、天然ガス56年、石油と天然ガスを合わせた平均可採年数は54年となっている。

 上述の通り1980年末の石油と天然ガスの可採年数の間には20年の差があったが、近年その格差は縮小しており、2012年末の両者の差はわずか3年である。このことは石油と天然ガスの探鉱・開発及び生産のペースがほぼ同じであることを意味している。

(石油+天然ガス篇 埋蔵量完)
 
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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月23日)

2013-08-23 | 今日のニュース

・米中欧の経済指標好調で原油価格高値。Brent $109.91, WTI $104.26

 

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BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇3 埋蔵量(3)

2013-08-22 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0277BpOilGas2013.pdf

 

(過去22年の埋蔵量の伸び率は年平均2.3%、石油と天然ガスの比率は6:4で変わらず!)
(3)1990年~2012年までの合計可採埋蔵量の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/3-1-G03.pdf 参照)
 1990年末の世界の石油と天然ガスの埋蔵量はそれぞれ1兆275億バレルと110兆㎥(石油換算6,896億バレル)で合計埋蔵量は1兆7,171億バレルであった。因みに両者の構成比率は石油60%、天然ガス40%であるが、この比率は2012年まで殆ど変っていない。

 1990年代を通じて埋蔵量は年率1~2%で漸増し1999年には対前年比8.2%と大幅に増加し合計埋蔵量は2兆バレルを突破した。その後2002年に2.3兆バレル記録した後の数年間は1%以下の低い増加率にとどまった。しかし2007年以降は再び増加傾向を回復、2012年の埋蔵量は石油1.7兆バレル、天然ガス187兆㎥(石油換算1兆1,780億バレル)合計2.85兆バレルに達している。これは1990年の1.7倍である。

 1990年から2012年までの過去22年間の平均成長率は2.3%である。次項(可採年数)に述べるとおり埋蔵量を生産量で割った可採年数は過去20年間ほぼ一貫して上向いており、石油及び天然ガスの探鉱・開発活動が活発に行われ、生産量をしのぐ埋蔵量の追加があったことを示している。

 これは何と言っても今世紀に入り石油・天然ガスの価格が大幅に上昇したことにより、国営企業・民間企業のいずれを問わず石油・天然ガス上流部門に大きなインセンティブが働き、深海、極地などでの探鉱開発が活発になり、或いは米国のシェールガス、シェールオイルに見られるように新しい開発生産技術が開花したことが大きな理由であろう。

(続く)

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BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇2 埋蔵量(2)

2013-08-20 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0277BpOilGas2013.pdf

 

(世界一の埋蔵量を誇るイラン!)
(2)国別埋蔵量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/3-1-G02.pdf 参照)
 埋蔵量を国別に見ると、原油と天然ガスの合計埋蔵量が最も多い国はイランの3,685億バレル(以下いずれも石油換算)であり、世界全体の14%を占めている。イランは石油埋蔵量では世界4位(1,570億バレル)であり、天然ガスの埋蔵量(33.6兆㎥、石油換算2,115億バレル)は世界一位である。

 イランに続くのがベネズエラ、サウジアラビア及びロシアであり、それぞれの埋蔵量はベネズエラ3,326億バレル(内訳、石油2,976億バレル、天然ガス350億バレル)、サウジアラビア3,176億バレル(石油2,659億バレル、天然ガス518億バレル)、ロシア2,943億バレル(石油872億バレル、天然ガス2,071億バレル)である。以上4カ国は原油と天然ガスの比率が各国により大きく異なっている。即ちイランは原油と天然ガスの比率が43%対57%で比較的バランスが取れているが、ベネズエラは原油の比率が圧倒的に高く、サウジアラビアも原油87%に対して天然ガスは16%に過ぎない。これに対してロシアは逆に原油30%対天然ガス70%であり、天然ガスの埋蔵量が高い。

 原油と天然ガスの埋蔵量の比率で見ると、イランのように両者のバランスが比較的均等な国は米国(原油65%対天然ガス35%)であり、ベネズエラ或いはサウジアラビアのように原油の比率が高い国はカナダ、イラク、UAE、クウェイトなどである。一方ロシアのように天然ガスの比率が高い国にはカタール、トルクメニスタンなどがある。

 ロシアに次いで埋蔵量が世界で五番目に多いのはカナダの1,864億バレル(原油1,739億バレル、天然ガス125億バレル、以下同じ)である。これに続く6位以下の国とその埋蔵量はカタール(1,816億バレル、239億バレル、1,577億バレル)、イラク(1,726億バレル、1,500億バレル、226億バレル)、UAE(1,361億バレル、978億バレル、383億バレル)、クウェイト(1,127億バレル、1,015億バレル、112億バレル)、トルクメニスタン(1,107億バレル、6億バレル、1,101億バレル)、米国(884億バレル、原油350億バレル、534億バレル)の順である。

 注目すべきことは同じGCC産油国でも天然ガスが豊富なカタールに対してUAE、クウェイトは少ない。これらの国はいずれも発電或いは海水淡水化プラントの燃料として国内の天然ガスの需要が大きい。このためUAE、クウェイトなどは夏場にピークを迎える電力・水のために天然ガスを輸入しなければならないのが実情である。また世界一の石油輸出国であるサウジアラビアでもガス不足は深刻な問題であり国内ガス田の開発が急がれており、LNGの輸入すら検討されているほどである。

(続く)

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BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇1 埋蔵量(1)

2013-08-19 | その他

(石油と天然ガスは一体として考えるべきである!)
はじめに
 BPの「BP Statistical Report of World Energy 2013」をもとに本シリーズで石油及び天然ガスの埋蔵量、生産量及び消費量(天然ガスについては貿易量、価格も含む)のデータを抜粋して解説したが、最後に石油と天然ガスを合わせた形でその埋蔵量、生産量及び消費量についての解説を試みる。

 石油と天然ガスは常温常圧の状態で前者が液体、後者が気体の違いはあるものの本来は同じ炭化水素資源である。石油は運搬・貯蔵等の利便性に優れ、また用途としては燃料用のほか、石油化学原料にもなるため古くから広く利用されてきた。

 これに対して天然ガスは主成分がメタン単体であるため用途はほぼ燃料用に限られている。さらに天然ガスは大気中への拡散を防ぐため密閉状態で運搬しなければならない。このため従来は生産地から消費地までのパイプラインが必要であった。しかし運搬・貯蔵方法としてガスを極低温で液化するLNGの製法が普及した結果、遠く離れた消費地に大量のガスを供給するLNG貿易が確立した。世界的なエネルギー消費の増大により天然ガスは石油の代替エネルギーとして需要が拡大している。さらに天然ガスは石油に比較してCO2の発生量が少ないため環境問題の観点からも強い需要がある。

 石油と天然ガスは発展の度合いの違いにより現在も別々に取り扱われることが多いが、エネルギーとして見れば両者は殆ど変わらないのである。石油生産国の多くは天然ガス生産国でもあり、また石油消費国も同時に天然ガスの消費国である。生産国と消費国はそれぞれが石油と天然ガスのベストミックスを探っている。

 本稿では石油と天然ガスを合わせた埋蔵量、生産量及び消費量についてBPのデータをもとに解説を試みることとする。なお天然ガスから石油への換算率は10億立方メートル(以下㎥)=629万バレル(1兆㎥=62.9億バレル)として計算した。


1.世界の石油と天然ガスの埋蔵量
(2012年末の石油・天然ガスの合計可採埋蔵量は2.85兆バレル!)
(1)2012年末の石油と天然ガスの合計埋蔵量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/3-1-G01.pdf参照)
 2012年末の世界の石油埋蔵量は1兆6,689億バレルであるが、これに対して天然ガスの埋蔵量は187兆㎥であり、これは石油に換算すると1兆1,780億バレルである。石油の埋蔵量は天然ガスより多く、両者を合わせた合計埋蔵量は2兆8,469億バレルとなる。

 これを地域別に見ると、中東は1兆3,141億バレルであり、世界全体の埋蔵量の46%を占めている。続く欧州・ユーラシアは5,082億バレル(18%)であり、この両地域で世界の埋蔵量の64%を占めている。その他の地域については中南米3,762億バレル(13%)、北米2,884億バレル(10%)、アフリカ2,215億バレル(8%)、アジア・大洋州1,387億バレル(5%)である。

 本シリーズの石油篇及び天然ガス篇で触れたそれぞれの地域別埋蔵量と比較すると、中東は石油埋蔵量が全世界の48%を占めているが、天然ガスのそれは43%であり、石油の比率が高い。これに対して欧州・ユーラシアの石油と天然ガスの埋蔵量はそれぞれ全世界の8%及び31%であり、天然ガスが石油の4倍に達している。

(続く)

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BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:天然ガス篇24(完)価格

2013-08-17 | その他

(注)本シリーズ「BPレポート天然ガス篇」は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0275BpGas2013.pdf

 

(三つに分かれるガス価格。日本と米国では6倍の格差!)
7.天然ガスの価格
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-5-G01.pdf 参照)
 天然ガスの取引価格にはUS$ per million BTU(百万BTU当たりのドル価格)と呼ばれる単位が使われている。BTUとはBritish Thermal Unitの略でありおよそ252カロリー、天然ガス25㎥に相当する 。

 市場の自由取引にゆだねられた商品は通常価格が一本化されるものであるが(一物一価の法則)、天然ガスについては価格形成の歴史的経緯により現在大きく三つの価格帯がある。LNGを輸入する日本では原油価格にスライドして決定されている。これは巨額の初期投資を必要とするLNG事業では販売者(カタール・オーストラリアなどのガス開発事業者)と購入者(日本の商社、電力・ガス会社などのユーザー)の間で20年以上の長期安定的な契約を締結することが普通である。この場合価格も両者間で決定されるが、その指標として原油価格が使われているのである。

 これに対してヨーロッパでは供給者(ロシア、ノルウェー、アルジェリアなど)と消費者(ヨーロッパ各国の天然ガス使用者)がそれぞれ複数あり、パイプライン事業者を介して天然ガスが取引されており、EU独自の価格体系が形成されている。また完全な自由競争である米国では天然ガス価格は需給バランスにより変動する市況価格として形成される。その指標となる価格が「Henry Hub価格」と呼ばれるものである。

 ここでは日本向けLNG価格(以下日本価格)、EU天然ガス価格(以下EU価格)及び米国Henry Hub価格(以下米国価格)について2000年から2012年までの推移を比較することとする。なお参考までに百万BTU当たりに換算した原油価格も合わせて比較の対象とした。

 2000年の日本価格は4.7ドル、EU価格2.9ドル、米国価格4.2ドルであり、当時の原油価格は4.8ドルであった(いずれも百万BTU当たり)。EU価格が低く、日本価格及び米国価格はほぼ同じ水準で原油が最も高かった。この傾向は2002年まで続き、2003年には米国価格が一時的に日本価格、EU価格、原油価格のいずれをも上回った。

 2004年以降原油価格の上昇に伴い天然ガス価格もアップし、2005年の価格は米国価格8.8ドル、原油価格8.7ドル、日本価格6.0ドル、EU価格5.9ドルとなった。2000年当時に比べ原油価格は1.8倍にアップしたのに対し、日本価格1.3倍、EU価格2倍、米国価格2.1倍であり、日本価格の上昇率が最も低かったのである。
 
 しかしその後2008年にかけて原油価格が急騰する中で日本価格とEU価格が原油価格を後追いする形で急激に上昇した中で、米国価格は横ばい傾向を示したのである。その結果2008年のは原油価格16.8ドルに対し日本価格12.5ドル、EU価格11.6ドル、米国価格8.8ドルとなり、日本或いはEU価格と米国価格の格差は1.4倍に広がった。

 2008年の反動で2009年には原油価格が急落、日本、EU、米国それぞれのガス価格も下落したが米国の下落幅が大きく、日本価格及びEU価格は米国価格の2倍以上になった。2009年以降原油価格は再び急上昇したが、この時3地域の天然ガス価格は明暗を分けた。日本価格は原油価格に連動して上昇の一途をたどったのに比べEU価格は緩やかな上昇にとどまった。そして米国価格はさらに下落する傾向を示したのである。

 この結果、2012年の各価格は原油価格18.8ドルに対し、日本価格は16.7ドル、EU価格11ドル、米国価格は2.8ドルとなった。日本価格はEU価格の1.5倍、米国価格に対しては実に6倍である。日本の価格上昇要因がLNGの原油価格へのリンク及び原発事故によるLNG需要の急増であるのに対し、米国ではシェールガス増産による供給過剰と言う価格下落要因が働いた。その結果が日米で6倍の格差をもたらした訳である。

(天然ガス篇完)

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BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:天然ガス篇23貿易量(9)

2013-08-16 | その他

 

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http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0275BpGas2013.pdf

 

 

6.カタールと日本の輸出入の動向(2006~2012年)(続き)
(過去2年連続して二桁の伸びを示したLNG輸入!)
(6-2)日本の場合
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-4-G08.pdf 参照)
 日本は世界一の天然ガス輸入国である。日本の輸入は全てLNGであり従って世界一のLNG輸入国でもある。日本のLNG輸入量は2006年の819億㎥から2008年には921億㎥に達した後、2009年は859億㎥、2010年935億㎥と横ばい状態であった。しかし2011年には一挙に1千億㎥を突破2012年には1,188億㎥と過去最高を記録している。これは再三触れてきたように原発停止による火力発電用燃料として天然ガスの需要が急増したためである。2011年及び2012年のLNG輸入の対前年増加率は14.4%、11.1%と二桁台の大幅な伸びであった。

 2006年から2012年までの日本のLNG輸入を相手国別に見ると、2006年はインドネシアからの輸入が186億㎥と最も多く、これに次いでオーストラリアが157億㎥、マレーシアが156億㎥であり、第4位以下にカタール、ブルネイが続いていた。しかしインドネシアからの輸入は2008年の188億㎥をピークに173億㎥(09年)→170億㎥(10年)→128億㎥(11年)→74億㎥(12年)と年々減少しており昨年はついに100億㎥を下回った。インドネシアは国内の天然ガス消費の増加により輸出余力が無くなっている。日本を含め輸出相手国との契約数量を年々削減し、数年先には純輸入国になる見込みである。またマレーシアも同様の事情であり日本の輸入はここ数年200億㎥前後で頭打ち状態にある。

 これら両国に代わる輸入ソースがカタール、オーストラリア及びロシアである。特にカタールは原発事故以後のLNGの緊急輸入先として大きな存在感を示している。即ちカタールからのLNG輸入量は2006年から2010年まで100億㎥前後で推移していたが、2011年には1.5倍の158億㎥に急増、さらに2012年も前年比35%増の213億㎥に達している。

 オーストラリアの2012年輸入量は216億㎥で輸入国としてはトップである。オーストラリアでは日本企業が関与したLNGプロジェクトが建設中であり、今後安定した供給先となることが期待されている。ロシアは2009年に極東LNGプロジェクトが操業を開始し、同年日本は37億㎥を輸入した。その後輸入量は順調に増え2012年には同国から113億㎥を輸入、オーストラリア、カタール、マレーシアに次ぐ第4位の輸入国となっている。なお、2011年、2012年のLNG需要の急増に対して上記各国の他、UAE、エクアトール・ギニア、オマーン、ブルネイなど合わせて19カ国からLNGを輸入しており調達先の多様化を図っている。

(貿易量完)

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BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:天然ガス篇22貿易量(8)

2013-08-15 | その他

 

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http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0275BpGas2013.pdf

 

 

(6) カタールと日本の輸出入の動向(2006~2012年)
本項では世界第二位の天然ガス輸出国であるカタール及び世界トップの輸入国である日本の両国について2006年から2012年までの7年間の輸出相手先或いは輸入相手先を見てみる。

(目を見張るカタールの天然ガス輸出。6年間で量も相手国の数も4倍!)
(6-1)カタールの場合
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-4-G07.pdf 参照)
 カタールはLNGの輸出量が世界一であり、パイプラインとLNGを合計した輸出量でもロシアに次いで世界第2位である(前項参照)。カタールは2007年からUAE及びオマーン向けにパイプライン(ドルフィン・パイプライン)による天然ガスの輸出を開始したが、これを含めて2006年から2012年までの同国の天然ガス輸出の動向を見ると以下のとおりである。

 2006年のカタールの天然ガスの輸出量は311億㎥で全量LNGであった。最大の輸出先は日本向けの99億㎥であり、これに次ぐ韓国向けが90億㎥、インド向け68億㎥であり、この3カ国だけで同国の輸出の83%を占め、輸出相手国はこれら3カ国に加えスペイン、ベルギー及びメキシコの計6カ国であった。2007年には英国、台湾などが新たなLNGの輸出先に加わりまたUAE向けにパイプラインによる輸出も始まり、LNG385億㎥、パイプライン8億㎥の合計393億㎥に増加した。2008年にはパイプライン輸出が本格的になり、UAEが日本を抜いてカタールの最大の輸出相手先となった。

 2009年にはカタールの輸出は2006年の2倍を超える682億㎥に達し、その後2011年には1千億㎥を突破、2006年の4倍の1,218億㎥と飛躍的に増加している。対前年比増加率でみると、2007年から2011年までは毎年20~40%と言う驚異的な増加率を示している。2012年の対前年増加率は微増にとどまっているが、7年間の平均年間増加率は27%という高い数値を示している。

 2006年に日本を含め6カ国にすぎなかった輸出相手国の数は、その後台湾、UAE、中国、英国、イタリア、スペインなどが新たな輸出相手国に加わり2012年には21カ国に増加している。日本向けの輸出量は2006年から2010年まで1千億㎥前後で安定していたが、その間にカタールの総輸出量が急増したため日本のシェアは2006年の32%から2010年には12%まで低下した。しかし2011年の東日本大震災をきっかけに日本の輸入が急増、2012年の日本のカタールからの輸入量は倍増して2,130億㎥に達している。そして日本がUAEをしのいで再びカタールの天然ガスの最大の輸出相手国になったのである(2012年シェア17.1%)。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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ニュースピックアップ:世界のメディアから(8月14日)

2013-08-14 | 今日のニュース

・リビア石油産業ストでBrent原油アップ。$109.53に

 

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