とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

映画『スラムドッグ$ミリオネア』

2009-05-01 16:45:27 | 映画
スラムドッグ$ミリオネア 日本版予告編 Slumdog Millionaire Trailer Japanese


本年度のアカデミー賞作品賞をはじめ8部門の受賞に輝く『スラムドッグ$ミリオネア』を見てきた。アカデミー賞の発表があってから日本ではすぐに公開されず、つい先月から公開になったばかりである。大体のストーリーは知っていたが、“ファイナル・アンサー”の結果までは知らなかったし、アカデミー賞に輝いた作品はどうしても見ておきたかった。

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《おおよそのストーリー》
インドのスラム出身の少年ジャマールは人気番組「クイズ$ミリオネア」に出演し、あと1問で2000万ルピーを手にできるところまできた。しかし、これを面白く思わない番組のホストは警察に連絡。彼はズルをして正答を得ていたとされ、詐欺容疑で逮捕されてしまう。ジャマールは警察署での警官の厳しい尋問に対し、正答を知ることになった自分の過去を話し始める。そこには1人の少女を追い続けた彼の人生の物語があるのだった…。

発祥地イギリスはもちろん、日本など世界中でローカライズされ人気となっている「クイズ$ミリオネア」。難問の続くこのクイズ番組で最後の1問までたどり着いたスラム出身の少年ジャマールは、いかにしてその答えを知ることになったのか? 彼自身が過去を振り返ってその理由を話す中で、一途にある少女を思い続けた少年の人生が浮き彫りになっていく。ジャマール、彼の求める少女ラティカ、そしてジャマールの兄サリームの三人が紡ぐ物語は、純愛や欲望といったものが絡み合い非常にドラマチック。インドを中心に撮影された映像は生命力と疾走感にあふれ、観る者をグイグイと引き込む。最後の瞬間まで決して目が離せない傑作が誕生した。
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「クイズ$ミリオネア」といえば、日本でも有名なクイズショーだ。あの「みのもんた」がファイナル・アンサーとの返事を確認してから、結果を言うまでの間がやたら長く気を持たせるのでお馴染みである。スラム街で育ちまともな教育も受けていないジャマールを、クイズの司会者はことごとく正解を出していくことを怪しみ警察を呼んでしまうのである。しかし、ジャマールが警察の取調べにあいながら、クイズの解答をどんな経緯で知っていったかが次第に明らかにされていく。スラムで親を失った兄弟と少女が、悲惨な暮らしの中で覚えた知識は、学校で教えてくれるような方法で覚えたのではない。全て生きていくために必要に迫られて得たものなのである。彼は、いかさま師でもなければ天才でもない。ごく普通の青年が、正直に生きてきた過程で覚えた知識を元に質問に答えていただけなのである。

冒頭のスラム街での子供たちの生き様は、貧困と悲惨さで満ち溢れている。孤児に対する悪い大人の思惑は、見ている者にも重く暗いテーマを突きつける。しかし、子供たちの目は輝き、生きていくことに一生懸命である。スラム街を裸足で駆け抜ける子供たちはエネルギッシュで躍動感に溢れている。そんな人生を送りながら、ジャマールは初恋の少女ラティカをひたむきに捜し求めていく。この映画はクイズ番組で有名になった少年の話というよりも純粋な恋愛ドラマである。クイズにことごとく正解していくあたりは、できすぎの感があるが、映画はエンターティメントで観客を幸せな気分にさせてくれるのがやはりいい。ネタばれになってしまうが、クイズ番組に出演した理由がわかり、“ファイナル・アンサー”の結果が出た時は泣けてしまった。映画はいい意味で観客の期待を裏切ってはならないのだ。

有名スターが誰一人として登場しないこの映画が、アカデミー賞をとったのが何となくわかるような気がした。『おくりびと』もそうであったが、人間の心や生き方について描いた映画が広く欧米に人たちにも受け入れられてきたのかもしれない。そして、エンドクレジットはインド映画定番の、登場人物たちのダンスシーンが挿入されている。これも未来への明るい希望を持たせてくれるお約束の一つだ。DVDでなく劇場でみたほうがいい映画としてお勧めしたい。

ちなみに、最後のクイズの問題は私には簡単にわかった。小学生時代に名作本をたくさん読んでいれば解けるはずである。