とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

『プリンセス・トヨトミ』万城目学(まきめ まなぶ)著

2011-08-21 18:16:41 | 読書
プリンセス・トヨトミ
クリエーター情報なし
文藝春秋


ひところ映画館の予告編で何度も見ていて、ちょっと気になっていた映画だったが何時の間にか終わってしまい見そびれていた。しかし、映画を見る前に原作を読んでおくのもいいかなと思い図書館で予約だけしておいた。人気があるようで予約数もかなりあったが、回転がいいのか意外と思ったより早く借りることが出来、先日一気に読んでしまった。

この作家の作品では、映画版「鴨川ホルモー」を見たことがある。京都を舞台にした一風変わった話で、大学同士で「ホルモー」という怪しげな競技大会を行うというものだ。しかも人間が鬼や式神を操って相手の部隊を殲滅させるという摩訶不思議でありえないような話だった。そんな作品を書いた人だから、こちらもありえないような怪しい話だろうと半ば期待して読み出した。

大まかなあらすじは下記のとおり(ウィキペディアより)

5月31日の木曜日、午後4時。突如として大阪府で一切の営業活動、商業活動が一斉に停止した。物語はそこからさかのぼること10日前、東京から訪れた会計検査院の調査官3人と、空堀商店街に住む2人の中学生の、一見何の関わりもない行動を中心に描かれる。
会計検査院第六局所属の松平・鳥居・旭の3人は実地検査のため大阪を訪れる。そのリストの中には謎の団体「社団法人OJO」が入っていたが、期間中にOJOの検査をできないまま一旦帰京する。一方、空堀中学校に通う大輔と茶子は幼馴染。長い間女の子になりたいと思っていた大輔はセーラー服姿で登校することを夢に見て、実行に移す。しかし、彼を待っていたのは壮絶ないじめであった。
週が明けて火曜日、ある理由で大阪に残っていた松平はOJOの実地検査ができることを知り、現地へと向かう。一方の大輔はその日、担任教師に早退を命じられ、父親とともにある場所へと行くことになる。松平と大輔の2人が見たものは地下に眠る「大阪国」であり、大輔は父が大阪国の総理大臣であることを告げられる。
「大阪国」は35年間で日本国政府から175億円もの補助金を受けていたが、肝心なことを国との条約を盾に語らない。松平はこの「大阪国」の不正を明るみにするために対決することに。そんな中、大輔へのいじめがエスカレートし、茶子はいじめた相手への襲撃を決行するが、そのことが思いもよらぬ事態へと発展する。
それぞれの思惑と誤解が交錯したとき、長く閉ざされていた歴史の扉が開かれる。

日本国の中に「大阪国」という別の国家が存在していたという、これまた荒唐無稽といわんばかりの話だ。大阪人は、日本人でありながらいざという時は大阪人として決起して立ち上がるという。いざという時とは、彼らが信奉する豊臣家の末裔である王女に危機が迫った時なのである。この事実は、日本政府の中枢と大阪人の男しか知らないことであり、王女自身も知らないことなのだ。日本国と大阪国は条約を結び、年間5億円を日本国が大阪国のダミー法人OJOに寄付をしている。国家から独立している会計検査院はこのことについて疑問を抱き検査官が調査に入るというのが物語の発端である。まあ、こんな面白そうな話を真面目に書かれているので結構読み進んでしまう。

話の骨格は400年にわたりあるものを守り続けてきた大阪の男たちと、それを知らずに大阪へやってきた会計検査院との攻防を軸に描かれるが、結局は親子の絆を描いた人情話でもある。「プリンセス・トヨトミ」に危機が迫った時、大阪が停止してしまうあたりの件は、何が起こっていくのだろうという期待と面白さにワクワクした。だが、意外と結末はあっけない。結果的に会計検査院と大阪国の話合いは合意にいたり、翌日には大阪国は表面上消え去り、もとの大阪府民に戻っていく。大阪出身の作者は、荒唐無稽なファンタジーではなく、中央への反骨精神を持つ大阪人の気質と親子の絆を一番描きたかったようだ。

最後の辺りは、真面目すぎて面白みがなくなってしまったが、こんな奇想天外なストーリーを良く考えついたものだと感心した。そして、笑えるオチとしては、「大阪国」のことは大阪の男だけでなく、女もみんな知っていたという事だ。大阪の女(とくにオバチャン)は何もかもお見通しで、男たちを黙って見守っていたという。さすが、大阪のオバチャンは強しである。

原作者は、遊心が豊富なようだ。東京側の会計検査院の職員が松平とか旭、鳥居という名前で徳川を意識するのに対して、大阪側は真田とか橋場、島、蜂須賀という豊臣を意識した名前になっている。この辺りを注意して読むと時代物が好きな人には面白いかもしれない。そして、映画と原作が違う点はいくつかあるようだが、一番の違いは会計検査院の旭 ゲーンズブール(女)と鳥居 忠(男)が、映画では旭 ゲーンズブール(男)と鳥居 忠子(女)になって男女が入れ替わっていることだ。原作では旭 ゲーンズブールは日本人とフランス人のハーフで、すれ違った男性のほとんどが振り返る程の長身で美貌の持ち主となっている。映画は男性の 岡田将生が演じ、鳥居 忠子を綾瀬はるかが演じていたようだ。さすがに綾瀬はるかは原作どおりの旭 ゲーンズブールを演じることは無理だったろう。しかし、映画も旭 ゲーンズブールは女に演じて欲しかった気がする(映画を見てないので断定はできないが…)。

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