とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

2022山上ヶ岳

2022-06-19 15:20:04 | 山登り
奈良県の天川村にある山上ヶ岳は、修験道の祖・役行者(えんのぎょうじゃ)が開いたわが国修験道発祥の地で、修験道の道場としての有名だ。山頂には、わが国最高所の国重要文化財であり、世界遺産でもある「大峰山寺」や宿坊があり、戸開け期間中(5月3日〜9月23日)は、毎年修行に訪れる多くの山伏や登山者で賑わうという。今回は、その山上ヶ岳に登りたくて男3人で出かけてきた。

前日の夜、登山口がある大橋茶屋の駐車場に車を止める。きれいなトイレもあり、広い駐車場だが、車はほとんど止まっていなかった。


大橋茶屋の駐車場からは、山上ヶ岳と思われる山のシルエットが見える。駐車場は、1日1000円の駐車料金がかかる。管理人もいないので、茶店の前にある料金箱に車のナンバーを書いた封筒にお金を入れて出発する。


茶店の先には清浄大橋(大峯大橋)があり、橋を渡ると立派な門があり、修験道の山らしい宗教的な石塔や石像が現れる。


そして、日本ではここだけの厳しい規制が現れる。女人結界門だ。宗教上の理由から、山上ヶ岳一帯は、今なお女人禁制なのである。山上ヶ岳に登るためのいくつかのルートのすべてにおいて女人結界門が設置され女人の入山を拒んでいるのだ。


登山道は、修験道の山という割には、整備され歩きやすい道がずっと続いている。女性や子供でも気軽にハイキング気分で歩けそうな道がずっと続いている。朝早くだったので、静寂な道は厳かな雰囲気を大いにたぎらせていた。


40分ほどで、一本松茶屋に到着する。山上ヶ岳に行くまでには、三つの茶屋があり、登山者の休憩場所が整備されている。


さらに30分ほど進み、そろそろ水が飲みたいという時にたどり着くと、冷たい湧き水が湧き出している。「お助水」と言われる水場だ。


二番目の茶屋は、洞辻茶屋だ。一本松茶屋は無人だったが、洞辻茶屋は数人のスタッフがいて開店の準備をしていた。


中に入ろうかと思っていると、後ろから行者姿の人がスタスタと先を越して行った。中にお経をあげる場所があり、法螺貝を高らかに鳴り響かせていた。


その先の登山道もなだらかで歩きやすい道が続いている。


三番目の茶屋の陀羅尼助茶屋に到着する。この茶屋の名前だが、読み方は、「だらにすけ」と読む。陀羅尼助とは、今から1300年前、役の行者が腹痛で苦しむ人々を助けるため、山中の黄柏(オウバク)の木の皮をはいで、煎じ薬にして人々に飲ませ、疫病から救ったという薬だと伝えられている。大峰修行の山伏たちは、長く厳しい修行中の持薬として今でも愛用しているそうだ。陀羅尼助茶屋を出る頃、雨が降り出しカッパを着る。


なだらかで歩きやすい登山道も終わりとなり、いよいよ修験道の山の趣が現れてきた。鎖が垂れ下がる約50mの険しい崖は油こぼしと呼ばれる。油をこぼしたように足が滑る難所だと言われている。


油こぼしを登り切った先は、鐘掛岩の入り口に出る。鐘掛岩は、役行者によってつり鐘が掛けられたという巨岩で、修行場の難所のひとつだ。鎖を頼りにそびえ立つ岩を登るが、足を掛ける位置と順番を間違えると登れなくなってしまうという。ここは、行場となり一般の登山者が登るには危険すぎるので、迂回路を進む。


迂回路を進むと、鐘掛岩に行ける道があったのでどんな場所か覗きに行ってみる。この岩の下が登り口になるが、ほぼ垂直の壁だ。


鐘掛岩の上には、役行者の像が祀られている。


鐘掛岩から引き返し、登山道に戻ると「お亀石」が見えてくる。石柱で囲われた中には、平らな大きな石があり、亀の形をしているらしい。昔、役行者が大峰修行時この場所で座禅され33回目の時、真の悟りを開かれた清浄な場所だという。


この先も、岩だらけの道となり、石塔が立ち並び修験道の道という雰囲気が満載だ。


そして、今回の山行で一番気になっていた場所、「西の覗」に着いた。日本三大荒行のひとつとされる大峯山中屈指の荒行場だ。命綱一本を信じて、断崖絶壁の上から上半身を乗り出し、不浄を払って生まれ変わりを願うという。


裏側に回ると、行場となる岩場だ。鎖を持って、体を少し乗り出してみるが、上半身全てを乗り出すほどの勇気はない。


反対側に見える岩壁は垂直に切り立っているが、西の覗も反対側から見れば同じように見えるに違いない。


いよいよ、山頂にある大峰山寺の入り口に着いた。


大峰山寺はガスに包まれ、神聖な雰囲気が漂う。世界遺産・わが国最高所に建つ国重要文化財の古刹であり、役行者が金剛蔵王大権現を感得して蔵王堂を建立したのが始まりと伝わる修験道の根本道場だ。


大峰山寺から少し先に山上ヶ岳の山頂1719mがある。


山頂周辺は、時期ともなればお花畑となり、山頂までの荒々しい岩場とは打って変わった楽園のような雰囲気になるに違いない。


お花畑からレンゲ辻方面に下る。レンゲ辻にも女人結界門があり、ここから先は女人禁制となる。


レンゲ辻からどんどん沢沿いに下っていく。沢沿いの道は岩がゴロゴロしていて歩きにくく、岩や濡れた木の階段が滑りやすい。


沢沿いの道が終わると舗装された林道に出る。林道に出て15分ほどで大橋茶屋の駐車場に到着する。早朝、出発した時はほとんど埋まっていなかった駐車場がほぼいっぱいになっていた。


その後、麓にある洞川(どろがわ)温泉に立ち寄り、汗を流して帰路についた。


前日の夜、大橋茶屋の駐車場に向かう際、夜中に洞川温泉街を通り抜けたのだが、縁側の提灯に明かりが灯されノスタルジックな雰囲気を醸し出し、まるで江戸時代にタイムスリップをしたかのような気分にさせられた。いつか洞川温泉に泊まり、夜に温泉街を散策してみたくなった。

参考1.山上ヶ岳の高低図&コースタイム


参考2.山上ヶ岳のコースマップ