とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

今、「宮部みゆき」を読み漁ってます

2010-08-09 21:58:00 | 読書
一人の作家を読み始めたら、その作家のいろいろな作品をしばらくは読み続けることにしている。
そこで、ここ最近読んでなかった「宮部みゆき」をしばらく読み出すことにした。

ちょっと前に「ブレイブ・ストーリー」を読破。
そして、「英雄の書」「楽園」を先日読み終えた。
現在は、「ドリームバスター1~4」を読み始めている。

この作家は、どれも長編ばかりだ。
だいたい1冊辺り350~400ページくらいあって上下2巻セットが多い。
図書館で借りてくると、やたら厚いので最初は読めるだろうかと心配になる。
自分は、速読のほうだと思ってはいるが、それでも読み出すには根性がいる。
だが、実際読み出すと、サクサクとページが進むのは
この作家のストーリーテラーたる所以だろう。
作品ごとに出来不出来はあるかもしれないが、
どうしても次が気になってページが進んでしまう。
「英雄の書」「楽園」とも、上下巻をそれぞれ二日で読み終えた。

「英雄の書」は、小学5年生の少女が主人公だ。「ブレイブ・ストーリー」で少年を主人公にした作者は、この本では少女を主人公にしたかったようだ。これも所謂ファンタジー物であるが、「ブレイブ・ストーリー」ほど、RPGゲームぽい小説でもない。中学二年生の兄がクラスメートを殺傷し、姿を消すという衝撃的な事件をきっかけに、妹の小学五年生の森崎友理子が兄の失踪の謎に迫って行くという話だ。彼女は、“英雄”に取りつかれた最愛の兄を追って、物語の世界に降り立つ。小学5年生が現実の世界では、何にも出来ないだろうが、異世界の扉を開くことによって兄の失踪の謎を解き成長していくストーリーでもある。

この小説は、主人公は子供だが、話は極めて哲学的な話だ。善と悪の違いは何か?英雄とは何か?ということを改めて問いただされる。“英雄”は兄・大樹を「器」として、力を取り戻しつつある。なぜ兄は“英雄”に囚われてしまったのか。“英雄”が解き放たれると、何が起こるのか?人間の闇と光を、壮大な<無名の地>という場所に展開した宮部みゆきのイマジネーションは凄いとしか言いようがない。最後は、全てがハッピーエンドとは言えない終わり方であったが、これも人間の闇と光という部分を考えれば、ありうる終わり方であろう。

「楽園」は、ベストセラーにもなった「模倣犯」の続編に位置する作品だ。ただし「模倣犯」事件のその後ではなく、「模倣犯」事件のショックから立ち直れずにいるフリーライター・前畑滋子のその後が書かれている。前畑滋子のもとに、荻谷敏子という女性が現れる。12歳で死んだ息子に関する、不思議な依頼が発端だった。少年は16年前に殺された少女の遺体が発見される前に、それを絵に描いていたという―。所謂、サイコメトラーという超能力をもった少年の話と思いきや、これは物語の導入部分だった。超能力を持った少年と母親の人生。そして、少年の絵に描かれたものが語る真実。少女が殺された理由を前畑滋子が調査していくたびに浮かび上がる新たな事実が、読み手を飽きさせることがない。たくさんの登場人物が、次第に一つにつながっていく展開に時間を忘れさせてくれた。

宮部みゆきの小説は、人の生き方についてじっくり考えさせられることが多い。この小説のタイトルは「楽園」だが、読み終わってからその意図がわかってきた。親子の関係、子育てについて、家族にとっての楽園とは何か?そんな事を問いただされたような気分だ。人を犠牲にすることでしか手に入らない幸せがあるとしたら、それを求めることは許されるものなのか。そしてそれを幸せとよんでいいものなのか。いろいろ考えさせられるテーマではあったが、読後感はすっきりした気分だった。

「英雄の書」「楽園」とも、とても読み応えがある小説であった。「宮部みゆき」という作家は、只者ではない。今読み始めた「ドリームバスター」は、ちょっと軽めの感じだが、いろんなジャンルを書き分ける力量は凄いものである。今後もしばらくは、「宮部みゆき」を読み続けることにしよう。