とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

宮部みゆき「ブレイブストーリー」

2010-06-29 22:32:01 | 読書
このところ、図書館で借りたい本が思い当たらなくなり、何を借りようか悩んでいたので、馴染みのある作家ということで宮部みゆきの本を検索してみた。たくさんあって、どれも面白そうだったが、少し毛色が変わったジャンルの小説があったので、借りてみることにした。社会派物、超能力者の話、推理物、時代物とさまざまなジャンルの小説を書いている人だが、ファンタジー&ロールプレイングゲームのようなジャンルのこの「ブレイブストーリー」という小説は、きわめて異色の作品である。

ファンタジー物も好きなのだが、宮部みゆきが書くとどんなものになるか興味があって、早速予約をした。図書館から連絡が入り、受け取りに出かけた。受け取ってみてビックリだ。上下2巻だが、各巻とも600ページ以上もある超長編小説だった。あまりの厚さに、2週間で読破できるか心配になった。借りてすぐに読めず、結局1週間以上たってから読み始めた。上下で1300ページ近い本を読むとなると腰をすえて読まねばならないが、いろいろ予定があってなかなか捗らなかった。しかし、読み始めたらさらさらと読み進み、10日間ほどで読破した。返却期日が少し過ぎてしまったので急いで返却しなければならない。

さて内容は、上巻の前半が現実社会での話だ。両親の離婚に心を乱される小学生の亘が主人公である。この辺りは、宮部みゆきらしいドロドロとした話が続く。ファンタジー小説らしからぬ展開に最初は違和感があった。父親のあまりに身勝手な理由で、少年と母親が捨てられる話がかなり長い。この辺りが、のちのファンタジー路線に移行するための大きな布石のようだ。そして、あるきっかけから、亘は異次元の「幻界」という世界に飛び込んでいくのだ。

上巻の後半から第2部となり、「幻界」でのワタルの長いストーリーが始まる。この辺りは、ドラクエみたいなロールプレイングゲーム的に話が進んでいく。一つ一つ困難を解決するたびに、宝石を獲得し、持っているアイテム(剣)のパワーがアップしていくという展開である。そして、途中でいろんな仲間と出会い、チームとして強大な敵に向かっていく。そのたびに主人行は悩みながらも成長していき、最後は一人だけで強大な悪に立ち向かい悪を倒す。そして、女神に自分の願いを叶えてもらい現実世界に戻っていく。

簡単にまとめると、上記のストーリーとなる。とにかく長いストーリーだが、それぞれのエピソードが厚みを持った話となっており、登場人物の心理描写や状況が飽きることなく描かれ、読み出したらどんどん引き込まれてしまう。当然最後は、主人公が勝って女神に願いを叶えて貰う訳だが、ご都合主義的な願いではない。長い旅をしたことへの感謝の気持ちを表す願いで終わるあたりが「宮部みゆき」らしい結末だった。人間に対する鋭い洞察が込められているところが、この作家の魅力である。