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雲南の薬2

2012-09-15 17:29:10 | Weblog
 写真は雲南中西部の都市・建水の路上で雑然と乾されていた、漢方の薬材。(2006年撮影)

【葛根湯がない! 中国の漢方薬と日本の漢方薬】
 風邪を引くたびに、雲南でさまざまな風邪薬を試すものの、今ひとつ、効き目がはっきりしないまま、自力で回復していた私。
 やはり、ここは飲み慣れた「葛根湯」を飲んですっきり治したいと昆明中を探し回っても無駄骨の日々。ひとまず数包、日本から送ってもらい、しのいでいたのですが、ある時、漢方薬局にフルオーダーで処方してもらえばいいのでは、と思い立ち、ツムラの葛根湯の薬包を持って、同じ処方箋を頼んでみました。

 ところが雲南の漢方薬局数件とも「こんな古い薬は作れない」と断られてしまったのです。驚きました。葛根湯は中国漢方の古典『傷寒論』『金匵要略』に出ている最古参の漢方の一つなのですが、本場、中国(の少なくとも雲南)では消えてしまっていたのです。

なぜ、こんなことが起こるのでしょうか?
 
 そこで、まず中国の主な中国医学の大学で使われる教科書や参考書などを当たってみたところ、風邪薬の処方に「葛根湯」が取り上げられていないことが判明しました。
 取り上げている教科書がないわけではないのですが、その数は少なく、あってもメインの漢方の扱いではないのです
(たとえば全国中医学院二版教材『中医内科学』、上海中医学院(=上海中医薬大学)主編、上海科学技術出版社、2012年5月 には8つある風邪薬の処方のうちの一つとしてささやかな扱いで表記されている。)

 まず、日本の留学生にも評判がよく、中国で風邪を引いた、というとたいてい処方されるのが、タンポポやネギ、(金)銀花などを症状に応じてメインに処方した「葱鼓湯」や「銀翹散」。中国から帰ってくる留学生や勤め人が「中国の友人によいとすすめられた」と、なぜか私へのおみやげに持参することの多い薬の一つです。

 これらを持参する友人は、日本にない薬で、風邪に効くから、と、深く考えずに買ってくるのですが、調べてみると、「ゾクゾク」しないで、いきなり、喉が痛くなったり、咳が強くなる風邪、つまりインフルエンザやペストなどとウイルス系に効果のある、中国医学の中で一大ジャンルとして取り扱われている「温病学」系統の薬でした。

 もう一つ、風邪のタイプとして日本でもおなじみの「ゾクゾク」と悪寒が走ることからはじまる風邪があります。この症状によく効くのが『傷寒論』に出てくる、いわゆる「傷寒」系統の処方。
 この流れの基本としてインフルエンザの初期や鼻づまりにきく「麻黄湯」と風邪の軽い初期と病後の回復によいとされる「桂枝湯」が二大漢方として君臨しています。そして、われらが葛根湯はというと、「傷寒」系の中で、麻黄湯と桂枝湯の中間に位置する漢方だったのでした。

 なるほど、いつも愛用しているツムラ葛根湯顆粒の成分を見てみると、葛根湯は、麻黄湯のメイン処方である「麻黄」と桂枝湯のメインの処方である「桂皮」に、「葛根」を加えたものだとわかりました。

 つまり、医者の見立てさえしっかりしていれば、悪寒型の風邪には「桂枝湯」か「麻黄湯」の方が、ピンポイントで効く可能性が高い、ということになります。   (つづく)
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