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過熱する暗記地獄

2006-09-07 16:36:18 | Weblog
写真は、昆明のピザ屋にて。せっかく我々が楽しくピザをほおばる横で延々一時間以上、いがぐり頭の高校生らしき息子に男女が説教を続けていた。たぶん親子だろう。胃の縮むような雰囲気だった。


【親も子も宿題漬け】
 今回、中国で痛切に感じたことは、「いまの中国で小学生にはなりたくないな」ということです。幼児期には、多くの大人の見守る中、大切に大切にのびのびと育てられた子供達が、小学校、早いところでは幼稚園からスパルタ教育に変身することは前にも書きました。その様子を、親たちに聞いたところ、涙なくしては語れない、すさまじい世界となっていました。

 雲南一のレベルを誇る雲南師範大付属小学校。ここは街の中心部の他に、近年、郊外の高級マンション群の中心にも設置され、大いにそのマンションの不動産価値を高めています。

 その高級マンションに住み、憧れの付属小に通わせる小学2年の保護者に話しを聞きました。すると1年生でも、一クラスの人数はなんと70人いて、朝からびっしりと授業が組まれているとのこと。宇宙人のようなチビちゃん大集団を指導する先生にも同情しますが、入学後に行われる保護者会で先生に開口一番、「ご存じの通り、人数が多いのでとても面倒は見きれません。親御さんの指導をよろしくお願いします」と宣告される親の苦労も相当なもの。

 5時に下校後、夕食もそこそこに膨大な宿題に取り組む子供達。算数なら計算100問は当たり前。それを熱心な親なら付きっきりで指導、たとえ宿題の山に懐疑的な親でも最低、答え合わせと間違え直しの指導はしなければならないというのです。古典の暗唱もかかせません。

 これが毎日続くのです。その家には1人の子の周りに両親、母方の祖父、叔母夫婦と大人が5人もいて、皆、職業を持つかたわら、交替で面倒を見ていたのですが、あまりの大変さに疲れ切り、とうとう財力にまかせて家庭教師を雇うことで、ようやく大人達は宿題地獄から開放されたのだそうです。子供はその他にピアノも習っていて、その練習もしている、とのことでした。ピアノは子供の希望で学ばせているようです。その子の叔母は、
「私たちのときは、こんなに勉強はしなかった。かけ算九九が小学一年で出てくることも、意味不明な古典の膨大な暗唱も。今の子供は大変です」と嘆いていました。

 それを聞いた、同じ高級マンションに住む日本人親子は、小学入学を控えて子供の人格形成に不安を覚え、雲南を脱出してしまいました。そして比較的勉強のゆるやかな上海の私立小学校へ入学したのです。

【上海と昆明の違い】 
 上海の小学校は、雲南ほど宿題がきつくないのか、と今度は上海で小学2年の子を持つ親に聞いてみました。すると答えは「イエス」。もともと商人の街で、語学はともかく、勉強は現場で生かされないと意味がないという考えもあり、宿題は他省に比べて多くはない、とのこと。その代わり、日本のかつての共通一次のような省ごとに行われる「高考」という大学入学試験では、上海は周辺の江蘇省や浙江省の人たちには、点数で適わないという副作用も出ているそうです。ただし、中国の大学入試の場合は、居住地域にある大学への入学は他省から試験を受けるよりもは、優遇されるので、上海にある大学なら、少し入りやすい、というカラクリつきでした。よほどじゃないと勝手に住民票を移せない中国らしい事情です。

 とはいえ、日本の小学2年の夏休みの宿題の量を教えると、「え、絵日記が一日分だけなの? それは日記とはいいませんね」と少しあきれられてしまいました。
 出会った親たちはどちらかというと、職業的地位と才能に恵まれた裕福な人たちのせいか、スパルタ教育には懐疑的な考えの人たちばかりでした。学校教育はこのままではいけない、と。でも中国で生きていく限りは同世代の人たちに負けるわけにもいかないし、将来を少しでもよくしてあげたい、と思うのも親心としては、当然あるわけです。だれか、この歯車を止めてくれ、と思いつつも、回り続けなければならない中国の親子。子供のストレスは、相当なものでしょう。(つづく)
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