NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#317 マディ・ウォーターズ「Mannish Boy」(Chess)

2024-02-17 09:14:00 | Weblog
2024年2月17日(土)

#317 マディ・ウォーターズ「Mannish Boy」(Chess)





#317 マディ・ウォーターズ「Mannish Boy」(Chess)

マディ・ウォーターズのシングル・ヒット曲。1955年リリース。マディ自身、そしてボ・ディドリー、メル・ロンドンの共作。

マディについては過去「一日一枚」「一日一曲」で何度か取り上げているので、今更説明の必要もないだろうが、ブルース史上最重要と思われるアーティストのひとりである。

といいますか、ブルースという音楽をたったひとりの人物で代表させるとしたら、この人をおいて他にいない、そのぐらいの巨大な存在であることは間違いない(あえて断言)。

そんな「ブルースの巨人」、マディ・ウォーターズの著名曲は「モジョ・ワーキン」「フーチー・クーチー・マン」をはじめとしていくつもあるが、この「マニッシュ・ボーイ」はそれらとは一線を画して「隠れた名曲」的な立ち位置にあると思う。

あまり他のブルースマンにカバーされないので、ブルース・クラシックとはいいづらいが、言い換えるならば「マディ本人が歌わないとサマにならない、極めて属人性の強い曲」だという気がする。

この曲の成り立ちを紹介しよう。

マディのスマッシュ・ヒット「フーチー・クーチー・マン」がリリースされたのが、1954年。

この曲に刺激されて、レーベル・メイトでもあるシンガー、ボ・ディドリーが作ったのが、翌年リリースの「アイム・ア・マン」である。

「フーチー・クーチー・マン」のワンコード部分のリフを借用し、それを延々と繰り返すという構成は、当時ではきわめて斬新な曲想だった。

デビューしたばかりの英国のバンド、ザ・ヤードバーズがさっそくレパートリーにしてライブ録音したことで、そのことは良く分かるだろう。

マディはその「アイム・ア・マン」という、ある意味自分をパロディにしたような曲を聴いて、そのままにはしなかった。さっそく、シャレにはシャレで返したのである。「マニッシュ・ボーイ」の誕生である。

「アイム・ア・マン」のワンコード進行を引き継ぎ、その歌詞、さらには自らの「フーチー・クーチー・マン」の歌詞も引用しつつ、マディ=モテ男、絶倫男としてのイメージをさらに強化した一曲が完成した。

ビルボードのR&Bチャートでは見事5位。その後も、何度となく再演しており、特に有名なのは68年の実験作「エレクトリック・マッド」での再録、そして77年のジョニー・ウインターのプロデュースによるアルバム「ハード・アゲイン」での再々録だろうな。

どのバージョンにしてもマディのドスの効いたボーカル、リフの繰り返しによりほとんどトランス状態を引き起こしているサウンド、従来の3コード12小節進行のブルースにはない無限のグルーヴが、この一曲にはある。

後のファンク、ラップ、ヒップホップにも繋がっていく、先端的なグルーヴ。ブルースの枠を超えたブルース。とても55年製とは思えない。

唯一無二とは、まさにこのことだ。

初めてマディを聴く人も、マディの有名曲なら知っているよという人も、しのごの理屈を言わずに、この一曲で濃ゆーいマディ・ワールドに、どっぷりハマって欲しい。














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