Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

にっぽん女優列伝(21)池脇千鶴

2017-07-21 00:10:00 | コラム
81年11月21日生まれ・35歳。
大阪出身。

公式サイト


歴代のリハウスガールで「女子として」いちばん好きなのは一色紗英ですが、
女優として伸びそうなのは、宮沢りえよりも、蒼井優よりも、夏帆よりも、川口春奈よりも、池脇千鶴(いけわき・ちづる)ちゃんだなぁと思っていました。

みんなリハウスガール出身というのも、すごい話ですけれど。

シンプルに可愛い子、ただなんとなく「翳」があり、そこに気づいていた目利きの監督たちにより「大事に大事に」育てられた女優さんだと思います。

ジョゼも素晴らしかったですが、現時点における最高傑作は、やっぱりこれでしょう。


※「家族を大切にしているから、おかしくなるんだ」―この台詞、絶品




<経歴>

97年、「三井のリハウス、リハウスガール」オーディションで市川準に「発見」され芸能界デビューを飾る。

映画俳優デビュー作は、市川準による『大阪物語』(99)。
池脇ちゃんの初々しい演技もよいですが、最も話題を呼んだのは、沢田研二・田中裕子の夫婦が共演したことでした。

思うのですが、すでに鬼籍に入った市川準って、日本におけるテレビCM出身の映画監督の先がけなのに、、、いや、だったからこそ、なのかもしれませんが、過小評価されたひとだったなぁと。
さらにいえば、再評価する動きも見られないというのは、ちょっと不憫な気がします。

若いひと、もっと観ましょう市川映画を!


ともあれ。
この映画俳優デビュー作こそが、池脇ちゃんのその後のキャリアを決定づけた感があります。
大手の映画にも顔は出していますが、彼女が光るのは、そうでない作品ばかりなのですもの。


『金髪の草原』(2000)、『化粧師 KEWAISHI』(2002)。

そしてキャリア初期の代表作となった、『ジョゼと虎と魚たち』(2003)。

脚の悪いジョゼ(くみ子)を熱演、主役の妻夫木聡や敵キャラとなる上野樹里といった配役にも助けられ、とくに若いひとから絶大な支持を得ました。


『きょうのできごと ―a day on the planet―』(2003)、『誰がために』(2005)、『ストロベリーショートケイクス』(2006)、『音符と昆布』(2008)、『犬と私の10の約束』(2008)、『丘を越えて』(2008)、『火垂るの墓』(2008)、『ホームレス中学生』(2008)、『おいしいマン』(2008)、『感染列島』(2009)。

『スイートリトルライズ』(2010)、
天才サイバラの原作漫画を映画的空間に広げてみせた、ぜひ多くのひとに観てほしい傑作『パーマネント野ばら』(2010)、
『必死剣 鳥刺し』(2010)、『うさぎドロップ』(2011)、『神様のカルテ』(2011)、『指輪をはめたい』(2011)、『爆心 長崎の空』(2013)、『舟を編む』(2013)。

出番は多くないものの、作品の雰囲気にハマった『凶悪』(2013)、
『潔く柔く』(2013)、『くじけないで』(2013)、『神様のカルテ2』(2014)。

そして、現時点における最高作であろう『そこのみにて光輝く』(2014)に出演。




基本的に映画は若いひとのためにあると思っていますが、ある程度の年齢に達しないと、よさが分からないものってあると思います。
それが、この映画かなと。

綾野剛も見直しましたが、池脇ちゃんが、こんな生々しいキャラクターを演じられるようになったのかと感慨深かったですね。


そのほか、近作に『海月姫』(2014)、『きみはいい子』(2015)、『怒り』(2016)など。


きっと、脚本を読み込んでから映画出演を決めるタイプなんだと思います。

今後も、楽しみですねぇ!!


次回の女優列伝は、いしだあゆみさんから。

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明日のコラムは・・・

『俳優別10傑 海外「は行」女優篇(2)』
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にっぽん女優列伝(20)池上季実子

2017-07-20 02:07:31 | コラム
59年1月16日生まれ・58歳
米国ニューヨーク出身、京都育ち

公式プロフィール


高校の修学旅行は、定番の京都・奈良でした。
もちろん太秦にも行ったのですが、そこで映画の撮影(観光サービス?)をしていたのが、池上季実子(いけがみ・きみこ)さん。

ガキ相手にサービス? してくれたということもあり、ずっと好きな女優さんのひとりです。

進歩的というか、少し先をいく女性キャラクターを演じるのが巧いひと、、、という印象。

それはたぶん、『太陽を盗んだ男』(79)の「ゼロ」を好演していたからでしょう。

70年代当時から女性のディスクジョッキーは居ましたが、それを演じられる女優さんは少なかった。
しかも、たったひとりで原爆を作った男を愛し、エールを送るという難しいキャラクターでしたもの。


※ちょっと胡散臭いディレクターを演じた、風間杜夫もえがった。




<経歴>

母親は、八代目・坂東三津五郎の次女。

商社勤めの父親の関係で、幼少期をニューヨークで過ごす。
進歩的な感じは、この背景によるものかもしれません。

NHKのスタジオ見学に行った際にスカウトされ、女優の道に。

芸能界デビューは、74年のドラマ『まぼろしのペンフレンド』(NHK)。
翌年、『はだしの青春』(75)で映画デビューを果たす。

映画オンリーの記述に行く前に、ドラマをひとつだけ。
ほかにも相応しい作品があるのでしょうが、このひとの代表作といえば、世代的に『男女7人夏物語』(86、TBS)になりますね。

桃子(大竹しのぶ)の米国行きを許した良介(明石家さんま)を理解出来ず、終盤に食ってかかる千明を好演していました。


ここからは、映画オンリーで。

その前に唐突に? 水着のポスターをひとつ。



さて、いきましょう笑

『おれの行く道』(75)、『あにいもうと』(76)、『恋の空中ぶらんこ』(76)。

大林宣彦の初監督作品『HOUSE ハウス』(77)ではヌードも披露、
池上さんのほかにも大場久美子など、当時を代表する美少女が沢山出てきて、彼女たちを拝むだけでも一見の価値がある快作でした。

『冬の華』(78)、『日蓮』(79)を経て、前述した『太陽を盗んだ男』に出演。

ジュリーの(抜けた)髪の毛を掴んだまま、海に投げ落とされるシーンが印象的でしたね。


80年代前半、絶頂期に。

『陽暉楼』(83)、『化粧』(84)、『危険な女たち』(85)、『華の乱』(88)と、ひじょうに「らしい」キャラクターを熱演してビッグインパクトを残す。

この流れで90年代の映画にも多数出演・・・すると思われていましたが、主な活動を2時間ドラマに移し、映画出演は激減してしまいます。

しんどかったのでしょうか、残念ですね。

『江戸城大乱』(91)、『子連れ狼 その小さき手に』(93)、『極道の妻たち リベンジ』(2000)、
劇場公開の最新作が、2010年の『苦い蜜』。


艶っぽさは未だ健在、だからスクリーンで存分に? 拝みたいものです。

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お墓がない!

2017-07-19 00:10:00 | コラム
あと1週間ほどで、かーちゃんの命日がやってくる。

今年は5月に帰省をしたものの、命日や盆の時期に墓参りをすることが出来ない身であり、気持ちだけでも・・・ということで、墓の描写が印象的な映画の10傑を展開してみよう。

といっても、メインはどうしたってホラー映画(ゾンビ系)になってしまう。
かーちゃんは喜ばないかもしれないが、

先日、ゾンビ映画の王様ジョージ・A・ロメロが鬼籍に入ったということもあるから、敢えて「それメイン」でいこうじゃないか。 


(1)『キャリー』(76…トップ画像)

デ・パルマの底意地の悪さと、サービス精神の融合。

ほんとうに、イヤな終わりかたである。

(2)『バタリアン』(85)

墓からゾンビがわらわらと。

生まれて初めて観たホラーだったので、コメディ色とか分からず、ただただ怖かったんだ。


※水野先生の解説…後半、ロメロへの言及も




(3)『許されざる者』(92)

はっきりと画面に映るわけではない。

ただ全編に主人公の妻への想いがはっきりと感じられるので、墓の印象が強いのだった。

(4)『ゆきゆきて、神軍』(87)

戦友の墓参りをする奥崎氏。

(5)『ペット・セメタリー』(89)

あの寒々とした墓地も雰囲気抜群だが、演技の下手なスティーブン・キング(原作者)が出てくるので笑、この墓地のほうが印象に残ってしまう。



(6)『絆』(98)

自分の出生を想い、涙する主人公。

(7)『アマデウス』(84)

墓というより、埋葬のシーンだが。

(8)『七人の侍』(54)

一般アンケートでは、これが首位にくるかも。



(9)『禁じられた遊び』(52)

このテーマ曲とブリジット・フォッセーの可憐さで忘れがちだが、物語そのものは、けっこう際どかったりする。




(10)『ザ・ロック』(96)

妻への赦しを乞うてから、作戦を決行する男。

「君が亡くなったいまだから…」

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シネマしりとり「薀蓄篇」(214)

2017-07-18 00:10:00 | コラム
れいと「しょー」→「しょー」しゃんくのそらに(ショーシャンクの空に)

原作そのものが短編であったり、
長編でも、わずか数行の描写であったり。

それを、映画的イマジネーションによって、よく広げたなぁ! と感心した作品をいくつか挙げてみる。


プロムナイトのシーンを、ねちっこく描いた『キャリー』(76)…原作、スティーブン・キング




原作では短い言及に過ぎなかった遍路シーンを、敢えてクライマックスに持ってきた『砂の器』(74)…原作、松本清張

あの空気感は映画版が独自に創りあげたものだった『ブレードランナー』(82)…原作、フィリップ・K・ディック


そして、スティーブン・キングによる中編小説の一篇『刑務所のリタ・ヘイワース』の物語を、完璧な映画サイズに仕立て上げた『ショーシャンクの空に』(94)。


キングの小説は「世界一」といっていいくらい、映画との相性がいい。

自分にとっての5傑は・・・

(1)『キャリー』
(2)『ショーシャンクの空に』
(3)『デッドゾーン』(83)
(4)『ペット・セメタリー』(89)
(5)『シャイニング』(80)

・・・で、失敗作とされている『炎の少女チャーリー』(84)でさえ、いとおしいと思ってしまう笑


『ショーシャンクの空に』は、ホラーな展開も超常現象も一切起こらない、キング原作のなかでは極めて異色の映画。

簡単にいえば、「希望」を捨てぬ無実の主人公が、不屈の精神で脱獄を成功させるまでの物語。

よく知られた話だが、この映画は『ブレードランナー』と同様、劇場公開時はパッとしなかった。
米国公開時もそうであったし、それから半年以上も経過したあとに公開された日本でもそうだった。

自分も3度ほど劇場で鑑賞したが、いずれもガラガラ。

しかしそれから2年ほど経つと、メディアで盛んに取り上げられるようになった。
周囲でも「この映画が好き」というひとが増えて、あれ、みんな観ているの? って驚いたものである。

どんな役を演じても水準以上の結果を出す名優、モーガン・フリーマンの知名度の広がりとリンクしているようなところがあり、ひょっとすると、この俳優に助けられた面が大きいのかもしれない。(内容ではなく、作品への支持のことね。内容面における功績は、当然のことだもの!)


ちなみに自分の父親も、この映画が大好き。

(1)『E.T.』(82)
(2)『ショーシャンクの空に』
(3)『蜘蛛巣城』(57)

オールタイムのベスト3だそうだが、むしろ3位の黒澤が異色に感じるなぁ笑


映画のなかで刑務所長が主人公になることは「ほぼゼロ」で、きまって悪役である。

『ロックアップ』(89)のドナルド・サザーランドも、『告発』(95)のゲイリー・オールドマンも憎々しくて最高だったが、
それほど注目されなかったけれど、ショーシャンク刑務所のドンを演じたボブ・ガントンも悪くなかった。

信頼しつつ、「所詮は罪人だ」と思って下に見ていた主人公アンディの取った行動に驚き、怒り、そうして観念する。


この映画が優れているのは、主人公とその親友だけでなく、出所する老いた囚人の不安や、刑務所長の人間性まできちんと描き切っているところだと思う。

「その他、大勢なんて居ない」みたいなことを宮崎駿爺はいっていたが、まさにその精神が行き届いた名画。

そりゃあ、人気があって当然です。

劇場が満員になってほしかった・・・というのが、本音ではあるけれど!!





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シネマしりとり「薀蓄篇」(213)

2017-07-17 00:10:00 | コラム
とい「れ」→「れ」いとしょー(レイトショー)

「レイトショー」とは簡単にいえば、映画の上映が21時前後の開始となる、その日の最終営業のこと。
(日をまたいで)朝まで上映となればオールナイトと呼ばれ、いずれも割引価格であることから、敢えてこれらを選択する映画ファンも多い。

いまでもそうだが、とくに上京したての自分は、しょっちゅうレイトショーで映画を観ていた。
「安いから」というのはあまり関係がなく、レイトショーやオールナイトというものに触れると、大人になった気分を味わえるから、、、だった。

わぁ、俺オトナじゃん! 映画狂じゃん!! みたいな。

雰囲気があるんだよね、
デートにも最適だし、逆に、ひとりで観るのもいい。


日中に上映されている映画のレイトショーもあれば、その時間帯のみ、つまり1日に1度だけ上映される映画のレイトショーもある。

米国では古くからの上映スタイルで、このレイトショーで人気になった最も有名な作品がリンチの『イレイザーヘッド』(77)だろう。





自分は「シネコン(複合映画館)ではない映画館のほうに愛着を感じる」古い人間だが、
それでも、レイトショーを「都心以外に広めた」という功績は評価出来るものだと思う。

そう、現在の全国的なレイトショーの流れは、シネコンあってこそ、、、なのだから。

帰省の際、ねぃちゃんと『もののけ姫』(97)のレイトショー上映を観る―こんなことが出来るなんて、高校生のころには夢にも思っていなかったもの!

夢にも思っていなかったからこそ、東京住まいの役得は「レイトショーに触れることが出来る」だと思っていた。

18歳から20歳にかけて、レイトショーに触れた回数は「少なくとも」50回を数える。

そのうち30回は、PARCO調布キネマだった。
(2011年に閉館。そして今秋、調布に多摩最大級のシネコンがオープンするそうだ)




調布は日活撮影所・大映撮影所がある関係で、映画を学ぶアンチャンネーチャンが沢山居る。
映画館の支配人は、もしかしたら映画学校の卒業生かもしれない・・・と思うのは、この調布キネマのレイトショーが「どう考えても映画を学ぶ学生しか観ないであろう」企画ばかりだったから、である。

ほとんど毎年のように、アメリカン・ニューシネマ特集をやっていたし!

そしてこの調布キネマで、自分は初めて『タクシードライバー』(76)をスクリーンで観たのだった!!


それまでにも10回くらい観ていた自分にとっての神映画だったけれど、哀しいかな、年齢の壁はいかんともしがたく、VHSでしか触れることが出来なかったんだ。

それでも10回観ているのだから、この映画のほとんどを理解していると思い込んでいた。

ショックだったね、初めてスクリーンで観て、夜のニューヨークのネオンの映りかたが、VHS版と「ぜんっぜん」ちがうことが。


映画は、映画館で! という当たり前のことを、これほど痛感した夜もなかった。


そういう意味では、いちど、(1)まずはテレビで (2)そのあと劇場で という順で名画を観てみるのもいいかもしれない。

そのほうが、映画館で観ることの大切さを理解出来そうな気がするから。


あすのしりとりは・・・
れいと「しょー」→「しょー」しゃんくのそらに。

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