Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

にっぽん男優列伝(217)田中要次

2014-01-26 05:56:17 | コラム
63年8月8日生まれ・現在50歳。
長野出身。

公式ブログ

浸透しているようで浸透していない業界用語に「ボバる」があります。
台詞を噛む、誤った動作などをするNGを指しており、なぜ浸透し難いかというと「NG」や「噛む」が、あまりにも強いからでしょう。

「ボバる」は、田中要次(たなか・ようじ)さんの別名BoBAから生まれたことば。
田中さん本人が長台詞を不得意としていること、また、よく怪我をしたり失敗したりすることから生まれたことばですが、なぜBoBAなのかというと、俳優デビュー作の役名からきています。
そーとーなこだわりがあるようで、BoBAと表記してボバと読むのではなく、田中要次と表記してボバと読んでほしいみたいですね。

知らんがな笑

でも、益若つばさの別名「ミルキーバニー」よりいいでしょう。
こっちは風俗の源氏名みたいだし。
好きだけれども。

ともあれ。
「ボバる」は浸透していない状況ですが、田中要次さんの存在は映像の世界で瞬く間に浸透しましたよね。
芸歴が長い苦労人というより、俳優に辿り着くまで紆余曲折があったひと、、、といったほうが適切でしょう。


※沢山のPVにも出演



<経歴>

高校卒業後に国鉄に入社、民営化を経てJR東海の鉄道事業本部社員へ。
演出家の友人に依頼されてPVなどに出演することはあったものの、俳優になるといった強い野心を抱いていたわけではなかったそうです。

しかし90年にJR東海を退社して上京、映像の世界に対する憧れを強くし「ツテ」を頼ってエキストラや照明助手の仕事を始めます。
「俳優一本で食っていける」ようになったのは90年代末で、それまでは様々なアルバイトをかけもちしていたのだとか。

ただ、こんなに「よい顔」のひとを奇才と呼ばれる監督たちが放っておくはずもありません。
そのこと(=よい顔)に最初に気づいたのは竹中直人で、スタッフとして参加していた田中さんを『無能の人』(91)に出演させました。

こうして、チョイ役の映画俳優は誕生したのでした。

いろんな映画に「ちょっとだけ」出演しているため、すべての作品を挙げることはしません。
以下は、その代表作です。
映画小僧を自称する自分でも、はっきりいえば「えっ、出てた?」という作品も含まれますけど。。。

こうして並べてみると、竹中直人のほかに三池崇史、石井克人、SABUに好んで起用されていますね。

『800 TWO LAP RUNNERS』(93)、『トカレフ』(94)、『119』(94)、『新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争』(95)、『ポストマン・ブルース』(97)、『鮫肌男と桃尻女』(99)、『御法度』(99)、『鉄道員』(99)、『菊次郎の夏』(99)。
『カリスマ』(2000)、『MONDAY』(2000)、『はつ恋』(2000)、『漂流街 THE HAZARD CITY』(2000)、『三文役者』(2001)、『PARTY7』(2001)、『リリイ・シュシュのすべて』(2001)、『RED SHADOW 赤影』(2001)、『GO』(2001)、『ピストルオペラ』(2001)、『KT』(2002)、『OUT』(2002)、『AIKI』(2002)、『突入せよ! あさま山荘事件』(2002)。

2003年、やはりQTも田中さんの「よい顔」を見逃さず、『キル・ビルVol.1』の「クレイジー88」のひとりとして起用。
目が隠れていても田中さんだと分かる「よい顔ぶり」でした。

『座頭市』(2003)、『ホテルビーナス』(2004)、『スウィングガールズ』(2004)、『キューティーハニー』(2004)、『茶の味』(2004)、『いぬのえいが』(2005)、『妖怪大戦争』(2005)、『デスノート』(2006)、『陽気なギャングが地球を回す』(2006)、『バックダンサーズ!』(2006)、『手紙』(2006)、『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(2007)、『うた魂♪』(2008)、『山のあなた~徳市の恋~』(2008)、『ぐるりのこと。』(2008)、『劔岳 点の記』(2009)、『山形スクリーム』(2009)、『キラー・ヴァージンロード』(2009)。

『桜田門外ノ変』(2010)、『パラダイス・キス』(2011)、『極道めし』(2011)、『ロボジー』(2012)、『はやぶさ 遥かなる帰還』(2012)、『ストロベリーナイト』(2013)、『謎解きはディナーのあとで』(2013)、『今日子と修一の場合』(2013)、『陽だまりの彼女』(2013)。

最新作は、現在公開中の『ジャッジ!』(2014)。

映画だけでなくテレビドラマやCMなどの出演も多く、また出演「予定」も途切れません。

みんなが「よい顔」であることを認識しているようですね。

えがった、えがった。


次回の俳優列伝は、田辺誠一さんから。

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明日のコラムは・・・

『酒は薬か、あるいはクスリか』

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にっぽん男優列伝(216)田中邦衛

2014-01-25 00:30:00 | コラム
32年11月23日生まれ・現在81歳。
岐阜出身。

自分は三船敏郎と志村喬、それから窪塚くんのモノマネ(声)が出来るのですが、なぜ試してみたのかというと、
好きというよりは、どうせやるなら、ほかのひとがやっていないモノマネを―と思った結果、その3人になったと。
で、やってみたら出来るじゃないかと。
三船はジョン・ベルーシがやってますけど。

五木ひろしや森進一、桑田佳祐じゃ「やられ過ぎている」でしょう。
なぜこのひとたちのモノマネが多いのかというと、そりゃもちろん特徴的だから。
「ふつうとはちがう度」が3だったとして、それを5くらいにデフォルメすると面白いですものね。

特徴的といえば、田中邦衛(たなか・くにえ)さんもそう。
このひとのモノマネをやるひとも多いですが、いちばんなのは、やっぱり小堺 一機でしょう。
絶品だと思います。

『北の国から』シリーズ(81~2002、フジテレビ)の印象が強いひと、しかし映画の世界でも成功しています。
日本を代表する名優のひとりですよね。

92年に放送された『北の国から’92 巣立ち』は、純(吉岡秀隆)がタマコ(裕木奈江)を妊娠させてしまい、タマコの叔父(菅原文太)が「誠意って、なにかね」と凄んでくるエピソードがメイン。
上京してまもない息子は大丈夫だろうか、そんなことしてないだろうか―母ちゃんが父ちゃんにそう話しながら観ていたと聞いて、あぁドラマの影響力って大きいものなんだなぁ、、、と感じたことを覚えています。


※ネタに使われることの多いこのシーン、ノーカット版を改めて観てみる。
8分間という長さ、ぼそぼそ声・・・実験映画と同じような野心を感じ、ちょっと慄いてしまったよ。
それにしても吉岡くんは、ほんとうに巧い。




<経歴>

長女の田中淳子は、NHKのワシントン支局長。

苦労して俳優座の一員となり、演技の基礎をきっちり学ぶ。
同期に井川比佐志、露口茂など。

73年に俳優座を退座、フリーとなる。
その顔つきから(若いころは)チンピラ役などが多く、黒澤の『悪い奴ほどよく眠る』(60)でも殺し屋を好演していましたっけ。

映画俳優デビュー作は、57年の『純愛物語』。
『人間の條件』(59)や『武器なき斗い』(60)を経た61年、『大学の若大将』で若大将(加山雄三)のライバル・青大将を演じる。
憎めないキャラクター性が受けて、以降、シリーズの常連―65年の『海の若大将』と『エレキの若大将』、66年の『アルプスの若大将』―となる。

前後しますが、最初に「若大将」以外のシリーズ物について。

65年から始まる『網走番外地』シリーズでも個性を発揮、高倉健の舎弟としてコメディリリーフをこなしました。

65年…『続 網走番外地』『網走番外地 望郷篇』『網走番外地 北海篇』
66年…『網走番外地 荒野の対決』『網走番外地 南国の対決』
67年…『網走番外地 決斗零下30度』『網走番外地 悪への挑戦』
『新網走番外地 吹雪の大脱走』(71)、『新網走番外地 嵐呼ぶダンプ仁義』(72)

73年、『仁義なき戦い』で小悪党の槙原政吉を演じる。

73年…『仁義なき戦い 代理戦争』
74年…『仁義なき戦い 頂上作戦』『仁義なき戦い 完結篇』『新仁義なき戦い』

以下、シリーズ物以外の出演作を。

三十郎をなかなか信じない保川を好演した『椿三十郎』(62)、
『怪談』(65)、『湖の琴』(66)、『兵隊やくざ 脱獄』(66)、『座頭市海を渡る』(66)、区隊長を演じた『肉弾』(68)。
『大幹部 無頼』(68)、『人斬り』(69)、『どですかでん』(70)、『男はつらいよ 奮闘篇』(71)、『日本一のショック男』(71)、『サマー・ソルジャー』(72)、
なんと次元大介を熱演している『ルパン三世 念力珍作戦』(74)、
『仁義の墓場』(75)、『新幹線大爆破』(75)、『実録三億円事件 時効成立』(75)、『トラック野郎 爆走一番星』(75)、『姿三四郎』(77)。

珍しく主演を務めた『黒木太郎の愛と冒険』(77)、『八つ墓村』(77)、『ダイナマイトどんどん』(78)、『鬼畜』(78)、『トラック野郎 一番星北へ帰る』(78)、『野性の証明』(78)、『地獄』(79)、『動乱』(80)。

80年代以降は『北の国から』効果もあって「頑固でお茶目な父ちゃん」のイメージが定着、映画でもそうしたキャラクターを演じることが多くなりました。

『近頃なぜかチャールストン』(81)、『駅 STATION』(81)、『刑事物語』(82)、『居酒屋兆治』(83)、『すかんぴんウォーク』(84)、『早春物語』(85)、『優駿 ORACION』(86)。
映画通のあいだで評価が高い『ウホッホ探険隊』(86)、『私をスキーに連れてって』(87)、『TOMORROW 明日』(89)、『浪人街』(90)、
小島聖以外は見るべきところがなかった『タスマニア物語』(90)、深刻な題材をユーモアで緩和した『息子』(91)、『ひかりごけ』(92)。

(最近好きになりつつある)山田洋次の映画のなかで最も受け入れられない作品『学校』(93…もちろん、あくまでも自分個人の話です)、
『釣りバカ日誌スペシャル』(94)、『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(95)、『サラリーマン専科』(95)、『虹をつかむ男』(96)、『みんなのいえ』(2001)。

ここ10年も『黄泉がえり』(2003)や『精霊流し』(2003)、『福耳』(2003)、『隠し剣 鬼の爪』(2004)などで好演し続けていますが、さすがに若いころと比べると出演本数は減っています。

最新作は、『最後の忠臣蔵』(2010)。

長生きしてくださいね。

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「あたしらだって、傷つくことあるもん」

2014-01-24 04:51:31 | コラム
「―怖いこととかは、ない?」
「・・・慣れるまでは、自宅は怖かった」
「あぁ、ホテルじゃなくて、お客さんの自宅ということね」
「うん」
「自分のような客だ」
「(笑う)うん」

「でも大抵のお客さんが恋人気分を味わうために呼んでいるから、想像以上に優しくしてくれる」
「そういうものだと思うよ、むしろホテル利用の客のほうが即物的というか、パパパッと済ませて冷たい感じとかじゃない?」
「そうかも」
「嫌なことは?」
「うーん」
「やっぱりあれでしょ、嫌いなタイプに抱かれるというのは、、、」
「それもそうだけど、仕事と割り切れば」
「さすがに強いね」
「でもチェンジは傷つく」
「・・・チェンジかぁ」
「割り切っていても、それはね」
「きのうも別の子に話を聞いたんだけれど、いちばんきついのはチェンジだって」
「あたしらだって、傷つくことあるもん」
「そりゃそうだ」
「ドア開けた途端に“チェンジ”と伝えられて、代わりに来た子があたしよりブスで体型もひどくて、、、」
「・・・」
「なのに、その子のほうがいいって判断されたとき」


AV女優へのインタビューがメインだが、ときどきデリヘル嬢の話も聞く。
派遣型風俗店で働く女子たちね。(写真はイメージです)

雑誌原稿のために店長の紹介で女子に会わせてもらう場合もあれば、
単なるリサーチのため、客として自宅に女子を呼ぶ場合もある。

「えっ、じゃあきょうは、話すだけ?」
「・・・そのつもりだったけど」
「(笑う)したい?」

・・・・・まぁそういうわけで、サイテーな取材といわれれば否定はしない。


AV嬢と共通した悩みは「感じていないのに、感じている振りをすること」だが、これはまぁそういう職業だからしょうがない、
ただ、AV嬢にはない「チェンジ」での傷心に関しては自分も気の毒だなぁと思う。

「チェンジ」とは文字どおり相手を変えること。
昔は手数料を取る店が多かったが、競争相手が増えたために無料にする店も増えたと聞く。


代打が、その子にとって「自分より上」と思っている子だったらあきらめがつくそうなのである、
けれども、そうじゃないケースのほうが多いようで、

「なぜ、あたしじゃなくてアイツなの!?」

などと考え、ひどく落ち込むのだそうだ。


「そういう日は、どうするの?」
「ヤケ酒ヤケ食いの日もあるし、もしそのあと、お客さんの指名があったとしたら、ふだんよりサービスしちゃうかもしれない」
「それはそれで、その客はラッキーだ」
「(笑う)うん、そうだね」


デリバリーヘルスという和製英語が生まれたのは90年代末、けれどもサービスそのものの歴史は古い。
携帯電話が普及し、
さらに風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)が改定されて以降に現在の形が出来上がり、それ以前は「特殊な事情を持つ」女子がひっそりと働いていたが、
敷居が低くなった? ため、現在は「え!?」と客が驚くような女子大生も多いし、人妻だって沢山居る。

そこの善悪は問わない。
というか、彼女らの話を聞いて小銭を稼ぐ自分が問えるわけないし、そもそも自分だって昔はヘビーユーザーだったし。


ただ、彼女たちの話を聞いていて、
たとえ自分のタイプではない子がやってきたとしても「チェンジ!」といえない自分は、切なさでいっぱいになり、「飯、おごるよ」といい、ピザを注文したのだった。


デリバリーヘルス嬢を呼び、ピザのデリバリーを頼む自分ってどうよ? という話である。


※こういう世界は、やっぱり園監督に撮ってほしい。こんどはドキュメンタリータッチで。




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白菜と大根はかわいそう

2014-01-23 00:30:00 | コラム
おでんの具でいちばん好きなのは大根、
味噌汁の大根も好き、
大根おろしがないと秋刀魚を食べても「なんとなく」物足りないし、
好きな野菜として(上位に)挙げることはしないけれど、食す行為において大根はかなり重要な食材のはず。

はずなのに、ことばとしては「大根役者」とか「大根足」とか散々な使われかたをしている。

(白いから「素人」を意味するとか)大根役者の語源にはいろんな説があるが、
「滅多に食あたりしないことから、“当たらない役者”を意味している」というのが、いちばんもっともらしい、、、と個人的には思う。

可哀想だなぁ、大根役者・・・ではなく、大根が。
そんなたとえに使われちゃってさ。


さて。
13年度に公開された映画のベストテンを決定する時期がやってきた。
『キネマ旬報』や『映画芸術』は発表済みだが、映画ファンの興味は米オスカーに向けられている。

と同時に、米オスカーの発表前夜に開催されるラジー賞(最低映画賞)のゆくえも(映画小僧としては)気にかけたいものである。

ベストを決めるのも映画愛、ワーストを決めるのも映画愛。
ワーストはふざけて語られることも多いが、どっちにしたって愛だよ、愛。なのだ。


以下は、ラジー賞にノミネートされている映画たち。

『アフター・アース』
『アダルトボーイズ遊遊白書』
『ローン・レンジャー』
『ア・マデア・クリスマス』
『ムービー43』

相変わらずシャマラン監督(=『アフター・アース』)は強い。
だがこの監督がワーストの栄光に輝くというのは予定調和に過ぎるというか当たり前というか、驚きは「もはや」ゼロにちかい。

だからもし自分が投票の権利を持つ会員だとしたら、ジョニー・デップが主演した『ローン・レンジャー』を推したい。
大メジャーにだって牙をむくことが出来る―ということを証明するためにも、ラジー協会は勇気を出してこの映画をキングに決めるべきだと思うのだが、どうだろうか。


翻って、わが国はどうか。

大々的に開催されることはないが、ふたつの雑誌がワーストを発表してくれている。
『映画芸術』と『映画秘宝』である。

今回取り上げるのは、後者のほう。
題して『脱力! 映画秘宝トホホテン「2013年度 HIHO はくさいアワード」』。

おっと。
また野菜が使われている。
こんどは白菜だ。

なぜだ!?

鍋のメイン(自分のような稼ぎの少ないものにとっては、、、ね)といってもいい美味しい美味しい白菜が、なぜトホホなのだ!?

非情なもんだぜ、まったく。
だったら自分の嫌いなレーズンアワードとか、つぶあんアワードとかにしてくれよ。

ん?
意味がぜんぜんちがう?

そうだけどさ。
大根も白菜も納得がいかないという話だ。

ただ、この集計結果には納得。
異議なし。
『ガッチャマン』が上位に入ってこない理由について識者は「元々の期待値が低い」と解説、そこも納得出来るものなので、このランキングは「かなり」信用出来るものだと思う。


『脱力! 映画秘宝トホホテン「2013年度 HIHO はくさいアワード」』

(1)『ワールド・ウォーZ』
(2)『マン・オブ・スティール』
(3)『ダイ・ハード/ラスト・デイ』
(4)『R100』
(5)『キャリー』
(6)『ガッチャマン』
(7)『死霊のはらわた』
(8)『47RONIN』
(9)『人類資金』
(10)『永遠の0』『グランド・マスター』『スプリング・ブレイカーズ』


※米米による『ガッチャマン』主題歌…かっけー!!




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怒れる牡牛の物語

2014-01-22 00:30:00 | コラム
第17部「フランシス・フォード・コッポラの物語」~第4章~

前回のあらすじ

「映画を撮る喜びはどこにある?」
「喜びはどこかって? 美しいメディアだし、そこで働けることは特権であり、学ぶことがたくさんある。喜びは、ごくたまに、自分がいいと思えること、美しいと思うことが達成できた時だね」(インタビューに答えるコッポラ)

「『地獄の黙示録』から帰ってきたとき、わたしはほんとうに落ち込んでいた。自分が天才と思いこむより、むしろまずいことになったと考えていた。映画は失敗作だと思ってたし、どうやったら立て直せるのかわからなかった」(『地獄の黙示録』撮影中の「錯乱状態」から解放された当時の心境を、コッポラが語る)

…………………………………………

「好きではないが、すごいとは思った」
「映画として優れているかどうかは分からないけれど、どえらいものを観たという感覚がある」

・・・みたいな感想を抱かせる映画が、稀に、ほんとうにごく稀に出現する。

『悪魔のいけにえ』(74)、『ゆきゆきて、神軍』(87)、そして『地獄の黙示録』(79)のように。

『悪魔のいけにえ』がすごいのはホラー映画としての完成度というより、ひとが襲われる/殺されるさまの迫真性だろう。
こんな映像体験は滅多に出来るものではない。

『ゆきゆきて、神軍』は、ドキュメンタリーとか、そういうジャンル性とはべつのところで評価されている特異な作品。
リバイバルされる度に観に行っているが、不思議とワカゾーが多い。
戦争や天皇制というものに興味がないのに、「なんかすげージジイが主人公らしい」という興味から劇場にまでやってくるのだ。

『地獄の黙示録』もまた、戦争映画というジャンル性で括られることを拒否するような「意思を持った」作品である。
ベトナムを扱っていながら、『ディア・ハンター』(78)や『プラトーン』(86)と同一線上では語れない―という主張に異を唱える識者は居ないのではないか。

…………………………………………

狂乱。

(1)常軌を逸した状態になること
(2)比喩的に、物事が異常な状態であること
(3)演劇で、物狂いの所作


『地獄の黙示録』には「狂乱」という評価が似合う―2001年に公開されたディレクターズ・カット版に触れ、そう思った。

キルゴア中佐(ロバート・デュバル)の台詞「朝のナパーム弾の臭いは格別だ」や、ヘリからの攻撃。
プレイメイトたちのダンスと、兵隊たちの興奮。
カーツ大佐(マーロン・ブランド)の殺害シーン。

どれを取っても狂乱、
『戦場にかける橋』(57)のラストもたしかに「狂ってる!」が、『地獄の黙示録』の狂乱度? は次元がちがう。

ビートたけしだったか、「『ゴッドファーザー』の3作目のコッポラは、ドラッグが切れた感じの演出でキレがない」と評していた。
それに倣えば、このころのコッポラはキレキレで描写のひとつひとつが完全に「あっち側」に到達している。
選曲にドアーズというのが「いかにも」であるし、冒頭のウィラード大尉(マーティン・シーン)もラリっていると捉えられなくもない。

ふつうのひと、居ないじゃん。

いや戦争とは、そういうものなんだとコッポラは「ラリりつつ?」いってのけている。

…………………………………………

『地獄の黙示録』は150分の大作(ディレクターズ・カットは200分超)だが、あらすじは2行程度にまとめられる。
カーツ大佐が軍の命令を無視して暴走、ジャングルで王国「のようなもの」を作っている彼をウィラード大尉が暗殺にしにいく―という物語。

オーソン・ウェルズも映画化を狙っていた『闇の奥』(ジョゼフ・コンラッド著)を下敷きにしているというので読んでみたが、さっぱり分からなかった。
分からなかったが、コッポラに影響を与えたことだけは「なんとなく」分かった。

著名な学者たちは、散見される文芸的な引用からこの映画を読み取ろうとしているが、筆者には発表出来るほどの文芸的素養がないし、そのあたりは立花隆に任せておけばいいのだと思う。
だからいえるのは、日本版の予告編がいうように「これは生きた映画」であると。
未だ呼吸をし続けていると。
観ていないとしたら、学校や会社をサボってすぐにでも観なさいよと。
いいと思えるかどうかは分からないけれど、きっと「すごいものを観た!」という感覚に襲われるはずだと。


少し前に「(コッポラの才能は)枯れた、、、という意見がある」と書いた。
それを否定したい筆者だが、もし枯れたのだとしても「枯れた」ではなく「(『地獄の黙示録』の撮影で)抜け殻になった」と評するほうが適切なのではないか―そんな風に思う。(ついでにいえば、マイケル・チミノも「抜け殻」になったのだ。両者には、マイペースで映画を撮れない「非」職業監督という共通点がある)

『地獄の黙示録』という映画、その制作過程は、それほどに厄介なものだったのだから。

…………………………………………

つづく。

次回は、2月中旬を予定。




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本シリーズでは、スコセッシのほか、デヴィッド・リンチ、スタンリー・キューブリック、ブライアン・デ・パルマ、塚本晋也など「怒りを原動力にして」映画表現を展開する格闘系映画監督の評伝をお送りします。
月1度の更新ですが、末永くお付き合いください。
参考文献は、監督の交代時にまとめて掲載します。

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