Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

シネマしりとり「薀蓄篇」(55)

2013-10-22 00:30:00 | コラム
あいとしゅくめいのいず「み」→「み」ふねとしろう

ジョン・フォードにはジョン・ウェイン、
スコセッシにはデ・ニーロ、
そして黒澤には、三船。

デ・ニーロの出ていないスコセッシ映画も多いし、そのなかでも『ヒューゴ』(2011)のような傑作は生まれるけれども、
格好いいタイトルバックにデ・ニーロの文字が出てくると、もうそれだけで胸躍るし、その時点でなんとなく傑作だよなと確信出来る―それと同様のことが、黒澤映画にもいえる。
『虎の尾を踏む男達』(45)も『素晴らしき日曜日』(47)も好き、けれど『用心棒』(61)や『天国と地獄』(63)のほうが「もっと」好き。大好き。

信奉する日本の、鬼籍に入った表現者の墓に行くことが好きで、漱石や黒澤の墓前には2度3度と立っている。
三船の墓前(トップ画像)にも、いちどだけだが立ったことがある。

というわけで、三船の話。

三船敏郎(みふね・としろう)、20年4月1日に生まれ、97年12月24日に亡くなった日本の俳優。
享年77歳―このあと「にっぽん男優列伝」に登場するので、詳しいキャリアはそのときに記すことにしよう。

さて。
裕次郎ほどではないものの、三船もまた、(一部から)スター性やオーラで「演技力を誤魔化している」といわれたひと。

実際はどうか。

森雅之や三橋達也のような芸達者と共演すると「さすがに」分が悪いものの、
たとえば『幕末太陽伝』(57)における裕次郎の浮いた演技―しかし川島雄三は、それさえ作品のアクセントへと昇華させている―を見たファンが、ちょっと恥ずかしい気持ちになる、、、みたいなことはない。

黒澤映画のとくに前期では「喚く」「叫ぶ」「怒鳴る」が多いので評価し難いのだが、でも『赤ひげ』(65)の堂々とした演技は、かなりいいと思う。

つまり個人的には、下手とは思わないよ、、、と。

そんな三船のフィルモグラフィから、ベスト7(中途半端だけど)を選出してみよう。
もちろん「非」黒澤映画も含むが、黒澤印が多くなってしまうのは「勘弁ね」というほかない。


(1)『天国と地獄』(63)

黒澤映画のなかでも、いちばん好き。

頂点を目指す男は冷酷無比でなければいけないはずなのに、「身代金を出さない」という選択肢を取ることが出来ない。
権藤さんは、すべてを背負う覚悟を決める―三船の大きな背中は、そんなキャラクターにリアリティを与えている。

(2)『西鶴一代女』(52)

主役はあくまでも田中絹代だが、溝口健二の映画に三船―それが新鮮で、とても面白く感じた。

(3)『醉いどれ天使』(48)

黒澤との初タッグ作品。
眼光ギラギラ、志村喬との対比演出も抜群で、互いが互いを際立たせ、結果的にふたりとも「得」をしている。

(4)『黒部の太陽』(68)

裕次郎とのタッグ作。
社会派の小品ばかりを撮ってきた熊井啓が演出を担当する「大作」というところも含めて、様々な意味で野心的な映画だったと思う。

(5)『独立愚連隊』(59)

岡本喜八ともよく組んだ三船だが、この映画ではゲスト出演の扱い。
でも格好いいので、それもよし。

(6)『野良犬』(49)

拳銃をパクられた若い刑事の焦燥、それを上手に表現している。

(7)『悪い奴ほどよく眠る』(60)

復讐に燃える主人公をクールに演じる。
しかし。
復讐のための結婚だったにも関わらず、脚の悪い妻をほんとうに愛してしまい・・・と、『天国と地獄』同様、ここでもやっぱり「弱み」を見せる。
そこが、じつにいい。


日本映画をあまり観ないという若いひとにはぜひ観てもらいたい7本だが、まぁとりあえずは黒澤映画を観てくれよと。
まず外さないし、黒澤の演出と三船の演技、両方すごいから一粒で二度美味しいよ―そういうわけなのである。

「非」黒澤映画ばかりを挙げたほうが、かえって映画小僧っぽく見えるかもしれないけれど・・・
それはほら、自分は結局、黒澤信者だから、、、ね。






あすのしりとりは・・・
みふねとしろ「う」→「う」ぉーげーむ。

…………………………………………

本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』

…………………………………………

明日のコラムは・・・

『シネマしりとり「薀蓄篇」(56)』

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 縛る、絞める | トップ | シネマしりとり「薀蓄篇」(... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
映画ではないけれど (夢見)
2013-10-22 09:54:16
「隠し目付参上」や素浪人シリーズに 出演されたコマーシャルでも味があって好きでした

二人とないモノを持ついい俳優さんだったと思います
返信する
三船さん (oyajisann)
2013-10-22 20:57:59
私の子供の頃は唯一の国際的俳優って
印象凄くありました。
やっぱこれも黒澤監督の作品だったから
こそでしょうか?
たしかに演技より三船という名前だけで
オーラ感じてました。
返信する

コメントを投稿

コラム」カテゴリの最新記事