Cape Fear、in JAPAN

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Oh captain、 my captain ~追悼、ロビン・ウィリアムズ~

2014-08-13 00:10:00 | コラム
巨匠や、期待の俊英が躓くことだってある。

たとえばロバート・アルトマンの『ポパイ』(80)は、本人的に「なかったこと」にしたかったにちがいない。
スピルバーグの『フック』(91)は、「なぜ、こんな風になったのか」本人でさえ首を傾げていることだろう。
『ジュマンジ』(95)は一部では好評だが、監督ジョー・ジョンストンは出来に納得していなかったというし、自分も「ぜんっぜん」楽しめなかった。あんなに楽しい物語のはず、、、なのに。

こういう場合、基本的に俳優に非はない。
それが分かっているから、映画ファンたちは俳優陣に対して「気の毒に・・・」などと思う。

こういう不運は「一」俳優のキャリアに「一度きり」のケースがほとんど―のはずなのだが、ロビン・ウィリアムズという俳優にかぎっては、上に挙げた3つの作品すべての主演を務めちゃっているのだった。

それでも映画ファンはいう、運が悪いだけだ、ロビンは悪くない、あぁ気の毒に気の毒に・・・と。

そのくらい、映画ファンに好かれる俳優なのである。


キャリアのスタートは、スタンダップコメディだった。
モノマネが得意な早口野郎は『ガチンコしゃべくりトーナメント』が開催されたら、間違いなく4強まで残る実力だったと思う。
エディ・マーフィーと競ったろうし、エミネムとラップ対決をやっても勝っていたかもしれない。


ある年のオスカー授賞式で、司会を務めるビリー・クリスタルが『ウエストサイド物語』(61)のことを、

「名作だが、いつの時代だって、あんな風に踊る不良は居ない」

と発したとき、スターの誰よりもうれしそうな顔をしたのはロビンだった。

権威に毒づき、茶化す―ロビンの芸の根幹にあるのはそれだと思った。
だから自分にとっての最高傑作は、ロビンが俳優としての評価を確実なものとした『グッドモーニング、ベトナム』(87)である。

いっぽうでは厄介者、しかしいっぽうでは英雄。

映画俳優ロビン・ウィリアムズのデビュー作は、英雄譚『ポパイ』だが、これは前述したように「おおすべり」した。
だが82年、『ガープの世界』で奇妙な人生を歩む主人公を熱演し、デビュー作を「なかったこと」とした。

87年、『グッドモーニング、ベトナム』でラジオDJを軽快に演じる。
米国版『金八先生』のような『いまを生きる』(89)は、マーロン・ブランドのモノマネをするシーンと、「先生!」と呼んでも振り向かず、「Oh captain、 my captain!」と呼ぶと振り向くシーンに笑った。

90年の『レナードの朝』は、デ・ニーロ狂にとって踏み絵のような作品である。
きっちりとリサーチして難病患者を演じても、こころに響かなかった。
誤解を恐れずにいえば、ちょっと不愉快にもなった。
映画そのものの出来ではなく、デ・ニーロの演技に感心しなかっただけ。
いや、そういう役なのだからしょうがないのだけれども・・・。

ともかく、この映画を支えているのはロビンのほうだ。
彼の抑えた演技がなかったら、単なる不愉快な映画体験で終わっていたかもしれない。

91年、『フィッシャー・キング』に出演。

騒動を起こしたラジオDJと浮浪者の物語―信じられない奇跡的なシーンがいくつか生まれたが、その最たるものはこれだろう。





同年、『フック』でスピルバーグ「とともに」躓く。
しかし起き上がるとすぐに『アラジン』(92)でフラストレーションを発散し、
つづく『ミセス・ダウト』(93)では、ある識者から「巧過ぎてイヤミでしょ」などといわれるほどの芸を披露する。

97年、『グッド・ウィル・ハンティング』でオスカー演技賞を受賞する。

マット・デイモンとベン・アフレックを有名にした青春映画。
監督のガス・ヴァン・サントは、ふたりの若者を世に出そうと「いつもの内省的演出」を極力排除し、ロビンもまた「いつものマシンガントーク」を封印、静謐な演技でデイモンを支えた。


以降も実在の医師を描いた『パッチ・アダムス』(98)や、イメージにない犯罪者を演じた『ストーカー』(2002)などで印象的な演技を披露していたが、
最近のフィルムグラフィにかぎっていえば、『ナイト ミュージアム』(2007)ではルーズベルト、『大統領の執事の涙』(2013)ではアイゼンハワーと、なぜか「大統領づいているよね」などと映画小僧の友人たちと笑ったりしていた。


アル中であったとか「うつ」を患っていたとか自死だったとか、ここでは深く掘り下げない。
ここまで楽しませてもらった俳優には感謝の気持ちしか抱かないが、
これが映画小僧の手のひら返し? というか、憎めないところ? というか、こういう最期に触れると、冒頭に挙げた「明らかな失敗作」でさえも愛でたい気持ちになってくる。

だから敢えて今宵は、勇気を振り絞って? 『ポパイ』を観てみることにしようか。

出来はクソでも、ロビンの芸は輝いているのだから。


2014年8月11日、ロビン・ウィリアムズ死去。
享年63歳、合掌。


※『初体験 リッジモント・ハイ(88)』は、あす掲載します

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コメント (1)
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