まちや小(ぐわあー)

その先を曲がったら何があるのだろう、どきどきしながら歩く。そして曲がってみて気がついたこと・感じたことを書く。

才能が

2014年02月28日 | Weblog
ない人に売り込む。

『自分に才能あると信じる人から金巻き上げる自費出版暴露小説

敏腕編集者の牛河原が勤める丸栄社は、自分には才能があると思っている人間から金を巻き上げる自費出版専門の出版社。依頼人をおだてて業績を伸ばしていた牛河原だったが、その前に強敵が現れる。

作家になりたい自意識過剰な人だけでなく、売れない本を出し続けるプロ作家や出版者も徹底して皮肉るブラックな展開が面白い。ユーモラスな作品だが、不況に苦しむ出版界の現状はリアルなので本好きや作家志望者は必読だ。

女性セブン2013年4月11日号』


『自費出版のお勧めと甘い罠にはご注意を:DTP、新風舎、文芸社

ある人の自費出版の手伝いをして、先日、やっと1つの重要行程が終わった。
まだ本は出来上がっていないが、行程表で言えば、ようやく9割終えた、というところだろう。

大手出版社の相場に目をむいて。
この人とは、妙な縁で、個人史の出版を相談された。まず最初は、大手出版社に話をして、できればそこで出版してほしいと考えたらしい。当然ながら、そんな美味い話は実現しなかった。
 
数奇な運命をたどった人で、個人史を聞くだけでも興味深かったが、手紙以外の文章を書いたことがない、という大きなハンデがあった。
 
次に、社会的な意義やインパクトがなければ、個人史は販売用書籍になじまない。もちろんタレントなどの有名人なら、その名だけで売れるだろうけれども、当人は無名のおじさんである。
 
つまりは、うちのOBのゴーストライターが聞き書きし、それを自社のノウハウで書籍化はするけれども、販売はご自身の責任で、いうしごく当然の応えであった。
 
さらに、その費用を聞いて、目をむいた。概算400万~500万と言われて、リッチではあったが、さすがに尻尾を巻いたのである。

ブランド料と高い人件費が上乗せされて
 
内訳は、ライターの原稿作成料が400字詰め原稿用紙換算1枚7,000円という。200ページくらいの普通の書籍をイメージしていたから、原稿の分量は300枚は必要である。すると、原稿作成だけで、ざっと200万円以上かかる。
 
次に大手出版社の自費出版部門は、自社の制作ノウハウを使うので、装幀・デザインなど、出来上がりの体裁は完璧に近いが、高い人件費にブランド料が上乗せされるので、ハードカバーだと制作に300万円近くかかる(ソフトカバーなら50万円くらいは安くなる)――という計算である。
 
ここで、事情を知らない人は、「あなたの原稿を本にします」という広告を見たことがある、あれならお金はかからない、と思った方もいるだろう。悪名高い新風舎(08年1月破綻)や現在も営業している文芸社などの使う甘いセールストークである。これについては、以下の3つのネット記事を参照されたい(「『新風舎』にだまされた 自費出版の巧妙手口」 、「持ち込み原稿を無料出版するという文芸社は実際は詐欺まがいですか? 」、「文芸社商法のさらなる疑惑 」)。

「原稿募集」に応募しても、結局は普通の業者と大差ない費用
 
現在、年間9万点近い本が、大中小出版社から刊行されている。その大半は、部数が2,000~5,000部であり、仕上がりと称する売れ行き率が6割を超えれば、何とか採算がとれるような設計になっている。1万部も売れるのは、全体の数%しかない。
 つまりプロの作家、著名な研究者の書いた本でも、1万部の単位に乗せるのは容易ではない、という現状がある。無名の素人の作品が、流通ルートに乗っても、売れることはまず絶対にありえない。
 
だから、うちで出版すれば印税生活ができます、というトークは、そもそも詐欺である。
 
せいぜい「原稿募集」に応募したら、「入賞はしませんでしたが、惜しいところでした。このまま埋もれるよりは、お金を出して出版しませんか?」という返事が返ってくるだけだ。協力出版とか、共同出版という誘いで、費用が半分になったりするという売り込みが付いてくる。ただし、他の業者に普通の自費出版として見積もりを出してもらった金額と、さして大差ない金額であることはほとんどだ。
 そして3カ月後、ほぼすべてが売れ残った流通本(その大半は、荷解きもされずに返本されてくる)が返ってくるのである。数千部も刷り、引き取ろうものなら、夥しい本の山に、普通の人なら驚愕し、途方にくれるはずである。

普通の印刷所でも40万円ちょっとの見積もり
 
冒頭の知人も、何かしらそんな幻想があって、某大手出版社に行ったわけだ。流通ルートに乗せるなどという甘い話を一切しなかっただけ、良心的である。
 
そこで、不肖、私がお手伝いしたという次第だ。その間、 この日記を休載しなかっただけでも、我ながら凄いことである。
 
約10時間のインタビューであった。集中すると、お互いに疲れるから、3日に分けた。そして約280枚の原稿にした。デザイナーも一応はいる知り合いの印刷所に見積もりをとって、800部を刷っても40万円ちょっとで出来ることが分かったので、そのまま見積もり書を渡した。上前をはねるなんて、セコイことはしなかった。その代わり、原稿制作料はいただくつもりだ。もちろん200万なんてぼったくりのような巨額は要求しないけれども。

電子化によるコスト低下
 
3カ月くらいかかったが、原稿さえ出来れば、もうゲラが出て、それを読んで、直しがあれば朱を入れて戻すだけである。シルバーウィーク明けにでも、印刷所に入稿できる。昔は、原稿用紙を運んでいったものだが、今は電子メールに原稿を添付して送るだけですむ。
 
本になった後の知人の喜ぶ顔が目に見えるようである。
 
今回のことであらためて知ったのは、自費出版がかなり安くなっているということである。かつて活字を組んでいて手間がかかり、それだけ多額の費用が要したが、DTPソフトを使えば、版組は一発である(写真=書店にはDTP関連本が賑やかだ)。テンプレートに、原稿を流すだけだからだ。
 
ちなみに前述の40万円ちょっとというのは、4色カラーのカバー付き、4色カラーの口絵2ページ付きで、印刷・製本代すべて込みの値段である。電子化で、驚くべき安さとなっている。
 
皆さん、自分の思いを本で訴えたい思われる方、旅行記を出したいなどお考えの方は、身の丈にあった自費出版を検討してみませんか(ただ、写真集などはかなり割高になるので、少部数からできるフォトブック・サービスの方が割安)。』


『自費出版の罠

地下鉄に乗っていると、某出版社の自費出版の広告がやたらと目につく。

「原稿募集」で始まるこの広告のコピーには、原稿を送りさえすれば即作家デビューが飾れるような文言が並ぶ。

「文学賞に応募して優秀作品は賞金ゲットで出版できる」
「世間に自分の著作を発表できるチャンス」
「原稿をその出版社に送ると必ず読んで感想を送ってくれる」などということがこと誠しやかに書かれているのだ。

ただ面白いのは広告の中には「自費出版」という文字が絶対に書かれていないことだ。

実際に応募してみると必ず「共同出版しませんか」というセールスともアドバイスとも受取れるダイレクトメールが貼付され、その感想とやらが送られてくるのだ。

先々月、自費出版大手の碧天社(東京神田)が倒産。金を支払ったのに出版してもらえない被害者が数多く出て、初めて自費出版ビジネスのカラクリがマスコミを通じて公にされた。

かくいう私も自費出版でもやってみようと、倒産した出版社を含めて複数の出版社に原稿を送ったことがある。
で、出てくる金額が驚くなかれ、どれもこれも似たり寄ったり。しかも「共同出版」を薦めてくる文面までそっくりで、「自費出版」とはまったく謳われていなかった。

謳われていなかった、というよりも「『共同出版』は『自費出版』ではありません」と断言する始末。
なんでも共同出版とは製作費や印刷費を著者が負担し、宣伝費や流通費を出版社が負担する制度だということだったが、疑わしかった。
私の場合、A5版サイズ250ページ、発行部数1000部で著者の負担金額は150万円だった。

150万円といえば、私の愛車ホンダシビック・フェリオと似たり寄ったりの価格である。大衆車といえど自動車が買えるぐらいの金額を著者が負担しなければならないシステムには大きな疑問を感じた。

ちなみに自費出版を営業の主軸とする出版社の書籍を書店で見かけることはほとんどない。出版社が書店と契約して設置している専用コーナーに見られるだけだ。これも読者(書店の客)ではなく、各社の顧客である著者に対するポーズなのかも知れない。

実際、自分で印刷データを作成し(今どきPCやMACで簡単に作れる)印刷所に持ち込めば、印刷代と用紙代だけで済んでしまうので、かかっても予算は30~40万円もあれば出来てしまう。ISBNコードが欲しければ5万円ほどの追加になるだけ。そして毎年、維持費を払うだけ。あと流通されるかどうかは本人の努力と取り次ぎ会社の考え方次第。

で、これが共同出版だと残りの約100万円はどうなるのかというと、出版社の懐に納まるというわけだ。

無名の素人作品を読んでくれるような酔狂な一般人はあまりいない。多額の現金をかけて他人に頼んで出版してもらうくらいなら、ホームページかブログを自分で作って世界中に公開すれば、ほとんどタダで済む。それでも「物」で残したい人は、ゼロックスの上質紙にコピーしてキンコーズで製本してもらうのが手っ取り早い。

「原稿募集」の広告は素人作家を「自費出版ビジネス」に誘い込むトラップと考えながら読んで見ると、なかなか味のあるものだ。』

※才能がある人はその手には乗らない!

最新の画像もっと見る