硬質の山岳映画。叙情も高らかになる音楽も皆無。「劔岳 点の記」とは対照的だ。厳しい山の自然が人間の前に屹立する。
ナチスの時代のベルリンオリンピックを控えた時期の実話に基き、一種のオリンピック秘話にもなっている。
あまりの過酷さに、ドイツが国家威信をかけて登頂成功者にオリンピックと同じ金メダルを授与することになっていたというのだ。
ドイツ隊とオーストリア隊4人の物語だが一人の負傷者が全員の命運を左右する。知らない役者ばかりなので逆に迫真の物語がリアルに展開する。
アルピニストの恋人が回顧するという語り口だが、彼女の目の前で、救いの手を差し出すことも出来ない状況で絶命するという壮絶な悲劇は一生のトラウマになってしまいそうだ。