アラスカの荒野を目指した青年の話。その土地から手に入るものだけで生きようという、文明に背を向けた生き方を青年は選ぶ。
学歴も十分な知的な若者がなぜそのような選択をしたのか?
残された家族はどう対応したのか?
消息を絶った後、青年は誰と接触しどのように生きたのか?
これらをじっくりと見せてくれる。これまでの生活を捨てて放浪の旅に出る経緯と、いよいよアラスカの荒野に分け入ってからの日々とが交互に描かれていく。
アラスカの日々は偶然発見した廃バスをねぐらにすることになる。文明の残り滓だ。ラストは、あらゆる文明を捨てたのではなかったのか、という自然からの報復なのだろうか? Wild Trap(自然の仕掛けた罠)にかかったと主人公は言っている。
一人の人間の考え方と生き方をここまで見せてくれた映画は、おそらく初めてではないかと思う。幸福とは何か、その最後の最後に悟ることとなる。人生を真正面から語った重量級の作品だ。
ショーン・ペンの監督としての力量は素晴らしい。主演のエミール・ハーシュは少し前のディカプリオを思わせる顔立ち、「スピード・レーサー」にも主演していた。旅の途上で出会う人々もそれぞれ心に残る。