prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「マザー・テレサ」

2005年09月16日 | 映画
マザー個人の悩みや苦しみはまるっきり外した作り。あるとしても、あくまで人を救おうとする試みに立ち塞がる障害だから、キャラクターの内面にはまったく影響なし。マザーの個人的な悩みなど見たいか、というと別に見たくないのだが、あまりに立派すぎて遠い存在に感じられるのも確か。難しいね。
こっちがやっていることといったら、たまに献血することくらいだからね。

オリビア・ハッセーが後半体が小さくなっていくように見えるくらい徹底したメイクと演技。
(☆☆☆★)



マザー・テレサ - Amazon

「エヴァは眠れない」

2005年09月14日 | 映画
1957年のポーランド映画。
入学式前夜に寄宿舎に着いた娘が、規則を盾にされて宿泊を許されず、泥棒や娼婦や警官がやたら入り乱れる妙な町を眠れないままうろうろするコメディ。今見るとテンポは緩いが、十分笑える。
人の頭をひっぱたいて鞄を盗んだ泥棒がまた別の泥棒に頭ひっぱたかれて盗まれて、そのまた泥棒が…という繰り返しとか、警察の武器庫にヒロインが逃げ込んだものだから、檻の中の泥棒に扉を開けさせたりといったわかりやすいギャグの他、箱馬車を開けるとなぜか犬がぞろぞろ出てきるといったシュール系、ヒロインがすました顔で鉄格子を通り抜けてしまう(細ーい)といったセンスで笑わせるギャグなど、いろいろ。

ものすごく古い街並の、特に夜景が不思議の国のようなニュアンスをよく出した。
主演のバルバラ・クフャトコフスカヤはロマン・ポランスキーの最初の夫人だというが、大きな眼、すこしすぼまった厚い下唇と、デビュー当時のナスターシャ・キンスキーとちょっと似たタイプ。
(☆☆☆★)



「スター・ウォーズ シスの復讐」

2005年09月14日 | 映画
これだけ盛大に視覚効果を盛り込んだ映画で、しかしアナキンが暗黒面に入り込んでいくところは、オセロがイアーゴーにたぶらかされるように「言葉」の説得によるものになるのだね。イアン・マクダーミドの朗々としたシェイクスピア劇的台詞まわし。
なぜアナキンが暗黒面に入って力を得るのが妻パドメを守ることになるのか、という理屈が今一つピンとこない。具体的に危機が迫ったわけではないのだから。
アナキンの母の死が割と軽く描かれていたり、このシリーズはどうも女性キャラクターの描き方が淡白。

空間恐怖症的にちょっと画面に空いたところがあると何か飛んでいる、というのはどんなものか。なんかせせこましい感じ。

アナキンがクリストファー・リーの首ははねるは、子供は殺すわ、しまいには自分が脚を切られて焼けただれるわで、ずいぶん凄惨。第一作のノー天気さが、今となってはウソのよう。
代わりにエピソード1、2に比べて緊張感は大幅アップ。アナキンとオビワンの対決は溶岩をバックに大いにドラマチックに盛り上がる。

ルークとレイアの双子が生まれた途端、名前を呼ぶのはなんか変。考えて決めたのではなく、最初から決まってたみたい。
とはいえ、ストーリーがぐるっと大回りした末収まるところに収まるのは、感慨あり。

ラスト、戦艦に乗り込んだヴェイダーのそばにピーター・カッシング(モフ・ターキン提督)に似た人がいるあたり、芸が細かい。
(☆☆☆★★)



スター・ウォーズ エピソード3 / シスの復讐 - Amazon

「ランド・オブ・ザ・デッド」

2005年09月12日 | 映画
意思や感情を持つゾンビ「ビッグダディ」が出てきたり、人間でも貧困層は疎外されて生きていたり、ちょっと見ゾンビみたいな顔にひきつれのある男が出てきたりと、ゾンビと人間の垣根が低くなって、争いながら一種の仲間意識が出てきている、あるいは被支配層同志でありながら争いが絶えないというあたり、60年代センスというのか、カウンター・カルチャーの匂いがする。
支配者であるカウフマンにかつてのカウンター・カルチャーのヒーロー、デニス・ホッパーをキャスティングした皮肉。

ジョージ・A・ロメロの作品では「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」で最後まで生き残ったかと思うとあっけなく殺されてしまうのが黒人、「ゾンビ」(「ダウン・オブ・ザ・デッド」)でヘリコプターでぎりぎりのところで脱出するのが黒人、今回のビッグダディも黒人。背後には9.11だけでなく、ベトナムも見える。

ゴア・シーンではCG全盛の現在にしては血や肉の生の物質感が出ていた。
(☆☆☆)



ランド・オブ・ザ・デッド ディレクターズ・カット - Amazon

自民党圧勝

2005年09月12日 | Weblog
色々予想が出ていたけれど、ここまで勝つと予想したところがあっただろうか。もちろん私も予想してなかった。
本当に選挙というのは、水物だと思う。

例によってテレビが一斉に報道合戦を演じたが、開票が始まるとほとんど同時に大勢が決まってしまったので、あとはいささかダレた感じ。

テレビ東京がまた再現ドラマ形式で政界裏話を見せたりしたのだが、これが実にゲテモノっぽくて可笑しい。
田中健の小泉首相も面妖だったが、森元総理が自分の再現(?)を見て、俺あんな東映ヤクザ映画みたいな喋り方しないよ、純ちゃんなんて呼ばない、ちゃんと総理と呼んでいると、でかい体でぷりぷり怒っていた。
民主党幹部が「小泉劇場」なんて言葉を内輪で使ってたりしている。ンなバカなことあるか。

勝敗が決した後、えんえんとあちこちのテレビ局で岡田代表を小泉首相に続けて引き回して敗戦の弁を聞いているのだから、ずいぶん悪趣味。実質、さらしものだな。

小選挙区、投票した候補者が当選。よし。
最高裁の国民審査、全員×をつける。信任する理由がない。



投票所で雨宿り

2005年09月11日 | Weblog
東京では、三時前に突然豪雨が降ってきて、予報でもあんなに降るとは言わなかったせいか傘を持ってこないで投票所で降り込められた人が大勢いた。
ちなみに、投票前にティッシュでよく手を拭くよう言われる。投票用紙は、水に弱いとか。


「サマータイムマシン・ブルース」

2005年09月11日 | 映画
元は芝居なんだろうな、と思っていたら案の定。
タイムマシンといっても話を大きくしないで、わざとセコい範囲でうろちょろしているのが狙いなのだろうし、その限りではけっこう笑えるが、舞台上と観客が同じ時間を共有する芝居と違って、映画だとそれ自体時間を切り貼りするものなので、どの時点が基準になるのかはっきりせず、なんだか見ていて腑に落ちない。ハナシとして頭でつないでわかるだけで。
タイムパラドックスというのは、話をデカくしてわかりやすくメリハリをつけるという面もあるのね。
(☆☆☆)



サマータイムマシン・ブルース - Amazon

池袋西口 ジャズ・「日の丸レストラン」ほか

2005年09月10日 | Weblog
実にいろいろなことを一度にやってました。


ジャズ・フェスティバル。時あたかもジャズの発祥地ニューオーリンズの災害に対する募金もやってました。
「マイ・フェイバリッド・シングス」の他、キューバの曲、セネガルの歌なども。


芸術劇場「日の丸レストラン」
日本が勝った第二次大戦後のアメリカで、「日本人」になるべく訓練を受けるアメリカ人たちと訓練に当る日本人たちを扱ったコメディ。一部キャストが本当に外国人。


今やVHSは100円の時代。


ついでに明日で命運が決する小池ゆり子候補の事務所。(後記・2位にダブルスコアで圧勝)

東武内の旭屋の哲学書コーナーでしゃがんでやたら熱心に読んでいる人がいたので、何かと思ったら、株の相場表でした。




「不滅の男 エンケン対日本武道館」

2005年09月09日 | 映画
客を全然入れない日本武道館にセットを組み、自転車でやってきた遠藤賢司がたった一人で丸一日歌って楽器を演奏して、また自転車で帰っていくのを記録したライブ。
一人でずうっとテンション上げっぱなしの驚異。
客がいないから空しいかっていうと、関係なし。音楽を聞かせたくて聞かせる奴と、聞きたくて聞く奴とが揃えばライブだろうが、ここではそれがたまたま同一人物だったというだけ。

「踊ろよ、べイビー」で巨大なミラーボールの前で歌い終わった後、パンアップすると武道館の天井にミラーの光がプラネタリウムの星空のように写っている詩情。

ほとんどエンケンの自作曲だが、一つだけベートヴェンの「第九」の「歓喜の歌」が入る。普通大合唱で演奏される曲を一人で演じるところで、ほとんど全編唯一場内に明かりが入る。そのだだっ広い中で、一人で負けずに合唱しちゃってる。

ギターアンプを積み重ねて作った富士山にススキが生えているセット。エンドタイトル見ると、「生け花」とクレジットされているのがなんだか可笑しい。そのススキから見え隠れしながら絶唱するあたり、何やら妖怪じみていて、暗い中にスタッフが動いているのがまたお化けみたい。
(☆☆☆★★★)



「妖怪大戦争」

2005年09月08日 | 映画
妖怪が炉で焼かれて改造されるとロボット(?)になる、というのが面白い。どっちも日本のお家芸ではないか。擬人化されたモノということで、対照的なようでつながっているのね。
クライマックスの妖怪祭、出るわ出るわ、数の多さと姿形と性格の多彩なこと、八百万の神々の国ならではで、壮観。西洋のだと人間離れでオドかすのだけれど、こっちは人間に近い。有名スターがあちこちで妖怪に扮して愛嬌をふりまくのも、日本ならでは。

デジタル技術による群集シーンって、初期のだとナチスの隊列じみた規則性が出がちだったのだが、どこ取ってももまるでバラバラの姿の妖怪が見られるというあたり、技術的にも興味深い。エンドタイトルで出演者の名前にずらっと妖怪の名前が並ぶあたり、洒落ている。

主役の神木隆之介くんが妖怪見てびっくりするリアクションが自然なので、引き込まれる。なんべんも出る「うわー」って叫びがなんだか可笑しい。

ちょっとハードでびっくりなのが愛玩用みたいに出てきたスネコスリの扱い。息抜き用パートかと思うとあの変わり様。河童が「見かけで差別すなっ」と怒るが、けっこう深い。ラストの感じだと続編作りたそうだが、どうなるか。
使い捨てられたモノの怨み、というのは説得力があってどきっとする。

クライマックスの盛り上げの力技と、音楽の使い方の脱力技との組み合わせ演出は出色。
(☆☆☆★★)



妖怪大戦争 - Amazon