prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「スパイ・バウンド」

2005年02月15日 | 映画
スジより文体を味わうタイプの映画。
お国柄(フランス)か、暗黒映画フィルム・ノワールの香りがする。
寡黙で表情を押し殺した人物たち、寒色でコントラストの強い画調、説明的でない語り口、迫力ある割にこれ見よがしのところがないリアルで簡潔なアクション、などなど。
ややシブすぎて前半眠くなったが、文体に慣れるとハリウッドの摸倣じみたアクションが増えたフランス映画にはない感覚が味わえる。
(☆☆☆★)


「五線譜のラブレター」

2005年02月14日 | 映画
老境のコール・ポーターが自分の半生を芝居や映画を見るような形で回顧するという凝った構成で、リクツっぽいところはちょっと「オール・ザット・ジャズ」を思わせる。
もっともそのミュージカルの再現シーンが、登場人物の感情が高まって歌や踊りに入るのではないので、どうも盛り上がりに欠ける。
ジョナサン・プライス(「ミス・サイゴン」ロンドン公演で狂言回しのヒモをやっていた)が出ていて1曲歌って踊るだけとか、撮り方も水っぽい。

ポーターのゲイの側面も、突っ込み不足というより最初から突っ込もうとしていない。
ゲイの旦那を持った(そしていったん妊娠もした)奥さんの心情というのもきちんと描けば興味深いものになったと思うが、てんで描写不足。どうせなら、奥さんの視点から描いた方がよくなかったか。
(☆☆☆)


 


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2度死んだ人

2005年02月14日 | Weblog
あれっと思ったのは、映画「パーフェクト・ストーム」で描かれた暴風雨にあった漁師の一人がまた遭難して救助されたという記事
よく遭難する人だなあというのと、あの映画では全員乗組員が死んでいたので、映画を作る時なんで遭難の様子がわかったのか不思議だったのだが、なんだ、死んだのは映画の創作か。

「朝日新聞」の文字をNHKのラグビー中継から外していたというカメラワークの分析を、日刊スポーツでやっていたとのこと。フェンスの「読売新聞」の文字は入っていたという。
朝日NHK問題エントリー一覧

卓球の“愛ちゃん”が優勝を逃がしたという報道で、誰が優勝したのかろくすっぽ出てこないのだからヒドい。
なんか、ニュースを見ていると頭が悪くなってきそうだ。

 

松岡美術館

2005年02月12日 | Weblog
白金の松岡美術館に行く。
ウンチク男を中心にしたシニア集団がごちゃごちゃしゃべりながら移動していて、その前の展示には近づくこともできない。これからはこういうこと、増えるぞ。
東洋美術を期間・地域ともに幅広く展示していて、カンボジアのクメール仏像美術の実物を見るのは初めて。

写真は、庭に面した休憩所。札には「お抹茶、お菓子500円。受付にて承っております」。場所柄か、優雅なこと。


 


映画ニュース

2005年02月11日 | Weblog
アレクサンドル・ソクーロフ監督がイッセー尾形主演で昭和天皇を描く「太陽」が完成。
モチーフがモチーフだけに、緒方拳が三島由紀夫を演じたが日本では公開できなくなった「MISHIMA」の二の舞いにならないのを望む。

宮崎駿がベネチア映画祭で名誉金獅子賞受賞。当然だと思うが、映画祭同志の権威の張り合いみたいな観もある。

某映画プロダクションに顔を出すと、銀行員が営業に来ていた。映画ファンドを銀行が扱うようになったかららしい。さて、どうなることか。

区の図書館で蔵書のインターネット検索と予約ができるようになる。調子こいて読み切れないくらい予約しそう。


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「着信アリ2」

2005年02月10日 | 映画
2とはいっても、前作から遡って設定から変えてしまっているところが多い。
携帯を通じて呪いが伝染する過程のルールとか、元の呪いが誰のものかまで違うものになっているので、見ていていささか混乱する。
この映画の中で描かれる出来事も、後になって実は違っていましたと別の場面を出してきたりするのだから、なおのこと。瀬戸朝香など双子の妹がいたという設定になっているから、何人もいるのかと誤解しかけた。

後半台湾が舞台になると緑地を撮っている分には違う雰囲気になって目新しいが、室内などではあまり変わりばえしないので日本に帰ったのかと思わせたりする。
ホラーシーンは一応見せるが、前作に比べてかなりパワーダウン。
(☆☆★★)


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健康診断

2005年02月10日 | Weblog
身長、体重を計るところで、よそ見をしていたら普段より4cmも低い値が出て、それがそのまんま記録されてしまう。いきなり背が低くなるなんてこと、あるか。
健康診断に行くと病気になるような気がする。悪い所が見つかるだけの話で、早く見つけた方がいいに決まっているのは頭ではわかるが、いい気持ちはしない。どこが悪いか大体わかっているし、改めて指摘されるっていうのもなあ。


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「パッチギ!」

2005年02月09日 | 映画
空手部の連中が鉄ゲタをはいているのは、喧嘩の道具なのとともに、韓国側から日本人のことを言うチョッパリ(ゲタをはくと指が広がるところから豚のヒズメになぞらえて)にたとえているのだろう。

妊娠・出産するのが「虎の門」の京子ちゃんだとは気付かなかった。ちゃんと役者として使ってますね。当たり前だけど。

東京人である当方の周囲では、頭突きのことはチョーパンと言ってたと思う。朝鮮民主主義人民共和国パンチの略。元極真の黒崎健時師範だったか、本当にケンカで役に立つのは頭突きだと語っていた。実戦的ということだろうか。
韓国映画「殺人の追憶」でもケンカのシーンで飛び蹴りしていた。ケンカの仕方にもカルチャーが出るみたい。

フォーク・クルセイダーズというとカバーでしか聞いていないので、出発はこういうものだったのかと勉強になる。
「イムジン河」とともに川を隔てた喧嘩と出産とスタジオを通夜とをカットバックするクライマックスは大いに盛り上がる。音楽の力は大きいと改めて思う。

中島らもは若い時、飲んで帰りの金がなくなると、赤電話を逆さまにして硬貨がジャラジャラ出てくるのでそれで帰った、そのうちストッパーがかかって出なくなったと書いていた。必要なのは金だけですからねえ。だからわざわざ電話を持っていくのはなぜなのかわからなかった。

映画館の看板でジョン・ブアマン監督、三船敏郎、リー・マービン主演の「大平洋の地獄」が出てくるのが凝っている。あまり有名な映画とは思えないので。孤島で日米の将校がそれぞれ一人だけ遭難漂着し、対立の末和解していく話。だから選んだのか?

68年の設定だが、いいかげんな進歩的教師や学生活動家の描き方の感覚は、現代のもの。

ディテールが豊か。見ながらずいぶんあれこれ考えさせられる。たまたまサッカーの日朝戦の前日だったせいか、サッカー変じてケンカになるシーンで不安になる。

(追記 サッカー日朝戦は、日本の勝ち。トラブルもなし。よかったよかった。
また聞きだが、本作は韓国の映画人には必ずしも好評ではないよう。韓国人にとってはあまり在日にシンパシーを持てるわけではないみたい。日系アメリカ人に日本人が持つ感情を持てば不思議はない)
(☆☆☆★★)


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免許更新

2005年02月08日 | Weblog
免許の更新に行く。
書き換えの前に床屋に行く。もともと伸びていたからだが、ちょうどいいタイミング。
これまで丸の内警察で書き換えていたのが、神田運転免許更新センターに変わる。えらい殺風景な建物。
どういうわけか今回は更新のハガキが来なかったが、別に問題なし。

手数料が2950円かかるが、渡されるパンフの類を発行する業者が警察とつるんで独占状態になっていて、法外に高い料金をとっているというだいぶ前に見たテレビの報道を思い出し、急に不愉快になる。手続きが終わったらゴミ箱に叩きこんでやろうかとも思ったが、資源ゴミにあたると考え直して持ち帰る。

例によって交通安全の教育ビデオを見せられるが、そのナレーションで「運輸省」という言葉が出て来たので(?)と思い、調べたら運輸省は2001年1月6日から国土交通省に吸収されている。では昔のビデオをそのまんまやっているのかと思うと、携帯電話を使いながらの運転には罰則がつくという最近の道路交通法の改訂も盛り込まれているのだから、わけがわからない。


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「シュリ」をいいかげんに見ながら

2005年02月07日 | Weblog
「シュリ」が日曜洋画劇場で放映されるが、オープニングの北朝鮮の特殊部隊の訓練風景が大幅に短縮されている(生きている人間を目標に射撃訓練したりするのがカット)のはわかっていたが、爆弾が爆発する寸前にCMが入るというヒドい放映なのでチャンネルを変える。それにしても、これが公開された頃にはまるで馴染みのなかったキャストが、みんな見慣れた顔になっているのだから、状況の変化は驚くばかり。
しかしこの映画、チェ・ミンシク扮する“北”の仇役の方がどうも目立つ。大鐘賞(韓国の大きな映画賞)で、主演男優賞を取っているのは、演技力はもちろんだが、やり方はともかく南北統一を本気でやろうとしているキャラであることと無関係ではない気がする。

代わりに見たのが、NHKで外貨が日本で不動産投資に使われているという特集。
渋谷の地元商店街というのが出てくるのが、フシギな感じ。やたらでかいビルによそから来た若者ばかり目立つが、ちゃんと昔からの店というのも残っていて、正月には餅つきで景気つけなどしているのですね。


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「フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白」

2005年02月06日 | 映画
マクナマラ元長官による11の教訓(lessons)といっても、教えを垂れるという感じではなく、それぞれ明晰で経験と知力に裏打ちされ頷かせるものを持ちながら、当人はエピローグに典型的に出ているように“言っても通じないよ”と諦めている印象もある。

映画のインタビュアーはほとんど前面に出てこなくてラスト近くにちらっとインタビューが聞こえるが、これが映画の作者のものなのか他の記者のものかよくわからない。質問の方が、人に物を聞くというより自分の聞きたい事を言わせたい、言質を取りたいというニュアンスが強いせいもあるだろうが、マクナマラはうんざりした調子で言っても誤解されるだけだと答えを拒否する。
人は過ちを犯す、と言って、だからどうすればいいとは言おうとしない。簡単に答えが出ない性格の問いには簡単に答えない態度が一貫している。

キューバ危機が本当に危機であり、核戦争が起きなかったのは幸運だっただけだ、というあたり、首筋が冷える思いがした。

東京大空襲を実行しベトナムを「石器時代に戻す」と言い放ったカーティス・ルメイ(それが日本の自衛隊から最高の表賞を受けている!)が、人となりとは別に指揮官としては有能だったというあたり、説得力はあるが見ていて憂鬱になる。

全体にマクナマラも映画の作者も思考の重心を低くして考えを深めることに重きをおいていて、知的な分「華氏911」みたいな俗受けはしない感じ。

作意を感じさせない画面作りだが、エンドタイトルを見たらgafferとかkey gripといったスタッフがクレジットされている。かなりスタッフを揃えて照明をセットしてきちんとメイクもして撮っているということ。


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「レイクサイド・マーダーケース」

2005年02月05日 | 映画
ミステリとすると、途中で真相はだいたい見当がつく。
あちこちにある思わせぶりな描写(鶴見辰吾が吸った煙草の吸い殻が消えている、とか)がどういう意味なのかわからないままになっている、被害者が車なしでは来られそうにない湖畔にどうやって来たのか、ハナシとしてはわかっても画面にすると説得力に欠けると判断してか犯行の描写をオミットしているのはどんなものか、など色々ひっかかるところはある。
ただ、これは謎解きより、解けた後見えてくる人間の恐さを描いているのだから、それほど大きな問題にはならない。

役所広司が別荘に来てもずうっと髪ぼさぼさで無精髭を剃らないのは、やりすぎ。人目もあるのだし鬚くらい剃るでしょ、常識として。

薬師丸ひろ子がコワい。この人は映画と相性がいい。

森の中、光が放射状に射しているあたり「E.T.」みたい。豊川悦司が子供たちに語りかけるシーンで、しゃがみこんで目線を低くしているのは「E.T.」のカメラアングルを思わせる。子供たちのやたらきちんとした服装や態度は「光る眼」みたい。

実の親子と、義理の親子ってそんなに違うものかな、とは思った。特に映画では赤の他人同志が演じているのだから、差別化しにくい。
(☆☆☆★)


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「東京タワー」

2005年02月03日 | 映画
こういう話、どうも寝取られ亭主コキュの側から見てもスジが通るものでないと、乗れませんね。えてして悪役みたいな扱い受けるけど、スジが通ってるのはどっちでしょう。

日本映画も金持ちの生活を描いて割とサマになるようになったか、と思う。もっともこの場合、映画でなくてテレビの力だが。
東京をキレイキレイに撮っても、最後おフランスに行かないと締まらないのだね。
(☆☆★★★)


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園田光慶「ターゲット」

2005年02月03日 | Weblog
園田光慶「ターゲット」上下を買う。私が復刊ドットコムで復刊をリクエストしたもの。それだけで再刊したわけでもないだろうが。
ずいぶん小さい時に読んだきりだったが、ほとんど覚えていた。それほど長いものではないせいもあるだろうが、鉄拳を超えるダイヤを埋め込んだ拳とか、ピエロが空中ブランコをしながら投げナイフで襲ってくるとか、部分部分の仕掛けがやたら凝っているのですね。

主人公の相棒の名前がジョン・ドウ(名無しの権兵衛という意味)というのは今見ると笑ってしまう。あと今の若い読者が読んだらバカにするかもしれないが、殺人機械たちの荒唐無稽ぶりもマンガっぽくていい。
絵柄が連載を始めた当初の「ゴルゴ13」によく似ているのは不思議。

今の眼で見ると、出だしの監獄島は明らかにペロン島、殺人機械がみな黒人というところ、ダイヤモンドを埋め込んだ拳、など南アフリカをイメージして描いていることが明瞭。


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「クジラの島の少女」

2005年02月02日 | 映画
エコロジーやフェミニズムと少数民族問題など、(意地悪く言うと流行りの)多くの要素がきれいに詰め込まれている。どれも大事なことで、少女の演技の卓抜さや風景の美しさなども文句のつけようのない代わり、実はそれほど熱心に共感はしなかった。

クライマックスの鯨の体に牡蠣のでかいのみたいな貝がへばりついているのがリアルなのと同時に、しがみつく時に便利なようになっている工夫。
(☆☆☆★)


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