宮川一夫の撮影がいつもながら素晴らしく、ラストシーンのもやのかかった水辺からティルトアップすると日がもやの向こうに見えるカットなど、波の打ち寄せ方の見事さといいこの当時の大映技術陣のレベルの高さをありありと伺わせる。
立ち回りで刀がぐさっと突き刺さる衝立に施された文様の細工ひとつが一瞬しか映らないがすごい出来だったりする。
小唄の使い方の情感から、手毬をつくリズムで時間経過を表現したりといったところはサイレント映画時代からのキャリアのある伊藤大輔監督らしい。
有名な「いやさ、お富、久しぶりだなぁ」の長セリフを雷蔵はそれほど大仰ではなくさらっと演じている。