prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ヒッチコック」

2013年04月15日 | 映画
アルマ夫人が夫に向かって自分のことをアルマ・レヴィルと名乗るところは日本語字幕では訳していなかった。知らない人には何のことだかわからないから外したのだろうけれど、結婚前の名前でありワーキング・ネームでもあるのだから、夫の付属品であることを拒絶する現われなのは明白。
仕事の上で夫から独立して評価されるのは時代的に難しいところだったのは容易に想像できて、今だったら「内助の功」はオリバー・ストーンでもなければあまり顕彰しないだろう。

天才のまわりにいる人間は天才の付属品としか見られなくなる、一将成りて万骨枯れるというのは避けられないのだが、家族ではないスタッフたちとのドラマは外している。
シャワーシーンのコンテをソール・バスが描いているという説は全面的にオミットしているし、バーナード・ハーマンの音楽の貢献に対してヒッチコックがボーナスを出したもので、あのケチがボーナスを出すとはと驚かれたエピソードなども出てこない。長年コンビを組んできた撮影のロバート・バークスを外したのも凝りすぎるようになったからだという。
夫婦の話とすると割り切れないなりにさまになるけれど、アーティスト同士の評価のぶんどり合いは金のぶんどり合いより厄介かもしれない。

ヘレン・ミレンが派手な赤い水着で泳ぐシーンあり。以前は演技派としてより裸の印象が強い(「カリギュラ」とか「エクスカリバー」とか)ので、ちょっと可笑しい。

アンソニー・ホプキンスのヒッチコックぶりは目つきが違うのだけれど、声や喋り方は驚くほどそっくり。風呂に入っているシーンで肥満したボディが見えるのだが、作り物にまったく見えない。
「サイコ」の封切でシャワー・シーンで場内から聞こえてくる悲鳴に合わせて指揮するように踊るコミカルな動作が、この全てをコントロール下に置かないと気が済まない天才のキャラクターを典型的に出した。
(☆☆☆★★)

人気ブログランキングへ


本ホームページ


ヒッチコック@ぴあ映画生活

ヒッチコック@Movie Walker


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。