prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「クロユリ団地」

2013年06月14日 | 映画
鴨下信一の「誰も戦後を」で知った言葉で、サバイバーズ・ギルトsurvivor’s guiltというのがある。戦争や災害、事故、事件、虐待などに遭いながら、奇跡的に生還を遂げた人が、周りの人々が亡くなったのに自分が助かったことに対して、しばしば感じる罪悪感のこと(Wikipedia)で、これが重要なモチーフになってい

罪悪感を持つ人が何の罪もないのに命を落とした子供にシンパシーを持つ、というホラーでは「チェンジリング」(ジョージ・C・スコット主演の方ね)があったが、スコットみたいにタフなおっさんではないからもっと呪いの方に引きずられます。

呪いのひとつのパターンとして、罪のない人や優れた人(菅原道真)が非業に死んだほうが呪いは深くなる、という共通感覚がある。
裏返してみると、悪いことをしていないのにも関わらず、生きている人間の方にまず罪悪感の方があって、それを解消するために呪いを引き寄せて自分が罰せられることで清められるのを求める、といった構造があるように思える。

クライマックスのドアを開けさせようと亡霊が良心の呵責に訴える人の声色を使うのは、「雨月物語」の「吉備津の釜」以来の古典的な趣向。昔からこういう罪悪感を祓う儀式としての呪いというのは続いているということだろう。
監督の中田秀夫は心霊体験の類はまったくないし霊や超能力の類はまったく信じないのを公言している人で、全体に皮膚感覚よりかなり論理的な調子で組み立てられている。

前田敦子はテレビの「栞と紙魚子の怪奇事件簿」の頃から、どこか古めかしいものに結びつく役が多い感じ。

深夜テレビで連続ドラマ版の「クロユリ団地」を平行して放映中で、どちらか見ていないと話通じないのかと恐れていたのだが、別に互いに見ていなくても困らない。舞台とミノルくんという不気味な男の子が共通しているだけ。ミノルが何者なのかは劇場版を見ればわかるという仕掛け。
(☆☆☆★★)

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