prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「小さな命が呼ぶとき」

2010年09月04日 | 映画
ポンプ病という難病を抱えた親が子供を救うため新薬を開発するという感動的な物語で、「ロレンツォのオイル」といった似た先行作品もあったが、ここで入念に描きこまれているのは、新薬を開発するのには多額の資金を集めなくてはならず、そのためにはいかに数々のプレゼンを乗り越えなくてはならないか、あるいは会社自体を身売りして他社の傘下に入ったり、権利を売り渡したりしなくてはいけないか、といったビジネス上のさまざまな苦心で、親としての情は会社経営にはむしろ邪魔になるものとしてあくまで後方に控えている。というより控えざるをえない。

たとえば試作品の薬をもともと会社を立ち上げた親の子供たちに真っ先に使ったりしたら、当局に公私混同とみなされてしまうわけだ。
あるいは薬ができたとしてそれを使い続けたら五年間でどの程度の生存率が見込めるか(つまりどの程度売れ続けるか)、といったまるっきり人の命を数字としてしか扱わないプレゼンの席での質問にも答えなくてはならない。

ハリソン・フォード(製作総指揮を兼ねる)の協調性ゼロの学者ぶりが新境地。しかしいかにすぐれたアイデアを提供した学者といえども、プロジェクトを推進するためにはメンバーから外されてしまうというのはいかにも「今」の話という感じ。
病気の子供たち、特に女の子の描写がからりとしているのがいい。邦題とはずいぶん違う印象の一編。
(☆☆☆★★)




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