帰国事業で北朝鮮に戻った兄が脳腫瘍の治療のため日本に来ることが認められて家族と再会するという発端から、日本と南北朝鮮の複雑な歴史が背後にずうっと立ちはだかっているわけだが、人物がそれと直接ぶつかって葛藤が現れるということはないから場面としては静かなシーンがずっと続く。映画の体質としては(あたりまえのようだが)日本映画、それもインディー系のそれで、韓国映画やドラマで見られる血の気の多さは感じられない。
性的マイノリティであるオカマが仕事は何かとかいつ結婚するのかといった世間一般を代表する質問を次々と投げかけるのがアイロニカル。
日本国内でも北朝鮮系の家では将軍様親子(まだ一代目と二代目)の写真が必ず飾られ、監視役がついてまわるあたりのなんともいえない違和感。
安藤サクラは「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」でもそうだが自分が不幸というより不幸な人と寄り添ってなじむ顔。