五社英雄監督によるヤクザ映画。1971年製作というから、「人斬り」と「雲霧仁左衛門」の間に作られたことになる。
映画館でのスクリーンに映る映像や映写機からの光を生かした出入りと、それでムショに食らいこんでいた連中が釈放されるのをカットバックで見せる冒頭は好調なのだが、ともに刑務所に入っていたヤクザ同士が大正天皇の崩御による恩赦で同時に出ていてまた対立する、という話がすっきり通らず、大作仕立てにする都合からなのかどうかもってまわって長ったらしい。
冒頭から随所に津軽三味線が鳴り響き、殺し場のバックにねぶた祭りが使われるなどローカルカラーを見せ場に生かす工夫を凝らしているのはいいのだけれど、いかんせん田中邦衛が女二人に絞められ刺されるエロティックな趣向が混ざった殺し場にせよ、クライマックスの仲代達矢と夏八木勲との三味線をバックにした対決にせよ、長すぎしつこすぎて途中で飽きてしまう。
海岸に船が打ち上げられている光景も岡崎宏三撮影が冴えていい画を作っているし、殴り込みをかける座敷の襖絵なども見事な出来で、みどころは多いのだけれど、どれもバランスを失して長々と見せすぎ。
元ヤクザの安藤昇が東宝映画に出るなど、今ではおよそ考えにくい。
天皇崩御や丹波哲郎の大陸進出を企てる一番悪い大物にはまったく司直の手が伸びないなどに社会の裏構造批判といった性格はあるけれど、東映製と違って今一つ板につかない。
(☆☆☆)