prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ザ・メニュー」

2022年12月13日 | 映画
アニャ・テイラー=ジョイの超細身の身体を冒頭から際立たせた衣装からしてグルメ集団の中の異物感をあからさまに出している。
というか、この人どこにいても異物感がある気がする。

対するレイフ・ファインズはかつてテレビ映画でアラビアのロレンスを演じたことがあるのだが、それを再現するかのようにロウソクの炎を手で消し、さらには灼けている燃料を鷲掴みにする。
レストランを支配する神のようなシェフ(オーナーを天使の羽をつけて処刑するあたり、神がかっている)が同時に自虐的というか自罰的で、客=消費者たちを巻き込んで破滅に向かう。
それとグルメとは無縁の女性とは対決というよりはすれ違いになる。

食というのはもろに人間の生理と直結していることなので、グルメ映画というのはしばしば見た目の豪華さとは裏腹にどこか気持ち悪い方に行きがちになる。
おかしなものでテレビで死ぬほど放映しているグルメ番組は単なる消費の対象のせいか気持ち悪さまであっさり使い捨てにされている気がする。

展開の仕方が論理的に積み上がっていく感じではなくて、コース自体の型がとにかく決まっている中で各場面=各皿で工夫を凝らすみたいな作り。
寓話的な作品かと思ったが、どういう寓意なのか必ずしもはっきりしない。