prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「サンドラの小さな家」

2021年04月12日 | 映画
娘たちを連れてDV夫から逃げた女性が住居がないという理由から親権を取り上げられそうになり、では自分で住む家を建ててしまえばいいという展開になる。
ある意味メルヘンっぼい感じもする一方でリアルなところはとことんリアル。

主演のクレア・ダンが脚本を兼ねたわけだけれど、暴力をふるう夫がどう見ても一方的に悪いのに、形式的に平等に扱わなくてはならない、という法制度の理不尽さと、家を建てるのに協力してくれる人たちの力の描写を両立させたのが上手くて、とどめに子供たちの可愛らしさがくる。

DV夫が優しそうな顔を見せるかと思うとこれが詐欺師的な手口そのもので、結局自分のプライドだけが大事で妻はもちろん、娘たちのことも本当に育てたいわけではなくプライドを満たす道具くらいにしか思っておらず、そのためには手段を選ばない嫌らしさが容赦なく描かれる。
ヒロインが夫に思い切り手首を踏まれたために後遺症が残って大工作業に支障が出るあたりの設定も細かい。

母親が父親に暴力を振るわれるのを見ることが小さな子供にとっては凄い恐怖なのをおしっこを漏らしたりする生理的な描写を交えて率直に描き込んでいるのは監督脚本主演と女性の作り手がメインの作品らしい。

アイルランドで共同体的な共助が生きている一方で、カソリックの女性に抑圧的な体質がやはりあるのだろうと思わせたりする。