prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」

2021年04月07日 | 映画
ごく抽象化された村でなぜか川向こうの敵の姿も見えないまま戦争状態にあるという設定。服装などは先の戦争(日中戦争〜太平洋戦争)のイメージにしてある。

半ば通勤して業務に就くように兵隊たちは毎日やってきては川向こうに銃を撃ち込む。
それではまったくの兵隊ごっとかと思うと時折川向こうから銃弾が飛んできて負傷者が出たりする。

抽象的で寓話的、そしておそらくは喜劇的な戦争イメージを造型しようとさまざまな匠気を凝らしていて、画作りはウェス⋅アンダーソンばりに極度に平面的で、ほぼ全編真っ正面からのアングルをとり続ける。セリフの調子もわざとのように調子外れに間延びしている。
美術はかなりよくできていて、ほぼアートフィルムといっていい(つまり大衆性が薄い)作りの割に画面に一定の厚みはある。

ただ正直、抽象化や寓話化があまりにあからさまで最初から底が割れている印象は否めず、戦争なり過剰な日常性なりの表現に目新しさや凄みはあまりなく、相当にかったるい。