prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ザ・ビッグハウス」

2020年06月16日 | 映画
ここで写っているミシガン・スタジアムの光景は、公開当時はその10万人もの収容人員数で見るものを驚かせたが、今見るとこの膨大な数の人間が集まることがコロナ禍によりまったく不可能になっていることに驚かされる。

冒頭の降下ショーから、今さらながらアメリカが軍事力と人為的なナショナリズムといった力で一応まとまっていた国であり、それと裏腹におそろしく多様な人種と出自の人々を抱えた国でもある矛盾の力学が画になっている。

想田和弘監督とするといつもの撮影から編集までひとりで行う観察映画のスタイルとは違って、大勢の学生が実習として手分けして撮った映像をこれまて実習の一環としてディスカッションしながら編集構成していくスタイルをとったわけだが、その実習自体が現在不可能になっている。学生たちの実習指導を兼ねて撮らせて編集もディスカッションしながら行ったわけだが、その実習自体も今では不可能になっているわけだ。

途方もない数と種類の人のちょっと狂気がかった集散が、映画の中と外で輻輳している。
ロック・ドキュメンタリー「ウッドストック」にすごい数の観衆が集まったのを「まるで聖書の中の出来事じゃないか!」と形容する若者がいたが、大群衆というのは何か熱にうかされたようになる危うさがあるが、それが現実に噴出している感。