prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

Animated Spirits アニメーションフェスティバル 現代ヨーロッパ短編集 イタリア文化会館

2018年10月28日 | アニメ
「アイランド」 
おそらく妻に先立たれた男が孤島の切り立った断崖を登る。生死の狭間を行く中、崖に咲く花、空を飛ぶ鳥が生を彩り、「もののけ姫」のシシ神を思わせる大きな角を持つ鹿が自らが産んだ?嬰児の鹿を男の前に置き、くぼみに転落した男を白骨が迎える。
太陽が出て影が光に照らされる部分が海の上を走るのを追うカメラワークが目を奪う。

「イエロー」
青い海の中で黄色い海藻のような触手に絡まれる悪夢を襲われる歌手ヴァイオラ(紫色の意)が見かける黄色いものすべてに恐怖に襲われる。黄色は狂気の色などと言われるが、色そのものがテーマ。ワイングラスがそのまま♪の頭の部分になったりする。

「SOG」
黒づくめで目だけが光る異様な生き物が住む石だらけの地を洪水が襲い、無数の魚が木にひっかかった状態になる。文字通り木に縁って魚を求める図で、生き物たちが魚を恐れた末に木に火を放ち魚が焼かれる残酷さが強烈で、さらに展開するカタストロフが迫力。

「エレクトリシャンズ・デイ」
感電した老電気技師が気が付くと監禁病棟のベッドに横たわっており、電気の点滅とともにまずそうな食事が出されたり、拷問を思わせる悪夢的なイメージが続く。ラトビアの作品とあって何か政治的な匂いを嗅ぎたくなる。

「メルロー」
同時にいくつもの画面が並列して時に互いにキャラクターが行き来する赤塚不二夫がやったような枠組みの解体がなされる。
おこりんぼお婆ちゃんのキャラとその顛末など「赤ずきんちゃん」ばりの残酷さを孕んだギャグセンス。

「LOVE」
惑星に小さな目がついて集まってくる。その中のひとつでさまざまな生命たちが時に食物連鎖をなしながらしかし微妙にヒラエルキーがねじれたり解体しながら生きている。
馬のような生命が水面に見とれ?顔を水に突っ込んだあげく顔がなくなって頭で二つの身体が連結した姿になる奇怪さ。

「オーマザー!」
母親が息子の手を引いて歩いている、息子が大きくなり母親の背を追い抜く、のを通り越して巨人になったり歳まで追い抜いて老人になってしまったりする。息子がスカートの下に何度押し込んでも出てくるのを繰り返すうちに家まるごとが出てきてしまい、息子はそこから現れた他の女と一緒になっている。しかし母と嫁が本格的に対立すると息子はとっとと逃げてしまう。

「レート・シーズン」
老夫婦が海辺で寝ていると耳にヤドカリが貝の代わりにして入ってしまい、ハサミをカスタネットに見立てて情熱的なフラメンコを演奏すると宿主の老夫婦まで寝たまま踊りだす。

「ザ・フルーツ・オブ・クラウッズ」
穴の中に住んでいる「フサフサくん」がたまに降ってくる果物を食べたり貯蔵したりする、その一人がその果物が来る場所に分け入る。

イタリア文化会館HPより↓

Animated Spiritsは、ヨーロッパの最新短編アニメーションを紹介するフェスティバルです。2015年、ニューヨークのハンガリー文化センター所長を歴任したヴァダース・ズィタ・マラ氏により創設され、以来21ヶ国の86本の作品が上映されてきました。毎年、ベテラン監督のほか、新進気鋭の監督の作品も選定され、優れた最新の短編アニメーションを観る良い機会となっています。
今回はじめてニューヨークを離れ、東京でも開催されることになりました。

プログラム
第1部 18:00-18:45
『アイランド』(監督:ロリー・バーン, アイルランド, 2017, 13分)
『イエロー』(監督:イヴァナ・シェベストヴァ, スロヴァキア, 2017, 7分)
『SOG』(監督:ヨナタン・シュヴェンク, ドイツ, 2017, 10分)
『エレクトリシャンズ・デイ』(監督:ウラジミール・レシチョフ, ラトヴィア, 2017, 9分)
『メルロー』(監督:マルタ・ジェンナーリ、ジュリア・マルティネッリ, イタリア, 2015, 6分)

第2部 19:00-19:45
『LOVE』(監督:レーカ・ブチ, ハンガリー、フランス, 2016, 14分)
『オーマザー!』(監督:パウリナ・ジョルコフスカ, ポーランド, 2017, 12分)
『レート・シーズン』(監督:ダニエラ・ライトナー, オーストリア, 2017, 7分)
『ザ・フルーツ・オブ・クラウッズ』(監督:カテジナ・カルハーンコヴァー, チェコ, 2015, 6分)

上映後パネルトーク(日本語のみ)
木下小夜子(アニメーション作家/プロデューサー, 広島国際アニメーションフェスティバルディレクター)
伊藤有壱(アニメーションディレクター, 東京藝術大学大学院映像研究家アニメーション専攻教授)
イラン・グェン(東京藝術大学グローバルサポートセンター特任准教授)
および「LOVE」の監督レーカ・ブチの挨拶もあり。新千歳空港国際アニメーション映画祭2018にゲストとして出席するついでに寄ったとのこと。

イタリア作品
『メルロー』
animated spirits.jpg

監督:マルタ・ジェンナーリ、ジュリア・マルティネッリ (イタリア)
2Dデジタル・アニメーション、2015年製作、6分
『メルロー』は、青で覆われたおとぎ話のような森で、“おこりん坊ばあちゃん”がワインボトルを失くしてしまう。これをきっかけに巻き起こる登場人物たちのドタバタ劇、そしてギャグ満載のやりとりが段々とクライマックスに向かい、やがて思いもよらない展開を迎えるハメになる。

マルタ・ジェンナーリ
Marta Gennari
1992年生まれ。2016年、イタリアのトリノにあるイタリア国立映画学校 (CSC) を卒業。本作『メルロー』は卒業制作として作られた。現在、フランスにあるアニメーション・スクール「ラ・プードリエール」で研鑽を積む。

ジュリア・マルティネッリ
Giulia Martinelli
1990年生まれ。トリノやトロントを拠点に活動するイタリア出身のアニメーター兼、絵コンテライター。2016年、イタリアのトリノ市にあるイタリア国立映画学校 (CSC) を卒業。本作『メルロー』は卒業制作として作製された。

〈インフォメーション〉
開催日: 2018 年 10月 26 日
時 間: 18:00
主 催: EUNIC(欧州連合文化機関 東京)、駐日ハンガリー大使館
特別協力: イタリア文化会館
参加国: 駐日アイルランド大使館、イタリア文化会館、オーストリア文化フォーラム東京、スロバキア共和国大使館、チェコセンター、東京ドイツ文化センター、駐日ハンガリー大使館、ポーランド広報文化センター、駐日ラトビア大使館
入 場: 無料
会 場: イタリア文化会館 アニェッリホール

余談だが、隣の席の外国人が「はだしのゲン」を読んでいた。

10月27日(土)のつぶやき

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